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第4章
「光と磁気」の電子論
第 4 章の内容
第 3 章では,マクロスコピックな立場に立って,光を電磁波として扱いその
伝 搬 と い う 観 点 か ら 磁 気 光 学 効 果 を 論 じ た . そ の ポ イ ン ト は ,「 磁 化 を も つ 物 質
の誘電率テンソルの非対角成分は磁化に対し奇関数であり,これにより右回りの
円偏光と,左回りの円偏光の伝搬の仕方に差が生じ,その結果として旋光性や円
二色性を生じる」ということであった.この章ではミクロスコピックな立場に立
って,物質中の電子と光の相互作用という観点から磁気光学効果を扱う.この扱
いには二通りあって,ひとつは,電磁界のもとでの電子の運動を古典力学の運動
方程式に基づいて扱い,比誘電率の表式を導くものであり,もうひとつは,量子
力学の波動方程式に対する摂動論に基づいて扱い,物質の誘電応答を導くもので
ある.量子論による取り扱いがなければ,強磁性体の磁気光学効果の大きさや,
磁気光学効果が特有のスペクトルをもつことを説明できない.この章ではやや面
倒な式がでてくるが,その誘導にとらわれず,その式のもつ物理的な意味をご理
解いただきたい.
4.1
誘電率と分極
ε を定義した.
3 章では,電束密度の電界に対する係数として比誘電率テンソル ~
一 方 , 物 質 中 に お け る 電 束 密 度 D は , 真 空 中 の 電 束 密 度 ε0E に 物 質 の 物 質 の 分
極 P (単 位 体 積 あ た り の 双 極 子 モ ー メ ン ト )が も た ら す 電 束 密 度 を 加 え た も の と な
っている.
D ≡ εε 0 E = ε 0 E + P
(4.1)
一般に電気分極 P は印加電界 E に依存し,電気感受率テンソル ~
χ を用いて
P = ε 0 χ~E
(4.2)
と 表 す こ と が で き る の で , 式 (4.1)よ り , 比 誘 電 率 テ ン ソ ル は 電 気 感 受 率 を 使 っ
て
ε~ = 1 + χ~
(4.3)
のように書ける.ここに 1 は単位テンソルである.成分で書くと
ε ij = δ ij+ χ ij
(4.4)
と な る . こ こ に δ ijは Kronecker の デ ル タ で あ る . 電 気 感 受 率 は 物 質 の 分 極 の し
やすさの尺度であるから,比誘電率も分極のしやすさを表しているといえる.
前に書いたように,分極とは単位体積中にある電気双極子の総和を表している.
物質に電界 E を加えたときに正電荷 q と負電荷−q が相対的に u だけ変位する
と , qu と い う 電 気 双 極 子 モ ー メ ン ト が 誘 起 さ れ る か ら , 電 気 双 極 子 の 密 度 を N
とすると,電気分極は
P = Nqu
(4.5)
と表される.したがって,電界 E を印加したときの電荷対の相対変位 u を見積
もることができれば,電気感受率が得られ,したがって比誘電率テンソルも求め
られる.
4 .2
誘電率の古典電子論と磁気光学効果
電子を古典的に扱い,高周波電界 E と直流磁界 B のもとでの運動方程式を立
てると次式で与えられる.
m
d 2u
2
+mγ
dt
d u
du

