測定工具の定期検査

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測定工具の定期検査
佐原, 和芳
技術報告. 9, p. 71-74
2003
http://doi.org/10.14945/00003125
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測定工具の定期検査
工学部技術部装置開発系 佐原和芳
1.はじめに
すべての「モノづくり」がグローバルに展開さ
れ、激しい競争が余儀なくされている現在におい
て、「新しい製品・技術の開発とその品質の維持・
・ロッククランプでスピンドルをいったん固定した
後、スリーブの基線の裏側にある孔にキースパナを
合わせ、キースパナでスリーブをその差異だけ回し、
シンプルの零線にスリーブの基線に合わせる。
図2.2拡大部
向上」は大変重要である。このことを合理的かっ
経済的に推進するには、「正しい計測」が根本と
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なっている。
「正しい計測」を達成するためには、定期的に検
査・校正された信頼性のある測定工具を使用する
こと、および測定担当者の計測技術を適切な教
育・訓練によって育成・向上させることが極めて
大切である。そこで、マイクロメータ、ノギス、
ハイトゲージ、ダイヤルゲージ、てこ式ダイヤル
ゲージなどの測定器の定期検査を行うための知
凝
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暴
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識と技能を会得するために研修を行った。
図2.ユ 外側マイクロメータ
2)目盛の読み方
通常は、0.01㎜まで読むことができるが、目分
量で0.001㎜まで読むことができる。ただし、正
確に測定する場合は、バーニヤ付きを使用する。
2,研修内容
スリープ基講 シンプル§竪
←も。。一
約+3Pt m
端■』竺1μm
r二豊+ (1)測定工具の定期検査に関する基礎知識。
(2)JISにおける測定工具の性能検査法とその
許容値。
(3)測定工具の検査に用いる各種基準機器の取
り扱い法。
ti 2” m
(4)各測定工具の検査及び実習。
シンプルの目盛線幅:約O.2㎜m
3)外観・機能の確認及び清掃
①ブロックゲージ・オプチカルフラット・オプチ
2一ユ標準外側マイクロメータの検査
・標準外側マイクロメータ(O∼25㎜)
平面度0.ユμm,平行度O.2μm
カルパラレルの清掃
②マイクロメータ各部の清掃
③ねじ部がたの確認
④口元がたの確認
⑤クランプロックの作動確認
図2,3
4)器差
・使用器具
プロツクゲー
・器準器:ブロックゲージ
・検査器
・オプチカルフラット(3級)外径Φ45 mm.
平面度O,2μm
・オプチカルパラレル(ユ級)外径Φ30 mm,
ジを測定面の間
キースパナ・マイクロメータスタンド
に挟み、ラチェッ
ユ)零点の調整法(基点)
①アンビルとスピンドルの両測定面を、きれい
なガーゼまたは紙で拭きとる。
②ラチェットストップを回転させながら測定力
をかけ、両測定面を接触させる。
③シンプルの零線とスリーブの基線が完全に一
致していない場合には、下記の方法で零点を
難i購灘灘 蒙嚢
1…鞠
トを回してマイ
クロメータの読
みとブロックゲ
ージの寸法との
欝 .
嚢灘蕪纏。、。㌦菖
NRI*:sssr iぶ
、.ぷ『
差を求める。
マイクロメータの器差測定
調整する。
一71一
2本 2本
5)干渉縞
3本 3本
1.0μm
0.6μm
◎ ◎1翰 拶
☆許三ξ諮
ゾtUへsも 狽r
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7)測定面の平行度
オプチカルパラレルを、マイクロメータのアン
ビルの側面に密着させ(干渉縞は1色又は閉曲線
が現れる程度)、マイクロメータの測定力のもと
に、白色光によるスピンドルの測定面の赤色干渉
の谷と山が重なる所では、 図2.4 干渉縞
暗くなり干渉縞として見
える。
6)測定面の平面度(密着法)
縞の数を読み取る。
マイクロメータの測定面にオプチカルフラッ
ト(OF)又はオプチカルパラレル(OP)を密着
させ、白色光のよる赤色干渉縞の本数を数える。
この場合、次の3条件を満たすようにする。
この操作を、4個コ組となっている他のオプチ
カルパラレルについて順次行い、得られた4個の
データのうち最大値をもって、そのマイクロメー
タの平行度とする。(図2.8参照)
①赤色干渉縞は、測定面のほぼ中央を軸にして
