日本銀行によるマイナス金利導入について

情報提供用資料
マーケット・レター
2016年2月2日
日本銀行によるマイナス金利導入について
<マイナス金利導入>
日本銀行は、1月28日~29日に開催された金融政策決定会合におい
て、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現させる等の目的
のため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを発表
しました。これは金融機関が保有する日本銀行当座預金の一部にマイ
ナス金利(▲0.1%)を適用する措置です。
【日本国債利回り】
期間
利回り
期間
利回り
(年)
(%)
(年)
(%)
1
-0.148
7
-0.061
2
-0.152
8
-0.031
3
-0.135
9
0.023
<導入の背景>
4
-0.115
10
0.080
今回の金融緩和の背景には、最近実効為替レートが各通貨に対して
5
-0.103
15
0.385
円高に推移していることが一因であると考えます。とりわけ、昨年夏の
6
-0.102
20
0.813
人民元の切り下げ開始に伴い、韓国ウォンなどのアジア通貨に対して
出所:ブルームバーグ(2016年2月2日時点)
円高が見受けられ、これが輸出の鈍化につながり、実体経済にネガ
ティブな影響を与えているという判断があると思われます。
加えて、想定以上の原油安の進行に伴い、企業や個人の期待インフレ率が低下。このままの状況では、賃上げによる、
所得への好循環が阻害され、早期のデフレ脱却が困難になっているという現状が背景にあると考えます。
また、今回マイナス金利政策に踏み込んだことで、政策の打ち止め感が払拭され、経済・金融市場の下支えを狙った
ことも導入の背景であると考えます。
<円債市場への影響>
今回のマイナス金利導入の影響については、以下の3つの側面があると考えられます。
1.マイナス金利を前提とした、新しい金利形成
従来は付利0.1%を前提に日本国債のイールド
カーブは形成されてきましたが、金利の下限が
▲0.1%とマイナスになったことで、新たなイールド
カーブが形成されると思われます。
実際、マイナス金利の適用対象になる金額は2月
16日スタートの準備預金積み期間では10兆円程
度との指摘もされていますが、今後の金利形成
は限界的な準備預金金利に基づいてなされると
思われることから、今後のイールドカーブは恒常
的なマイナス金利を前提としたものになっていくこ
とが予想されます。
利回り
(%)
【日本国債イールドカーブの変化】
2.5
2.0
1.5
2016年2月2日
2015年2月2日
2010年2月2日
1.0
0.5
0.0
‐0.5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
15
20
期間(年)
出所:ブルームバーグ(2016年2月2日時点)
当コメントは、パインブリッジ・インベストメンツの運用関係者の作成したコメントを基に作成しています。
■当資料は、「日本銀行によるマイナス金利導入」に関する参考情報の提供を目的として、パインブ
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2016年2月2日
2.量的・質的金融緩和との関連性
日銀の金融緩和については、従来の量的・質的金融緩和(いわゆるQQE)についても維持されることから、この
従来の緩和政策との関連性も重要な論点となります。実際、今年に入り日銀は国債の買入金額を増加させてお
り、年間市中発行金額の100%近い国債を現状購入しています。現在、いまだ札割れという状況ではないものの、
今回のマイナス金利導入により、銀行などが国債売却をより抑制すると、国債需給ひっぱくに伴い、買入額拡大
やマネタリーベースの増加を継続することが困難になることも予想されます。今後、マネタリーベースの増加から、
金利引下げへの金融政策のパラダイムシフトが起こる可能性もあると考えられます。
3.マイナス金利政策の効果
最後の論点は、マイナス金利政策のマクロ経済効果です。
これに関しては、円高抑制を通じての間接的な景気下支え効果はあると思われますが、貸出増加に関しては
限定的であると考えられます。銀行の融資行動は、貸出先の資金需要に対応して融資を行うというのが通常で
あり、資金が安く調達できるから、貸出が必ずしも増加するわけではありません。融資基準の緩和に伴い、不動
産向けの融資など拡大する可能性はありますが、国際的な規制強化の流れの中で拡大には限界があると思わ
れます。銀行の余剰資金は、中期的によりスプレッドのある社債や住宅ローン担保証券(MBS)、米国を中心と
する外債、REIT、高配当利回り株などに流れ込むことが想定されます。
マイナス金利政策の採用は我が国では初めてであることから、短期的には市場の変動が大きくなる可能性には
留意が必要と思われますが、政策のプラス効果については未だ不透明であることから、日銀の異次元緩和が継続
される限り、国債金利の低位安定傾向が続くと予想しています。
<機構債市場に関して>
国債金利の低位安定傾向が予想される中、機構債の価格は国債対比で高い利回りという点もあることから安定
的に推移していくものと考えています。
毎月条件決定されている機構債は、新発10年国債利回りにスプレッドを上乗せさる形でクーポンが決まっています。
2015年度に機構債の裏付け資産である住宅ローン「フラット35S」の金利優遇幅がマイナス0.3%からマイナス0.6%
に拡大し、機構債の発行額が前年度に比べ約1.5倍に増えました。この発行額の増額を主な理由として、2015年4月
以降新規条件決定した機構債のスプレッドは拡大基調となり、直近2016年1月21日に条件決定した機構債ではスプ
レッドは0.56%と過去3年で最も大きな水準となりました。
日本銀行によるマイナス金利政策導入により住宅ローン金利も低下し、国内全体の住宅ローン借入の増加が見込
まれます。しかし、「フラット35S」の金利優遇措置幅の拡大に関しては2016年1月29日申込みをもって終了しており、
今後民間住宅ローン金利対比での「フラット35S」の住宅ローン金利の魅力が薄れることを背景に、2016年度の機構
債発行額は2015年度に比べ減少する見込みです。なお、国土交通省が2015年12月に発表した2016年度の機構債
の新規発行額計画は2015年度新規発行額計画に比べ約8割水準まで減額となっています。
機構債発行額の減少が見込まれ、また国債金利が低位で推移して行く中、高格付けかつ国債対比で高い利回りの
機構債への投資需要は高まると思われ、スプレッドは今後タイト化方向となり、機構債価格の上昇を支える一因に
なるものと考えています。
また、機構債の特徴である毎月の任意繰上償還額に関しては、借換えインセンティブが低い低金利住宅ローンが裏
付けとなっている新規発行の機構債を中心に低位に留まり、機構債の毎月のキャッシュフローは安定的に推移する
と見込んでいます。この安定的なキャッシュフローも、機関投資家からの需要を引き付け、スプレッド縮小要因となる
と考えています。
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