戦後70年を振り返る㊦ 道端に見つける郷土史⑨ 一口に軍馬の生産と言っても、簡単に進むものではなかったようで す。例えば農家にとって強力な助けとなるのが重種馬である一方、軍 部が欲したのは中間種と呼ばれる馬匹でした。新白老町史の1100ペー ジで「講習、講話会などを開催し、機会あるごとに当局の係官の講話 を求め」とあるように、馬産体制の変革には多大な手法や資本が投入 されました。前回の記事でも触れましたが、「軍馬」としての資質は 極めて細やかに定められていたのです。 表は白老町史に掲載されている軍馬購買数の抽出です。軍馬として 合格した馬匹のうち、どのような品種が実際に買い上げられたかは歴 然でしょう。優れた馬匹を育てあげた生産者には色々な賞典が授与さ れたばかりでなく、記念の写真帖に実名で記載されるなどの栄誉も加 えられました。3月に開催する特別展資料の昭和11年(1936年)『天 覧牛馬写真帖』(家畜改良センター新冠牧場蔵)が好例で、北海道各 地の名馬とともに生産者も掲載しています。白老には大正12年(1923 年)に白老家畜市場(現町立病院の付近)が建設され、家畜購買の拠 昭和30年の町政施行記念式典案内図 点となりました。上記の写真帖に白老産の馬は確認できませんでした にも家畜市場が確認できる が、やはり多くの名馬が旅立って 昭和4年 昭和5年 昭和6年 昭和7年 昭和8年 いったことは、各地に残されてい るさまざまな資料からもうかがい 軽 種 2頭 4頭 2頭 3頭 2頭 知ることができるのです。 中間種 5頭 5頭 10頭 5頭 5頭 仙台藩白老元陣屋資料館学芸員 重 種 3頭 3頭 1頭 3頭 平野敦史 ࡻỉếỦởᏑẟጃỆ 丈夫なツルウメモドキの繊維 詳しくはアイヌ民族博 物館 ☎ ︲4199へ問い 合わせてください。 82 イランカラプテ。みなさんはツルウメモドキという植物を 知っていますか?にしきぎ科の落葉つる性の樹木です。アイ ヌ語で「ハイプンカル」といい、アイヌ民族はこの樹木を採 って、皮を剥いで内皮から繊維をとり、糸をつくっていたの です。 私も体験したことがあるのですが、かなり手間暇のかかる 作業でした。12月から3月ころにかけて、蔓状の枝を採って きて、一本ずつ半分に割って皮をはぎ、内皮と外皮に分けて、 使用する内皮のみを束ねます。この後、熱湯にくぐらせた後 に家の外で干し、雪さらしにします。熱湯にくぐらせたとき は、とてもきれいな濃い緑色になりますが、雪にさらすと真 っ白になりました。写真は屋外に2週間ぐらい干した際に撮影したものです。 文献では、4週間ほど雪さらしにしておけば、白い繊維(レタルハイ)になるとありま したので、試してみましたが、真っ白にはならず、5週間干してやっと生成り(薄いベー ジュ)色に落ち着いたのでした。 このハイプンカルからとれた繊維は、とても丈夫であるとされて、弓のつるや、男性の 背負い縄などさまざまなものに使われ、シナノキやイラクサといったほかの繊維よりも強 いものであると伝承されています。私は5年前から、さまざまな植物サンプルを作ってい ますが、一番最初につくった繊維サンプルとして思い出深い樹木です。この時期になると、 そろそろツルウメモドキをとりにいかなきゃ!と考えてしまいます。 アイヌ民族博物館学芸員 八幡巴絵 2016年2月号 24
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