+ m ω 02u = q E + B ×

dt
d t

(4.6)
左 辺 に お い て , m は 電 子 の 有 効 質 量 , γ は 衝 突 の 確 率 で γ = 1 / τ (τ は 電 子 の
平 均 自 由 時 間 = 散 乱 の 緩 和 時 間 ), m ω 02u は 電 子 が u だ け 変 位 し た と き の 復 元 力
を 表 す . こ こ に ω0 は 共 振 周 波 数 で あ る . 一 方 , 右 辺 は ロ ー レ ン ツ 力 で あ る . こ
こ で , 磁 界 は z 方 向 に 向 い て い る と 仮 定 す る と B = (0,0,B )と 表 さ れ る .
光 の 電 界 が E = E 0 exp(− iω t) の 形 の 高 周 波 電 界 で 表 さ れ る と す る と , 変 位 u =
( x,y )も 同 様 に u = u0 exp(
−iωt)の 形 の 高 周 波 振 動 と し て 表 さ れ る の で , 代 入 す る
と
− m ω 2u − imωγu + m ω 02u = q(E − iωB × u)
(4.7)
上 の 式 を x , y,z 成 分 別 に 書 く と
(
)
m ω 2 + iωγ − ω 02 x− iω q By = − qEx
(
)
iωqBx+ m ω 2 + iωγ − ω 02 y = − qE y
(
)
(4.8)
m ω 2 + iωγ − ω 02 z = − qEz
と な る . こ の 連 立 方 程 式 を 解 く こ と に よ り , u = ( x , y,z )を 求 め 式 (4.5)に 代 入 す る
こ と に よ り , 電 界 E の 関 数 と し て P が 求 め ら れ る . 式 (4.2)を 使 え ば 電 気 感 受 率 χ
は次式で表される.
χ xx(ω ) = −
χ xy(ω ) =
ω 2 + iωγ − ω 02
nq2
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
(
)
− iωω c
nq2
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
(
χ zz(ω ) = −
)
(4.9)
nq2
1
⋅ 2
m ε 0 ω + iωγ − ω 02
を 得 る . こ こ に , ω c = qB m は サ イ ク ロ ト ロ ン 角 周 波 数 で あ る . こ の 式 を 誘 電 率
に書き換えると次式を得る.
ε xx(ω ) = 1 −
ε xy(ω ) =
ω 2 + iωγ − ω 02
nq2
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
(
)
− iωω c
nq
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
2
(
ε zz(ω ) = 1 −
)
(4.10)
2
nq
1
⋅ 2
m ε 0 ω + iωγ − ω 02
式 (4.10)に お い て , 分 母 第 2 項 の ω c 2 は 磁 束 密 度 B が 低 い と き は 無 視 で き る の で,
比誘電率の対角成分はほとんど磁界に依存しない.一方,磁気光学効果に寄与す
る非対角成分は B にほぼ比例するので,電子の古典的運動によって磁気光学効
果が導かれる.
(
)
式 (4.10)か ら σ ij= −iωε 0 ε ij− δ ij を 用 い て 伝 導 率 に 書 き 換 え る と
σ xx(ω ) =
(
σ xy(ω ) = −
σ zz(ω ) =
(
)
iω ω 2 + iωγ − ω 02
nq2
⋅
2
m
ω 2 + iωγ − ω 02 − ω 2ω c2
)
ω 2ω c
nq2
⋅
2
m
ω 2 + iωγ − ω 02 − ω 2ω c2
(
)
(4.11)
nq2
iω
⋅
m ω 2 + iωγ − ω 02
以下では,いくつかの特別の場合について分けて考える.
①
磁界ゼロの場合:ローレンツの式
式 (4.10)に お い て , B = 0, し た が っ て ω c = 0 と す る と
ε xx(ω ) = ε zz(ω ) = 1 −
ε xy(ω ) = 0
nq2
1
⋅
2
m ε 0 ω + iωγ − ω 02
(4.12)
この式は,いわゆるローレンツ型の誘電分散スペクトルである.εの非対角成分
が 0 な の で B =0 で は 磁 気 光 学 効 果 は 生 じ な い . ε xx の 実 数 部 と 虚 数 部 に つ い て
式を書き下すと,
ε ′xx(ω )= 1 −
ω 2 − ω 02
nq2
⋅
m ε 0 (ω 2 − ω 02 )2 + ω 2γ 2
nq2
ωγ
′ (ω )=
⋅ 2
ε ′xx
2
m ε 0 (ω − ω 0 )2 + ω 2γ 2
(4.13)
の よ う に 書 け る . 図 4.1 に は 式 (4.22)で 与 え ら れ る ε ' xx お よ び ε " xx の ス ペ ク ト
ル の 形 状 が 示 し て あ る . 3.5 節 に 述 べ た よ う に ε 'が 分 散 型 を 示 す の に 対 し て ε "
はベル型を示し互いに相手の微分型になっていることが確認してほしい.
②
磁界がなく,束縛項もない場合:ドルーデの式
次 に , 式 (4.12)に お い て , 磁 界 も 束 縛 の な い 自 由 電 子 の 場 合 を 考 え る , す な わ
ち ω c = 0, ω 0 = 0 と す る と ,
ε xx(ω ) = ε zz(ω ) = 1 −
ε xy(ω ) = 0
nq2
1
⋅
m ε 0 ω (ω + iγ )
(4.14)
となる.この式を実数部と虚数部に分けて書くと
ε ′xx(ω )= 1 −
nq2
1
⋅
mε0 ω 2 + γ 2
γ
nq2
′ (ω )=
⋅
ε ′xx
m ε 0 ω (ω 2 + γ 2 )
(4.15)
と書けるが,これは,いわゆるドルーデの式になっており,ω→0 のとき虚数部
は無限大となる.ω=0 で実数部は負の大きな値をとり,ある周波数で負から正
へ と 0 を 横 切 る . 自 由 電 子 の 散 乱 が な い (γ = 0)と し て 誘 電 率 の 実 数 部 ε ' が 0 を
横切る角周波数ωp を求めると,
ωp =
nq2
mε0
(4.16)
が得られる.ωp は自由電子の集団運動の固有振動数でプラズマ角周波数とよば
れ る . 散 乱 を 考 え る と , ε ' が 0 を 横 切 る 角 周 波 数 ω ' p は ω ′p = ω 2p − γ 2 で あ る .
式 (4.24)で 与 え ら れ る 誘 電 率 の 実 数 部 と 虚 数 部 を プ ロ ッ ト す る と , 図 4.2 に 示 す
よ う な ス ペ ク ト ル を 示 す . 図 か ら わ か る よ う に ω <ω 'p の 領 域 で は 誘 電 率 の 実 数
部は負になっている.誘電率が負ということは光が物質中に入り込めないことを
意味し,金属の高い反射率の原因になっている.もちろん,誘電率の虚数部の存
在 の た め に 完 全 に 入 れ な い わ け で は な く skin depth だ け は 入 り 込 め る の で あ る
が.量子論的にみると,束縛のない電子系の運動は同じバンド内での励起に相当
するのでバンド内遷移と考えることができる.一方,誘電率の虚数部は,裾野を
引く形状を示す.キャリア密度が高い半導体でみられる自由キャリア吸収はこの
項に由来する.
③
磁界がかかっており束縛項がない場合:マグネトプラズマ共鳴とホール効
果
式 (4.11)に お い て , B≠ 0, ω 0 = 0 を い れ る と , 自 由 電 子 の 輸 送 現 象 に お け る
磁界の効果をみることができる.この場合の電気伝導率テンソルは次のようにな
る.
σ xx(ω ) =
nq2
i(ω + iγ )
⋅
m (ω + iγ )2 − ω c2
σ xy(ω ) = −
σ zz(ω ) =
nq2
ωc
⋅
m (ω + iγ )2 − ω c2
(4.17)
nq2
i
⋅
m ω + iγ
こ れ が マ グ ネ ト プ ラ ズ マ 共 鳴 を 表 す 電 気 伝 導 率 テ ン ソ ル で あ る . σ xy が ホ ー ル 効
果 の 周 波 数 分 散 を 与 え る こ と は 以 下 の よ う に し て わ か る . 式 (4.17)で 直 流 す な わ
ちω→0 を考えると
σ xx(ω ) =
nq2
γ
σ0
⋅
=
m ω c2 + γ 2 (ω c /γ )2 + 1
σ xy(ω ) =
nq2
ωc
⋅
m ω c2 + γ 2
σ zz(ω ) =
nq2 1
⋅ = σ0
m γ
(4.18)
となる.ここに,σ 0 は直流伝導率である.
抵 抗 率 の テ ン ソ ル ρ~ は 伝 導 率 の 逆 テ ン ソ ル で 与 え ら れ る の で ,
ρ xx = ρ zz = 1/σ 0
ρ xy = RH B
(4.19)
こ こ に , R H は ホ ー ル 係 数 で , R H = − 1/ nq で 与 え ら れ て い る (問 題 4.2 参 照 ).
すなわち,伝導率テンソルの非対角成分は直流でのホール効果に対応するもの
であることが示された.*
④
磁界がかかっていて,束縛がなく,散乱のない場合
式 (4.10)に お い て , γ → 0(あ る い は τ → ∞ )と す る と
ε xx(ω ) = 1−
ω 2p
ω 2 − ω c2
ω 2pω c
ε xy(ω ) = −i
ω ω 2 − ω c2
(
ε zz(ω ) = 1−
(4.20)
)
ω 2p
ω2
このような誘電率テンソルをもった物質中を進む電磁波の複素屈折率は
N ± 2 = ε xx ± iε xy = 1−
(
ω 2p
ω ω 2 − ω c2
)
(ω µ ω c ) = 1−
ω 2p
ω (ω ± ω c )
(4.21)
となって,左右円偏光に対する屈折率の違いを生じ,磁気光学効果をもたらす.
こ れ は マ グ ネ ト プ ラ ズ マ 共 鳴 (magneto-plasma resonance)と よ ば れ る 現 象 で あ
る.ここでは光が B と平行に進む場合を考えたが,B が光の波数ベクトルに垂
直な場合には,磁気複屈折をもたらすことが知られている.N が求まれば反射率
R も 計 算 で き る . 図 4.3 は ω c = 0.2 ω p の 場 合 に つ い て 理 論 的 に 計 算 し た 反 射 ス ペ
クトルである
1)
.
非磁性の半導体のように自由電子の運動が重要な役割をもつ場合については,
上記の古典力学的考え方で実験を説明できるが,強磁性体のように自発磁化をも
つ物質の磁気光学効果を古典電子論に基づいて説明しようとすると非常に大きな
内部磁界の存在を仮定しなければならない.一例として,鉄の磁気光学効果を考
え て み よ う . 比 誘 電 率 の 非 対 角 成 分 の 大 き さ は 最 大 5 の 程 度 で あ る . 式 (4.10)に
お い て ηω = ηω 0 = 2eV , ηγ = 0.1eV , キ ャ リ ア 密 度 n = 1022cm −3 = 1028m -3と 仮 定 す る
*
こ こ で は 非 磁 性 の 金 属 や 半 導 体 を 考 え た の で , B = µ 0H と み る こ と が で き た が ,
自 発 磁 化 M を も つ 物 質 に お い て は , B = μ 0 ( H + M )と し な け れ ば な ら な い . そ れ
ばかりではなく,磁性体では上述のような単純な取り扱いができず,異常ホール
効果とよばれる現象が起きる.それは伝導電子のバンドが M と同じ向きのスピ
ンをもつ電子と逆向きのスピンをもつ電子に対して異なるからである.さらに伝
導電子の散乱の緩和時間τもスピンに依存する複雑なものとなる.
と , B =3000T と い う 大 き な 磁 界 を 仮 定 し な け れ ば な ら な い . こ の よ う に , 古 典
的な電子の運動方程式から導いた式では強磁性体の磁気光学効果を説明すること
はできない.この問題を解決に導いたのは次に述べる量子論であった.
4.2 節 の ま と め
電子の古典的運動方程式から誘電率の対角,非対角成分の分散式が導かれる.
ε xx(ω ) = 1−
ε xy(ω ) =
ω 2 + iωγ − ω 02
nq2
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
(
)
− iωω c
nq2
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 2 2 − ω 2ω 2
c
0
(
ε zz(ω ) = 1−
)
2
1
nq
⋅
m ε 0 ω 2 + iωγ − ω 02
こ こ に ω c = | qB / m |は サ イ ク ロ ト ロ ン 角 周 波 数 で あ る .
磁 界 が な い と き は , 上 式 は 単 純 な ロ ー レ ン ツ 型 の 分 散 式 に な る . B = 0, ω 0 =
0 と置くと,
ε ′xx(ω )= 1−
′ (ω )=
ε ′xx
ω 2p
ω 2 +γ 2
γω 2p
ω (ω 2 + γ 2 )
と な り , ド ル ー デ の 式 が 得 ら れ る . こ こ に , ω p2=
nq2
である.
mε0
ω → 0(直 流 )の と き 抵 抗 率 テ ン ソ ル は
ρ xx = ρ zz = 1/σ 0
ρ xy = RH B
4.3
誘電率の量子論
この節では量子論に従って,誘電テンソルが光学遷移に基づく分散式の重ね合
わせで表せることを述べる.この節は量子力学になじみの薄い読者には難解かも
知 れ な い . 結 果 は 式 (4.38)に 与 え ら れ て い る の で , そ こ ま で 読 み と ば し て い た だ
い て 差 し 支 え な い . し か し , 4.2.4 項 に 物 理 的 描 像 を 述 べ て あ る の で , そ の 部 分
はぜひお読みいただきたい.
4.3.1
時間を含む摂動論
この節では,電気分極を量子力学的に考えるとどのようになるかを考える.
4.1 節 に 述 べ た よ う に , 電 気 分 極 と は ,「 電 界 に よ っ て 正 負 の 電 荷 が ず れ る こ と
により誘起された双極子モーメントの単位体積における総和」である.これを量
子力学で扱うと次のようになる.電界が及ぼす効果を,電界のない場合の電子の
波動関数に対する「摂動」として扱い,摂動を受けた場合の固有関数を無摂動系
の波動関数の 1 次結合として展開する.この固有関数を用いて電気双極子の期
待値を計算するのである.電界を加えた後電気分極が生じるまでには当然のこと
ながら時間遅れがあるので,動的な誘電応答を計算しなければならない.一般論
と し て は , 動 的 感 受 率 テ ン ソ ル χ µν (ω)の 正 確 な フ ォ ー マ リ ズ ム は 久 保 公 式
2)
を用
いて導かれる.しかし,このアプローチは初学者には理解しにくいと思われるの
で,ここでは,通常の「時間を含む摂動論」に従って感受率テンソルの対角成分
を求めてみよう
4)
.
無 摂 動 系 の 基 底 状 態 の 波 動 関 数 を φ 0 (r) で 表 し , j 番 目 の 励 起 状 態 の 波 動 関 数 を
φ j(r) で 表 す . 無 摂 動 系 の ハ ミ ル ト ニ ア ン を H 0 と す る と ,
H 0φ 0 (r)= ηω 0φ 0 (r)
(4.22)
H 0φ j(r)= ηω jφ j(r)
光 の 電 界 を E (t) = E 0 (exp(− iωt) + cc.) と 表 す . こ の 電 界 を 受 け た と き の 摂 動 の ハ
ミ ル ト ニ ア ン は H ′ = er⋅ E (t) で 与 え ら れ る . 摂 動 を 受 け た 系 の ハ ミ ル ト ニ ア ン
H = H 0 + H ′ の (時 間 を 含 む )固 有 関 数 を ψ j(r,t)と 表 す と , シ ュ レ ー デ ィ ン ガ ー 方
程式は,
iη
∂
ψ (r,t) = H ψ (r,t) ≡ [H 0 + H ′]ψ (r,t)
∂t
(4.23)
と 書 く こ と が で き る . こ の 固 有 関 数 は , 次 式 の よ う に 無 摂 動 系 の (時 間 を 含 ま な
い )固 有 関 数 の セ ッ ト で 展 開 す る こ と が で き る .
ψ (r,t) = φ 0 (r)exp(
−iω 0t)+ ∑ cj(t)φ j(r)exp(
−iω jt)
(4.24)
j
こ の 式 を 式 (4.23)に 代 入 し , 無 摂 動 系 の 波 動 関 数 に つ い て 成 立 す る 式 (4.22)を 代
入すると,
(
)
dcj'(t)
φ j'(r)exp− iω j't = H ′φ0 (r)exp(
−iω 0t)+ ∑ cj'(t)exp(
−iω j't)H ′φ j'(r)
j' dt
j'
iη∑
左 か ら φ * j (r)を か け て , r に つ い て 積 分 す る と
iη
dcj(t)
dt
{
}
{
}
= jH ′ 0 expiω j0 t ≡ e jr 0 ⋅ E (t)expiω j0t
(4.25)
と な る . こ こ で e ir 0 = e∫ drφ *j (r)rφ0 (r)は , 基 底 状 態 か ら 励 起 状 態 へ の 電 気 双
極 子 遷 移 の 遷 移 行 列 , ω j0 = ω j − ω 0 は 励 起 に 要 す る エ ネ ル ギ ー で あ る . ま た ,
導 出 に あ た っ て は , 励 起 状 態 間 の 遷 移 行 列 e ir j は 無 視 し た . 式 (4.25)を 積 分 す
る こ と に よ り 式 (4.24)の 展 開 係 数 c j ( t )が 求 め ら れ る .
ここで x 成分の電界についての展開係数を求めると
{
}
cxj(t)= (iη)−1 ∫0 e j x 0 E 0x [exp(
iω t)+ cc.]expiω j0 tdt
t
(
(
)
(
)
1 − expi(ω + ω j0 )t 1 − expi(−ω + ω j00 )t 
= eEx0 j x 0 
+

