秋乃夜長物語 : 伝本解題並びに飜印四種

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秋乃夜長物語 : 伝本解題並びに飜印四種
平沢, 五郎(Hirasawa, Goro)
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
斯道文庫論集 (Bulletin of the Shidô Bunko Institute). No.1 (1962. ) ,p.261- 370
Departmental Bulletin Paper
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00106199-00000001
-0261
語
物
長
夜
乃
秋
伝本解題
―
五
伝本解題並びに飜印四種―
郎
沢
古く北朝、永和丁已仲春七日、書写日付の古写本の伝存する
平
和 三 年 古 写 本 以 下 、 そ の 数 は 多 い 。 左 に 掲 げ た も の は 、 本調査
の対象となつた諸本である。
㈠写本
幸節静彦氏蔵〔
室 町 中 期 頃 〕 絵巻
高乗勲氏蔵永和三年写本
大東急記念文庫文禄五年写本
秋の夜長物語は、恐らく此の期をほど遠からずして成立せるも
の、 文 字 通 り 、 そ の 先 蹤 を な す も の で あ つ た 。 遠 く 山 門 三 井 寺
のと識られ、暗 い 中 世 社 寺 の 片 隅に育成した異形の児物語部類
天理図書館蔵〔
室 町 末 頃 〕 写本
東京大学附属図書館蔵明治十五年小田清雄氏摹写本
慶応義塾図書館蔵天文九年写本
武田祐吉博士旧蔵奈良絵本
㈡古 活 字 版 並びに整版本
横山重氏蔵片扳名古活字十二行本
ニ六一
の確執を背景にして、高 僧 瞻 西 の 事 実 譚 に 仮 託 し 、若き日の学
僧桂海と三井寺の美童梅若との、 いは
童
M 子花髪の戯れを愛憐
の思をこ め て 綴 っ た 異 色 な 悲 恋 で あ る 。作 者 は 誰 と 識 れ な い 。
ー説には正徳六年版応々翁方山書の跋に玄慧法印述作とな
るにすぎなぃ。 現存 伝 本 は 、 ょ く 世 の賞飯を博したものか、永
し、 以 後 、 大 田 南 畝 、 山 東 京 伝 、 田 ロ 明 良 氏 等 、 之 を 襲 っ て ゐ
た
^'
時代初期の永享年間には、絵巻ニ巻が殿上に賞翫されてゐたの
(
註ニ
しない が 、看 聞 御 記 に 見 え る 記 載 な ど か ら す れ ば 、 すでに室町
ニ六ニ
竜 門 文 庫 蔵 平 仮 名 古 活 字 十 二 行 本 (未 見 )
慶応義塾大学国文学研究室蔵平仮名古活字十一行本
を 思 ふ と 、か な り 古 く 、且 つ 本 物 語 の 読 者 層 も 、 か な り 広 範 に 亘
省 略 し た 。 又、 平 仮 名 古 活 字 十 二 行 本 は 、現 在 、竜門文庫にの
伽 草 子 編 に 、 詳 解 な 飜 刻 、 頭 註 、解 題 が あ る の で 、 其 の 解 題 は
題 に 於 て 詳 記 し た 。 猶 、永 和 三 年 本 は 、 日本 古 典 文 学 大 系 、御
以上は諸伝本の概略である。 が各本に就ては以下それぞれ解
で あ る と 云 は れ る 。 (典 籍 奏 鏡 .好 色 本 目 録 )
又、正徳六年版は、之等諸刊本と大異する平仮名絵入ニ冊本
し、 別 系 を な し て ゐ る 。
片 仮 名 古 活 字 版 は 、此 の 平 仮 名 古 活 字 本 と は 異 る 詞 章 を 有
る。
み て 差 支 え な い 。 小 川 多 左 衛 門 版 は 、寛 永 十 九 版 の 覆 刻 本 で あ
入 整 版 本 等 は 僅 か に 語 句 の 相 違 は 認 め ら れ る が 、全 く 同 系 本 と
古活字版がその源流である。寛永十九年版、 〔
万治寛文頃〕絵
そ の 系 統 を 迪 る 事 が 出 来 る 。 即 ち 、所 謂 流 布 本 系 は 、平仮名両
㈡ 、 古 活 字 版 並 び に 整 版 本 の 本 文 は 前 記 写 本 と 異 り 、 明確に
語に対する時代の一般の事情を汲みしが故とも思はれる。
章 に 、秋 の 夜 長 物 語 の 冒 頭 を 踏 襲 し て ゐ る な ど 、 や は り 、本物
(
註三)
と 、御 伽 草 子 中 で は 異 例 の 感 が あ る 。 夏 吉 物 語 、謡曲敦盛の詞
考へられるが、 こ れ ら 前 記 の 諸 写 本 の 古 さ な ど を 思 ひ あ は す
るものであつたことが識られる。実隆公記のそれも同様な事が
(
註ニ)
慶応義塾図書館蔵寛永十九年安田十兵衛版
神宮文庫蔵同右無刊記後印本
横 山 重 氏 蔵 〔万 治 寛 文 頃 〕 絵 入 整 版 本
日比谷図書館蔵京都小川多左衛門版
吉田幸一氏旧蔵正徳六年版(
未見)以上である。
㈠伝 存 写 本 の 本 文 上 か ら 之 を 概 観 す る と 、永 和 三 年 写 本 、高
節 氏 絵 巻 、文 禄 五 年 写 本 、小 田 清 雄 氏 摹 写 本 の 四 本 は 、比較的
近 似 す る 関 係 が 見 出 さ れ る 。 特 に 後 者 の ニ 本 は 、奥書に 云 ふ 嘉
吉本を祖として分かれたものであるからして当然の事である
が、 永 和 三 年 本 と 高 節 氏 絵 巻 は 、 一方が絵巻であり平仮名交り
文 で あ る と い ふ 特 徴 を 示 し な が ら 、 之 等 の 点 を 除 く と 、 本文上
は甚だ類 似 し 、 そ の 差 異 は 、 か \る御伽草子類の写本の性質か
ら み て 、僅 少 な も の と 云 へ る 。
次 の 天 理 図 書 館 本 、 天 文 九 年 本 は 、 各 々 そ れ - ^ の特質を示
し 、決 し て 同 系 本 と 見 る こ と は 出 来 な い が 、前 記 四 本 に 較 べ て 、
は ^永 和 系 古 鈔 本 と 、 大 き く 類 別 さ れ て よ い と 思 は れ る 。
詞 章は、同様なる箇所に於て、簡略化せる諸点が認められ、 い
武 田 博 士 旧 蔵 本 は 、之 等 に 比 し 、近 世 化 せ る 様 相 が 示 さ れ 、
流布本系の流動した一異本であらう。
本 物 語 が 、何 時 の 頃 か ら か 絵 巻 物 と し て 行 は れ た か は 判 然 と
み蔵するが、先方の御都合にょり拝見出来なかつた。竜門文庫
僅か照応するに、語句には、多 少 の 差 異 が 見 出 さ れ る 。 調 査
善 本 書 目 に 載 る 本 物 語 冒 頭 第 一 葉 の 写 真 と 、前記十一行本にて
後 、次号にて之を補ふつもりである。
猶 本 物 語 の 書 名 は 「秋 の 夜 の 長 物 語 」 「秋 の 夜 長 物 語 」 とニ
通 り あ る 。 孰 れ が そ の 正 確 な る 呼 称 か 忽 か に 定 め 難 い 。 以下
各解題はその内題を以つて統一した。
註 一 看 聞 御 記 、永 享 十 年 十 一 月 十 一 日 。 晴 。 秋 夜 長 物 語 絵 ニ
I 晴 、今夜自中院番
I I仍 入 夜 著 束 帯 参 内 、 於 竹 園 秋 夜 永 物 語 読 申 之 、 今
註 ニ 実 隆 公 記 、文 明 七 年 十 一 月 十 日
巻 。 自 内 裏 被 下 。 一覧。 (
続群書類従補遺四)
代相博、
夜候宸殿
提 の 機 を す X め。 秋 の 月 の 水 底 に し つ む は 。 下 化 衆 生 の 相 を
註 三 嘉 吉 物 語 、 冒 頭 。 「夫 春 の 花 の 樹 頭 に の ほ る は 。 上 求 菩
顕。 人 間 有 為 無 常 の あ り さ ま 。 因 果 の 道 理 の か れ か た き 物 也 」
(続 群 書 類 従 第 五 百 七 十 七 )
謡 曲 敦 盛 。 「4 れ 春 の 花 の 樹 頭 に 上 る は 、 上 求 菩 提 の 機 を す \
め、 秋 の 月 の 水 底 に 沈 む は 下 化 紫 生 の 相 を 見 す 。 し か る に 一 門
門 を 並 べ 、 累 葉 枝 を 連 ら ね し よ そ ほ い 、 ま こ と に 椹 花 一 日 の 木t
に 同 じ く 云 々 」 (日 本 古 典 文 学 大 系 謡 曲 集 上 )
幸
節
蔵氏彦静
室 町 中 期 頃 絵 巻 「秋夜長物語」
、 三軸。
装 幀 、 料 紙 鳥 の 子 紙 。 紙 幅 三 十 ニ .五 犍 。 金 銀 の 切 箔 を 置 い た
着
雁皮紙で総打裏がしてある。
地。 見 返 し は 布 目 金 紙 に 金 銀 雲 形 模 様 。
表 紙 、薄 茶 色 地 に 方 円 つ な ぎ 、 蓮 、 牡 丹 、 宝 づ く し 模 様 の 緞 子
本文、竪ニ十九醒。
内 題 、 「秋 夜 長 物 語 」 。
題 簽 、 なし。
奥 題 、 なし。
字 数 、 一行約十五字〜廿三字。
本絵巻はつとに梅津次郎氏にょり国華第六七八号の誌上に紹
画図、上巻六図、中巻七図、下巻七図。
介された。 それにょ ると、 その画風は大和絵の正統派なる土佐
あ り 、 その 点 、時 代 の 的 確 な 判 定 は 下 し 難 い が 、先づ室町中期
家のそれとは径庭があつて、云は父町絵風とも呼ぶべきもので
以 降 を 以 つ て 擬 す べ き も の と 述 べ ら れ て ゐ る 。素人目の私には
如 何 と も 云 ひ 難 い が 、絵 は す で に 古 色 に く す ん だ 原 紙 に 、 や \
淡 く 褪 色 の あ と を し め す 。 が 元 来 が 淡 雅 な 彩 色 で あ つ て 、詳 密
ニ六三
な構想のもとに、 ょ く 古 勁 な画趣をと^めてゐて、御伽草子絵
卷中では逸品のひとっであると思はれる。
備考一、本文は平仮名交りの文体であるが、なほ所々漢文体
の表現の跡を残し、 返り点、送 り 仮 名 等 を 小 字 に 附 し て ゐ る
処 が あ る 。特 に 巻 頭 巻 末 は 著 し い 。句 点 、 濁 点 は 無 い 。振仮名
は 元 々 は 施 さ れ て ゐ た も の と 思 は れ る 。 そ の 後 、 細字の振仮名娜
あ と は 、削 り と ら れ た ら し く 、現在'
では薄い墨跡が残ってゐて
ニ 、 三 の 振 仮 名 を 、 も と の ま X に、 と ど め る も の も あ る 。 漢 字
原 初 の 様 子 が 窮 は れ る 。 な ほ 、 「水 干 」 「那 辺 這 辺 」 の 如 く 、
本文書写の後、書落し、 誤写の部分を改めたあとがあり、同
の 異 体 字 は 余 り 多 く は な い が 、所 々 に 散 見 す る 。
じく行間に補訂せる処などある。 そのニ、 三を例示すれば、
筆細字にて行間に書入れしたあと、或ひは朱筆にて塗抹し、同
「壮 年 の 比 、 花 の 落 o 葉 散 を 見 て … … 」
西に向て念仏十へんはかりとな袅て身をなけさせ給つるか
「門 主 も い た く 酔 せ 給 て 候 へ は 、 ふ け す く る 〇 帰 ら て … … 」
「紅 梅 の 小 袖 に 水 干 の し も は か り め さ れ て 候 つ る か 、 〇 あ ま
児侍
り に か な し く 見 ま い ら せ て 候 つ る 程 に … …」 等 々 の 如 き 訂 正
の墨痕。
或は
「こ れ や も し 昨 日 の 児 の 童 な る ら ん と 思 て … 」
(
朱筆ミセケチ)
1
I
一六四
: l
なるさまに
(
朱筆ミセケチ)
こゆるきのいそきありて
「其 坊 主 ね ん こ ろ に も て な し て 〇 常 に は 児 と も あ ま た 出 し つ
v
. .
わりなき白ハはかはらねとも
(
朱筆ミセケチ)
りし緑のかみ〇ありし眼ふさかり一度咲は百
か -'
(
朱筆ミセケチ)
「む な し き 御 旨 な り と も .
「こ ほ れ て
の媚o 色 変 し ぬ れ は …」
等の書込みがある。
又 「円 転 」 を 「閃 電 」 、 「畏 怖 」 を 「畏 懼 」 と ィ 本 を 校 す る
本 絵 本 の 巻 分 け 次 第 は 、 上巻は
処などがある。
御酒宴にて候つれ門主もいたく酔せ給て候へはふけすくる
「若 公 は 三 井 寺 の 加 様 に 成 ぬ る を も し ら せ 給 す 、 石 の 楼 の 中
下巻は
に お し 籠 ら れ て 、 明 暮 な き し つ み て お は し け る 処 に … 」 より
起筆されている。
此絵巻は甚だ保存よく、紙魚のあともみられず、僅か数語、
備考ニ
る。 本 文 は 他 写 本 と 比 較 す る に 、 本 物 語 最 古 の 写 本 、 永 和 三 年
墨跡の薄れによる不明な箇所を除いて、古 雅 に し て 美 麗 で あ
本 に 、も つ と も 近 い 関 係 を も つ も の で あ る こ と が識 ら れ る 。 片
仮 名 交 り 文 と 平 仮 名 交 り 文 の 相 違 、 又 仮 名 遣 、 送 り 仮 名 、漢字
と仮名、清 濁 、 同 義 の 異 字 等 の 異 同 を 省 略 す る と 、 おほよそ次
掲 の 別 表 の 如 く 、 写 本 特 有 の 甚 し い 差 異 は 認 め ら れ な い 。 此の
を 識 別 す る 本 文 上 の 特 徴 は 、文 禄 本 、 天理写本解題中に簡略な
又同類中の別本とも云へる。此の三つの古写本と他の諸写本と
永和三年写本についで、大東急記念文庫蔵、文禄五年写本は、
が ら 記 し た の で 、 こ \で は 省 略 し て 、 同 類 本 、 永 和 三 年 本 と の
異同を次に掲げることにする。
き よ し 仰 ら れ 候 つ る 、 門 さ X て 御 待 候 へ と い そ か し け に い \す
「律 師 は 是 を き く よ り も 魂 乱 て 、 い つ く に あ る 我 身 と も 覚
中巻は
す、 ふけゆくかねのつく'
—^と 、 月 の 南 に め く る ま て 待 か ね
た る 処 に …」 よ り 始 り 、
「三 千 七 百 余 宇 一 時 に 灰 燼 と 成 は て X、 新 羅 大 明 神 の 社 壇 よ
り 外 に 残 坊 ー も な か り け り 」 、 にて終る。
一六五
て Xこそ帰りけれ」 にて終る。
まて帰らて祇候せよ、 めしくせられてこれへ忍やかに御入候へ
—1
^
ー
=
ロ
幸節氏所蔵絵巻
/相 違 ハ 之 ヲ
省略
ス
)
〇
人毎一一旧縁ノツナグ処.ハ
. . . . 離タガ
キ 習ナレふ
余波惜ケレハ
外こ
チニ動キテ
⑶ 月 日 ヲ .送 ケ ル 処 ノ •心ウ
(
上 段 ハ 日 本 古 典 文 学 大 系 /頁 数 並 ピ 二 行 数 。 漢 字 ト 仮 名 、 清 濁 、 仮 名 遣 、 送 リ 仮 名 等
年
三
年
本
天 語 ナ ク シ テ
ッ無シ
ぬる
に
s
き
書伝に載する所は
一七日ガ間
ロ ミ タル
S菩 提 ヲ 禱 ケ ル
g七 日 .満 ケ ル
g枕 ニ •テ
チトマド
仏殿ノ錦ノ帳
§
容色華麗ナル児ノ
一
⑴ 縫 シ タ ル
行
H トモ
•
是ヲ
• •
⑴ 遠 山 桜 -一 花 二 度
袖 -一
フ リ カ 、リ
⑵イヅ方
ニ六六
• . . 旧 縁 の つ な く をは
人ことにはなれかたくおも
1
ふ り か \ り た る を ••袖 に
無
>.1 シ
デ無シ
昏
ハ無シ
トト無シ
'い無シ
七日にましける
とそ
無
iシ
無シ
一
一
ロ
にぅこきて
月 日 を そ 送 け る ..其 心 内
-^
(別 表 )
i
人 ア ツ テ
順 逆 ノ 化 導 ヲ タ ル 、日
善 ニ コ シ ラ へ 玉 フ
⑽ 経論ノ諸説
書 伝 ノ 載 ル 処 .