ほぼ対照的な曲線になっていること。この条件を
満たす形になっていない時でも、(OF)又(OP)
を押し付け直すことによって、この条件を満たす
(注)平行度を求める場合には、アンビル側に現
示される赤色干渉縞の数は計算には含めず、スピ
ようにする。
・P:平行度(μm)
②平面度決定の基本になる赤色干渉縞の本数は、
見掛け上現示されている赤色干渉縞の総本数で
はなく、測定面のほぼ中央から周辺に至る間に示
されている赤色干渉縞の数とする(図2,6)。
③干渉縞の数は、スピンドルの軸線に対する傾
きが30°以内におさまる方向から読み取る。
・n:スピンドル面に
現れた赤色干渉縞の数
ンドル側に現示される赤色干渉縞の数だけを数
える。
(本)
・λ:使用する光の波
長(μm)
・赤色干渉縞の場合
λ/2==O.32μm
・F:平面度(μm)
・n:スピンドル、ア
ンビル各面に現れた赤
P=λ/2×n
図2.ラ 平行度測定
色干渉縞の数(本)
・λ:使用する光の波
図2.8 平行度測定例
長(μm)
・赤色干渉縞の場合
OPの寸法
図例 アンビル スピンドル縞の数
忌繧玲;
λ/2=0.32μm
F==λ/2×n
◎◎〇三〇
鷲法三箆漂
2本
雛雛i驚霧 ∼
3本
t’”オ;
図2.5平面度測定
4本
図2.6 密着法による平面度測定例
*:1本.0.3μm
3本
㊨)
鍛1
r”
「’一“…{
〃・’プ・〃口勿、〃・’〃}
} ..“J
*OPの寸法12.25mmの縞の本数4本が
MAXとなるため、平行度は1.3μmとなる・
一72一
8)校正・検査成績書
表1.1
校正・検査年月日 :H15.9.ユ9
外側測定面間にブロックゲージ又はそれと同
等以上のゲージ類を挟み、測定面の元及び先で測
定し、ノギスの読みからゲージの寸法を減じて求
品名(形式) :標準外側マイクロメータ
める。
測定範囲 :0∼25mm(0.01mm)
測定器番号 :6031926
表1.6 ノギスの器差の許容値 単位:mm
測定長
最小表示量
基準器名(形式):ブロックゲージ(BM3−16−O)
基準器番号 :0206251
50以下
作業i環境 :27°C・57%
50を超え100以下
校正・検査員 :佐原
100超え200以下
表1.2 器 差
日盛
器差
Pwn〕
ハm
O
O
5
1
ユ0
一2
】5
一4
20
25
一4
「JISB7507−1993」
表1.3 平 面 度
誤差
基準
ハm
ハm
アンビル
O.3
O.6
スピンドル
0.3
項目
μm
±2
項日
0
平行度
O.1又は0.05
±0.05
±0.06
±O.07
誤差
基準
ハm
ハm
0.6
2
2−3ダイヤルゲージの検査
1) タト観・]幾自旨
①汚れや油をきれいに取り除く。
②スピンドルの作動及びがたを確認。
③ 指針の静止点の狂いを確認。
④ 外枠の回転やおおい板の破損などを検査。
⑤測定子の磨耗状態を検査.
2)指示の精度検査
・指示誤差、隣接誤差、戻り誤差の測定
表1.4平行度
基準:判定基準
表1.7 ダイヤルゲージ指示の精度
単位μm
表1.5 機 能
項 目
項 目
最小目盛
ねじのはめ合い
○
クランプ
○
ねじガタ
○
カウンタの宇並び
○
ラチェットストップ
○
カウンタのガラス板
○
測定範囲
マイクロメータ」
5
8
指示
1/2回転
±9
?キ
1回転
2回転
±10
±15
±15
総合判定:合格・不合格
1全測定範囲
・測定器:標準M形ノ.ギス
5
戻り誤差
繰り返し精密度
1/10回転(注)
*判定基準:「JIS B7502−1994
2−−2ノギスの検査
n.01㎜
10㎜以下
(注):隣接誤差
・基準器
「JISB7503」
・プロツクゲージ
1)外側測定の器差
3.結果
図2.9 器差測定例
図2.9 検査結果判定図
一73一
4.まとめ
(1)今回の研修の目的である、マイクロメータ、
ノギス、ダイヤルゲージの定期検査の知識
と技能の習得、JISにおける測定工具の
許容値の確認及び測定工具の操作につい
て再確認ができ、大変有意義な研修であっ
た。
(2)今回の研修によって工作技術センター職員
が使用している測定工具は、JISの許容
値内であることが立証された。今後、この
研修で習得した技術を基にして、測定工具
の定期検査をおこなう必要がある。
(3)信頼性のある測定工具を用いて、品質の維
持・向上に努め実験・研究のためによりよ
い部品及び装置を依頼者に提供し工作技
術センターの技術の向上に努めたいと思
う。
参考文献
ミツトヨ計測学院:測定工具類の使い方と検査方
法、マイクロメータ編・ノギス編・ダイヤルゲー
ジ編
研修参加者
三輪宜弘 石野健英 松野貞雄 磯谷 章
岩澤充弘 神尾恒春 岡本哲幸
一74一