η ω + ω j0
η − ω + ω j0


)
(
)
(4.26)
と な る . こ の 係 数 は , 摂 動 を 受 け て , 励 起 状 態 の 波 動 関 数 φi(r)が 基 底 状 態 の 波
動 関 数 φ0 (r)に 混 じ り 込 ん で く る 度 合 い を 表 し て い る .
4.3.2
(1)
誘電率の導出
対角成分
式 (4.26)で 求 め ら れ た 展 開 係 数 を 式 (4.24)に 代 入 し て , 固 有 関 数 を 求 め , そ れ
を使って電気分極 P の期待値を計算すると,入射光の角周波数と同じ成分のみ
について,
Px = Nqx(t) = Nq∫Ψ * xΨdx
[
(
)
(
) ]
= Nq∑ 0 x 0 + j x 0 cxj(t)expiω j0t + 0 x j cxj*(t)exp− iω j0t + ⋅ ⋅
j
= Nq

2


∑
j
jx 0
η
2
(4.27)


1
1 
E (t)
⋅
+
 ω j − ω ω j0 + ω  x

 0
が得られる.ここで入射光と異なる周波数の分極は無視した.また期待値を求め
る に あ た り , 準 位 占 有 の 分 布 関 数 を 考 慮 し て い な い . Px (ω )= χ xx(ω )ε 0 で あ る か
ら , 電 気 感 受 率 テ ン ソ ル の 対 角 成 分 χ xx(ω )は 次 式 の よ う に 得 ら れ る .
χ xx(ω ) =
Nq 2
∑ jx 0
ηε 0 j
2
1
1 
+


 ω j0 − ω ω j0 + ω 
(4.28)
上 式 は 実 数 の 応 答 を 表 し て い る . 虚 数 部 は 式 (4.28)よ り ク ラ マ ー ス -ク ロ ー ニ ヒ
の関係式を用いて,
′ (ω ) = iπ
χ ′xx
Nq 2
∑ jx 0
ηε 0 j
2
[δ (ω j0 − ω ) + δ (ω j0 + ω )]
(4.29)
と表されるので,
χ xx(ω )=
Nq 2
∑ jx 0
ηε 0 j
2 

1
1

+
ω j0 + ω
 ω j0 − ω
(
) (

 + iπ δ ω j0 − ω + δ ω j0 + ω

)
[(
) (

)]

(4.30)
と書ける.ここで,
1
1
= P ( )+ iπδ (x)
x
γ →0 x + iγ
lim
の関係を用い,γを有限値にとどめると,
χ xx(ω )=

2
Nq 2
1
1
+

∑ m jx 0 
m ε0 j
η ω j0 + ω + iγ 
 η ω j0 − ω − iγ
(
) (
Ne2
1
=
∑ fxj 2
m ε0 j
ω j0 − (ω + iγ )2
)
(4.31)
こ こ に , f xj は 基 底 状 態 |0>か ら 励 起 状 態 | j >へ の 電 気 双 極 子 遷 移 の 振 動 子 強 度 で
fxj = 2 m ω j0 j x 0
2
η
(4.32)
で 表 さ れ る . こ の 式 は , 古 典 的 運 動 方 程 式 か ら 得 ら れ た 電 気 感 受 率 の 式 (4.9)に
お い て ,B→0 と 置 い た 式 と 形 式 的 に 一致 し て い る . し か し ,そ の 物 理 的 意 味 は
古典的な式の意味とは異なり,電子状態間の光学遷移が関与していることが本質
的である.誘電率に書き換えると,
(
)
ω 2jo − ω 2 + γ 2 + 2iγω
Ne2
ε xx(ω )= 1 +
∑ fxj
2
mε0 j
ω 2j0 − ω 2 + γ 2 + 4γ 2ω 2
(
(2)
)
(4.33)
誘電率の非対角成分の導出
電 気 感 受 率 の 非 対 角 成 分 は , y 方 向 の 電 界 が E y ( t )が 印 加 さ れ た と き の , 分 極
P の x 成分の期待値を求めることにより得られる.
Px = Nqx(t) = Nq∫Ψ * xΨdx
( )
[
= Nq∑ [ jx 0 cxj(t)exp(iω j0t)+ cc.]
) ]
(
= Nq∑ 0 x 0 + jx 0 cxj(t)expiω j0t + 0 x j cxj*(t)exp− iω j0t + ⋅ ⋅
j
j
iωt)
−iωt) E y0 exp(
1  E *y0 exp(
= Nq2 ∑ jx 0 0 y j 
+
ω j −ω
ω j0 + ω 
η
j
0


(4.34)
こ れ よ り , 電 界 の exp(− i ω t )の 成 分 に つ い て 感 受 率 を 求 め る と ,
χ xy(ω )= Nq 2 ∑
j
0 x j jy 0
(
η ω j0 − ω
)
お よ び χ xy * (−ω )= Nq 2 ∑
j
0 y j jx 0
(
η ω j0 + ω
)
が得られる.
Onsager の 関 係 式 χ yx(ω )= χ yx * (−ω )か ら ,
χ xy(ω )=
χ xy(ω )+ χ xy * (−ω ) Nq 2  0 x j j y 0
0 y j jx 0
=
+
∑ 
η ω j0 + ω
2
2 j  η ω j0 − ω
(
)
(
)




こ こ で x± = (x ± iy)/ 2 と い う 置 き 換 え を す る と , 若 干 の 近 似 の も と で
2
0 x+ j − 0 x− j
Nq 2
χ xy(ω )=
∑ ω j0
2i j
ω 2j0 − ω 2
2
(4.35)
が 得 ら れ る . こ こ で qx ± は 右 ま わ り (+ )お よ び 左 回 り (− )の 円 偏 光 に 対 応 す る 電
2
気 双 極 子 の 演 算 子 で あ る . ま た , 0 x± j は 右 お よ び 左 円 偏 光 に よ り 基 底 状 態 |0>
か ら , 励 起 状 態 | j >に 遷 移 す る 確 率 で あ る . さ ら に , 円 偏 光 に つ い て の 振 動 子 強
度を
±
=
fjo
m ω j0 0 x± j
2
η
(4.36)
により定義し,有限の遷移幅を考えることにより電気感受率テンソルの非対角成
分 χ xy は
fj+0 − fj−0
Nq 2
χ xy(ω )= −i
∑
2m ε 0 j ω 2j0 − (ω + iγ )2
となる.誘電率に書き換えると,
(4.37)
fj+0 − fj−0
Nq 2
ε xy(ω )= −i
∑
2m ε 0 j ω 2j0 − (ω + iγ )2
4.3.3
(4.38)
久保公式からの誘電率の分散式の導出
以上紹介したやり方で求めた式はやや厳密性を欠く.非対角成分の厳密な表式
は,久保公式を使って導かれる.久保公式は,分極率を電流密度の自己相関関数
のフーリエ変換で与えられる.詳細は,付録に譲り,結果だけを書いておくと,
2ω mn m x n
Nq 2 (ω + iγ )
χ xx(ω ) = lim
∑ (ρ n − ρ m ) 2
ηωε 0
ω mn − (ω + iγ )2
γ →0
n< m
2
( fx )mn
Nq 2
= lim
∑ (ρ n − ρ m ) 2
ω mn − (ω + iγ )2
γ → 0 m ε 0 n< m
2
2
2 
ω mn
 m x+ n − m x− n 
2
− Nq


