◆第 7 章 閉鎖経済の中期モデルの展開 7-1~7-3 略。 7-4 実質賃金設定関数,G ( N ) = β N ( θ > 0 )を,産出量で表すと,以下の式が成立す θ る。 θ Y Y G = β α α 潜在産出量( Yp )で実質賃金が α に等しくならなければならないので次の式が成立 1+ µ する。 θ Y α β p = α 1+ µ θ 第 2 α α の式からは, β = 1 + µ Yp α Y Y G = α 1 + µ Yp を導けるので,それを第 1 の式に代入すると, θ を導き出すことができる。 7-5 (1) 財市場の均衡条件式より, IS 曲線:0.4Y=30-40r 貨幣市場の均衡条件式より, LM 曲線: 100 =10+0.5Y-50r P IS 曲線と LM 曲線より利子率を消去することで総需要曲線を求めることができる。 AD 曲線:P= 200 2Y-55 (2) 合理的期待形成のもとでは,個々の企業は経済全体の潜在雇用水準や潜在 GDP を念 頭に置いて,経済全体で成立するであろう物価水準をもって予想物価水準 Pe とする。雇用 水準が潜在的水準のとき,実質賃金はα/(1+μ)となり, Yp α G� �= α 1+μ が成立するので,実質賃金設定関数から決まってくる総供給曲線において, が成立する。 P= Yp 1+μ e α Pe G � � = P =P e α α 1+μ α 1+μ (3) 図 7A-1 が示すように,名目貨幣供給の減少により総需要曲線が下方にシフトする結 果,均衡 GDP と均衡物価水準はともに下がる。それに伴い,予想物価水準も新たな均衡物 価水準まで下方に改定される。しかし,ここでは GDP が潜在 GDP より乖離し,総供給曲 線が予想物価水準と潜在 GDP の組み合わせをかならず通過しなければならないという条 件を満たすことができない。この要件を満たすため,総供給曲線が下方にシフトし,C 点に おいて予想物価水準が形成されなければならない。よって,予想された名目貨幣供給の低下 は,物価水準の減少を招くものの,GDP 水準には影響を与えない。つまり,貨幣の中立性 が成立している。 図 7A-1 (4) 図 7A-1 が示すように,名目貨幣供給の減少は予想されておらず,当初各企業は名目貨 幣供給は不変であり総需要曲線もシフトしないと想定して予想物価水準を設定するので, 予想物価水準は A 点の水準にある。その結果,総供給曲線にもシフトは起こらない。そこ に,想定していなかった名目貨幣供給の減少が起こり,総需要曲線は下方にシフトするので, 物価水準が下落するとともに,GDP も潜在 GDP を下回る水準となる。よって,この時点 では予想されていない名目貨幣供給の低下については,貨幣の中立性は成立していない。し かし,来期には個々の企業が名目貨幣供給の縮小を織り込んで物価水準を予想するので,そ れにより総需要曲線は下方にシフトし,GDP は以前の潜在 GDP に戻る。したがって,貨 幣の中立性はふたたび成立する。 (5) 図 7A-2 に示すように,負の貨幣ショックにより総需要曲線が下方にシフトしても,予 想物価水準は以前の物価水準である A 点で設定されるので,総供給曲線はシフトしない。 その結果,GDP が潜在 GDP を下回り,物価水準は A 点から B 点まで下落する。来期には 適応的期待形成によって前期の物価水準である B 点に予想物価水準が設定されるので,総 供給曲線は潜在 GDP と物価水準 B 点を通過するところまでしか下方にシフトしない。そ の結果,GDP は依然として潜在 GDP を下回るとともに,物価水準は B 点から C 点まで下 落する。翌々期にも,予想物価水準が C 点に設定され,総供給曲線の下方シフトは小幅に とどまる。このように,適応的期待形成の場合,予想物価水準が D 点に徐々にしか近づか ないため,長い期間にわたって GDP が潜在 GDP を下回る。その間,貨幣の中立性は成立 していない。 図 7A-2 7-6 (1) 本文図 7-20 が示すように,個々の企業はインフレ率が名目貨幣供給成長率に等しくな ,インフレ供給曲線とインフレ需要曲線の切片が等しく ることを予想するので(πe=g′M) なり,A 点の均衡で GDP が潜在 GDP と等しくなる。よって,個々の企業が名目貨幣供給 量の成長率を正しく予測しているかぎり,貨幣の中立性が成立しているので,金融政策によ って独占による過小供給を是正することは不可能である。 (2) 本文図 7-20 が示すように,個々の企業はインフレ率を g′M と予想して価格設定を行 っているので,インフレ供給曲線はシフトしない。反面,インフレ需要曲線は,名目貨幣供 給成長率がさらに上昇した分だけ上方にシフトする。その結果,均衡は A 点から B 点に移 動する(本文図 7-20) 。B 点では GDP 水準が潜在 GDP を超えて完全雇用 GDP に近づいて いる。しかし,個々の企業が名目貨幣供給成長率が g′′M まで上昇することを見越してい る場合には,彼らが予想するインフレ率は g′′M まで引き上げられる。よって,インフレ 供給曲線が上方にシフトし,C 点において GDP が潜在水準に引き戻されるばかりでなく, 当初より高いインフレ率が実現することになる。 (3) このケースでは,中央銀行の政策変更が個々の企業に察せられてしまった結果,人び との予想インフレ率が変化し,結果的に意図した政策効果(GDP を完全雇用 GDP に近づ けること)が得られないばかりか,高インフレという弊害も生み出している。このように, 政策変更が人びとの期待に影響を及ぼすことによって,人びとの行動自体を変えてしまい, 意図した政策効果が得られない場合がある。こうした問題は,ルーカス批判と呼ばれている。 (4) 本文図 7-20 が示すように,名目価格が硬直的なケースでは,均衡が即座に C 点に回帰 することはなく,しばらくの間,GDP は潜在 GDP を上回って推移する。この場合,独占 による過小生産問題は金融政策によってある程度持続的に是正することが可能となる。
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