31 長岡在宅フェニックスネットについて 太 田 裕 現在、国はいわゆる2025年問題の人口動態の変 その為には、ICT を使い訪問看護師の業務を省 化に対応すべく地域医療構想を推し進めていま 力化、効率化し、更にレセコンとの連動も可能に す。地域ごとの人口と実態に合わせ4つの病床区 する。そして訪看にとってこのシステムが必要不 分の割合を決め、 それに沿って病床の転換を図り、 可欠なものとする。また医師は時々自分の患者の また入院を減らすため在宅医療に重点を置いてい 情報を覗き見する程度でもよい。②24時間の対応 ます。そして在宅医療の構築を、各郡市医師会に を訪看に担っていただく。③後方支援病床の役割 委ねてきました。そのため郡市医師会では、それ を、基本的には救急と同様、3病院の輪番で行っ ぞれ知恵を絞って在宅医療の構築に取り組んでい ていただく。④登録された全ての人の情報を救急 ます。 隊と二次救急病院でも閲覧できる。 長岡市医師会では長岡市と共同し、地域包括ケ そしてこのシステムのもう一つの特徴は、新し ア推進協議会を2013年に立ち上げ、在宅医療のシ い考え方の救急の ICT を包含している点です。 ステムの検討を行ってきました。本年2月には構 これまでの救急の ICT は、ほとんどが救急隊か 想が出来上がり、11月より試験運用が開始されま ら病院へ患者のバイタルを送るシステムですが、 したので紹介します。 私たちが提案する方式は救急患者のデーターベー 以下の3つの項目を検討してシステムの概要を ス化です。つまりフェニックスネットに登録され 決定しました。 た全ての人の情報を救急隊と二次救急病院との間 1.失敗に学ぶ。 で共有でき、より迅速に患者の状況を把握し対応 これまで150以上の在宅の ICT システムが作ら できる利点があります。長岡では年間1万人の救 れましたが、そのほとんどが機能していません。 急搬送がありますが、 その内の55%が65歳以上で、 何故か。医師を中心とした考えで作られ、医師に 更にその3/4が在宅や介護を受けている人です。 多くの負担が掛かり、また訪問看護師にとっても 長岡では12,000人が介護認定されていますが、全 仕事が2倍3倍に増え、 業務の維持が困難となった。 ての人がネットに登録されれば、救急搬送される 2.医師が在宅診療に参加する場合の障壁は何か。 患者の40%以上を事前に把握する事が出来ます。 在宅への参加に対する不安は、24時間365日の 因みに試験運用が始まってまだ1か月ですが、 対応と患者の急変時または自分の不在時の後方支 現在の参加機関の状況は、診療所18、訪問看護 援病院への患者受け入れ体制がうまく機能するか。 ST12(看護師80名)です。そして患者の登録数 3.長岡にある医療資源を有効に使う。 は診療所から629例、訪問看護 ST からは2,068例、 1)長岡の二次救急医療体制は3病院の輪番で 介護サービスを含めた全体では3,893例が登録さ 行われ、98%以上が長岡管内で完結している。2) れています(一部重複があります) 。 こぶし園の小山さんが提唱していた ICT を使っ 以上、長岡で始まった ICT を使った在宅医療 た在宅介護のシステムがあった。 のシステムと新しい救急の ICT の方式について ここから導き出されたシステムは、①医師、訪 お示ししました。参考にしていただければ幸い 看、患者のトライアングルが基本であるが、医師 です。 の関与が希薄でも存続が可能なシステムとする。 (長岡市医師会会長) 新潟県医師会報 H28.1 № 790
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