長岡在宅フェニックスネットについて

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長岡在宅フェニックスネットについて
太
田
裕
現在、国はいわゆる2025年問題の人口動態の変
その為には、ICT を使い訪問看護師の業務を省
化に対応すべく地域医療構想を推し進めていま
力化、効率化し、更にレセコンとの連動も可能に
す。地域ごとの人口と実態に合わせ4つの病床区
する。そして訪看にとってこのシステムが必要不
分の割合を決め、
それに沿って病床の転換を図り、
可欠なものとする。また医師は時々自分の患者の
また入院を減らすため在宅医療に重点を置いてい
情報を覗き見する程度でもよい。②24時間の対応
ます。そして在宅医療の構築を、各郡市医師会に
を訪看に担っていただく。③後方支援病床の役割
委ねてきました。そのため郡市医師会では、それ
を、基本的には救急と同様、3病院の輪番で行っ
ぞれ知恵を絞って在宅医療の構築に取り組んでい
ていただく。④登録された全ての人の情報を救急
ます。
隊と二次救急病院でも閲覧できる。
長岡市医師会では長岡市と共同し、地域包括ケ
そしてこのシステムのもう一つの特徴は、新し
ア推進協議会を2013年に立ち上げ、在宅医療のシ
い考え方の救急の ICT を包含している点です。
ステムの検討を行ってきました。本年2月には構
これまでの救急の ICT は、ほとんどが救急隊か
想が出来上がり、11月より試験運用が開始されま
ら病院へ患者のバイタルを送るシステムですが、
したので紹介します。
私たちが提案する方式は救急患者のデーターベー
以下の3つの項目を検討してシステムの概要を
ス化です。つまりフェニックスネットに登録され
決定しました。
た全ての人の情報を救急隊と二次救急病院との間
1.失敗に学ぶ。
で共有でき、より迅速に患者の状況を把握し対応
これまで150以上の在宅の ICT システムが作ら
できる利点があります。長岡では年間1万人の救
れましたが、そのほとんどが機能していません。
急搬送がありますが、
その内の55%が65歳以上で、
何故か。医師を中心とした考えで作られ、医師に
更にその3/4が在宅や介護を受けている人です。
多くの負担が掛かり、また訪問看護師にとっても
長岡では12,000人が介護認定されていますが、全
仕事が2倍3倍に増え、
業務の維持が困難となった。
ての人がネットに登録されれば、救急搬送される
2.医師が在宅診療に参加する場合の障壁は何か。
患者の40%以上を事前に把握する事が出来ます。
在宅への参加に対する不安は、24時間365日の
因みに試験運用が始まってまだ1か月ですが、
対応と患者の急変時または自分の不在時の後方支
現在の参加機関の状況は、診療所18、訪問看護
援病院への患者受け入れ体制がうまく機能するか。
ST12(看護師80名)です。そして患者の登録数
3.長岡にある医療資源を有効に使う。
は診療所から629例、訪問看護 ST からは2,068例、
1)長岡の二次救急医療体制は3病院の輪番で
介護サービスを含めた全体では3,893例が登録さ
行われ、98%以上が長岡管内で完結している。2)
れています(一部重複があります)
。
こぶし園の小山さんが提唱していた ICT を使っ
以上、長岡で始まった ICT を使った在宅医療
た在宅介護のシステムがあった。
のシステムと新しい救急の ICT の方式について
ここから導き出されたシステムは、①医師、訪
お示ししました。参考にしていただければ幸い
看、患者のトライアングルが基本であるが、医師
です。
の関与が希薄でも存続が可能なシステムとする。
(長岡市医師会会長)
新潟県医師会報 H28.1 № 790