χ xy(ω ) = lim
∑ (ρ n − ρ m )
2
2
2
ωε
η
γ →0
ω mn − (ω + iγ )
0 n< m
(
)
+
−
fmn
ω
− fmn
Nq 2
)∑ (ρ n − ρ m ) mn
= lim(−i
2
2m ε 0 j
ω ω mn
− (ω + iγ )2
γ →0
(
(4.39)
)
で 表 さ れ る . こ こ に ρ n は 状 態 | n >の 占 有 確 率 で ,
ρn =
exp(
exp(
−ηω n /kT)
−ηω n /kT)
=
Trexp(
− H 0 /kT) ∑ exp(
−ηω n /kT)
n
で与えられる.
比誘電率の対角,非対角成分を書き下すと,
ε xx(ω ) = 1−
( fx )mn
Nq 2
∑ (ρ n − ρ m )
m ε0 n
(ω + iγ )2 − ω n20
ω mn ∆ fmn
Nq 2
ε xy(ω ) = i
∑ (ρ n − ρ m )
2
2m ε 0 n
ω (ω + iγ )2 − ω mn
{
(4.40)
}
+
−
と な る . こ こ に ∆ fmn = fmn
で あ る . T =0 の と き , ρ n = 1, ρ m = 0 と す る と
− fmn
第 1 式 は 式 (4.33)に 対 応 し , 第 2 式 は 式 (4.38)に 相 当 す る 表 式 と な る .
こうして光学現象をもたらす誘電率テンソルの対角および非対角成分が量子力
学 的 に 導 か れ た . 量 子 力 学 に 基 づ い て 電 子 状 態 の 固 有 状 態 ψ n, ψ m と 固 有 値 ω
mn
を 求 め , こ れ よ り 振 動 子 強 度 f mn を 計 算 す る と 誘 電 率 ε を 理 論 的 に 求 め るこ と
ができる.電子系の固有状態がバンドを作っているときは,遷移エネルギーや遷
移行列は波数 k 依存性をもち,k についての積分を計算する必要がある.
4.3.4
誘電率の分散式の物理的解釈
誘 電 率 が 式 (4.31)の よ う に , 電 子 状 態 間 の 光 学 遷 移 を 用 い て 表 さ れ る こ と の 物
理的な意味を考えてみよう.誘電率は物質の分極のしやすさを表す量である.さ
きに述べたように,分極というのは電磁波の電界による摂動を受けて電荷の分布
が 無 摂 動 の と き の 分 布 か ら ず れ る 様 子 を 表 し て い る . こ れ を 図 4.4 に 示 す . い か
なる関数も正規直交関数系でフーリエ級数展開できることはよく知られている.
したがって,電界の摂動を受けて変化した新たな電子波動関数は,無摂動系の固
有 関 数 (基 底 状 態 お よ び 励 起 状 態 は 正 規 直 交 完 全 系 で あ る こ と は い う ま で も な い )
を使ってフーリエ級数展開できる.ここで,どのような励起状態をどの程度混ぜ
(
る か を 表 し て い る の が 振 動 子 強 度 f と エ ネ ル ギ ー 分 母 ω − ω j0
)−1 で あ る と 解 釈 で
きる.
このように考えると実際に遷移の起きる共鳴周波数より低い周波数の光に対し
ても,分極が生じその結果として比誘電率が 1 ではない値をとる理由が理解で
きる.すなわち,励起周波数より低い周波数の光の摂動によって,励起状態の波
動関数が部分的に基底状態に取り込まれて,電子の空間分布が変化し分極が起き
る と 解 釈 さ れ る の で あ る . こ の プ ロ セ ス は , 仮 想 的 (virtual)で あ っ て , エ ネ ル ギ
ー の 消 費 を 伴 わ な い . 式 (4.31)か ら , 誘 電 率 の 対 角 成 分 の 実 数 部 は 分 散 型 , 虚 数
部は吸収型のスペクトルを示すことがわかる.
非 対 角 成 分 に つ い て の 式 (4.38)の 第 2 式 を み る と , 全 体 に i が か か っ て い る の
で対角成分とは逆に実数部が吸収型,虚数部が分散型になっている.このことは
第 3 章 に 書 い た よ う に , N 2 の 固 有 値 が N 2 = ε xx ± i ε x y と な り , 非 対 角 成 分 に i
がかかっていることに対応している.
誘電率に非対角成分が現れ,これによって左右円偏光に対する光学応答の違い
(光 学 活 性 )が 生 じ る た め に は , (a)φ 0 → φ j 遷 移 (振 動 数 ω j 0 )に お い て , 右 円 偏 光
に 対 す る 振 動 子 強 度 f+ j と 左 円 偏 光 に 対 す る 振 動 子 強 度 f− j と が 異 な る , ま た は ,
(b)右 円 偏 光 に よ る 遷 移 の 中 心 周 波 数 ω + と 左 円 偏 光 に よ る 遷 移 の 中 心 周 波 数 ω −
が異なる,のいずれかの機構が寄与していればよいことがわかる.
量子力学の教えるところによれば,右回り,あるいは,左回りの円偏光による
電 気 双 極 子 遷 移 が 起 き る た め に は , 軌 道 角 運 動 量 量 子 数 L の 量 子 化 軸 成 分 (今 の
場 合 , 光 の 進 行 方 向 の 成 分 )LZ が 基 底 状 態 と 励 起 状 態 と で 1 だ け 異 な っ て い な け
ればならない.一方,固体中に置かれた遷移元素の d 電子の基底状態は軌道の
角運動量をもたないことが知られているので,基底状態の軌道角運動量 L は 0
と 見 な す こ と が で き る .L=0 と い う の は , あ た か も , s 電 子 の よ う に 球 対 称 で
あると考えておいてよい.これに対して,励起状態の L はさまざまの値をとり
得 る . い ま , 磁 化 の 向 き が z 方 向 に あ る と す る と , 基 底 状 態 の LZ は 0 な の で 円
偏 光 で 許 容 遷 移 が 起 き る た め に は , 図 4.5 の 電 子 準 位 図 に 示 す よ う に 励 起 状 態 の
L Z は ±1 で な け れ ば な ら な い .
L Z = ±1 と い う 状 態 は p 電 子 的 な 角 度 分 布 を も つ 状 態 と 考 え れ ば よ い . い ま ,
L Z = + 1 な る 固 有 値 に 対 応 す る p 電 子 状 態 は , p + = p x + ip y で あ り , L Z = − 1 を
固 有 値 に も つ の は p − = p x − ip y で あ る が , こ れ ら の 状 態 は そ れ ぞ れ 電 子 が z 軸
を中心に右回り,および左回りに回転している状態と考えられる.したがって,
円偏光によって電子の回転運動を励起しているのであると理解してよい.式
(4.38)は , 円 偏 光 に よ っ て , 角 運 動 量 を も っ た 回 転 す る 電 子 状 態 が 基 底 状 態 に 部
分的に混じってくることによって,誘電率の非対角項が現れることを示している.
こ れ ま で の 議 論 で は , 磁 性 体 の 磁 化 の 効 果 は explicit に は 現 れ て い な い . 以
下 で は , こ の こ と を 図 4.6 に 基 づ い て 考 察 す る . 図 4.6(a)に 示 す よ う に , 磁 界
(ま た は 磁 化 )の な い と き , L Z = + 1 と L Z = − 1 の 状 態 は 縮 退 し て い る . 磁 界 が 存
在 す る と , 図 4.6(b)に 示 す よ う に ゼ ー マ ン 効 果 (ま た は 交 換 分 裂 )に よ っ て ↑ ス ピ
ンの状態のエネルギーと↓スピンの状態のエネルギーとの間に分裂が起きるが,
それだけでは,軌道状態の縮退は解けない.p 電子を例にとると,スピンの異な
る p↑ 状 態 と p↓ 状 態 と の エ ネ ル ギ ー 分 裂 は 起 き る が , 磁 気 光 学 効 果 に 必 要 な 右
回 り の 回 転 運 動 を す る 軌 道 (p + )と 左 回 り の 回 転 運 動 を す る 軌 道 (p − )と の エ ネ ル ギ
ー 分 裂 は 起 き な い . こ こ で ス ピ ン 軌 道 相 互 作 用 が 存 在 す る と , 図 4.6(c)の よ う に
ス ピ ン の 向 き と 軌 道 角 運 動 量 と が 結 び つ き , 全 角 運 動 量 J (= L + S )が 状 態 を 表 す
よ い 量 子 数 と な る . p 電 子 に つ い て い え ば , J =3/2 に 対 応 す る の が p + ↑ 軌 道 ,
お よ び , p − ↓ 軌 道 で あ り , J = 1/2 に 対 応 す る の が p − ↑ 軌 道 お よ び p + ↓ 軌 道 で あ
る.
も し 基 底 状 態 の 分 裂 が 熱 エ ネ ル ギ ー kT に 比 べ 十 分 に 大 き け れ ば , 基 底 状 態 は
↑ ス ピ ン 電 子 だ け と な る の で , 右 円 偏 光 に よ る J z = + 1/2→ J z = + 3/2 の 遷 移 と
左 円 偏 光 に よ る J z = + 1/2→ J z = − 1/2 の 遷 移 の み が 現 れ , そ の 遷 移 エ ネ ル ギ ー
の違いから磁気光学効果が起きる.↓スピンからの遷移は↑スピンからの遷移と
は 逆 の ス ペ ク ト ル 応 答 が 期 待 さ れ る . こ の た め 基 底 状 態 の ↑ ス ピ ン 状 態 の 数 n↑
と , ↓ ス ピ ン 状 態 の 数 n↓ の 分 布 を 考 慮 せ ね ば な ら な い . も し , 基 底 状 態 に お い
て n↑ と n↓ が 同 数 で あ れ ば , 遷 移 が 起 き て も 軌 道 状 態 の 変 化 は 打 ち 消 し て し ま
う.
上 の よ う な 理 由 で , 磁 気 光 学 効 果 を 表 す ε xy の 表 式 に は , ス ピ ン 偏 極 率 <σ >=
( n ↑ − n ↓ )/( n ↑ + n ↓ ) が か か っ て く る . 常 磁 性 体 で は , < σ > は ブ リ ユ ア ン 関 数
B J ( B / T )で 表 さ れ る . B / T の 十 分 に 小 さ い と き , こ の 関 数 は B / T に 比 例 す る が ,
極低温または強磁界の極限では一定の値に収束する.一方,強磁性体では交換相
互作用によって,一方のスピン状態の数が多数となっているので,磁化がある限
り 基 底 状 態 の ↑ ス ピ ン と ↓ ス ピ ン の 数 に 差 が あ り n,Lz = 0,↑ ⇒ m ,Lz = +1,↑ お よ
び n, Lz = 0,↑ ⇒ m ,Lz = −1,↑ の 遷 移 が 優 勢 と な る .
遷移エネルギーの分裂の大きさは,ゼーマン効果によるものではなく,励起状
態 の J z = + 3/2 と − 1/2 の エ ネ ル ギ ー 差 を 与 え る ス ピ ン 軌 道 相 互 作 用 に よ る も の
なので,磁化または外部磁界に依存しない.有限温度では基底状態のスピンは↑
のみならず↓も混じってくるので,温度上昇とともに磁気光学効果は減少する.
温 度 変 化 の 様 子 は , M s(T)/ M s(0)の 曲 線 で 記 述 で き る .
注 : こ の 節 で 導 い た も の と 若 干 異 な る ε の 表 式 が Shen 4) , Benett 5) , Kahn 6)
ら に よ っ て 導 出 さ れ て い る . 電 流 密 度 -電 流 密 度 の 相 関 の 形 (久 保 公 式 )か ら の 誘
導は,上村によってなされ
3,7)
, 結 果 が 磁 性 体 ハ ン ド ブ ッ ク 19 章 に 示 さ れ て い
る . 本 書 は 基 本 的 に は こ れ に 従 っ て い る . Wang, Callaway 8) ら も 久 保 公 式 か ら
出発して本書と同様の式を導いている.
4.3.5
バンド電子系の磁気光学効果
金属磁性体や磁性半導体の光学現象は,絶縁性の磁性体と異なってバンド間遷
移という概念で理解せねばならない.なぜなら,d 電子はもはや原子の状態と同
様の局在準位ではなく,空間的に広がって,バンド状態になっているからである.
このような場合には,バンド計算によってバンド状態の固有値と固有関数とを求
め , 久 保 公 式 に 基 づ い て 分 散 式 を 計 算 す る こ と に な る . 式 (4.38)で は , 各 原 子 の
応答は等しいものとして単位体積あたりの原子の数 N をかけたが,金属の場合
は , k -空 間 の 各 点 に お い て バ ン ド 計 算 か ら 遷 移 エ ネ ル ギ ー と 遷 移 行 列 を 求 め , す
べての k についての和をとる必要がある.電子状態がバンドで記述できる系に
つ い て 久 保 公 式 に 基 づ い て 誘 電 率 テ ン ソ ル の 成 分 を 求 め る 式 は Wang ,
Callaway に よ り 導 出 さ れ た . 彼 ら は ,
π = p+
π
4mc 2
σ × ∇V (r)
(4.41)
で定義される運動量演算子πを用いる.ここに第 1 項は運動量の演算子,第 2
項はスピン軌道相互作用の寄与であるが,通常は無視して差し支えない.
σ αβ =
iNq2  1 
2iq2
 − 2

