茶園土壌への化学肥料および堆肥施用が温室効果ガス

茶園土壌への化学肥料および堆肥施用が温室効果ガスの 1 種、
亜酸化窒素ガス(N 2 O)の放出量に及ぼす影響
Influence of chemical fertilizer and manure application in tea field
soil on the emission of a greenhouse gas N 2 O
(農学研究院・国際環境農学専攻*1)侯牡丹*1, 大津直子*2, 村瀬香*3,
鈴木創三*2, 仲井まどか*4, 小俣良介*5, 中島健太*5, 木村園子ドロテア*1
*1:農学研究院・国際環境農学専攻 *2 :農学研究院・生物生産科学専攻 *3:名古屋市立大学
*4:農学研究院・生物制御科学専攻 *5:埼玉県茶業研究所
科研プロジェクト研究:基盤 B23380191:代表:木村園子ドロテア(農学研究院・国際環境農学専攻)
「チャおよびイネにおける自然共生型の植物防除生産技術の開発」
連絡先
1.はじめに
茶園土壌は大量の窒素肥料が施用され
るため、特殊な土壌環境となることが知
られています。温室効果ガスの1種である
亜酸化窒素の放出量は、水田では施肥し
た窒素肥料のうち0.3%が、一般の畑作物
では0.6%なのに対して、茶園土壌では
2.8%が亜酸化窒素となります。亜酸化窒
素ガスはN 2 Oという分子式で表され、二
酸化炭素の298倍もの温室効果を有して
います。亜酸化窒素は土壌内で、窒素肥
料成分がアンモニア態窒素が、硝酸態窒
素に変わる硝化過程と、硝酸態窒素が窒
素ガスに変わる脱窒過程の2つの作用の
途中で生じます。いずれも微生物の作用
によるもので、どのような条件で発生す
るのか、未だ簡単に予測できない問題を
有しています。様々な土壌において、測
定が行われており、日本全国、また全世
界での土壌からの亜酸化窒素ガスの放出
量の正確な把握が課題となっています。
本プロジェクトでは、土壌-植物-昆虫
の相互作用を調査することを目的として
います。本報告では、化学肥料と堆肥と
いう窒素肥料の違いが、土壌からの亜酸
化窒素放出量およびその放出様式にどの
ような影響を与えるかを調査しました。
2.土壌からの亜酸化窒素ガスの放出
農工大の府中キャンパス内にある茶
園土壌に慣行区(有機肥料と化学肥料の
E-mail: [email protected]
混合)、化学肥料区(化学肥料のみ)、半
減区(慣行施肥の半分)と、無肥料区と
いう施肥区を作りました。慣行区と化学
肥料区では、年間 ha あたり 900 kg、半舷
区では 450 kg を施用しました。1 回目(3
月)の基肥に 660 kg(あるいは 330 kg)、
その後は 2 カ月ごとに 60 kg(30 kg)の
施肥を行った結果、図1のように化学肥
料区で年間 81kg の放出が見られ、主に 2
回目の施肥後に大きな放出があることが
分かりました。これは施肥量の 8.4%にも
のぼります。慣行区で有機肥料を使った
結果、放出量はやや少なくなりましたが、
施肥量の 7.3%とやはり高い割合でした。
2 回目の施肥時期に気温が上昇し、さ
らに梅雨による土壌の水分上昇が重なっ
たため、微生物活動が活発になり、大き
な放出量が見られた。施肥の種類に加え、
環境条件が亜酸化窒素の放出に大きく影
響することが明らかになった。
図1.年間の亜酸化窒素ガスの放出量