申 ス -一 語Hス
タ
一条院の御宇に西山に
一 無シ
世 西
_山 ニ
,
一
一申 待 ラ ン
北 嶺 東 塔 .衆 徒 .••、 勧
学院
ハ無シ
北嶺東塔の衆徒に西谷勧学
院
於
木有リ
されは有リ
め有リ
宰 相 ノ 律 師
..或 時 ハ 忍 辱 ノ
g四 教 三 観 ノ 月 ヲ ス マ シ .
⑵•葉 ノ 散 ヲ
⑵ 夢ヤサメタリケン
⑶ コハソモ何事ゾヤ
?: M -
71C
思心イデキ二ケレハ
462
s
a
)
(
2)
<•
(6)
(7)
(1
3)
(8)
r-
461
Ti-o*
^:
460
16)
(9) (9) (7)
(14) (13) (12) (11) (11)
(14)
(5)
ア 見 へ ズ ナ リス
⑶暮行ケシキニ消へ
⑶
⑷ il.
一
明ケ果テヌ間ニ
立帰ヌ外ヨリ
時ノ程モ身ヲ
⑶ め魂香
ァ無シ
けされて
間無シ
無シ
ハ無シ
反無シ
ト無シ
武 帝 ノ 御 思 モ 身 -一 知 ラ レ
夢 の 後 .面 影 に 立 木 も し ら
詠レ
"
暫無シ
無シ
は有リ
すと
⑽ 空山ノ花ヲナガメテ
我 離 山 ヲ .
一
-I
w 夢 ノ 後 ノ 面 影 •便 モ シ ラ . K
⑴
⑵ 暫雨宿リセント
下
H リ行処
しけり
^る
iレ
おほふはかりの袖もかなと
霞 に も か ^る
1 へ き 心 •な む
しけるに
まわりて
海 松 態 ノ 如 ニ .イ ゥ く て
トゆ ら ^^ヽ
; 無シ
ルい無シ
てアリ
ぅ つ Xわ け か ね つ
g見 シ 夜 ノ 夢 ハ 打 忘 レ .
⑵ 現 ワ キ カ ネ テ
無シ
ト 云 . . バ 何 事 -一 テ
チ ト 物 ..申 候 ハ ン
ン ト
昨日ノ児ノヲモト人ナルラ
門ノ外一 出 タ リ .是ヤ
⑶ 知リ参ラサセ玉フト
るを有リ
とひ有リ
給 わ
わくかたなく
昏
於
すこさせ
被
一
一召 使
御 心 -一 一
ナラ
方デ
梅 若 公 ト 申 シテ
月日ヲ渡ラセ玉フチリ
g
りける
壺ノ石文ッテニテモ
無シ
ト ゾ 語 ル ..聞 ニツケテ
⑶是社此方
あ り
⑷ 御 房 ノ 側 ニ タ 、ズミタルー 一 ノ 無 シ タ 、ズ ミ は 俳 個と
⑶ 第四
日暮ルレドモ
;
§
我ヲ迷ハシツル
g顔 バ セ イ フ 計 ナ キ 様
柳 ノ 糸 ー 一 打 縛 レ テ
(14) (14)
a5
T •.人 に や と
?)-
⑶金堂ノ 方
⑷ 雲ヲ凝セリ
二 八 計 ノ 児
ト ウ チ ス サ ミ テ
思バカリノ袖モガナ.
W霞ニモカスべキ心地ナンシ
んぃケ
見 ル 人 ア リ ヤ ト
*•
ニ六七
r-
463
464
(
1
0
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i:
(6) (5)
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6
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e) a5
a
(7) (6) (5)
(1¢
(13)
ai (10 (5)
(12)
無シ
もせて
ソナタノ梢ヲダ一見ツ、
⑶ 第五
⑵ 石 山
ヱ ハ 参ラテ
ニ脚歩テハ立帰シヶレバ
山ニ帰リヶルガ
暇 .請 テ
サ:
ス ガ ニ ヒ タ 、ヶルヮザナ
g
レバ
+.
さ卜の桂寿にかたらひ
無シ
に有リ
尋出シテ
前ノ桂寿
⑻ 軽於
金ノウチ枝ノ橘一一芍入テ
語
H ライ
は 夢 ト 現 ト ノ 面 影 .起モセズ
6
かく
山 登
H ラント テ
千弓ノ繩ノ腰 ツ
ヶタラン
一
一
\
⑶旅 ノ 衣 一身ヲヤツシテ
⑶ 騎馬ノ客一騎道一一待逢タリ
ニ六八
をも
ぅ V つ小
をアリ
二 足 あ よ み て は 立 と \ まり
けれは
ラい無シ
を
かかか
一騎無シ、 待 は ゆ き
人ノ
$
律師ガ手ヲ取テ
側 は 傍そ有リ
ひきて
ぎ
k
に て 有 リ 「戯 レ 」 ハ た は >
れ 」 トァリ
⑶ ィ カ ナ ル 山 ニ *迷トモ
タノミケン
ィツハリノアル世ヲ知ラデ
你 嘆 事 ..候 バ ヤ ト 戯 レ テ
色殊(
ニ) コガシタル
側 ナ ル 社 堂 ニ •立 寄 ヶ リ
律師ヲ見テ
-t
-:
き程有リ
我 ナ ラ ヌニ
、弓留ラレヶレ
/
無シ
ダ
候無シ
-L
⑶ 志 ノ 深 ..ヲ 見テ
第へハ
マノ花ノ木陰
H
'■
イカニ黒ミツクストモ
S
雨ノタ
g
モ無シ
⑴ 人 知 レ ズ 思 ソメ 候 ケ ル
⑴ 袖ノ色ト
く
ノナシ
て有リ
と有リ
•
⑶ 某 ノ 僧 都 •ヤラン
板踏ミ鳴ラシ
⑶ 袖ハ中へ
⑷ 摊ヵヘシ
たちそふ雲のか乂るおもひ
誠に身もあられぬ鉢なり
誠 -一 • • ア ラ レ ヌ 様 ナ リ
⑶ アダナル雲ノ懸ル迷ヒハ
無シ
しはらくはあたりなる坊に
⑶を
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K -* •
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朝 ニ ハ ア タ リ ノ宿ニ
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(1 a6)
(7) (6) (6) (5)
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(14)
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(6)
a])
U ナヨビ力ニ
⑴ 若公
や
此
⑷ 螢 ヲ バ .. . 軒 ノ 簾 台 ノ 端
無シ
なるさまに
第 八
ノ 無 シ
丑
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か
に懸て
營をはか窓の軒
3 i簾
gシ バ シ ガ 程 ノ 宿
ニカケ*
ニ 云 ト モ コ ト ノ 葉 •ナカ
ゥッリ香モ
サシモ間遠ナリシ所ノ袖ノ
前 —立テ
庭 ? 還1
ハ
由ヲ
身ヲソバムル様キ計ニアル
律 師 答 フ べヲ
キ
ねんころにもてなしてこゆ
イ ソギ
ア リ テ 常 .ハ
ギノ
⑴ ネンゴロナルサマニコユル
を
Hはへ
るきのいそきありて常には
⑴ 管絃ノシ
ゾ有リ
ト無シ
院家の傍に
有
6 リ、
も有リ
あ
ルペシ
M コ ヤ ノ 枕 •川 嶋 ノ ..流モ
M寒 ク ..
浅カラヌ
紫蘭ノ夢
s紅 涙 ...留 ガ タ ケ レ バ
gホノカナルカホんセ
風
して有リ
浅からす
さ夜の枕を川嶋の水の流も
語 に ...詞 も な か る へ し
テ•
#-
Hタル
な•先•立•
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有
す.
リ
歌合ナンドシテ.
⑶ 陰家ノ側ニ
⑷ 若君ト
人 目 モ ガ
ナト 求 様 ナ レ ド .
今 夜 コ ソ ..御所ヱ
御 酒 宴テ
M 候程二
い \す て X こ そ 帰 り け れ
御入候へきょし仰られ候
無シ
.
先に立て有リ
g思 ハ 色 深 ク 見
g別 テ 後 ノ 面 影 モ
⑴ 第 十
470
W 御 入 候 べ シ ト 仰 ..候
云 捨 還 ケ ル
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§
第 九
狨音ーケレバ
g椹 障 子 ヨ リ 遙 ニ 見 出 シ タ ル
ニ
例 ノ 童 ...•魚 脳 ノ 燈 炉
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光幽
⑴ 其 形 青 営 ト シ テ 朦 朧 タ ル
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469
⑵ 若 公
ヲ送テ
⑶唐居敷一立カネテ居タル
⑷ 語ハサシモ
律師ゲニ思モワカザリツル
皆
たる
唐居敷の上にたちかね.•
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は夢とたに
無シ
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⑶ ゲニモ理リカヤ
ト •思 知テ
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冥 々 タ ^雲 霧
⑵ 答テ ン ゲ リ
是 ハ イ ツ ク....
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渡候ナラン
U年ノイトタケタル
松ノ陰一休ミ居タル処
一
片 時ノ際ニ
舁 (
キ)以テ来リケル
g泣 ク 音
御
H
⑶ 溟 濛 づ ル 暗 室 -一
道俗男女
⑶ 松 ノ 嵐 ......涙 ノ 乾
ク 隙 モ ナ シ .......
押籠ラレテ
一
一
邮湖水ノ月二心ヲイタマシメ
カナ ル 天 狗
ユクタビ
M 行 ク へ キ 方 モ 知 ラ ス •出ヌ
歡
關御手ヲ引ケル童
レ果テケレバ イ
g心 疲 レ 果 テ 、
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比 叙 ノ 山
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⑶条
⑶ 面 影 •身 一
ソ
エ
一
山 H登 タ レ ハ
心 シ ホ レ . . . . テ世ノ
9し ほ れ 魂 ぅ か れ て 世 の 人
事の物. 云
V かはす
を有リ
無 シ
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ノ無シハ無シ
(9)
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ニ
七
〇
かなる天狗
土里あまりのいたはしさにい
ハ無シ
湖以下十二字無シ
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心 苦 キ又〇
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音 信 ノ ア ル ト 暫 ハ
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モ姐〖シ、 テ 有 リ
いかなる山のおく それ と も
⑵ 風 ノ 心 地 ト ヤ ラ ン 聞 シ へ
⑵ 露.
ノ命モイ力、
>ナ リ ヌ ラ ン
⑶ イカナル山ノ奥ナリトモ
碎申置事モナク.
⑷ 此 慎 -一 テ 出 ナ バ
ニ
_ かH
ハ無シ
472
果 . 無 立 •童 • な .
テ.シ有有
無
リリ
シ
か間
«•
湛以下四字無シ
す道俗男女
にところせレわれのみなら
松の嵐のひわもなく涙は袖
ラレ無シ
^■
t-
471
⑷門主ノ御意一モサコソト思
ワレテ
云捨シ言ノ葉ヲ実
シテ
11
T-
(7) (6) (6) (5)
'/•
£*
!:
s A -
イ カ ナル山ノ
^-
(9)
ao (10
(14) (14)
(6) (5)
ニ
s若 公 ハ
W只事ナラズト
W 御嘆アツテ
s知 人 更 ニ ナ カ リ ケ ル 処 ニ
無シ
ハ無シ
にあらすと
ぎ
か ?
务祭
無 シ
せ む 有 リ 、 事無シ
を
と
モ
無
シ
何
上有リ
此間連々忍て
候 し か
りさるに
夕 亥 剋 計 ニ
行遇セ玉ヒテ候シカ
寄
h .•スル事ハ
御
唐 崎 ノ 浜 ニ テ
此 際 •.忍テ
何 様 カ ド ヒ 取 テ
謂 力 . ハス
山門
宅無シ
るに
心る
無シ
猶 .憤 を 散 せ す し て
第 十
M 立 .•ケル
蜂起セザラン
公 家 奏
>一ス
武 家 ニ .訴 . マ デ
申ノ日ニテ
勝タル同宿
⑷ ー合戦シ.
3 か 寄 ル
474
ガ為一一傾テ
如意越ヨリ.
湖水モ
⑶ 死ヌルダモ顧ミズ
本
か
S C林
I坊
蜂合ノ儀
ギ 戦 フ 大 衆 -一 ハ
M 是 •ヲ 先 途 ト ...
鬼 駿 %
唐院ノ七天狗
ノ無シ
:
3義 ヲ 金 石
的南ノ院ノ八金剛
如 意 越 ノ 道
や が て 有 リ 、 三無 シ
祕
11シ
城 壩 二 構 テ ...三 摩 耶 戒
ゐ て
^-
たり有リ
るへき
無シ
ノ 無 シ 、 ニテハなり
触訴る
て有
■
り
そ有リ
是 ガ 為 一無
1シ
死をもいたます
-y
3:-
ft-
1父 ノ か 府 モ
⑵ 左 府 ノ 第 宅
⑵打 寄 タ リ .
⑷ 坏嚙嘀払フ
i
ー. ー 同
に
(
1
0
s鏃 甲 胄 ヲ 通 ジ
g落 べ シ ト へ
壇
ニ七一
も
i
義は儀祕は比
ノニ字無シ
ハ無シ
く ••大 衆 に は
是 等 を 先 .と し て 押 寄 す 禦
ノ無シ
無シ
U4-
Ga) (14) (14) (13) &0
(7) (6) (5)
®-
(10
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X-
.舊 当 . 不 散 シ テ
⑶ 地 ノ 利 .次テ
亡 ス .