ω + iγ  m *  αβ m η
(
)
(
)
occunoccu ω + iγ

1
× ∑ ∑ 
Re lπ α n n π β l + iIm lπ α n n π β l 
2
2
l,k n,k  ω nl
 ω nl − (ω + iγ )
α ,β = (x,y)
(4.42)
(単 位 は s − 1 )こ こ に , 遷 移 行 列 要 素 lπ α n な ど は ブ ロ ッ ホ 関 数 の 格 子 周 期 成 分
u ( k , r )を 用 い て ,
lπ α n =
(2π )3
η

α
∫ ul *(k,r) p +
Ω

4mc
2
(σ × ∇V (r))α un (k,r)d 3r

と い う 式 で 表 さ れ る . 式 (4.42)の 第 1 項 は , 有 効 質 量 の 異 方 性 に よ る も の で 以 後
無視する.
対角成分の実数部は,散乱寿命を無限大とすると,
σ ′xx = Re(σ xx)=
πq2
x
∑ ∑ lπ n δ (ω − ω ln,k )
occunocc
m η l,k
2
2
(4.43)
n.k
一方,非対角成分の虚数部は,
′ (ω )= Im(σ xy)=
σ ′xy
=
2q2
occunoccIm(lπ x
∑ ∑
ηm 2 l,k
πq2
n,k
n nπ y l)
2
ω nl
− (ω + iγ )2
∑ ∑ Im(lπ x n n π y l )δ (ω − ω nl,k )
(4.44)
occunocc
m 2ηω
l,k n,k
式 (4.44)に お い て , π ± = π x ± iπ y と 置 き 換 え る と ,
′ (ω )= Im(σ xy)= −
σ ′xy
πq2
2m 2ηω
∑ ∑  lπ + n − lπ − n δ (ω − ω nl,k )
occunocc
l,k n,k

2
2

(4.45)
′ = σ ′xy
′ ↑ +σ ′xy
′ ↓ となり,↑スピンに
と 書 け る . ま た , ス ピ ン 偏 極 を 考 慮 す る と σ ′xy
対する伝導率と↓スピンに対する伝導率の和を計算すべきということになる.
σ xy を 評 価 す る に は , ス ピ ン 軌 道 相 互 作 用 を 含 め て , ス ピ ン 偏 極 バ ン ド を 計 算
し , ブ リ ル ア ン 域 の 各 k に お け る ω nm , お よ び , π + と π − を 計 算 し て , 式
(4.45)に 従 っ て 全 て の k に つ い て 和 を と れ ば よ い . 実 際 , そ の よ う な 手 続 き は
Wang と Callaway に よ っ て Fe,Ni に つ い て お こ な わ れ た
7, 9)
.最近,バンド計
算技術が発展し,多くの物質で第 1 原理計算に基づく磁気光学スペクトルの計
算がなされ,実験ときわめてよい一致を示すことが明らかになった.これについ
ては,第 6 章で改めて紹介する.
4.3 節 の ま と め
量子力学によって誘電率を評価すると
ε xx(ω ) = 1−
( fx )mn
Nq 2
∑ (ρ n − ρ m )
mε0 n
(ω + iγ )2 − ω n20
(
)
f+ − f−
ω
Nq 2
ε xy(ω ) = i
∑ (ρ n − ρ m ) mn n 2 n 2
2m ε 0 n
ω (ω + iγ ) − ω mn
(
)
と 表 さ れ る . こ こ に , f は 状 態 n と m の 間 の 遷 移 の 振 動 子 強 度 で あ る . fx は 直
線 偏 光 に 対 す る も の , f± は 左 右 円 偏 光 に 対 す る も の , ρn は 状 態 n の 分 布 関 数 で
ある.
誘電率は,光の電界の摂動を受けて基底状態の電子の波動関数に励起状態の波
動関数が混じることにより,電子の空間的分布が変化する様子を記述する.励起
状態の混じり方を表すのが遷移行列とエネルギー分母である.
注 : こ の 節 で 導 い た も の と 若 干 異 な る ε の 表 式 が Shen 4) , Benett 5) , Kahn 6)
ら に よ っ て 導 出 さ れ て い る . 電 流 密 度 -電 流 密 度 の 相 関 の 形 (久 保 公 式 )か ら の 誘
導は,上村によってなされ
3,7)
, 結 果 が 磁 性 体 ハ ン ド ブ ッ ク 19 章 に 示 さ れ て い
る . 本 書 は 基 本 的 に は こ れ に 従 っ て い る . Wang, Callaway 8) ら も 久 保 公 式 か ら
出発して本書と同様の式を導いている.
4.4
磁 気 光 学 ス ペ ク ト ル の 形 (1)− 絶 縁 性 磁 性 体 の 場 合 −
前節ではミクロスコピックな描像に基づいて磁気光学効果の原因となる誘電率
テンソルの非対角成分の分散式を導いた.この節では鉄ガーネットなどに代表さ
れる絶縁性の磁性体でみられる局在した光学遷移について,磁気光学スペクトル
の形状を説明する.
磁 気 光 学 効 果 ス ペ ク ト ル は 式 (4.38)を き ち ん と 計 算 す れ ば , 説 明 で き る は ず の
も の で あ る が ,遷 移 の 性 質 に よ り , 典 型 的 な 2 つ の 場 合 に わ け て 調 べ ら れ て い る .
励起状態がスピン軌道相互作用で分かれた 2 つの電子準位からなる場合は,伝
統的に反磁性項とよばれる.一方,励起電子準位が 1 つで,基底状態との間の
左右円偏光による光学遷移確率異なる場合は,伝統的に常磁性項とよばれる
1)
5)
.
反 磁 性 項 (二 遷 移 型 ス ペ ク ト ル )
図 4.9(a)の よ う な 電 子 構 造 を 考 え る . 励 起 状 態 は ス ピ ン 軌 道 相 互 作 用 に よ っ て
2 つの準位に分裂しているとする.このときの誘電率の非対角成分は,絶対 0 度
では,
ε ′xy =
Ne2 f0∆ so
ω0 −ω
⋅
2m ε 0ωτ (ω − ω )2 + γ 2
0
(
′ =−
ε ′xy
)
2
(4.46)
Ne2 f0∆ so (ω 0 − ω )2 − γ 2
⋅
2
4m ε 0ω
(ω 0 − ω )2 + γ 2
{
}
で 表 さ れ る . こ こ に f 0 は 振 動 子 強 度 で あ る . こ れ を 図 示 す る と , 図 4.9(b)の よ
う に な る . す な わ ち , ε xy の 実 数 部 は 分 散 型 , 虚 数 部 は 両 側 に 翼 の あ る ベ ル 型 を
示す.この形状を歴史的な理由で反磁性項という.
大きな磁気光学効果を示す物質では,ほとんど,ここに述べた反磁性型スペク
ト ル と な っ て い る . ω = ω 0 に お い て ε xy ”の ピ ー ク 値 は
′ =
ε ′xy
Ne2 f0 ∆ SO
⋅
m ε 0 ω 0 /τ 2
(4.47)
で与えられる.この式から大きな磁気光学効果をもつ物質を探索するための指針
と し て , 振 動 子 強 度 f 0 が 大 き い こ と , 励 起 状 態 の ス ピ ン 軌 道 分 裂 Δ SO が 大 き い
こと,遷移の周波数ω0 が観測している光の周波数ωに近いことの 3 つが重要で
あ る こ と が わ か る . 式 (4.47)を 使 っ て , Fe の 場 合 に 誘 電 率 の 非 対 角 成 分 を 計 算
し て み よ う . N = 10 28 m − 3 , f 0 = 1, η∆so = 0.05eV , ηω 0 = 2eV , η /τ = 0.1eV と い う
きわめて常識的な数値を代入することにより比誘電率の対角成分のピーク値とし
て 約 3.5 と い う 数 値 が 得 ら れ る . 古 典 論 で は 3000T と い う 大 き な 磁 界 が 必 要 で
あったのと対照的であることが理解されよう.
2)
常 磁 性 項 (一 遷 移 型 ス ペ ク ト ル )
図 4.10(a)に 示 す よ う に , 基 底 状 態 に も 励 起 状 態 に も 分 裂 は な い が , 両 状 態 間
の 遷 移 の 振 動 子 強 度 f + と f − と に 差 Δ f が あ る 場 合 を 考 え る . こ の と き ε xy は
′ =
ε xy
ω0
Ne2∆f
⋅
m ε 0τ ω 2 − ω 2 + γ 2
0
(
)
2
+ 4ω 2γ 2
(4.48)
′ =
ε ′xy
(
)
ω 0 ω 02 − ω 2 + γ 2
− Ne2∆f
⋅
2
2m ε 0
ω  ω 02 − ω 2 + γ 2 + 4ω 2γ 2 


