研修ノート 3 平成20年度の方針 少女をはぐくむ 地域との連携 研修ノート に垂らし、仰向けに寝ている姿に見えますので、女性 の山とか母なる山と親しまれています。高さは1,625m ありますが、その裾400mくらいのところに、「森のイス キア」と命名している小さな建物を拠点にしてささやか 人が生きるうえでもっとも大切なこと、 な活動を続けてきました。ささやかな活動とは?と聞か それが「食べること」ではないでしょうか。 今号では、生活の場である家庭での「食」の大切さについて、 あらためてふりかえってみます。 れますが、形にもなっていないしさりとて決まりもないの で、どのように話したら理解してもらえるのかとまどいま す。話すほど本筋から離れるので「訪ねる人と一緒 に食べることを大事にしています」と答えています。 【寄稿】 食はいのち 生活の基本 ─心とからだをはぐくむ食─ さ profile と う は つ め 佐藤初女 Hatsume Sato 「森のイスキア」主宰 ガールスカウト日本連盟 顧問(平成16年度〜現在) 、元監事 (平成5 〜10年度) 長年にわたり青森県第9団の団委員長を務め、多くのガールスカ ウトやリーダーを育てた。また、青森県支部長としても尽力された。 1921年青森県生まれ。 小学校の教員を務めたのち、1979年より弘前染色工房を主宰 するかたわら、自宅を開放して心を病んだ人々を受け入れてきた。 1992年、岩木山麓に「森のイスキア」を開設し、訪れる人を 温かく受け入れている。龍村仁監督の映画『地球交響曲第二番 (1995年公開)』に出演したことをきっかけに、広くその活動が 知られるようになった。アメリカ国際ソロプチミスト協会賞ほか多 数受賞、著作多数。 食はいのち り大切にしない人も同じことになるので出来上がったも 食べることは毎日のことなのに特別大事にしているの のを見て反省し、誰に言われなくても良い方にむかうこ はどういうことかと考えられがちにもなりますが、食はい とができますし、自然に自分の性格も生活も変わってき のち、私たちは食べなければ生きられない、食べて生 ます。 かされますので、食材そのものも、いのちです。食材 食を大切にする人は人をも大事にします。料理をお を「いのち」としてとらえるか、「物」としてとらえるかに いしく作るにはまず、新鮮なこと、旬のもの、地場の よって、調理の仕方が違ってきます。「いのち」として ものがおいしいのです。レシピはあくまでも基本であっ 考えると慈しむように作るので、絶対───おいしくな て、味を見ることです。私が若い頃、食通のおじさん ります。「物」と考えるとそそくさと安易な気持ちで作り が名コックさんは30回味を見ると教えてくれました。30 ます。 回とは言わないまでも、何度も味を見ることです。それ 私が例にとって話していることは、今まで大地に生き ほど味を見ることが大切なんですね。今でも私はその ていた緑の野菜を湯がくと、今までよりいっそう輝くよう ことを思い出しながら作っています。 に美しくなる一瞬があります。そのとき火を止めて、即、 正しい食が行われているところには問題が起こらな 水で冷やし食べる。茎を見ると透明になっています。 いと思うのです。家庭の和も、教育、人と人との交流 このときがおいしいのです。今まで野菜であったもの もすべて食が基本になっていると、訪ねて見える方と が私たちの体に入り今度はいのちがひとつになって生 お会いするたびに気付かされます。以前の日本はお米 今回の題名は「食はいのち 生活の基本」とさせ 涯生き続けるのです。 が主食でしたが、敗戦後、欧米食が入りお米が遠ざ てもらいましたが──本題に入る前に自己紹介を兼ね 透明になったときが「いのちの移しかえ」のときと考 かったときもありました。瑞穂の国といわれた日本のお 今回『OLAVE』に寄稿のチャンスをお与えいただ て少し私の生活に触れさせてもらいます。 えさせられます。蚕がさなぎになるときも、今まで土で 米は日本文化であるし、そのごはんで握るおにぎりも文 あったものが焼きものに変わるときもお窯の中が透明に 化と聞きます。伝統を大切に心と体をはぐくみましょう。 はじめに き、うれしくまた感謝でございます。顧問の名を連ね させていただいているのに活動の現場で働くことも少 ないし心苦しく思っていました。ここ10年余り全国に講 演で出かけていますが、各県にガールスカウトの支部 がありますので、ガールスカウト会員の方々が会場に 17 OLAVE No.12 2008 July 「森のイスキア」 ─岩木山にいだかれて なって、中が見えなくなると聞きました。人もまた透明 にならなければいけないし、人の場合は折にふれ透明 になり成長していかなければと思います。 【著書紹介】 私は本州の北端、青森県弘前市に住んでいます。 制服で出かけてくれ 弘前は人口22万人の小さな町で、工業的なものがな ますと、とても力強 いので、「お城とさくらとりんごの町」をキャッチフレーズ く感じます。また創 始者のベーデン-ポ に、国内はもとより海外にも呼びかけてお客様をお待ち している観光の町になっています。かつては津軽十万 おいしくなければ栄養にならないと思うのです。私は ウエル卿が、「一度 石として栄えたこともありますが、今はお城のあとが公 十代から20年近く闘病生活を続けましたが、薬をやめ スカウトとなったら一 園となり、春には2,500本のさくらが見事に咲いて、見 て食べて元気になると決心しました。なぜですか、と 生スカウト」 というメッ る人の目を楽しませ心を和ませています。お城とさくらと 聞かれますがおいしくなかったからです。おいしく感じ セージを残されてい りんごもさることながら、町のシンボルは岩木山という山 るときは体の細胞が躍動するように元気になるのです。 ますので、今となっ にあると思うのです。この山は大地にどっしり座ってい 特に病んでなえた体には、体の末端までしみこむよう てもガールスカウトの る、そして裾幅が非常に広いのです。 に伝わっていきます。 一員として登録し誇 その裾で町全体を包んでいるような地形になってい 調理する心はその人の生きる姿そのものに思いま りをもっています。 ます。おもて面から見る形は女性が黒髪をずっと後ろ す。急ぐ人は急ぐ、ゆっくりの人はゆっくり、物をあんま おいしい食事が 心とからだをはぐくむ 初女さんからお母さんへ 生命のメッセージ 主婦の友社 127ページ 18.6×13cm 1,200円 (税別) 2007年11月発行 「食といのちの大切さ」 について佐藤初女さん から贈られるメッセージ。子どもにかかわるすべ ての大人に読んでもらいたい本です。 おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記 集英社文庫 253ページ 15.2×10.6cm 667円 (税別) 2005年7月発行 「森のイスキア」 での食、 出会い、 信仰について などが美しい写真と共に語られています。 ガール スカウトの活動についてもふれ、 あらためてガー ルスカウト運動が今求められている 「心の教育」 につながるものであることを伝えています。 No.12 2008 July OLAVE 18
© Copyright 2024 ExpyDoc