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473
¢5) (14) (14) (13) (13) (13)
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(6) (6 (5)
al) (10 (8)
㈣ 云甲斐ナキ
いけ
は有リ
I有 リ
⑵ 落 サ デ .ア ル べ キ
⑴ 堀 一 .死 人 」 テ
一
ッ無シ
ヤ無シ
⑷屛ノ柱
袈 裟 切
ハ無シ
得無シ
ざ
足ヲモタメ
⑶ 兵ノ三百人
ハ無シ
類 モ 無 キ
ニ七ニ
モ無シ
かしこくそ
ノ、 ニ、 無 シ
たり
に有リ
ヶル
何 ノ 故 ニ 力
中無シ
取
⑷ ネシクモ此梅若公
軍 ノ 最 中 •
はかり有リ
淡 路 国 ょ り の .物 と て
無シ
聞有リ
や無シ
免
戒 •つ く り て ル
寺 中 ノ
⑵ ト問エん
⑶ 戒ヲツ ク リ テ •
聞玉テ
.べ キ
穴アサマシヤ
尋
g阿 波 路 ノ 国 ヨ リ .進 物 ト テ
的第十
八 十 有 余 . . • ナル
ひてりの有リ
,
..••雨 雲 ノ ハ ヅ レ
s此3 翁
リ
やすく
t
けれ有リ
そ申ける
1候へ人におとり候はしと
と 覚 え 候 水 な ん と く まさせ
ハ無シ
からめての勢共七字有。
分丨ゾ申ケルニ
昀翔候ハン事ハ
. 丨
ト • ••
以下二十三字
置有リ
無シ
は有リ
と 电 #
⑴ ト 問 . . . 、ハ
⑷輒 (
ク)都へ
か無シ
に有リ
U カリソメナガラ立別テ
リ
@ト ラ ヱ テ .候
左方右方
⑶ 如意あ
に有 リ
得 ズ
⑷ 塗ハグシタル
⑷算ヲ跳テ
⑵ 見 mヤト
⑶ カツ パ ト 飛 下 リ
続
. •
切 テ 廻 ル .
.
$-
..責 入 け る 中 に
⑶ を往左往
斗 テ
落 テ ユ ク •
八 方 責 入 レヶ
バ
ハ
S蘊 奥 ヶレバ
s
風
-t:-
小いさかい
:r .
s若 公 .
呦 物 語 . •シケル
⑴
⑵是 等 こ そ
J
(3
(5) (5) (5) (5)
(11) ao ao
M-
477
m .
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(13)
(7) (7) (5)
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G)
a
4
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⑷ 付 参 ラセ 候
ク)
掌 -一 入 .(
暫
ユルガシ居タルニ
電
11応ニ
大 水 ..-一 成 ニ ヶ リ
丰
テアリ暫(
ク)無シ
る
の. 有 リ
忽に大竜と
翁無シキはく
i
⑷草ノ露ノシタぐリ
い
我 棲 ..シ
色
•
り
草 .露 に 於
すて^ リ
kk
りし
無シ
なか有リ
御 拝 殿
明 シ ッ )
第 十 九
㈦ 門 主 。
㈣ 行玉タレドモ
我 山 門 H登 .候テ
律 師 。
御 房 。
ト .申ヶレハ
§
心アリケレハ
g
人 モナクハ
⑴ 哀ー|テ遙ニ見送ト立玉フ
無 シ
齓無シ
サ
世ノ ..哀レ
余 波 惜 ク
⑶ 棲 馴 シ処ナレバ
サコソ神慮
⑵ 違ヒ
我 故ナ ル • 事
tt-
⑵打見テヨリ
a»
y-
⑶倐 然
電翁光天一ヒラメキ
於 勢
恐 ヮ ナ 、キテ
い無シ
うははれさせ給て候也
しろしめされぬ
X-
•h
童
児 •
諸 ヤ ル
オ ノガ 様 々 ニ
古 郷 •..花 園
行玉タレハ
甍 ヲ 並 べ テ
S亭
m人 モ 無 シ
奪ワレサセ玉ヒテ候ヲ
御里ニ知ラセ玉ハヌ事ハ
§
⑴内府ノ御行末
を と X の御行へ
申有リ
⑵ 尋申候ハン程モ
に
かれ有リ
尋問程I
• • テ
479
無 シ
とそ申ける
を有リ
の有リ
へ罷出
は有リ
ま
無シ
-7*
ニ七三
打 、 テ無シ
かし給ふ
あ は れ に て そ \ろ に 涙 を な
%•
有
⑶ 童御手ヲ
弓
(7) (7) (7) (6) (5)
(10 (9) (9)
(1¢
C14) (14) (14)
G)
a
M *
S S.ケル
478
^•
し•宅•テ•へ•を•へ•無
無 は •尋 •
シ
シ
て•
(8) (7) (7)
(10 ao (9) (9)
A6) (14) (13) (13
a6)
(
3
⑶ 此際
⑷ 押 シ 披 タ ル -一
i心
ア ヤ シ キノ
、歌
か .... ア リ
ニ立 テ 〕
s . i行
g歎 キ 給 ハ ン ズ ラ ン
阳投ゲサセ給テ候ツル
g見 参 ラ セ . . ツ ル • ニ
•
⑴ カ ナ ク 罷 過 候 ナ リ
ン ス レ ド モ
Hテ 纏 フ シ ヌ べ
S.
⑶ 疑 処 .ナケレバ
⑷足手ナ
地
⑷輿ヲ早メテ
小
あ や し き •.歌 の こ と は 在
前 ハ 先 、 テ無 シ
無シ
て
テ候無シ
見まいらせて候つる程に
罷無シ
無シ
も有リ
手足もなへたるこ乂ちして
たはれ臥ぬべき思なれとも
ふ
御無シ
ハ無シ
マモリ
御 身 ヲ ハ ナ タ デ
テ
H
おなしぅ
小念珠ヲ添
寄リテ無シ
底 ヲ 1
同宿中ノ物共
一
給
H ネ ハ
-一 フ シ テ
残 ル 処 ナ ク
岸ノ影ヲ
S
見
M 地
時 移 リ .
㈦紅葉ハ紅深キ
S見 .テ
岩ノ影
s物 .アルヲ
カホバセ
居タルヲ
童 ハ脚 ヲ 懐 ノ 中 二 抱 キ テ
ニ 七 四
ハ無シ
のそみ見給
さす
まて
1 ぬ程に
かツて
テ無シ
て有リ
もみち葉の
ハ無シ
え有リ
の有 リ
り
ぐ 無 シ
童 .御 足 を ふ と こ ろ . . に
御有リ
いたきて
•在 様 ヤ
一成ト思食テ
gイ カ -
御有リ
泣有リ
あたりの有リ
も有リ
下に有リ
思食無シ
.事
シホノ^^ト シ タ ル • •
、
,胸 ノ ア タ リ . ヒ ヱ 果 テ ヌ
..
⑷か
•.苔
-I臥
.声 更 ニ
7*
アマタ寄リテ
(9)
(
1
0 (9)
?-
:.
同 流 -一 身 ヲ
か か
シ ャ 其 空 キ
御有リ
;:
(10
(10
(11)
(
1
0
4) (1
(1
5) (1
3)
(1
5)
G
a
)
(3
⑷橋ハ爪
£
•顔
@ ト モ カ ク モ ナ ラ メ ト • • テ 思ひ有リ
48
S:
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3-
(3)
(6) (6)
480
ikM-
(5)
(8)
fl-
(7) (6) (6) (5) (5)
(8)
翌の务
肌 •胸 を
ハ無シ
後皆帰とも
シ
輿 車 ヨ リ 下 リ テ
W 玉ノ冠ヲ正シクシ
入玉ハ
(10 (10
降 (
落)
,
ハ
献酌の例
ハ無シ
ノ ^^
シ 、 クはふ
:
3金 張 ノ 内
s
還餘
S
S •.寺 門 ノ 外 マ デ
第 廿 三
玉ハ
’
⑴ 建 立 ノ事 .
⑴任
⑵ 興隆ヲ知テ
無シ
は有リ
玉 .橋 を
テ無 シ
存して
テ 候 無 、ゾ
遊戯レサセ玉フ
山門擁護ノ.
3ソ
遊 戯 .さ せ 給 候
神有リ
そ
⑶ 背テ
テ無 シ
⑷ 御 心 ヲ 悩 マ サ レ 候 ラ ン メ ト 御 心 を 悩 さ せ 給 候 らめ と こ
⑵ 興行仕テ候シ
明神有リ
S献 H
威 儀 ヲ カ イ ツ ク ロ ツ テ
^
,
膚 二 胸 ヲ
£ かノ日
⑶ 同宿 中 ノ
⑶ 次 を -一 帰 レ ド モ
⑶ 御 歌 -一
か い ト
i無シ
ヵシ無シ
ハ無シ
1は <
?
、モ
4^レ
テ無シ
483
S弔
身ヲ力へテ
為二テコソアレト
S
叻西 山 ハ
彼後世菩提
老シ
かり有リ
夜いたくふけて後
^.
誰 な る ら ん .
かれす是を
テ無シ
かこみ
へい
かたふ小
無 シ
T'y
x7--
皆テ
S第 廿 ニ
⑴ 住 寺 ス べ キ
モ 様
ナ .•ヶ
レバ
⑵ 奉リ
⑶ 夜 .•.深 テ ノ
誰 ナ .ラ ン ト
目 モ ア エ ズ ..見 レ バ
乗 1ハ
カンザシヲ懸タル夫人
g i
⑶ 相をハ
日 吉 ノ
⑶ 一隅
ヲ与フルモ
⑶ 垂 ル 、日
福
S
ル無シ
ル 、無シ
M-
ニ七五
7*
482
(11)
46)(15)
(6) (5)
;:
a -
<■
M -
/•
(7)
(1¢
a0
(14) (13)
(6) (5) (5)
(7)
(9)
⑶ 是ヲ非トシテ
g我 悦 処 ヲ バ
©経 論 聖 教 ノ 焼 ヶ タ ル
的 此 悲 一 一 依 テ .桂 海 ガ
賀 シ メ 給 ハ ン
ト無シ
我喜ことを.
も
此乱によて今桂海か
し
シ :メ 無 シ
.
有 リ
無 シ
け
⑬ 雲居寺
ノ義式ヲ
s廿 五 ノ
往生(
ノ)人ヲ向
§
Sト 云 事 ナ カ リ シ 力 ハ
昀玆ニ来集シ
娀聞人共一感嘆シテ
追 記
給
Hフ
幸節家絵巻の画図の箇所は、 ほ
ニ 七 六
雲居寺といふ御堂を建立し
の儀式を
て 年 々 の 春 こ レ に 一 :ー 尊 来 迎
ハ無シ
於
無 シ
M永 和 古 写 本 の 段 落 と 一 致 す
第 五 図 は 「い つ わ り の あ る 世 を し ら て た の み け る 我 こ X ろさ
る。
も ひ は 」 の次、永 和 本 、第 五 段 を ひ と つ 飛 ん で 、 第 六 段 末 に 当
第 四 図 は 「頼 ま す よ 人 の 心 の 花 の 色 に た ち そ ふ 雲 の か X るお
る」 の 次 、 永 和 本 、 第 四 段 の 終 り に 当 る 。
第 三 図 「石 山 へ は ま い り も せ て 、 こ れ ょ り 又 我 山 へ そ 帰 け
ふ心な る ら む 」 の次で、永 和 本 、第 三 段 の 終 り に 当 る 。
第 二 図 は 「こ れ や 夢 あ り し や ぅ つ \ わ き か ね っ い っ れ に ま ょ
け る 」 の次にあり、 永 和 本 、第 二 段 の 終 っ た 処 で あ る 。
ひけれは、石山の観音をこそかこち申めと思て、又石山へそ詣
即 ち 第 一 図 は 本 文 「暮 待 程 の 露 の 身 も あ ら し 、 い ま は と 思 わ
る0
M-
'>■•
至 サ ン ん ル
明 神 .張
⑵ 第 廿 四
な
皆 有 リ
辺.
フト
⑷ 同 ク .発 心
庵 室 *,1.
半 ヲ 雲 -一 分 ヶ テ
渓川の声
.人 ヲ 問 フ 度 毎 ニ
旮ハ 聲
S書 キ ッ ケ ラ ル 、ヲ
-
厭 フトスレドモ
'77-*
W 同様ナル
W
s
y-
門ノ客
3桑:
⑫彼方此方
リシ
シ
シ 這 •
484
⑬ 東山ノ
ノ.那•人.さ•モ.在.け.石.無.川.内.へ.
無辺*
ま•無て•る•壁•有無に.