(
)
こ の ス ペ ク ト ル を 図 4.10(b)に 示 す . こ の 場 合 は 実 数 部 が (翼 の な い )ベ ル 型 ,
虚数部が分散型を示す.
3)
低温で常磁性項,高温で反磁性項
も し , 図 4.11 の よ う に 基 底 状 態 に ス ピ ン 軌 道 分 裂 が あ れ ば (希 土 類 イ オ ン の よ
うに固体中でも軌道角運動量が消滅していない場合にはこのようなことが起こり
得 る ), 低 温 で は 2 の 準 位 は 占 有 さ れ て い な い の で , 図 4.11(a)の よ う に 実 数 部 が
ベ ル 型 を し た ス ペ ク ト ル を 示 す が , kT が Δ の 程 度 に な る と 1 と 2 の 準 位 が 同 じ
よ う に 占 有 さ れ , 図 4.11(b)の よ う に 反 磁 性 項 に 類 似 の ス ペ ク ト ル , つ ま り , 実
数部が分散型の形状となる.
温度変化の実験をしてスペクトルの形状の変化がみられれば,このタイプであ
ると判断できる.
4)
一般の場合
実際の場合には,電子準位はこのように単純ではなく,いくつもの準位からな
っ て お り , 選 択 則 も も っ と 複 雑 な も の と な る . そ の よ う な 場 合 は , 式 (4.40)に た
ちかえって,1 つ 1 つの遷移確率を計算して振動子強度を求めなければならない.
実例は,第 6 章に示す.
4.4 節 の ま と め
絶縁性磁性体の光学遷移は局在電子系の取り扱いがよい近似となる.
局在系の遷移には
配位子場遷移,電荷移動遷移,軌道推進遷移の 3 種がある.
このような系での磁気光学スペクトルの形状は次のように表せる.
タ イ プ I: ε ' xy 分 散 型 , ε " xy 翼 の あ る ベ ル 型 ; 電 荷 移 動 遷 移 な ど
ε ′xy =
Ne2 f0∆ so
ω0 −ω
⋅
2m ε 0ωτ (ω − ω )2 + γ 2
0
′ =−
ε ′xy
(
)
2
Ne2 f0∆ so (ω 0 − ω )2 − γ 2
⋅
2
4m ε 0ω
(ω 0 − ω )2 + γ 2
{
}
タ イ プ II: ε ' xy ベ ル 型 , ε " xy 分 散 型 : ス ピ ン 禁 止 配 位 子 場 遷 移 な ど
ε ′xy =
′ =
ε ′xy
4.5
ω0
Ne2∆f
⋅
m ε 0τ ω 2 − ω 2 + γ 2
0
(
(
)
2
+ 4ω 2γ 2
)
ω 0 ω 02 − ω 2 + γ 2
− Ne2∆f
⋅
2m ε 0 ω  ω 2 − ω 2 + γ 2 2 + 4ω 2γ 2 
 0



(
)
磁 気 光 学 ス ペ ク ト ル の 形 (2)− 金 属 磁 性 体 の 場 合 −
4.3.5 項 に 述 べ た よ う に , 金 属 の 磁 気 光 学 効 果 を も た ら す σ " xy を 評 価 す る に は ,
スピン軌道相互作用を含めて,スピン偏極バンドを求め,ブリルアン域の各 k
に お け る ω nm , お よ び , π + と π − を 計 算 し て , 式 (4.45)を 用 い て 計 算 し な け れ ば
ならない.しかし,スピン軌道相互作用を考慮したスピン偏極バンド計算結果が
どのような物質においても得られているわけではない.ここでは,厳密さには目
をつぶって,バンド系の磁気光学スペクトルをもう少し見通しのよい描像で眺め
て み た い . (以 下 の 手 続 き は Erskine に 従 う
9)
.)
式 (4.45)を 積 分 形 に な お す と 次 式 を 得 る .
′ (ω ) =
ωσ ′xy
πq 2
2m
⋅
2
1
8π 3
3
∫ Fnl(ω )δ (ω − ω ln )d k
(4.49)
ここに,
F nl (ω )= |< n ↑ |π − |↑ l >| 2 − |< n ↑ |π + |↑ l >| 2 + |<n↑ |π − |↑ l >| 2 − |< n ↑ |π + |↑
l >| 2
(4.50)
である.ωσの形にしたのは表式をみやすくするためである.もし,遷移確率の
(
)
平 均 値 Fnlを ∫ Fln(ω )δ ω − ω nl d3k = Fnl∫ δ (ω − ω ln )d3k に よ っ て 定 義 し , さ ら に Fnlが 大 き
な ω 依 存 性 を も た な い と 仮 定 し , 一 定 値 F nl と お く な ら , 式 (4.49)は 簡 単 に な っ
て,
′ (ω ) =
ωσ ′xy
πq 2
2m 2η
FnlJnl(ω )
と な る . こ こ に , J nl (ω )は 結 合 状 態 密 度 と い っ て , Jnl(ω ) =
(4.51)
1
8π
3
3
∫ δ (ω ln − ω )d k と 表
され,占有状態と非占有状態の状態密度のたたみこみを示している.
こ こ で , 左 右 円 偏 光 に 対 す る 振 動 子 強 度
±
(ω ) を
Fnl
±
(ω ) = n ↑ π ± ↑ l
Fnl
2
±
±
(ω ) を Fnl± Jnl
(ω ) =
Jnl
1
+
′ (ω ) =
ωσ ′xy
+ n↓ π ± ↓ l
8π 3
πq 2
2m 2η
2
と定義し,左右円偏光に対する結合状態密度
3
±
∫ Fnl(ω )δ (ω − ω ln )d k で 定 義 す れ ば ,
(F
+
( )− Fnl+ Jnl
(ω ))
− −
nlJnl ω
(4.52)
を 得 る . こ の よ う に 書 け ば , ω σ " xy が 左 円 偏 光 と 右 円 偏 光 に 対 す る バ ン ド 間 遷
移のスペクトルの差として表されることがわかる.このように書けるためには原
子状態にあった成分がバンド全体に均一に広がっていて,同じ遷移確率がこのバ
ン ド 間 遷 移 全 体 を 通 じ て 適 用 で き る と い う 仮 定 が 必 要 で あ る . Fe や Ni で は 実 際
に こ れ に 近 い 状 況 が 実 現 し て い る こ と が 証 明 さ れ て い る . 式 (4.49)か ら , F nl +
(ω )と F nl − (ω )に 差 が あ る か , J nl + (ω )と J nl − (ω )の 分 布 の 重 心 に 差 が あ れ ば , 磁
気 光 学 効 果 を 生 じ る こ と が 示 さ れ る . 図 4.12(a)に 示 す よ う に 磁 化 が 存 在 し な い
と左円偏光による遷移と右円偏光による遷移は完全に打ち消しあう.この結果,
σ " xy は 0 に な る が 磁 化 が 存 在 す る と 図 4.12(b)の よ う に J − と J + と の 重心のエ ネ
ル ギ ー が Δ E だ け ず れ て , σ " xy (し た が っ て ε xy ' )に 分 散 型 の 構 造 が 生 じ る . σ
" xy の ピ ー ク の 高 さ は σ の 対 角 成 分 の 実 数 部 σ ’ xx (左 右 円 偏 光 に 対 す る 連 結 状 態
密 度 の 和 に 比 例 )が 示 す ピ ー ク 値 の ほ ぼ Δ E/W 倍 と な る . こ こ に , W は 連 結 状 態
密 度 ス ペ ク ト ル の 全 幅 , ΔE は 正 味 の ス ピ ン 偏 極 と 実 効 的 ス ピ ン 軌 道 相 互 作 用 の
積 に 比 例 す る 量 と な っ て い る . た と え ば , S→P 1/2 , P 3/ 2 の 遷 移 を 考 え る と , ΔE
= (2/3)・ Δ so ・( n 1 − n 2 )/( n 1 + n 2 )で 与 え ら れ る . こ こ に , n 1 お よ び n 2 は , そ れ ぞ
れ , 多 数 ス ピ ン と 少 数 ス ピ ン の 電 子 の 数 で あ る . し た が っ て , σ " xy の ス ペ ク ト
ルの分散形の符号からフェルミ面のスピン偏極をみることができる.また,バン
ド構造が変わらない範囲では,磁気光学効果が磁化の大きさに比例することも理
解できる.
4.5 節 の ま と め
金属磁性体の磁気光学効果のスペクトルは,定性的には,左右円偏光に対する
バンド間遷移の結合状態密度の差として表せる.磁化があると,スピン軌道相互
作用のために,左右円偏光に対する状態密度のバンドのずれが起き磁気光学効果
をもたらす.
4.6
遷移金属の自由電子と磁気光学効果
こ の 節 で は 遷 移 金 属 の 伝 導 電 子 に よ る 磁 気 光 学 効 果 の 分 散 式 を , Erskine 13) の
方法に従って量子論的に導いておく.
わ れ わ れ は 4.2 節 で 磁 界 の 中 に 置 か れ た 金 属 の 自 由 電 子 が も た ら す 磁 気 光 学 効
果 に つ い て 古 典 論 的 に 扱 い , 式 (4.17)に 示 す よ う な マ グ ネ ト プ ラ ズ マ 共 鳴 と い う
σ xy の 分 散 式 を 得 た . ま た , こ れ は ホ ー ル 効 果 と 本 質 的 に 同 じ 起 源 を も つ 効 果 で
あることを示した.
強磁性体においては,異常ホール効果とよばれる効果があり,磁界がなくても
ホール起電力が生じる.異常ホール効果は,通常のホール効果を表す式において
B =μ 0 H を単 純 に μ 0 M s に 置 き 換 え た も の と は な っ て い な い . そ れ は こ の 効 果 が
ローレンツ力によって生じているのではなく,電子の散乱にスピン軌道相互作用
が働いていることによるからである.
異常ホール効果の起源は次のように考えることができる.
イ ン パ ル ス 的 な 電 界 E = qE 0 δ ( t )が フ ェ ル ミ 波 数 k 0 を も っ た 伝 導 電 子 に 加った
も の と す る . こ れ に よ っ て 電 子 は バ ン ド 内 で 励 起 さ れ て k = k0+ Δ に な る が , こ
れがもとの値に戻るときには,k とスピンの両方に垂直な方向へ散乱を受ける.
これを式で書くと,
−
dk k s× k
= +
dt τ
τs
(4.53)
のように表される.第 1 項は通常の散乱であるが,第 2 項はスピン軌道相互作
用 に よ っ て 生 じ る 散 乱 で , 斜 め (ス キ ュ ー )散 乱 と よ ば れ る . こ の 散 乱 に よ っ て ,
1 次 電 流 Jx に 垂 直 な 電 流 成 分 Jy が 生 じ る .
s が z 方向を向いているとすると,この緩和現象は次式で表される.
−
dky
=
ky
+
s
kx
τs
τ
dk
k
s
ky
− x = x−
dt τ τ s
dt
これを初期条件
kx (0) = ∆ =
qE0x
+ k0x, ky (0) = k0y
η
のもとに解くと,
(4.54)
kx =
qE0x
 t
cosΩt⋅ exp −  + k0x
η
 τ
qE
 t
ky = − 0x sinΩt⋅ exp −  + k0y
η
 τ
(4.55)
こ こ で , Ω = s /τ s で あ る . 電 流 密 度 は , 電 荷 と 速 度 (運 動 量 /質 量 )の 積 を フ ェ ル
ミ分布のもとで平均したもので,
J = q∫ vf(k)d 3k =
qη
3
∫ k f(k)d k
m*
(4.56)
で 与 え ら れ る . 式 (4.55)の k を 式 (4.56)に 代 入 す る と , フ ェ ル ミ 波 数 k 0 の 成 分 は
消えて
Jy = −
nq2 E 0x
 t
sinΩ t⋅ exp − 
m*
 τ
と な る . し た が っ て , 伝 導 率 テ ン ソ ル の 非 対 角 成 分 は , J y /E 0 x の フ ー リ エ 変 換 を
とって
σ xy(ω ) = ∫
J y (t)
E 0x
exp(iω t)dt=
nq2
Ω
⋅
m * (ω + i/τ )2 − Ω 2
(4.57)
と な る . こ の 式 は , マ グ ネ ト プ ラ ズ マ 共 鳴 に お け る σ xy の 古 典 論 的 分 散 式 (4.17)
に お い て , サ イ ク ロ ト ロ ン 周 波 数 ω c を Ω = s /τ s に 置 き 換 え た 形 に な っ て い る .
も し も , こ こ で ω c = qB / m *= Ω と 置 け ば , B = m *Ω / q と い う 実 効 的 な 磁 界 が 加
っ て い る と 見 な す こ と も で き る . な お , Reim に よ る と 式 (4.57)に は フ ェ ル ミ 面
に お け る ス ピ ン 偏 極 率 σ z = ∆n /n = (n1 − n2 ) /(n1 + n2 ) を 掛 け る べ き で あ る と し て い
る
14)
.
し か し ,こ れ だ け で は , 遷 移 金 属 の 伝 導 電 子 に よ る 磁 気 光 学 効 果 を 説 明 す る に
は 不 十 分 で あ る . Smit に よ る と 波 数 k で 運 動 し て い る 電 子 は ス ピ ン 軌 道 相 互 作
用 に よ る 分 極 P ( k )を 受 け て い る と い う . こ の P ( k )は k × M に 比 例 す る 量 で あ る .
こ れ が 電 界 を 加 え た と き の 分 布 関 数 f(k) の 変 化 を 通 じ て 全 体 と し て P 0 = ∫
P(k )f(k )d 3k だ け の 巨 視 的 分 極 を も っ て い る . こ の 分 極 の 時 間 変 化 に よ る 分 極 電
流を評価すると,M がz軸に平行である場合,
d η P0′
 dP0 
3
 =