&5) (14) (1$
(3)
*3E(7) (7) (6) (5)
■
(10
へ ぅ ら め し の 身 や 」 の次、 永 和 本 、 第 七 段 の 終 り 。
第 六 図 は 「門 さ 乂 て 御 待 候 へ と い そ か し け に い \す て \ こそ
第 七 図 は 「ま た あ ふ ま て を 待 程 の 命 あ る へ し と も 覚 す 」 の次
帰 り け れ 」 の次、 永 和 本 、 第 八 段 の 終 り 。
永和本、第九段の終り。
第 八 図 は 「共 に 見 し 月 を 名 残 の 袖 の つ ゆ は ら は て い く 夜 歎 あ
か さ む 」 の次、 永 和 本 、 第 十 段 の 終 り 。
第 九 図 は 「若 公 と 桂 寿 と た \ 二 人 、 行 へ き 方 も 知 す 立 出 ぬ 」
の次、 永 和 本 、第 十 一 段 の 終 り 。
1g
い。 第 二 十 段 文 中 に 数 行 入 る 。 但 し 、 之 は 、 文 禄 古 写 本 の 第 十
山へ 馳 て 行 」 の次にあつて、永 和 本 、第 十 九 段 末 と 一 致 し な
九段の終りに当り、任意的な構想とは思へぬ。
第 十 七 図 は 「み え さ せ 給 候 は ぬ 程 に ち か ら な く 過 候 也 と
て、 涙 を は ら - ^ と そ こ ほ し け る 」 の 次 、 永 和 本 、 第 廿 段 の 終
りに当る。
第 十 八 図 は 「童 も や か て 髪 お ろ し 、 高 野 山 に と ち 籠 り 、 つゐ
第 十 九 図 は 「通 夜 の 大 衆 三 十 人 一 時 に 皆 夢 さ め て 、 同 さ ま に
に 山 中 を は 出 さ り け り 」 の次、 永 和 本 、 第 廿 一 段 の 終 り 。
そ 語 け る 」 の 次 、 永 和 本 の 第 廿 ニ 段 を .つ 越 え て 、 第 廿 三 段 の
終りに当る。
第 十 図 は 「道 俗 男 女 多 く と ら れ て け り と 覚 て 、 暗 室 に た \泣
声 の み そ 聞 け る 」 の次、 永 和 本 、 第 十 二 段 の 終 り 。
本物語の終末にある。
つた単なる偶然の一致とは思はれない。
絵 巻 等 の 段 落 に よ っ た も の で あ つ て 、任意的な 構 想 に よ つ て な
か く 、 こ の 詞 章 .絵 図 の 構 成 は 、 準 抛 せ る 古 写 本 、 或 は 古 写
ど 一 致 す る 。 大 東 急 記 念 文 庫 の 文 禄 本 も 同 様 で あ る 。 (別 項 )
つてはいるが、 そ の 絵 図 の 描 か れ た 処 は 、 古 写 本 の段落と程ん
以 上 の 如 く 、永 和 本 、 廿 四 段 の 段 落 は 、本 絵 巻 で は 廿 図 と な
第 廿 図 は 「聞 人 共 に 感 歎 て 、 袖 を ぬ ら さ ぬ は な か り け り 」 と
I十
S 一 図 は 「い ら か を な ら へ し 玉 欄 干 、 一 宇 も 残 ら す 焼 払 は
る。 」 の 次 、 永 和 本 、 第 十 三 段 の 終 り 。
第 十 二 図 は 「寺 中 を 城 槨 に 構 て 、 や か て 、 摩 耶 戒 壇 を そ 建 た
り け る 」 の次、 永 和 本 、第 十 四 段 の 終 り 。
第 十 三 図 は 「す へ て 三 千 七 百 余 宇 、 一 時 に 灰 燼 と 成 は て
新 羅 大 明 神 の 社 壇 ょ り 外 に 残 坊 ー も な か り け り 」 の次、 永 和 本
第十五段の終り。
第 十 四 図 は 「大 内 の 旧 跡 、神 泉 宛f の 辺 に そ を き た り け る 」 の
次 、 永 和 本 は 、 第 十 六 段 を 一 つ お い て 、第 十 七 段 の 終 り 。
第 十 五 図 は 「新 羅 大 明 神 の 拝 殿 に 、 湖 水 の 月 を な か め て 泣 明
第 十 六 図 は 「坂 本 よ り 童 を 先 に 立 て 、 取 物 も と り あ へ す 、 石
し つ 」 の次、 永 和 本 、 第 十 八 段 の 終 り 。
ニ七七
大東急記念文庫蔵
文祿五年写本「
秋夜長物語」
ザ 本 、 一冊。
袋 帧 、 半 紙 形 竪 長 本 。 杉 原 紙 袋 綴 。 堅 r 十 四 .八 ® 、 横 十 六 •
六極。
表 紙 、紫 色 、 小 豆 色 に て 雲 形 模 様 を 描 い た 鳥 の 子 紙 。
字 面 、高サ約ニ十ーニー犍。
外 題 、 表 紙 の 左 肩 に 「秋 夜 長 物 語 」 と 墨 書 、 本 文 同 筆 か と 思 は
れ る 書 鉢 。 猶 表 紙 右 下 に 「明 王 寺 0 0 」 と 所 有 者 名 が 記 し て ぁ
る。 こ の 所 有 者 名 は 、 表 紙 裏 左 下 に も 、 稍 大 字 で 「針 村 明 王
内 題 、 「秋 夜 長 物 語 」 。
寺」 と墨書してゐる。
尾 題 、 第 四 十 ニ 丁 裏 、 第 二 行 に 数 字 下 げ て 「秋 の 夜 の 長 物 語
畢」 とある。
奥 書 、 尾 題 次 行 に 、 細 字 に て 「古 本 云 」 と 肩 書 し て 嘉
r 吉第二
暦 二 月 十 五 日 於 台 嶺 本 院 東 渓 或 坊 之 学 窓 遂 写 功 訖 」 云々と五行
に亘 つ て 、 古 本 の 奥 書 を 記 し て ゐ る。 次に第四十三丁表の第一
行 に 「文 禄 五 年 林 鐘 中 旬 遂 写 功 訖 」 と あ る の は 、 即 ち 本 書 の 筆
篆m
”s
f
’L
f
⑴ 「鏃 甲 胄 綴 し 」 (第 二 十 五 丁 表 )
一七八
i
#
:
ッ
r ラ」 。
又本書には、 四声を示すと思はれる中白の点が、 次の如く、
ある。 飜刻の際は、そのま乂に残した。
⑶「
暫円転するに」 (
第二十九丁表) の 「
シハ
⑵ 「
責入けれは」 (
第二十六丁裏) の 「
セメ」。
丁数、四十ニ丁半。 外に巻頭と巻末に白紙各一枚。
ラ ク 」 。等 で
薄墨の振仮名が以下に掲げる数ヶ所に見出される。
振 仮 名 は 間 々 施 さ れ て ゐ る が 、本文書写と同時とは思はれない
り 文 で あ る が 、 な ほ 巻 頭 、 序 文 の 如 き は 真 名 本 の 態 を と Mめ 、
返 り 点 、 送 り 仮 名 等 を 細 字 に 附 し て ゐ る 。句 点 、 濁 点 は な い 。
備 考 一 、本 書 は 古 梓 堂 文 庫 旧 蔵 本 で あ る 。 本 文 は 、平仮名交
挿 絵 、なし。
墨書してある。
の 漢 字 ‘及 び 仮 名 を 数 へ た も の で あ る ) 。 丁 附 が 綴 ぢ 目 の 下 方 に
(文禄五年写本秋夜長物語,
餐
^ ^l f J *
'^
^ ^ ;
领 1 ' 忽 急澈 之 1
f '
行 数 、 七 行 。 字 数 約 十 七 字 — 廿 二 字 。 (但 し 上 記 の 字 数 は 大 字
写年代を記せる も の と思はれる。
^,
-%.
玆I
(第 一 丁 表 )
漢 字 又 は 仮 名 に 施 さ れ て ゐ る 。 即ち
⑴
(
第二十四丁表)
摧歟。
⑵ 催伏。
(第二丁表)
⑶ 。
大ば。
⑷
賓 主 S (第 三 十 八 丁 表 )
(第 三 十 九 丁 裏 )
ー隅
ハ豸四十ー丁表) 等 で あ る 。
00
散見する。
一丁裏) 、 の 如 き
は、 云 ふ ま で も な く 、 そ の 奥 書 に よ る も の で あ る 。 本 書 の 他
清水泰氏により委しく紹介された。 本 書 を 嘉 吉 本 と 称 す る の
備 考 ニ 、 本 書 は つ と に 大 谷 学 報 (第 十 五 卷 第 三 号 ) 誌 上 に 、
当字などがたま <
丁表)沙 窓 (第十五丁裏)、所 院 (第四十
猶 、文 文 中 の 漢 字 に は 、水 魚 砂 (
第 七 丁 裏 ) 、 金 砂 (第 十 五
セリ」 三 字 の み で あ る 。
中 、 左 側 に 片 肢 名 「力」 と せ る は 、 私 に せ る も の で 、 原 本 の そ
宽 セリ
れではない。
朱 字 は 一 ヶ 所 、第 五 丁 裏 四 行 「雲 を 茂 り 」 の 「蔵
に は 所 々 、 右 傍 に 「… 歟 」 と 補 訂 す る 所 が あ る ◦ 所 掲 の 飜 刻
い。 ィ 本 は 伝 本 中 の い づ れ で あ る か は 不 明 で あ る 。 猶 、 本 文 中
その外、本書には、ィ本を以つて校合せる処が、 か な り 多
る。 之 等 は 多 く 近 鉢 に 改 め た 。
又、古鉢の片仮名も数字見え、漢字の異鉢字もかなり散見す
§茅 屋 な か は
00
に、 東 京 大 学 附 属 図 書 館 蔵 写 本 は 、 同 様 に 、 此 の 嘉 吉 ニ 年 の 奥
書を有する同一系統本である。
此の嘉吉本系統の写本は、 古活字本、 整 版本等に較べ、 或
は 天 理 図 書 館 蔵 写 本 、慶 応 義 塾 図 書 館 蔵 天 文 九 年 本 等 に 比 し
ても、 か な り 詳 細 な 叙 述 部 分 を 持 ち 、 且 っ 甚 だ 古 格 を 保 っ て ゐ
る。 今 、 如 上 の 諸 本 に 無 き 、 比 較 的 長 文 の 差 異 を 数 ヶ 所 掲 げ る
とゝ
けるあ
祇 候 の 人 、 五十余
第 十 三 段 第 二 十 二 丁 表 「御 門 徒 の 大 衆 五 百 余 人 、 白 中 に 、 左
苻の帝宅、 三条京極へ押寄たるに、近 所
ニ七九
は 、 諸 刊 本 、 天 理 図 書 館 写 本 、 天 文 九 年 本 、 武 田 博 士 旧 蔵 衣 .小
誰 に も 、 を と り 候 は し と そ 、 申 け る 」 等 で あ る 。 占〗
線の部分
参 せ 候 、何 共 名 を 付 て 、 召 仕 候 へ 、 虚 空 を か け り 候 は ん 事 、
雲 の は つ れ ょ り 、踏 は つ し て 、 土 に 落て候つるを、 とレへて
老 翁 を 一 人 縛 り て 楼 の 内 へ 入 て 、 申 け る は 、 此 翁 、 日 照 ©-雨
(第 十 七 段 ) 第 二 十 八 丁 表 「淡 路 国 ょ り 進 物 と て 、 八 十 余 成
す ..」
死 半 生 に 成 け れ は 、此 城 、 尽未 来 際 を 経 共 、 可落とも更みえ
煙 塵 を ま ひ て 、 三 時 計 戦たるに、 ょせて七千余 人 手 負 て 、半
命 を 塵 芥 に 軽 し て 、 打 出 / い、 防 き 戦 、 鏃 甲 冑 綴 し 、 鉢 さ き
第 十 五 段 、 二 十 五 丁 表 「… …提 切 好 の 覚 増 、 義 を 金 石 に 比 、
かん、 ー宇ものこさす焼払シ」
ひ b、 渡 殿 、 釣 殿 、 泉 殿 、薨 を な ら へ て 作 り け る 、 玉 の ら ん
人 、身 命 を 軽 レ て 、 防 き 戦 、 大 衆 、 事 と も せ す 、責
A -
0-
(5)
良絵本等のいづれの諸本にも欠けてゐる。語句に多少の相違は
あ れ 、 此 等 の 欠 部 を 有 す る 写 本 は 、 永 和 三 年 本 、高 節 静 彦 氏 蔵
且 つ 、本 書 は 、永 和 本 に 見 ら れ る 段 落 が 、 殆んど同様の処に
絵巻、並びに本書である。
設 け ら れ て ゐ る 。 即 ち 本 物 語 を 廿 四 段 に 分 ち 、各 段 落 は 行 を 変
へ、 本 文 ょ り 小 文 字 で 、 「第 一 」 「第 二 」 の 如 く 、 肩 書 し て ゐ
る。 但 し 、 本 文 書 写 と 同 時 の 書 入 か 否 か は 確 か で は な い 。 又所
々、 そ れ を 欠 く 処 も あ る が 、 段 落 の 順 序 に は 関 係 が な い 点 な ど
二八〇
セ
(マ、)
石 山 へ そ 、 わ し り ゆ き け る 」 で 終 る 。 永 和 三 年 本 は 、 この 章 の
す こ し 前 、 「我 身 サ テ 沈 ミ モ 果 テ バ 深 キ 瀬 ノ 底 マデ照(
ラ)
如 上 の 類 似 点 の み な ら す 、本 文 中 の 各 章 句 に 於 て も 、 甚しい
山 (ノ) 端 ノ 月 」 の 梅 公 君 の 歌 で 終 つ て ゐ る 。
差 異 は 認 め ら れ ず 、 永 和 三 年 本 、高 節 家 絵 巻 、本 書 は 共 通 点 が
語
H ラ ィ 寄 リ テ 茶 ヲ 呑 (ミ)、
M次 に 述 べ る ニ 点 は 、 両 本 に 比 し 、 本 書 特 有 の 性 格 を 示 し
著るしい。
た
てゐる。
永 和 本 の 第 五 段 「其 後 、前 ノ 桂 寿
...(日 本 古 典 文 学 大 系 五 行
酒ヲタ、
を 思 ふ と 、本 来 、 この段落は設けられてゐたものと考へてょい
で あ ら ぅ 。 更 に 高 節 氏 蔵 絵 巻 の 絵 図 は 、 ほ V此 の 段 落 に 従 っ て
ィ カ ニ 黒 ミツクス ト モ 、 ツキ シ ガ タケ レ バ 、 中 ' ^ 歌 計 ニ テ 」
分 ) ...