∫ (− kx∆n)f(k)d k
*
dt
dt
m
v
y

0
と な る . こ こ に , | P 0 '| は P ( k )の 最 大 値 , v 0 は フ ェ ル ミ 速 度 ηk0 /m * で あ る .
Erskine は , こ の 式 に 式 (4.55)を 代 入 し , (d P 0 /dt)/ E 0 を フ ー リ エ 変 換 す る こ と に
より次式を導いた.
σ xy(ω ) =

P0′ 
nq2
1− ω (ω + i/τ ) 
σz
m*
qv0  (ω + i/τ )2 − Ω 2 
(4.58)
こ こ に , <σ z >は ス ピ ン 偏 極 率 で あ る .
し た が っ て , 伝 導 電 子 に よ る 磁 気 光 学 効 果 の 分 散 式 は , 式 (4.57)と 式 (4.58)の
和の形で次式のように与えられる.
σ xy(ω ) =

P0′  1
nq2
1 
Ω
+
σz 
 2 2+

2
2
ωτ 
m*
qv  ω τ
 (ω + i/τ ) − Ω
(4.59)
こ こ に , 第 1 項 は , Reim に 従 っ て 式 (4.54)に <σ z >を 乗 じ た 形 を 採 用 し た .
こ の 式 の 光 学 周 波 数 に お け る 寄 与 を 考 え よ う . ω τ >>1, Ω <<| P 0 '| / qv 0 と
考えて第 1 項を無視し,第 2 項についてはω→∞の極限をとることにより,
σ xy(ω ) =
P′  1
nq2
i 
σz 0 
+
m*
qv0  (ωτ )2 ωτ 
(4.60)
の 式 が 得 ら れ る . す な わ ち , 実 数 部 は (ω τ ) − 2 , 虚 数 部 は (ω τ ) − 1 の 周 波 数 依 存
性 を 示 す . し た が っ て , σ " xy (ω )を プ ロ ッ ト し て 一 定 値 に な れ ば 伝 導 電 子 の ス ピ
ン 偏 極 の 影 響 が み ら れ る と い う こ と に な る . 図 4.13 は 金 属 Gd に つ い て ω σ xy"
をプロットしたもので点線の下の部分が伝導電子の寄与であり,それより上の構
造がバンド間遷移によるものであるであるとされている.
Reim は 式 (4.55)の 第 1 項 が 場 合 に よ っ て は 大 き な 寄 与 を す る と 主 張 し て い る .
彼はΩがスピン軌道相互作用の大きさの程度であると考えており,希土類化合物
のようにスピン軌道相互作用の大きな物質では第 1 項によってはっきりした分
散型の磁気光学スペクトルが生じることがあると考えている.
4.6 節 の ま と め
伝導電子のスピン偏極とスピン軌道相互作用に基づく散乱によって磁気光学ス
ペ ク ト ル に は , ω σ " xy = 一 定 と い う 寄 与 が 生 じ る .
問題
4.1
式 (4.7)か ら (4.9)式 が 導 か れ る こ と を 確 か め よ .
[ ヒ ン ト ] 式 (4.8)に u = U exp(− i ω t ), E = E o exp(− i ω t )を 代 入 す る と
(− m *ω
2
)
{(
)
}
− im*ωγ + m *ω 02 (xi+ yj+ zk) = q E xi+ E y j+ E zk − iω ( yBi− xBj)
を 得 る . こ れ を 成 分 ご と に 書 い た も の が 式 (4.8)で あ る . こ れ よ り x , y , z を 求
め , P = nqu の 式 に 代 入 し 式 (4.9)を 得 る .
4.2
ロ ー レ ン ツ の 分 散 式 (4.12)に お い て そ の 虚 数 部 が ピ ー ク を 示 す 角 振 動 数 ω p
を求めよ.
[ 略 解 ] 式 (4.13)の 第 2 式 を ω で 微 分 し 0 に な る と き の 値 を 求 め よ . お よ そ の 値
(
を 求 め る に は , 分 母 が 最 小 と な る 場 合 を 探 せ ば よ い . 分 母 ω 2 − ω 02
(
つ の 項 は い ず れ も 正 で あ る か ら , 最 小 値 は ω 2 − ω 02
)
2
)
2
+ ω 2γ 2 の 2
= ω 2γ 2 の と き に 得 ら れ , γ
< < ω 0 な ら ば , ω p = ω 02 + γ 2 /4 + γ /2 ≈ ω 0 + γ /2 で 与 え ら れ る .
4.3
ド ル ー デ の 式 (4.14)に お い て , ω →0 と し た と き の 虚 数 部 か ら 直 流 電 気 伝 導
率σ0 を求めよ.
[ 略 解 ] ε xx = 1 +
iσ xx
よ り , σ xx = −iωε 0 (ε xx − 1) と な る の で , こ の ε xx に 式 (4.14)
ωε 0
eτ
ne2
ne2
1
⋅
=
= ne⋅
= neµ e .
を 代 入 し , ω →0 と す る と , σ 0 = limσ xx(ω ) = limi
ω + iγ m γ
m
ω →0
ω →0 m
ここにμe は電子の移動度である.
4.4
ドルーデの式において,γ=0 のとき,ω<ωp における反射率を求めよ.
[ 略 解 ] ε xx = 1 − ω 2p /ω 2
n2 = (ε 'xx+ ε xx )/2 ; κ 2 = (− ε 'xx+ ε xx )/2 よ り , n = 0 ,
κ = ω 2p /ω 2 − 1 . し た が っ て 第 3 章 の 式 (3.72)よ り R = 1(=100%)と な る .
4.5
式 (4.18)に 与 え ら れ る 伝 導 率 テ ン ソ ル の 逆 テ ン ソ ル を 計 算 し 式 (4.19)を 導 け .
[ ヒ ン ト ] 伝 導 率 行 列 σ~ の 行 列 式 を σ~ , 要 素 σ ij の 余 因 子 Δ ij と す る と 逆 行 列
( )
ρ~ = σ~ −1 の 要 素 は , σ~ −1 ij= ∆ij/σ~ で 与 え ら れ る .
4.6
電 子 密 度 n = 10 18 cm − 3 移 動 度 5000cm 2 /Vs の GaAs に お い て , 磁 界 5T に
お い て マ グ ネ ト プ ラ ズ マ 共 鳴 が 現 れ る 光 子 エ ネ ル ギ ー ηω MP を も と め よ . た だ し ,
電 子 の 有 効 質 量 を 0.07m 0 と せ よ . こ こ に m 0 は 自 由 電 子 の 質 量 9.1×10 − 31 kg=
9.1×10 − 28 g と す る .
[略解]
µ = eτ /m *よ り τ = 4×10 − 11 s と な り , プ ラ ズ マ 角 周 波 数 は ω p = 2.13
×10 14 rad/s, サ イ ク ロ ト ロ ン 角 周 波 数 は ω c = 1.26×10 13 rad/s で あ る か ら , ω
MP ≈(21.3±0.6) × 10
13
rad/s = (3.39±0.1) × 10 13 Hz , こ れ を eV に 変 換 す る と ,
140±4meV と な る .
時 間 を 含 む 摂 動 法 に お い て 式 (4.24)の 展 開 係 数 c j ( t )が 式 (4.26)で 与 え ら れ る
4.7
ことを確かめよ.
[略解]
dcx j(t)
dt
い ま , 式 (4.25)に お い て , x 成 分 の み を 書 く と
{
}
(
)
1
jH ′ 0 expiω j0 t ≡ e j x 0 ⋅ E x(t)expiω j0t
iη
1
= e j x 0 ⋅ E x0 expiω j0 + ω t + expiω j0 − ω t
iη
=
{ {(
)}
{(
) }}
こ れ を 積 分 し た も の が 式 (4.26)に な る こ と は 容 易 に 確 か め ら れ る .
4.8
式 (4.26)で 求 め ら れ た 展 開 係 数 を 式 (4.24)に 代 入 し て , 摂 動 系 の 固 有 関 数 Ψ
を書き下せ.
ψ (r,t) = φ0 (r)exp(
−iω 0t)+ ∑ cj(t)φ j(r)exp(
−iω jt)
j
{(
)}
{(
)}
1− expiω j0 + ω t 1− expiω j0 − ω t 
= φ0 (r)exp(
−iω 0t)+ eE0x∑ xj0 
+
−iω jt)
φ j(r)exp(
η ω + ω j0
η − ω + ω j0
j