テ
ビ)ケル次ニ
H 遊(
描 か れ て ゐ る 点 な ど か ら も 、永 和 三 年 本 を 初 め と す る 古 写 本 系
こ の 段 落 の 示 す 意 味 に 就 い て 、清 水 泰 氏 は 、看聞御記永享十
には、 か く あ つ た も の と 思 は れ る 。
被 下 。 一覧。 」 と あ る 絵 巻 物 の 如 き 、 絵 と 詞 書 と の 間 を 想 像 さ
か に 書 と も 、 っ く し か た け れ は 、中 々 哥 計 」 に 終 る 一 章 で あ
梅 若 公 に 付 奉 k 随 、 桂 寿 と て 、 万 情 の 色 深 く し て … 」 以 下 「い
丁 裏 一 行 に 亘 り 、 「先 の 童 を た っ ね た る に 、 さ る 事 あ り 、 彼
の箇所は、本 書 で は 全 く 相 違 し て ゐ る 。 本 書ほ乂九丁表から十
れ て お ら れ る が 、 永 享 を 遡 る 永 和 の 写 本 の 中 に 、 す で に 、 この
の 章 の 始 め に 「此 以 下 ィ 本 」 と あ る の は 、 「中 '
'
—^歌 計 」 まで
る。 こ の 甚 だ 長 文 の 異 同 は 、 他 の 諸 本 に 類 を 見 な い 。 た 2 、 こ
年 十 一 月 十 一 日 の 条 「十 一 日 。 晴 。 秋 夜 長 物 語 絵 ニ 巻 。 自 内 裏
段 落 が 示 さ れ て ゐ る の で あ れ ば 、 一概 に 、 現 資 料 か ら は か く と
が 、 ィ 本 を 以 っ て 補 っ た 部 分 か と 想 像 さ れ る 。 とい ふ の は 、次
断 定 し 得 な い 。 而 し な が ら 絵 巻 物 の 絵 と 詞 の 構 成 と 、写本の段
落との相関々係は、高節家絵巻と之等古写本との関係からも相
の第六段に於ては、更に、 ィ 本 を 以 っ て 校 異 せ る 痕 を と
禄 本 の 第 十 九 段 は 「何 事 も 、 道 す か ら 、 御 物 語 候 へ 、 先 々 い そ
本 書 の 段 落 は 、 た 2 ーケ所、 永 和 本 と 異 る と こ ろ が ぁ る 。 文
本 は そ れ を そ の ま X書 写 し た も の と 思 は れ る 。 い づ れ に せ ょ 、
此 脱 文 が 他 本 を 以 っ て 補 入されてゐたのではあるまいか。 文禄
てゐるからである。 恐らく文禄本の拠った写本にも、すでに、
Mめ
互の交渉は意識的なものが窺はれる。
き参候はんとて、坂本より、童を前に立、取ものも取あへす、
文 禄 本 の 祖 本 た る 原 型 に 於 て は 、 この ィ 本 の 部 分 に 、 別の章句
を有してゐたものと考へられる。
他 の 一 箇 所 は 、本 書 廿 四 段 、 第 四 十 一丁裏にある瞻西上人の
小田清雄氏
摹 写本秋夜長物語
写 本 、 一冊。
東京大学附属図書館蔵
装 幀 、 大 形 本 。 美 濃 紙 袋 綴 。 竪 ニ 十 六 .七 糲 、 横 十 八 .九 榧 。
「寂 莫 の 、 苔 の 岩 戸 の 、 露 け さ に 、 な み だ の 雨 の 、 ふ ら ぬ 日 そ
な き 」 の歌 で あ る 。 こ の 歌 は 、 永 和 三 年 本 、高 節 氏 蔵 絵 巻 に は
表 紙 、欝 金 色 地 に 菱 形 の 空 押 模 様 。
無 く 、又 、天理図書 館 蔵 写 本 、或 は 天 文 九 年 写 本 等 、比較的古
本書のみ如上の歌をみ
字 面 、 高 サ 約 ニ 十 .八 粳 。
い 写 本 系 に は 、同 様 に 見 出 さ れ な い 。た
を み る 。 但 し 、 こ の 和 歌 は 、 瞻 西 上 人 の 詠 で は な く 、梅若公の
る。 古 活 字 以 下 諸 刊 本 中 に は 、 語 句 の 小 異 は あ る が 、 再 び 此 歌
り、左 肩 に 貼 っ て あ る 。
■
樹 之 菓 (ト也
旦飯ニ童男変化之華;暮結
二八一
菩提覚
II
誹謗(
併 染 紫 毫 於 愛 憐 之 思 一 畢 、 雖 ,然
哀 哉 昵童 子 花 髪 之 悲
戯
,
1
i 哉拋 教
H 学 観
道之嗜(親招
当
U 時 嘲 弄 ; 忽 忘 =陵 混 之
東溪或坊之学窓;
遂 写
訖
11功 ;
右雙紙主岩若丸
嘉吉第二暦二月十五日於こ台嶺本院
写 本 (
小字ニ記ス)
奥 書 、次 の 如 く で あ る 。
田印が押してある。
扉 題 、 「秋 夜 の 長 語 校 異 本 」 と 左 肩 に 墨 書 、 下 方 に や は り 小
内 題 、 「秋 夜 長 物 語 」 。
題 簽 、 短 冊 形 の 紙 に 「秋 夜 の 長 語 」 と 墨 書 、 下 方 に 小 田 朱 印 あ
く感謝の意を表す次第である。
し 下 された。 そ れ に よ り 、多 く の 疑 点 を 訂 す こ と が 出 来 た 。 深
本 写 本 の 飜 刻 に 際 し て は 、横山重氏より 本 書 の 御 原 稿 を お 借
写本と本書は、 かなり近い関係にある。
以 上 、 このニ点を除くと、永 和 三 年 本 、高節家蔵絵巻等の古
が始めである。
至 っ たかは、 不 明 瞭 で あ る が 、古写本系で 見 出 さ れ る の は 本 書
此の和歌が如何なる経路にょり流布本に現在の位置を占めるに
岩戸のしづけ き に 涙 の 雨 の ふ ら ぬ 日 ぞ な き 」 の歌に典拠する。
ろ の 日 蔵 上 人 が 御 獄 の 笙 の 岩 屋 に 籠 っ て 詠 じ た 「寂 漠 の こ け の
処を変へてゐる。 がこの歌は、元来新古今釈教の部にあるとこ
歌 と な り 、 而 も 、梅 若 公 が 釈 迦 ヶ 獄 の 石 籠 中 の 悲 歌 と な り 、且っ
^'
明応八年
乗泉坊
六月廿五日於本院東谷
1六 月 五 日
一
閑
写
之
?|
明治十五年六月
行 数 、九行。
I千 載 雑 下 ー釈ー
新 古 今 冬 ー 釈 ー 新 勅 撰 釈 ー 続千載釈ー続後拾遺秋
上一
\聖 人 去 廿 日 戌 時 入 滅 畢
4^件 聖 人 延 暦 寺 人 学
s»
1I
弥 勒 仏 一 又 東 山 野 面 成 ,百I丈
法水長滅歟吁嗟哀哉
二八ニ
\弥 勒 像 一 又 成 ,極
一楽 浄 土
百
一日 行
道 接 講 説 天 下 道 俗 男 女 上 下 衆 /人 皆 以 帰 依 今 已 入 滅 仏 日 已 隠
タ
H レバ此物語ニ後堀川院御宇トアル後ノ字ハ誤
リニテ堀川院御宇ト/ シテフサハシカラム元来作リ物語ナレ
斯ノ如ク見
バ事実ノ違フ事ドモハ多力リキ物語ノ\文 五
一
一山 ノ 僧 乃 問 答
たてとあるハ禅宗五山ノ事ナルべ キ ニ\瞻西上人ノ時代禅宗
\五 山 ア ル べ カ ラ ズ 又 児 童 の み な ら す あ ら ゆ る 所 の 道 俗 男 女
\旧 跡 神 泉 苑 の ほ と り に て お ろ し た り け り
是 モ 此 ノ 時 代 ニ云 べ キ 言 葉 ナ ラ ズ / 又 三 井 寺 六 ヶ 度 焼 失 シ タ
タ
一書タル物歟/ 猶 考
H ルハ文保年間寺門回禄ノ後-
雲にのせて内裏の
フべシ
ルヨシ見
又 奥 書 の 次 葉 、表 と 裏 に 、小 田 清 雄 氏 ょ り 、黒 川 真 頼 氏 宛 、
と誌してある。
六 月 十 四 日 の 日 附 の 書 翰 、 並 び に 、 黒 川 真 頼 氏 ょ り の 、 六月廿
日 の 日 附 返 書 が 、 再 録 さ れ て ゐ る 。 本 書 書 写 の 際 、 あはせて
掲 せ る も の と 思 は れ る 。 そ の 内 容 は 、小 林 久 三 郎家に伝はる古
鈔に此物語が応永比の作ならんと述べられたことは動かすベか
生 説 法 得 -一 其 道 -年 \道
来心
発一-成 --種 々 仏 事 - 彼八
-I寺丈中 作 ら ぬ を 知 り 、今 は な き 先 生 の 卓 見 を 今 さ ら の や ぅ に 驚 き 申 上 げ 、
人告云瞻西
鈔 本 を 借 得 て 群 書 類 従 本 と 、合看るに詞章の異なれるところが
新拾遺釈ー新後拾遺秋上
| 以上十一首ヲ収タリ
多い。群書類従本は誤脱難解の諸点があるがこの古鈔本にて明
中 古 記 I5K 臣 云 大 治 一 一 年 六 月 廿 日 瞻 西 上 人 入 滅 廿 ー ー 百 下
瞭 な る も 有 な ど善 本 と 思 は れ る 。 又 其 奥 書 を 視 て、古 物 語 類 字
瞻 西 上 人 、作 者 部 類 云 、金 葉 雑 下一 詞 花 冬
筆かと思はれるが、
備 考 .、 本 書 は 表 紙 の 次 に 後 補 の 貼 紙 一 葉 あ り 、 小 田 清 雄 氏
挿 絵 、なし。
で漢字右下に小字に記せる仮名は省いたものである。
字 数 、約十七字— 廿四字。 但し、本書は大字のみを数へたもの
小田清雄しるす
小 林 久 三 郎 益
の っ た へ も て る摹本写.を
し て 群 書 類 従
淡収本 \を 以 て 一 校 し つ
(
以下小字-テ朱書ス)
寛文十四暦
是ヲ□ 遣也大祕蔵也序千代丸主针六ノ
*5.
||
丁数、本 文 三 十 丁 。
fc-
今 此 本 の 首 尾 を 写 し て お 送 り 申 上 げ る 由 を 述 べ た も の と 、 それ
こ の 書 翰 に 続 い て 、 黒 川 春 村 の 古 物 語 類 字 鈔 の 「秋 夜 長 物
に対する真頼氏の返事である。
語 」 の項を掲出し、
すが雄
又本書は、文禄本と同様に物語を廿四段に分ち、それ-^文
…千 代 丸 主 t l 」
の記が、 文 禄 本 書 写 に 至 る 過 程 で 削 り と ら れ
たものと思はれる。
両 本 共 、此の記入を欠 く と こ ろ が あ
頭 右 上 に 細 字 で 第 一 、第 二 、第 三 と 記 し て ゐ る 。 その段落は文
禄本と全くー致する。 た
る の で 、 そ れ を 掲 げ る と 、 文 禄 本 は 第 一 — 第 四 (欠 ) 、 第 七
明治十五年大抜日抄
遡る 明 応 八 年 の 奥 書 を 誌 る し て ゐ る の を 見 る と 、夏吉本系では
じく所謂夏吉本系と称せられるものである。 但し本書は文禄を
前 記 文 禄 五 年 写 本 と 同 じ く 夏 吉 ニ 年 の 奥 書 を 有 し 、前者と同
は、 他 の 諸 本 と 著 し く 相 違 す る と こ ろ で あ る が 、 本 書 に 於 て
と も 、 つくしかたけれは、中 々 哥 計 」 に至る、 か な り の 長 文
の 色 深 く し て … … 」 に 始 り 、 「思 ふ 心 を 尽 程 の 事 は 、 い か に 書
つねたるに、 さ る 事 あ り 、 彼 梅 若 公 に 付 奉 随
x 桂 寿 と て 、 万情
文 禄 本 、 第 五 段 数 行 目 に 「此 以 下 ィ 本 」 と あ り 、 先 の 童 を た
(欠 ) 、 第 十 一 (欠 ) 、 第 十 四 (欠 ) 、 第 十 八 (欠 ) 、 小 林 本
と記して ゐ る 。
は 、 第 一 (欠 ) 、 第 十 三 (欠 ) 、 等 で あ る 。
明応八年系の本が文禄本に先行してゐたことが考へられる。 本
に、 奥 書 に 云 ふ 夏 吉 本 を 祖 と す る 同 一 系 統 本 で あ る こ と が 判
両 本 は 又 、本 文 の 異 同 ょ り み る も 、 末 尾 に 掲 げ た 別 表 の 如 く
「此 以 下 ィ 本 」 と あ る 肩 書 を 欠 し て ゐ る に す ぎ な レ 。
も 、多 少 の 字 句 の 違 ひ は あ れ 、 殆 ん ど ー 致 す る 。 た乂文禄本の
又 本 書 の 夏 吉 ニ 年 の 奥 書 に あ る 「哀 哉 ....... 暮結ニ
る0
二八三
振 仮 名 は 不 規 則 に 施 さ れ て ゐ る 。た V 一ヶ所、 「媒 介 」 (
十五ゥ)
て ゐ る 。送 り 仮 名 に は 間 々 省 け る も の も あ る 。
句 点 、濁 点 は な い 。
文 禄 本 と 同 じく真名本の感じをと乂め、返点、送り仮名を附し
備 考 三 、 本 書 の 本 文 は 概 ね 平 仮 名 交 り の 文 体 で あ る が 、 巻頭は
菩提覚樹之菓 ト
I 也 」の 一 文 は 本 書 の 奥 書 ょ り す れ ば 、明 応 八 年
す れ ば 千 代 丸 に よ っ て 記 さ れ た 此 奧 書 の 中 で 「明 応 八 年 ...
あ る の だ ら ぅ か 。 に は か に 推 定出来難いが、明応本の奥書から
... 千 代 丸 主 」
1 の 記 を 欠 く の み で 此 処 に 書 か れ 、 次いで
「文 禄 五 年 林 鐘 中 旬 遂 写 功 訖 」 と あ る の は 、 ど の や ぅ な 事 情 が
こ ろ が 文 禄 本 に 於 て は 、殆 ん ど 同 文 の 奥 書 が 、た ^ 「明 応 八 年 …
に、 於 本 院 東 谷 乗 泉 坊 、千 代 丸 主 が 書 い た 如 く に 判 ぜ ら れ る 。と
写本の摹写本で、その意味では文禄本と異るわけである。
書はその明応本系を寛文十四年に一閑なる者にょり書写された
を以つて、詳密に 校 異 を 朱 書 し た 写 本 で あ る 。
備 考 ニ 、本 書はその 奥 !
®に 云 へ る 如 く 小 林 久 三 郎 氏 蔵 本 を 明
治十五年に小田清雄氏ガ羣写し、 その本文の行間に群書類従本
^:'
であるが、漢字右下に施せる小字の送り仮名は云ふまでもなく
と左 右 に 施 せ る 振 仮 名 が あ る 。 振 仮 名 は 上 例 を 除 い て 、 平仮名
僅少の
片 仮 名 で あ る 。 従 っ て 仮 名 は 両 用 さ れ て ゐ る わ け で あ る 。 又書.
写年代が新しい故か異体字は殆んど見あたらない。 た
本 書 に は 上 欄 の 空 白 に 、小 田 清 雄 氏 筆 の 朱 の 註 記 が あ る 。 即
当字が散見する。
ち
きにかきて古
上
ふし^ ^ の言を校してさてあるべきをわづら
〇ノ 件 こ と な る
は し き を ね ん じ て か く ろ ぅが は し き ま で も の せ し は 類 従 本 の 体
裁を後にみん人にしらせんとてになん同本ーっ
鈔 本 の や ぅ に 段 を わ か た ず (ニ ォ )
。新 羅 大 明 神 の 新 羅 を 森 羅 と も 借 音 し て か け り と み ゆ 類 従 本 み
ク チ ト モ ヒ ト ク チ ト モ ヨ マ ル へ ケ レ ハ (廿 ー ゥ )
^
悪
ョ一ュ
!
I誘へ給ふ
卜丁秋の夜の永物語
丁
i 摂受の慈悲
卜丁しはしはかりの1家を
も
1 丁 悪 ョ リ 善 -ー
ー~給フ
.家 ""
丁
i 秋夜の長物語
丁
i 接受ノ慈悲
e丁 暫 "計ノ
はこれも花かとうたかはれ
一t丁 花 の 木 陰 に 立 や す ら ひ た れ
丁
一
!
!道 心 堅 固 無 常 ほ だ い
G丁 花 の 木 陰 に 立 や す ら ひ
ける青葉かちに縫たる水干
^Tlilk に
る^
ものにて
四丁童ぅ ち 佗 て 此 か た に 召 仕 は
四 丁人 あ り共 し ら さ り け る に や
丁梢垣にあまりて雲をしけり
の
たれは青葉かちにぬひ
丁
i 道心堅固即證苷
3«
'>*
-7*
た ,る 水 干 の
り ((朱 )蔵 セ リ )
丁
1J 梢 垣 に あ ま り て 雲 を 茂
六 丁人 有 共 し ら す も や あ り
けん
被仕者にて
M丁 童 は 打 笑 て 此 御 方 に 召
八丁なほさりに
九丁万情の色深く
して
叶丁上下に賞翫せらる^
,
事
-H
3»:'
。志 は り て の .
り類従本るに作レハィフマデモナキヒガ事ナガラ
と こ ろ な か ら し ん ら と 仮 名 字 か き せ り (九 ゥ )
ト ノ
校 シ オ ク 上 下 ニ 力 :ル
、タ グ ヒアリ(
廿オ)
人
ヒ
〇口 .
れ
)で あ る 。
〇 い .は 札 力 . ( 廿 七 オ 等
I 文第一葉には南葵文庫印がある。
小田摹写本
丁
i 生死即涅槃トナル
六 丁 上 下 に 賞 飯 せ ら る X事 た く
六丁よろづなさけ色深くして
^-
^'
(以 下 は 両 本 の 本 文 中 異 同 著 し き を 掲 げ た も の で あ る )
文禄五年写本
T 生 死 即 l i 成ル
rT
とし
S
に
找さすかにいまだいとけ
なきあたし心にて
4嶽
1计三或は吵々たる志賀唐
计ーー敵をほろほす媒骱
剋計に
相てさ様の小人は夕戌
忖一 大 律 へ 通 る 旅 人 の 行
於迦
计片時のあ卜たに大峯の
ほるものにて候へ
け御たつね候房の憐への
什唐崎の松
はれ何成天狗化者
叶くたびれはてけれはあ
あしたゆく心つかれて
れi
はするわさもなき習な
又 な き 思 ひ 付 給 ひ .る
A *
ひなしといふ
丁
J 冥顕仏陀
杜 T 中 / \ か く ^-かり
代丁いっそや雨の夕に
七丁めもあやに悦て
八丁山まてもたつねまいらんと
思ひつるに
M丁 其 坊 の 主 念 比 な る
け丁若公も早心得たるさまにて
有けれ共かなはて出かねた
T+
Tr.
無 疑
X と語れは
了
1: 興 顕 仏 陀
什 丁 中 ^^哥計
计丁日外雨の夕.
I 目もあやに祝
に 山まても 尋 参 ら ん
つ p
其坊の主懇なる
様
る心尽し
打 丁 人 の 情 を こそ 命 に 責 てと 思
へは
卜 ほのかなるかほはせいろふ
かく
に ..人 の も の 云 も い ひ か は
しもおほえぬなみた
す 事 も せ ら れ す た ^な
I くと
部戌剋に
敵 を ほ ろ ぼ5
す
二八五
対
汁技眇々たる湖水に志賀唐崎の
^
什打大津へとほる旅人行合て夕
计 g片 時 の 程 に 大 峯 の 尺 迦 の 嶽
登るものにて候.
l 御たつね候ほぅのとなりへ
け |辛 松 の 松
狗はけもの
G 草臥はてけれはいかなる天
ぁしたゆみっかれて
習なれは
三さすかにいまたいとけなき
T+
1£
T+
r+
I 若公も早心得たる気色
にて人目も哉と求
なれ共叶はで出かねた
る心尽し
_ 人の情をこそ命にせめ
と思へは
J ほのかなるかほの思へ
る色ふかく
M 世 の 人 こ と の 物 い ひか
はす返事もせられぬ只
| 1
^-
T-
T-
T-
T-
T -
^-
泣としもおほえぬ涙
|:
T+
T -+-
T+
T+
I J
T+
T+
T+
T+
崎の浜路を
た付四をぅてからめて城の
内すへて十万千余人
浜を
そうして十万千余人
ハおうてからめてのょせしゆ
丁ゥ
A
か
入ける
(七 字 ナ ツ ) つ -^い て せ め
左方へ落ちてゆく
i かなはしとや思ひけむ右方
外 ゃけん堀
Xかひたるに
地-を う こ か し 三 時 は か り た
Mは ら す 煙 塵 を ま ひ て 天
代鏃甲胄をとをし鉢崎具足に
ースー ー 塔 の し せ っ 奸 老
忖 四 一 一 一 塔 蜂 合 義 言 -一 '
什五鏃甲胄綴し鋅さき煙
塵をまひて三時計戦た
るに
叶五やけん湄
兵 六 かなしと 思 ひ け む 右
手左手へ落ちてゆく
A ぅかりける恥三井寺
1 うかりける 恥 三 井 寺 の 有 様
0 七 狂 有 見 物 も 出 来 て十 A 興 あ る 見 物 も 出 来 て
責入けれは
忖六からめての勢共続て
S
や
C十 一 是 そ 我 住 馴 し 跡 な る 覧 と
の 分 ®-や
忖 是 を 我 住 捨 し 、 むかし
思ひ立寄見たまふに石すへ
の石まても焼くたけて
叶一森羅大明神に
T-
J一一一念仏十返計唱て身を
候かくならせ給はんための
させ給ひ候を見まいらせて
S 一一一 念仏 十返計唱て身をなけ
二八六
投させ給ひて候つるを
候 つ る 程 に 、我等やか
せ て 候 は \御 恨 の ほ と は 何
せんと仕皆っれ共、 っ
り と ^'め 申 候 は ん つ る 物 を
去なから我ら水に入て御し
共御いり候へ先御身にすか
ぬ程に力なく罷過候也
及はす候
珠数をそへてもし我をたつ
金蘭の細緒の護壁瑠璃の小
十三橋つめまてゆきてみれは
しける
そ語りけれは互に涙をこほ
御いたはしやかなしやとこ
まひしぅへちか
て候やらん見えずならせた
かまく水にさそはれたまひ
ず X程 の は や に て 候 へ は さ
とも湖水の岩を卜り山をく
底にわけ入てたつね申候へ
といたはり申さんとて波の
かいをとり上心の及はんほ
若公のいつも身をはな
三十三橋爪にゆきてみるに
と こ ほしける
とそ. て涙をはら<
ゐにみぇさ士給ひ候は
て水に入て取上まひら
御十念ならはとしりまいら
余に悲しくみまひらせ
T H
丁ウ
たてかけ給ひし金蘭の
^-
■±
■^
T+
T+
T+
T -+-
T -+-
の跡よとてみれは石す
への石も焼くたけて
叶一新羅大明神の拝殿に
T-
T-
T
-
T
T-
+=.
T S
T S
ほそをの護壁瑠璃の小
ともなれ力しの御心にやは
しの柱にかけをかれたり
ぬる人あらはなき跡の形見
くもなら めと思 ひ と り て 折
せむなしき御 をも今ー目
見まいらせて後 こそと もか
御死骸をたつね出しまいら
れはさあらはいかにもして
一1什四同宿共あまたとりとめけ
念珠を添て橋の柱にか
けられたり
四同宿共あまた取止け
れはょレや其むなレき
御質を成共一目見て後
こそ兎も角もならめと
思ひて桂海はつなき捨
たる海士小舟に乗て淵
の底を望みみれは同宿
節かた田あまの釣人舟に竿
さ し湖水を栖 と す る か多か
りけれは律師立寄しか<
のゆへを語り彼行衛をもた
つね候はん露の間のわさを
やめて此舟をかし候~かし
と申されけれはしつ心^
-き
あま人も岩木ならねはあら
'三 十四 有 も む な し き
力) に て
白((スタ
计五ぅたてしの御分野や
什五むなしからぬ御貞を
计五残月西に傾ひて又,
をに
忖五わりなき形はかはら
ねくたるほとに遙のすそ田
上の里近く供御の瀬と云所
迄
忖四有 も む な し き か た ち に て
に十四ぅたてしの御有様や
丁ム
叶四むなしからぬ御質を
S 五残月西に傾ひて又天に
计
一
i五わりなき白(はかはらねと
针 五今はのき心の送りたまひ
も
二十五一惟(
スイ)の灰
ね共
六一惟(ッ
ィ
)の灰
乂敷大人高客
d ハ今は軒端に送り給し
六岩蔵
忖七をびた
の来るいきをひあり
针 <宴(ショウ)
興に和して
仁计六岩
村七まことに興に和して
乂めきたる威あり
忖六をびた^
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しき大人高客の
#*
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T r .
中間共は皆裸に成て-皆
のはざま岸の陰まて残
らずさかしけれ共曾而
みえ給はねは、天に仰
き地に伏て泣叫ふ事不
斜遙に時移りて供御の
瀬といふ所まて
T-
TTH
叶九真実の本意にはあら
S 九谷の小河音うき世の夢の
仁忖< 真言の本意-一非す
二八七
什一谷の音憂世の夢のさ
T-
< 御いたはしや我船にて
御尋候へと声々申律師うれ
TH TH
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JI
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TE3 TS TS
«-
しく 頓て船に恥乗て同彼
船人をあまたかたらひ爰の
淵かレ この岩の1 さ ま を 尋
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Ts
7-+
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め^ とな.き人をとふ
たびことにそてなる月
か叶三古和云
頂叶三飯ニ童男変化之花て
リ
結 一一菩 提 覚 樹 之 菓 一
トナ
か •つ .き .の
く .い 跡 .御
叶 'ニ 童 男 変 化 之
募一
華-一 ハ 結 ニ
Tオ
ら.ひ•を.ひ•と
ね •瞻 •お •出 .\
け •西 •さ •し •若
れ •は • へ • な • 公
菩提覚樹之菓一ト也
内 題 、 「秋 夜 長 物 語 」 。
尾 題 、無し。
丁数、全 三 十 四 丁 。
奥 書 、無 し 。
行 数 、毎 半 葉 八 行 。
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字 数 、 一行約十四字〜二十五字。但 し 本 書 は 漢 字 を 大 字 に 記
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著
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つ •か .泪 .も .い
天理図書館蔵
室 町 末 頃 写 本 「秋 夜 長 物 語 」
写 本 、 一冊。
装 幀 、和袋綴。
當
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も •に •と •み • \
ひ .む •に •お •と
表紙、茶褐色墨流し模様。
改 装 。竪 ニ 十 六 .五 犍 、 横 十 七 .七 極 。
字 面 、 高 サ 約 ニ 十 ニ .五 糙 。
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お .月 .こ .の ./
「大 正 十 三 甲 子 九 日 」 と あ る か ら 推 し て 、 表 紙 改 装 時 に 、 外 題
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写 . こ . 更 . 吊 . 事 ,さ
本 .そ •行 •ふ •を •め
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外題、表 紙 中 央 に 「
秋 夜 長 物 語 」 と 墨 書 し 、右 肩 に 同 筆 に て 、
共に誌したのであらう。
V-
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丁三
ォ十
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し、仮名は大字で漢字の直下に記せるもの、小字の振仮名、同
じく右下に片寄せて記せるもの等ある。右は大字のみを数へた
ものである0
備考一、本文は片仮名交りの文体であるが、所々、漢文体の
跡をと め
M 、返り点、送り仮名等を細字に附して、真名本に近
い感じを与へる箇所もある。和歌は別行に本文ょり一字下げ一
行に写されてゐる。
仮名には清濁の区別がほ な
M され、漢字の大部分は、その右
側に振仮名が施されてゐるが、処にょつてはその左側にも施し
た場合がある。又漢字、仮名の異体字、略体字等の使用も少く
な い 。
料紙はかなり古び、虫蝕のあとが著しく、なかには判読困難
な所もある。
処 二 某 僧 都 ト ヤ ラ ン 云 人 ……イ
本文中には、間々淡い墨書で一本を以つて校合し、その後に
ィ と誌してゐる。
ナタ
.モ余ニ長居セン事モ斗
目ケンモサス力
「フ ミ ノ ヒ ホ ヲ ト カントシ 給折節、有ル人 ミ ス ヲ ヒ ラ ヰテ
〇
内へ入ルこ (八ゥ)
。 「
ーづノ方ノソラヲモ見ハヤト思へ
力 、ト 思ヒ」 (
九オ)
ト モ .. イ
〇常r- ハ児タチ」(十ウ)
人 目 モ •
「
児モ ハ ヤ コ 、ロェ 給へ ル気色 ニテ スキマモガナトヲホシ
〇
メシ」(十一オ)
。「
春尽キテ、連理ノ花ノ別レ留メカタケレハ、小篠ノ。
一夜-一
」(十三ォ)
ツ ル ヲ ア マ リ ニ 悲 ク ..ィ
「
心ヲコメテ待給へトモ」(十四オ)
〇
。「
西蓮坊…」(十九ォ)
or
身 ヲ ナ ケ サセ給テ ソ ロ ヲ 見 マ ィ ラ セ ソ ロ へ ハ
」
(二十七オ)
その他に淡墨の改訂箇所が七っほどある。 本物語の詩中、
の八箇所である。 一本はいづれの本に該当するかは、僅かの
例から推定し難い。
「
肝
心
然
ト
シ
テ
」とあるをその右側に
悠r」と正し、 「
禅檢」
の「
檢」を 「
榻」と同じく訂正じてゐる。更に三丁ォ「
水旱」
とあるを「
干」、九丁オ「
ソノ方」を 「
ソナタ」と改め、三丁
ゥ「
誠ノゥッッナラネバ」の「
誠」の右側に「
添」と薄書したも
のなどがある。
又恐らく書写の時、写し落した本文と思はれのであるが、其
金ノ折枝ノ橘一薰 物入テ色々ノ軽 十重
n
タ
f テサル様也
、へテ遊 ケ ル次ニ。サテ、梅若公二思ヒ迷ヒ
ヲ タ
の処に 印
0 を誌し、その脱文を行間に同筆にて補ってゐる。
此君ノ御名ヲハ梅若公ト申御里ハ花園ノ左大臣殿一テマシ< 候
。「
童答。御里ハ花園左大臣殿ノ御子息梅若公ト申候」 (六
ゥ )
「
酒
〇
ネ送タリケレハ童モハヤ志ノ深色ヲ見テ万ッ心
二八九
タル
「
童モ。
日ノ暮ルマテ祇候シタルニ」(八ウ)
〇
世 ノ 事 人 /物 云 モ カ ワ ス 返 事 モ セ ス 只 泣 ト シ モ 覚
「
心シホレウカレ,.テ。涙人目ニ余リテ、ヲサエル袖モ…」
〇
心ノ闇…」(七ウ)
Is
ハヤトハ思へトモ申置事モナク出ナハ門主ノ御意サコソト思ハ
叉人二思ヲ付ヌルハスル態モナキ習
。 「タ ッ ネ 行 。 今 一 度 ァ 斗 ミ ハ ャ ト 思 也
レテソレモ叶ハス行術モシラヌアタ人ノ
Q ,ヶ ニ モ 丰
。「
未 タ + ト ヶ ナ キ ア ダ 心 ニ テ 0 被 ぃ 仰 セ 出 ; ヶレハヶニモ
御コトヮリヵナト童思テ」 (
十五オ)
等 そ れ で あ る 。補 写 の 部 分 を 本 文 中 に 加 へ て も 、 おほょそ前
後に文脈は通ずる。
猶 僅 か で は あ る が 、当 字 、誤 字 、振 仮 名 の 誤 り が 散 点 す る 。
備 考 ニ a 諸本との関係に就いて記すと、本物語の諸写本は
詞章の異同が著しく、当写本もいづれの系統に属するとは一言
に云難い。 以 下 概 略 諸 本 と の 顕 著 な 相 違 を あ げ て 、本書の諸写
本上の位置を示すことにする。
既 述 の 如 く 、永 和 三 年 写 本 、高 節 氏 蔵 絵 巻 、並びに文禄五年
る の で 、 いま、 そ の 一 本 、 永 和 三 年 本 に 依 っ て 、 本書と の 著 し
写 本 、小田清雄氏摹写本の四本は、 かなり近似関係が見出され
き差異を摘出すると、
。永 和 本 第 十 七 (
同四七六頁)
ニ九〇