 exp(
−iω jt)− exp{iωt} exp(
−iω jt)− exp{− iωt}
= φ0 (r)exp(
−iω 0t)+ eE0x∑ xj0 
+
φ j(r)
η ω + ω j0
η − ω + ω j0
j


(
)
(
4.9
(
)
)
(
)
前問で得られた固有関数を用いて電気分極 P の期待値を計算し,入射光の
角 周 波 数 と 同 じ 成 分 が 式 (4.27)で 与 え ら れ る こ と を 示 せ .
Px = Nqx(t) = Nq ∫Ψ * xΨdx

 
iω 0t)+ ∑ cx j *(t)φ * j (r)exp(
iω jt) x
φ *0 (r)exp(
 

j
= Nq ∫ dx

 
 
−iω 0t)+ ∑ cx j(t)φ j(r)exp(
−iω 0t) 
× φ 0 (r)exp(
 
j
 
{ (
(
)}
{(
)}
1− exp− iω + ω jo t 1− expiω − ω jo t 

iω j0t)+ c.c.
= Nq 2E x0 ∑ jx 0 0 x j 
+
 exp(
η ω + ω j0
η − ω + ω j0



j
)
(
)
 exp(

iω j0t)− exp{− iωt} exp(
iω j0t)− exp{iωt}


+

η
η
+
−
+
ω
ω
ω
ω




j
0
j
0
2


= Nq 2E x0 ∑ j x 0 

 exp(
−iω j0t)− exp{iωt} exp(
−iω j0t)− exp{− iωt}
j

+

 +
η ω + ω j0
η − ω + ω j0



(
)
(
(
)
)
(
)
こ の う ち で exp(− iω t)+ cc の 項 の み に 注 目 す る と 式 (4.27)の 最 後 の 式 を 得
る.
E y ( y 方 向 の 電 界 )に よ り 生 じ た x 方 向 の 分 極 P x を 表 す 式 (4.34)を 導 け
4.10
[ ヒ ン ト ] 前 問 に お い て <Nqx(t)>を 求 め る 代 わ り に <Nqy(t)>を 計 算 せ よ . こ の
と き , 前 問 同 様 , exp(− iω t)の 項 だ け を 考 え れ ば よ い .
4.11
電 気 感 受 率 の 非 対 角 成 分 を 表 す 式 (4.35)を 導 け .
[ ヒ ン ト ] 式 (4.35)の 前 の 式 に x = ( x + + x − )/2 1/2 , y = ( x + − x − )/2 1/2 i を 代 入 す る
と,
0 x j jy 0
(
η ω j0 − ω
(
)
+
0 y j jx 0
(
η ω j0 + ω
)(
)
=
(
)
(
)
0 x+ + x− j j x− − x+ 0
(
2iη ω j0 − ω
) (
)
(
)
(
)
0 x− − x+ j j x+ + x− 0
+
)(
(
2iη ω j0 + ω
)
)
−
+
−
+
0 x− j − 0 x+ j jx− 0 + jx+ 0 
1  0 x j + 0 x j jx 0 − jx 0
+

2i
η ω j0 − ω
η ω j0 + ω


2
2
ω j0
ω
1
1
=  0 x− j − 0 x+ j  2
− Im 0 x− j jx+ 0 2
2
ηi
η
ω j0 − ω 2
 ω j0 − ω
=
(
)
(
(
)
)
も し , 状 態 |0>と 状 態 |j>の 間 の 遷 移 が 右 円 偏 光 の み で 許 さ れ る な ら ば , 第 1 項 は
有限の値をとるが,第 2 項は 0 になる.また,左右円偏光に対する遷移行列が
あまり大きく違わないときにもやはり第 2 項は小さな値をとる.
4.12
式 (4.46)を 確 か め よ .
[ 略 解 ] 図 4.9(a)の よ う な 準 位 を 考 え る . 絶 対 零 度 で は ρ n = 1, ρ m = 0 と 書 け る
の で , 式 (4.41)が 成 立 す る . 2 遷 移 系 で は , 2 つ の 遷 移 に つ い て の み 和 を と れ ば
よ い の で , 式 (4.41)の 第 2 式 は ,
ε xy =
=

f0ω1
− f0ω 2
iNq2 
+


2
2
2
2
m ε 0ω  (ω + iγ ) − ω1 (ω + iγ ) − ω 2 

iNq2 f0 
ω 0 − ∆ /2
ω 0 + ∆ /2
−


m ε 0ω  (ω + iγ )2 − (ω 0 − ∆ /2)2 (ω + iγ )2 − (ω 0 + ∆ /2)2 
=−
≈
≈

iNq2 f0 
1
1
1
1
−
−
+


2m ε 0ω ω + iγ − ω 0 + ∆ /2 ω + iγ + ω 0 − ∆ /2 ω + iγ − ω 0 − ∆ /2 ω + iγ + ω 0 + ∆ /2

iNq2 f0 
1
1
−


2m ε 0ω ω + iγ − ω 0 + ∆ /2 ω + iγ − ω 0 − ∆ /2
iNq2 f0  {1− ∆ /2(ω − ω 0 + iγ )} {1+ ∆ /2(ω − ω 0 + iγ )}


−
(ω − ω 0 + iγ )
(ω − ω 0 + iγ ) 
2m ε 0ω 
=−
iNq2 f0∆
iNq2 f0∆ (ω − ω 0 )2 − γ 2 − 2iγ (ω − ω 0 )
1
=
−
4m ε 0ω (ω − ω 0 + iγ )2
4m ε 0ω
(ω − ω 0 )2 + γ 2
{
}
第 4 章の参考文献
1) B. Lax and G.B. Wright: Phys. Rev. Lett. 4 (1960) 16.
2) R. Kubo: J. Phys. Soc. Jpn. 12 (1957) 570.
3)近 桂 一 郎 , 上 村
洸 : 日 本 物 理 学 会 誌 24 (1969) 713.(こ の 解 説 の 式 (3.11)は わ
れ わ れ の (4.22)式 と 本 質 的 に 同 じ で あ る が , 一 部 に 誤 り が あ る . そ れ は 式 (3.7)で
J = d P /d t = i ω P と 置 い た こ と に よ る . J nm = (1/ i η)[ H 0 , P ] n m = (ω n − ω m ) P nm = ω
nm P nm
とすれば本書と同じ形になる)
4) Y. Shen: Phys. Rev. 133A (1964) 551.
5) H.S. Bennett and E.A. Stern: Phys. Rev. 137 (1964) A448.
6) F.J. Kahn,P.S. Persian & J.P. Remeika: Phys. Rev. 186 (1969) 891.
7) 上 村
洸 : 磁 性 体 ハ ン ド ブ ッ ク (近 角 他 編 , 朝 倉 書 店 , 1975) 1014.
8) C.S. Wang and J.Callaway: Phys.Rev. B9 (1974) 4897.
9) D.S. McClure, "Electronic Spectra of Molecules and Ions in Crystals"
(Academic Press, 1959).
10) 上 村
洸, 菅野
暁, 田辺行人: 配位子場理論とその応用.
12) J.L. Erskine and E.A. Stern: Phys. Rev. Lett. 30 (1973) 1329.
13) J.L. Erskine and E.A. Stern: Phys. Rev. B8 (1973) 1239.
14) W. Reim, O.E. Husser, J. Schoenes, E. Kaldis, P. Wachter & K. Seiler: J.
Appl. Phys. 55 (1984) 2155.