釣 殿 、 泉 殿 、甍 ヲ 並 (ベ ) シ 玉 ノ 欄 干 、一 宇 モ 不 残 焼 (キン払フ
八 十 有 余 ナ ル 老 翁 ヲ 一 人 縛 (リ ) テ 楼 ノ 中 ヱ 入 (レ) テ 申
(シ) ケルヽノ、 S 翁 雨 雲 ノ ハ ブ レ ヨ リ 踏 ミ ハ ブ シ テ 落 (チ )
テ 候 (ヒ) ツ ル ヲ ト ラ ヱ テ 候 。 何 ト モ 名 ヲ 付 (ケ) テ 召 使 ヒ
(シ) ケル
候 (へ) 。 虚 空 ヲ 翔 候 ハ ン 事 ハ 、 誰 一モ劣リ候ハジ」 トゾ申
。永 和 本 第 廿 ー (
同四八◦頁)
。童 ハ 脚 ヲ 懷 ノ 中 二 抱 キ テ 「ウ タ テ シ ノ 左 様 ヤ 。 我 等 ヲ バ ィ
ア今ー目空シヵラヌ御ヵ
力 ニ 成 (レ) ト 思 食 テ 、 力 、ル 事 ハ ア リ ” ル ゾ ヤ 。 梵 天 .帝
シ、 命 ヲ 塵 芥 一 一 軽 ク シ テ 、 打 出 <
塞 ( ) 戦 フ 。 鏃甲冑ヲ
三 町 ツ ブ テ ノ 円 月 房 、 提 功 好 (ミ) ノ 覚 増 、 義ハ金石一一祕
ゐ る の は 、 永 和 本 、 第 十 五 、 (同 四 七 四 頁 )
ニ、 又 四 本 共 に 有 す る 箇 所 で 、本書が相当に異る本文を示して
ひ はあるが、之 等 古 写 本 系 に は 、以 上 の 詞 章 を 共 に 有 す る 。
……等 である。 高節氏蔵絵巻並びに文 禄 本 系 も 多 少 の 語 句 の 違
タ チ ヲ 見 セ 玉 へ 」 。 声 モ 惜 シ マ ズ 啼 (キ ) 悲 シ メ ド
釈 、天神、地祇、ル我等ヵ寿ヲ被
?-
半 生 ニ 成 (リ ) ケ レ バ 、 此 城 尽 未 来 ヲ 経
と あ る 合 戦 の 場 面 で あ る 。 こ \を 本 写 本 で は
(ル) ト モ 、 落 (ツ) ベ シ ト ハ 更 一見ヱザリケリ。
騎 手 負 (ヒ) テ 半
通 シ 、 鋒 煙 塵 ヲ 卷 (ィ ) テ 、 三 時 計 戦 ヒ タ か ニ 、 寄 手 七 千 余
¥•
一、 永 和 三 年 本 に あ っ て 本 書 に そ の 本 文 を 全 く 欠 く と こ ろ ー 点
線の部分— は
打
H 寄
^-
。永 和 本 第 十 三 段 (日 本 古 典 大 系 .御 伽 草 子 •四 七 三 頁 )
御 門 徒 ノ 大 衆 五 百 余 人 、 白昼一一左府ノ第宅、 三 条 京 極
)
,
ト モ セ ズ 責 (メ) 入 (リ ) 卜 ル 間 、 渡 殿 、
(セ)タ リ 。 近 所 ノ 祇 皆 (ノ) 人 五 十 余 ん 身 命 ヲ 軽 ジ テ 塞
戦ヱドモ、大f
?-
三町ツフテノ経 一、 サ ゲキリコノミノ 増 長 、 互 に 命ヲモヲ
シマ ス、 身 ヲタバワズ 、 入カエ- ^- セメタ、カウ、大勢
ナレ
手ヲ斗ヲモカエリミス、フセキテ
ハ、ウタル、ヲモ 不レ用、
ハ又 案 内 者 ナ レ ハ 、コ、力シコニテョセア ワセ、
ヲツタテ^セ
m テニ ハ、ウタ レ、テヲイノモノ
攻 戦 フ 、 三 時 ハカリ 也 、
こ X で 、 本 写 本 と 片 仮 名 古 活 字 本 と の 異 同 の 大 概 を 、— 本 文 中
ゐ る 点 で は 、 片 仮 名 古 活 字 版 に 類 似 す る の で は な い か 。従って
の小異は之を略しー別表に次掲した。
五 、但 し 本 写 本 に は 一 ヶ 所 、文 脈 が 他 本 に 較 べ て 、甚だ移動し
「
童子打咲テ吾コソ其御方ニ召仕ハレ候者 テ
候、御名ヲハ
一
一
片 仮 名 古 活 字 版 (四 丁 ゥ )
て ゐるところが あ る 。 単 に 本 文 の 乱 れ と も み え ぬ 。
梅 若 公 ト 申 候 、 御 里 ハ 花 菌 ノ 左 大 臣 殿 一 一 テ 御 座 侍 リ 『御 心 ワ
三千余人也、 城 中
サ キヲマワ 年テ、ウチネリ、カクテ ハコノ城経-
クカタナク基ナキ御心アテニテ候へハー寺の老僧若輩春二ヲ
ノ モノ ト モ 、斗ョカツニノツテ、テ
尽未来際 】
不レ可レ落- トソ見タリケル
木 ノ花ヲ 見テ外 一一散心
ルモナク 中 秋ノ月ノクマナ
と あ る が 、 此 の 写 本 で は (六 丁 ゥ )
キー 皆
一吾 家 ノ 光 ヲ 諍 フ 風 情 ニ テ 御 座 候 ヲ 』 此 御 所 ノ 御 在 様 余
ニ 許 ス 方 ナ ク … … s々」
クレタルー
となって、漢 文 口 調 の 文 体 は 、平易な仮名の文体にと移って
ゐる。
此 の 数 ヶ 所 は 、永 和 本 系 並 び に 文 禄 本 系 と 、本 写 本 と の 相 違 を
示 し 、各 特 微 を 提 示 す る 諸 点 で あ る が 、天 文 九 年 写 本 、片仮名
及び平仮名両 古 活 字 本 以 下 、寛永十九年版以後の諸版本に於て
「
土里ハ打咲 テ 我 コ ソ 、
其 ノ御方ニ 召使 レ ソ ロ 者 ニ テ ソ ロ へ ト 答
此ノ君御洛ヲハ梅
サテハ此君ノ御名ヲハ何ト申ソト問へハ童答。御里ハ花菌左
も 、同じく 簡 略 で あ り 、 以上四本の古写本系との顕著な相違と
なつてゐる。
許
M
ス 方 ナ ク ……
若公ト申御里ハ花園ノ大臣殿ニテマシ< 候
大臣殿ノ御子息梅若公ト申候、此御所ノ御有様、 ア マ リ
と文 脈 は 続 い て 、古 活 字 版 の 『 』 に当る部分は、次の如く七
云々」
る。 本 書 に 於 て は 、 と の 段 落 は 第 三 段 の 章 ま で が 、 前 両 本 と 全
三 、 又 永和本、文 禄 本 系 は 、全文を廿四段の章に分けられてゐ
く同様に段落が設けられてゐるが、以後、此の章毎の区別は書
ヨシヲ語リケレハ 童打咲テ申ケルハ 『此 君ノ御心ワク方ナク
偽アル世トタニ思召サレヌホトノアタナキ御心アテニテ御座
シソPへハー寺ノ老僧若キ輩ラハルニヲクレタルー木ノ花ヲ
「サテ梅若公- 思ヒ迷タル心ノ闇斗ッハルヘシトモ不レ覚
丁ゥの処に揷入されてゐる。
四 、 そ の 他 、 か な り 多 く の 語 句 、 助 辞 等 の 異 同 、 或 は 、各々に
き誌されなくなつてゐる。
文 章 上 の 諸 特 徴 を 見 出 す 。之 等 の 諸 点 か ら 思 ふ と 、本 書 は 、天
の文 体 が 、 永 和 本 系 の 古 鈔 本 に 較 べ て 、比 較 的 多 く な つ て 来 て
文 九 年 写 本 、片 仮 名 活 字 版 に 近 い 関 係 が 認 め ら れ る 。 特 に 仮 名
ニ九一
見テ外一散ル心モナク中秋ノ月ノクマナ
皆
キ一
一我家ノ光ヲ諍
k
フナル風情ニテ御座候』先ッ文ヲ被
遊ソロへ::: 云々」
シ、 後 ホリカハノ院ノ 御
ニ九ニ
1丁古縁ノ繁ク所ハ
.後 堀 川 院 ノ 御 宇 ニ
ニ丁錦ノ戸帳ノ
宇 ニ丁 キゥエンノツナク所ハ
ニ丁云計ナク勝ヤカナルカ
と な り 、本 文 に 小 異 は あ れ 、 この一章句は、他 の 諸 写 本 、諸
三丁 錦ノ •帳ノ
才
「
寂漠ノ苔ノニ袖ヌ
テ 、 涙ノ雨ノ力ワク間ソナキ」 (
片
五 、 な ほ 注 意 さ れ る の は 、梅 若 公 が 釈 迦 嶽 の 石 籠 中 で 詠 じ た 歌
刊 本 と 異 る 箇 所 に 錯 綜 し て ゐ る?
三丁 イウハカリナク、 アテヤ
才
カ ナ ルガ
——
ヲサカサマニノ
丁暮行気色
才
三丁マタ東雲ノ
才
丁反魂香ノ煙一一, テ
消
一
一..テ
仮 名 古 活 字 版 )— が 本 書 に は 無 い 。 この和歌は、 両古活字以下
サレテ
三 丁 マ ダ シ ノ 、ベ
四丁 三尺ノ
才
•
ヒ
aケレ
議 院 ノ 御 房 □唐 門 ノ 内 1
アラシ、今ハト田
四丁暮待ツホトノツュノミモ
ムカコトク
M
四丁 ムナシキ山ノ花ヲェィハ
才
テ見シカタチニ
四丁 反魂香ノケフリニウカミ
才
シキニ消(
キヤ)
三丁
寄
\ 贈者柳
ク レ ュ ク ケ
諸刊本並びに武田博士旧蔵奈良絵本等には掲載され、永和三年
写 本 、高 節 氏 蔵 絵 巻 、 天文九年 写 本 等 の 古 写 本 系 統 に 欠 い て ゐ
て、 前 者 と は 区 別 さ れ る 。
た 2 し 文 禄 本 系 に は 、 物 語 末 に 、 例 の 「む か し み し 、 月 の 光
を 、 し る へ に て 云 々 」 の 和 歌 の 次 に 処 を 変 へ て 並 記 さ れ 、 歌詞
十二字無シ
片仮名古活字
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-H
7
1
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オ
三丁三尺ノ
如シト
謹院ノ御房ノ庭一
今ハト思佗テ
三丁暮待程ノ露ノ身モアラシ
顿 ^ヲ
呑
•
丁 空 山ノ花綻ヒテ
i
-s
も — 寂 莫 の 、 苔 の 岩 戸 の 、 露 け さ に 、 な み た の 雨 の 、 ふらぬ日
つてゐる。
ヒ丁
T-
ぞなきI -詞
VI 章 も 相 違 し 、 且 つ 、 こ の 和 歌 は 瞻 西 上 人 の 詠 と な
尚 、 本 書 の 改 装 表 紙 、 右 下 に は 「南 都 ニ 条 家 文 書
生彦蔵」 の寄贈者朱印が捺してある。
(本 書 は 天 理 図 書 館 「ビ ブ リ ャ 」誌 上 に 近 く 翻 刻 の 予 定 で あ る )
<
(
点線ハ両本ノ相違箇所、漢字、助辞等ノ違ヒ、叉本文中ノ少異ハ省ク)
天理写本
一丁今ハムカシトモ申ヌ
"?
五 丁 フ ル 雨 ニ ヌ ル .ト モ ヲラ
コソ
I
ン山桜雲ノ力へシノ風モ
(マ ト ) ハ レ テ 、
サソ
五丁タチヌレタル鉢是モ花力
ト迷
四丁降雨ニヌルトモ手ヲラン
ソァい
山 桜 雲ノ力へシノ風モコ
四丁立ヌレタル姿是モ花カト
疑ヮレテ花ノ露ハ誘フ風
モヤアラント
四丁雲ニモ霞ニモカスヘキ
ゥ風モヤアント
五丁雲一モ霞ニモヲシムヘキ
州 丁 遙 ニ 歩 ミ 、ルフサノ如
ニテユラユラト懸タル
五 丁 遙 ニ 歩 ヲ 見 ハ 、 タケナル
ノ糸ニ
力 ミ ノ ユ ウ ^ ^ タルガ棚
丁
1 御年ノ程十六七計一一見サ
糸 -一
技丁御年ノホト十六七二見へ
セ給フ御児ノ御事ャ知セ
柳 ノ
サセ給ソロツル少人ノ御
Q
レ 候 者 -テ 候 御 名 ヲ ハ 梅
nソ、 其御方一一召仕ハ
給テ候
給テソ
ト答
ニ召 仕
ニテ ソ ロ へ
六 丁 我 コ ソ 、其 ノ 御 方
者
若公ト申候御里ハ花菌ノ
ソロ
フサテ此君ノ御名ヲハ何
左大臣殿一テ御座待リ
殿ニテマシ <
候御里ハ
申 御 里 ハ 花 園 ノ 、左大臣
此君ノ御名ヲハ梅若公ト
ト申ソト問へハ、童 答 。
レ
丁
1 吾
コトヤ知リマイラセサセ
0-
#-
花菌ノ左大臣殿ノ御子息
梅若公ト申候
托了务閑1
五丁壷ノ石文ノツテ一テモ
丁
一
J .閑 杜丁坪ノ石踏マテト行テ
1丁 夢 ト 現 ト ノ 面 影 一
ケ ル 故 ニ 童 子 モ 3 ロス心
五 丁 茶 .ヲ 飲 酒 ヲ 勧 ハ テ ソ 遊 ヒ
ニ
七 丁 夢 ト ゥ ツ 、トノハヵナキ
外 丁 茶 ヲ 飲 、 酒 ヲ タ 、 へテ遊
ヲへタテヌ様ナリ
程言ノ葉
一•
一薫物入テ色々ノ軽媛十
五丁思フ心ヲツクス
ヶル次一一、 金 ノ 折 枝 ノ 橘
ハヤ志ノ深色ヲ見テ万ッ
重 ネ 送 タ リ ヶ レ ハ 、 童モ
心0 へタテサル様也
A丁 思 フ 心 ヲ 尽 スホトノ言ノ
ハ、 ク ! ミ
一 過 ルトモ 尽シ
力 タケレハ中々歌計ニテ
岐丁知セハヤホノミシ花ノ面
葉 ハ 、争テか筆モ可書ナ
•.
マ
マ
レハ、 中 々 歌 計 也 。
柯 丁 文 ノ 紐 ヲホトカントシ 給
丁
g 梅若君貌打アカメテ
ヲ
mv
八丁シラセハヤホノ見シ花ノ
カントシ
影 ニ 立 ソ フ 雲 ノ 力 、ルマ
ヒホ
ヲト
面影一タチソフ雲ノ迷フ
心ヲ
フ ミ ノ
M丁 若 公 打 咲 テ
八丁
ニ九三
給 折 節 、有 ル 人
ミスヲヒ
トャラン云人簾ヲ挙テ
フ処一一出世ナル某ノ僧都
六丁タノマスヨ人ノ心ノ花ノ
子トルトモ軽ク嬉ク思テ
が丁御返事指出シ給タレハ童
中へ
五丁此ノ文ヲ見セシトテ袖ノ
ラヰテ
八 丁 此 フ ミ ヲ 見 セ ジ ト 、御顔
打 赤メ袖ノ 内 ニ
八丁御返事ヲ書テヽタヒニケ
リ、童是ヲ取テウレシク
思テ
候ハメトテ童子一暇乞シ
テ
拉丁山へ登ラントテ庭マチ出
タレトモ
行相タリ
丸丁誰ナルラント見ヤリヶレ
ハ、 梅 若 公 ノ 媒 セ シ 童 桂
寿 丸 ニ テ ソ侍リ ヶル
丁
一辻堂ノ有ヶルニ立寄
f 傍 ケリ
十 丁 色 殊 ニコ ガ レ タ ル 色 々 重
ノ薄様ノ
什丁サコソハツユノト戯レ打
讨 丁 別 ヲ 歎 ク 身 ニ テ ト 、 戯レ
力 へ シ テ 、 フ ミ ヲ見ハ
十 丁 偽ノアル世ヲ シ ラ テ 契 ミ
ヶル
十 丁 自 然 ノヒマ ヲモ
十丁ネンコロナル様て朝ニ一暮
ニ九四
六丁誰レナルラント見ヤリタ
レハ桂寿一テソ有ケル
以丁傍ナル辻堂ニソ立寄ケル
技丁色殊ニコカレタル紅葉重
ケレハ
ノ W iノ
ソ
一ヌレ候ハン
n ハ露-
け丁サ
上
丁
f 別ヲ歎ク身ナラテト打咲
テ 、 文ヲ見レハ
七 丁 偽 リノ ア ル 世 ヲ シ ラテタ
ノミコシ
丁
J 玉簾ノ隙ヲモ
I スキマモガナトヲホシメ
ル心尽シ見モ中々心苦シ
レトモカナハテ出力ネタ
代丁人目モ哉ト求メタル様ナ
代丁懇切ニモテナシ常ニ.
シ出カネサセ給タル、見
ケレハ
モ中々心クルシケレハ
四ノ営アテ常ニハ
23:-
丁
< タノマ ス ヨ 人 ノ 心 ノ 花 ノ
ソ.暮.ソ
レ •サ • ナ
モ• ハ
タ
ヒ•ヤ
ノ
色ニアタナル.
雲 ノ 力 、ル
. いハ
モ見• ナ
余ッ• 力
色 ア タ ナ ル 雲 ノ 力 、ル迷
\
へタ *
3
ト ニ • ソ
タ 、ケタレハ又コソ参リ
ト梢• 尚
ヽ
九丁ソノ方ノソラヲモ見ハヤ
、• フ
ニ
ト 思 へ ト モ 、 余ニ長居セ
ン 事 モ 斗 力 、ト 思 ヒ 、 マ
タコソ参リ.
候 ハ メ 、 ウレ
シクモ通心ノシルへト成
思ヲ• モ
六 丁 傘 サ シ タ ル 騎 馬 ノ 若 党 -•
T-+-
ラ セ 給 ツ ル 物 カ ナ ト 、童
ニ 暇乞テ
九 丁山 へ 登ラ ン トテ、湊 ノ 方
01 g出 タ レ m1l
モ
道ニ行キ合タリ
九丁唐笠サシタル騎馬ノ客、
オ六
十一
丁オ
、
マテアルへキコトナラ
七丁何迄ト人ハィへトモ
七丁召具セラレテ是へ忍ヒヤ
力 -御 出 候 ヘ シ ト 仰 ラ レ
七丁魂乱レテ何一一アル我身ト
七丁唐垣ノ戸
モヲホヘス
ノ戸
七丁書.
クニ
ツシカ
ラント仰候ツル也
十一 メ シ 具 シ テ 是 ヘ シ ノ ヒ テ
御入
十一魂ヒミタレテ、 年
ホレ^ ^ ト成リ、 何
エン
有ル身トモ不レ覚
十ニシ
丁ォ
A丁 其 光 幽 朧 ナ ル ニ を 公 金 紗
水干ナヨヤカニゥチキテ
ヲ ボ pナル二此児金沙ノ
ル ハ 乱 レ テ 力 、ル青柳ノ
ト懸ノ本ニ立ヤスラィタ
タル体ニテ
ノ水干ナヨヤニ
-唐
門
十 二 其 ノ 光 リ ホノ カ ニ ス キ テ
タ ヲ ヤ カ ナ ル 風 情 、 乱テ
シホレ
力 、ル青柳ノ
ブS
ハ
斗リヨリソ斗テ、打カタ
ノウツリ香モヽ身ニソウ
十二サシモマトヲナラス其袖
丁ゥ
w-
ル人モ有ヤ
八丁指モ間 d
遇ナラス寄添テ袖
打カタ.
フケタレハ
モ
ヵ
ト
ハラ*''^*
ノ 流 モ未タヘス
八丁ネミタレ髪ノハラ
"''^^卜
ホケヤカニ
懸リタル迦ヨリ眉ノ句匕
十三乱レテ力ミノ
丁オ
顔 ニ 力 、リ ヽ 眉 ノ 匂 ヒ ボ
(
以下九字ナシ)
余二日数へニケレハ
八丁涙一一ワケシ在明ノ月
ケヤカニ
十三涙ニ明ル有明ノ月
丁ゥ、
I 余リニ日数ヲ送ヶレハ
九 丁 若 基 ナ ク 成 ナ 〈空 シ キ 跡
無レ心元一事一思召 テ
十四若シモハカナハ成テハ、
ニ 九五
ヌル事
忖丁其夜ョリ若君ノ失セ給ヒ
テ来リケル
叶丁釈迦力嶽ト云所一ソ舁モ
ル雲霧ノ中ヲ
ト丁漫々タル湖水ノ上忙々タ
す
十丁御手ヲ引童サへ歩ミカネ
何 ナル 虎 臥 野 辺
九丁今ノ程ニ我ヲシルヘシテ
シ
ヲ 問 テ モ 其 甲斐ナカルへ
ハ其夜ヨリ三井寺ニハ若公
タリケル
ハ 尺 迦 ノ 嶽 ト 云 所 ニ ソ ヲキ
々 タ ル雲霧ノ中ヲ
汁け茫々タル湖水ノ上へ、濠
リ、 歩 ミ カ ネ 給 ヘ リ
五 此 ニ ヤ ス ミ 、 力シコニ®
虎臥ス野辺
早ク汝チシルへゾ何ナル
ヘシ
問テモソノ甲斐モナカル
T+
151
J::
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ノ 失 サ セ給 ヌ ル 事
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1-
T+
-.2.I
M丁小夜ノ枕ヲカワシマノ水
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I: t
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t 少夜ノ枕ヲ川嶋ノ水ノ流
T±
K
衆徒ノ欝陶
左苻ノ旧宅
代 敵ニ殄スル謀事ナルヘシ
時ヲ与へタ(
(
六字ナシ)
••••••押寄テ
天コ
丁ゥ
叶丁一 寺 ノ欝墳
忖丁左苻ノ住宅
汁 |敵 ヲ 亡 ス 謀 計 ナ ル ヘ シ
丁オ
十 一 天 コトニ 時 ヲ 与 へ タリ
1」
一時ヲゥツサス押寄テ
了オ
十一或ハ漫々タル志賀唐崎,
浜路.
卜 或 ハ 眇 々タ ル 煙 波
大
一
一手 溺 手
如 意 越 ヨ リ ソ寄タリケ^
名ヲ後記一一
でゥ
サル程
- 忽金輪際汁 一
カクテ大勢乱レ入ルサテ
Tウ
-ァ義ヲ
叶
金拳ノ大夫坊
キ リ コ ノ ミ ノ
カナニキク
サゲ
メ タ 、
カウ
増長、
ヲ ■
4ノ モ ノ 三 千 余 人 也 城
セメヤフラサラント吐
中ノモ ノ ト モ
広言
一
へタテノサンヲ
へ年ハシラ
ミ ノ
マ ク リ キ リ 、 シヤウ
ラ ン モ ン 、 ヒシヌヰ
ギダヲシノハライキリ
ハ
サ
一I
ヨ セ テ ニ ハ、 ウ タ レ、 テ
セ
ヲ タ バ ワ ズ 、 入レカエ
互 ニ命 ヲ モ ヲ シ マス、 身
了 オf
丁ウ
十九
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二十
丁オ
丁ウ
丁ウ
二十 ヲ モ ネ / \ ニゾヲチュキ
二十 i
丁ウ
二十 ク ル マ キ リ 、 年 ソ ウツナ
丁ウ
ゲギリ、
二十 桂海力コノ ム 手 ニ
二十
丁ォ
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十七
了オ
浜路ュ
叶以或ハ眇々タル志賀唐崎ノ
丁ォ
名ヲコウ代ニ
寄ケル、
十八或ハマンくタルエンバ
十八
从 如意越ョリソ
サ ル ホ ト ニ 、 明ケヌレハ
テ
十四日ハ辰ノ剋一一大手力
ラ メ
从 忽 一輪際ニ
九 死 ヲ モ 力 ヘ リ ミ ス 、 攻ィ
mセ テ -ハ
- 乗実善明坊
ルョセテニハ
乗 賢 、勝明坊
- 般若院三塔蜂起
合 ス 禦 ク 大 衆 -ハ
般 若 院 、 三塔、 防三井寺
ノ大衆ニハ
E
ニ九六
金マタノ悪大夫
"..
) . . . .).
に 濫ノ算ヲ
吐テ
ニ責破ラサラント飽迄荒言
者トモ
半生一ナリヶレハ城中ノ
ll
寄テ三千余人手負テ半死
責戦フ
身 命 ヲ 、シ マ ス 入 替 々 々
C 提切好ノ増長其外ノ人数
T+
提切
十ニシトロモトロニ落テユク
に 武者
リ切乱紋菱縫
棊倒ノ払切礒打波ノマク
シサリテ蒼ム追懸切、将
十二車切ソムヶテモテか一刀
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ケル
一一時ニ ク ワ ヒ シ ン ト 成
- 一三門跡の御坊
二十
丁オ
ノ天 狗
残ルー宇モナカリケリ
一時 ニ炭 灰 トナリハテ
に両門跡 ノ 御 坊
S
S
JI
無量
白河小童空印地
G 軍 ノ 最 中 ニ寺ノ門 主 達
零
間ソナヰ
ニ 袖 ヌレテ
涙ノ雨ノ力
益 若 君 カ ク 計 、寂 漠 ノ 苔 ノ
ワク
三八十計ナル老翁ヲ縛リテ
石籠ノ 内 へ ソ
二 十 三 皆 タ ウ ^ ^ タル 大 水
” 一一 i勢 ノ 天 狗
h四 大 臣 殿 行 へ 尋 へ キ ホ .
モ、 立 寄 ル ヘ キ 宿 モ ナ ヶ
レ ハ 、 サテハ
了ォ
義ノ天狗
叶刚漫々タル大水ニ
S
州大臣殿ノ御行末委ク尋ヌ
へキ便リモナケレハ、 サ
益 礎 ~ノ 石 モ 焼 研 テ
了才
ぼ 嬉 ク 思 召 テ 、消息遊シテ
モサコソ浅猿
S 四礎石モ焼砕テ
消 息 ヲ書テ
神慮モ—
U
猿ク
二 十 五 ウレシク 覚
ク
童 様 々 -教
1 訓申ヶレ
ツルヲ 見 マ イ ラ セ ソ ロ へ
ニ十七身ヲナケサセ給テソロ
キヨノ
什六我身サテ沈モハテバ
ハ、 ナ
ハ
也トノ給へ
ヒ、 人 口 ニ モ 落 ラ ン +浅
二 十 五 サコソハ 神 リ ヨ ニ モ 違
*-
テ
ニ十一 ノコルトコロナシ
丁オ
•天 狗
一コイサ力ヰ
- 一 :
二十
了ゥ
二十一白河ホコノソラインデ
(コノ歌無シ)
- - 聖護院以下門主タチ
丁ゥ
iク、 ツカレ
じけ二八十有余ナル老翁
ノビンバツ
十三一宵アリテ
丁ウ
.ニ 七
f 律 師 モ 童 モ 心 乱 テ 、手
足 ナ ~、 フ シ マロ フへキ
g 我 身 サ テ 沈 ミ モ ハ テ ハフ
五 身 ヲ 投 サ セ 給 ヒテ 候 ツル
1.1
ヲ余ニ御痛シク見参セテ
程
ニ九七
キレハテ瘓蹵軀テ伏沈ム
れ 律 師 モ 童 子 モ イ ト 、心ァ
M 'y*
シ メ テ 此 石 楼 ノ 中へ
ニ十二一両日アテ
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タ ル ヲ 、 高 手 小 手 ニ4 マ
ニ十一ニナミタノ露ヲシタ、ツ
汁 |涙 ノ 露 ヲ 左 ノ 手 ニ 入 テ
テ有ケルヲ此翁左ノ手ニ
入テ
7/
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T+
丁ゥ
4 地シケレ■
トモ
二十七年ツモ身ヲハナタス
け七金鑭
十七同宿共
什A 紅 葉 紅 フ カ キ イ P カト
見へテ岩陰ニナカレ力、
リタ ル気色ノ有ヲ
ノ カ
ミ、 ワリナ
付A タケナル力ミハ瀬一一乱
二十八ミドリ
丁ゥ
キカヲハセハカワラネト
モ
二十八見ルニ付モツキセヌモ
丁ウ
ノハナミダナリ
g 九又中空ニ帰ル
有へキ
二 十 九 サ テ、 斗 ツマテカクテ
丁オ
二十九一ックヮヰノ灰
丁オ
丁ウ
ニ十九童モャカテ出家シテ
ヘキ心 地 ス レ ト モ
ね朝暮身ヲ放サテ
后 九
ナク
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S O
一鬆
I
內
へ
ナミタヲナカシテ申ケ
ル ハ、 我 等 寺 門 ノ 興 隆
テ一同一皆夢覚テ
今□ ヤ 君 カ ヒ ト リ ュ
三十ニ済度ノ方 K
丁ウ
ラン
三十三
丁オ
ク
ー
ー
ー
” ー大慈大悲哉ト被レ仰思
叶ニ経論聖教ノ粉失シタル
慈悲ノ至如
肛叶ニ是モ非トシテ行レ罰
才
ラセ 給 ケル 時 ニ
叶 一 玉 ノ 階 ヲ 歩 ン テ、 立 帰
ノ
左右ニ相随ヘリ
オ
一二十
丁ゥ
金襴
若党下法師トモハ
紅葉々ノ深キ色ヵト見へ
テ、 岩 陰 二 流 レ セ カ レ テ
有ヲ
ハ長ナル髪流レ藻二乱レカ
ヽリテ
トモ
ハ 縁 ノ 髪 ワク ル形ハ替ラネ
了才
叶化童子モ髪撕テ
ノ灰
六 ••何 迄 サ テ 有 へ ヰ
- 又半天二帰ル
十六目モアテラレス
丁ウ
K
J?
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7'
3
一九八
無端
汁代左右一随従セリ
ト見へケレハ通夜ノ大衆
神錦ノ悵ノ内へ入心給ヌ
三 十 人 一 同 —皆 夢 覚 テ
务度ノ
叶呔今宵ヤ君ヵ西へ往ラン
^
汁 大慈大悲哉ト仰ラレテ明
経論聖教ノ失タルハ
慈悲ノ至リー ア
一ラス
什パ是ヲ非トシテ罰ヲ行フモ
興隆
摩耶戒壇建立ノ事吾寺ノ
i 涙ヲ流シ申ケルハ今度三
ニ入ト給ハントセシ時.
玉 ノ 御 階 シ ヲ 歩 ミ 、 宝殿
i
叶幕ノ中へ
i
益 興
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Ti
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TTr. T -
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士ーー 書 院 ノ 石 壁
建 立 シ テ 、 春ノ暮月ニ
三十ヨ東山雲居寺ト云御堂ヲ
丁ウ
見
一無レ
一
一ル 人 誠 -
三十四加様ノコトヲゾ丰べ
キ、 故
擎 、 聞 人
S
れ 書院ノ墙壁
東山一雲居寺ト云フ所ヲ
草 創 シ テ 、 例年ノ春毎ニ
W 加様ノ事ヲソ申へキト語
リヶレハ聞人感シテ袖ヲ
ヌラサヌハナカリケリ
慶応義塾図書館蔵
る。
如く誌されてゐる。
奥 書 、 第 四 十 三 丁 表 は 本 文 な く 、 奥 書 の み 本 文 同 筆 に て 、 次の
主松寿丸常住
天文九年%神無月中旬
右筆拾三才
丁数、 四十三丁。 他に巻末に白紙一枚。
但し、本 書 は 漢 字 を 大 字 に 記 し 、仮名には大字 で 漢 字 の 直 下
行 数 、 六 行 。 字 数 、 一行約十一字— 十 五 字 。
に記せるもの、小 字 の 振 仮 名 、 漢 文 体 の 送 り 仮 名 の 如 き も の 、
同じく大字の仮名の右下に故意に片寄せて記せるもの等ある。
右の字数は、大字のみの数である。
備 考 、本書の 書 写 年 代 は 、 紙 質 や 墨 色 か ら 見 て 、奥書に記す時
挿 絵 、 なし。
色 や \異 る 「右 筆 拾 三 才 」 と あ る は 、 本 書 の 筆 者 松 寿 丸 の 歳 を
代とみて間違いないものと思はれる。 但し奥書、第三行に、墨
指 示 す も の で あ ら ぅ が 、 本 文 の 筆 蹟 を 見 る に 、 や X老 成 の 感 が
本 文 は 和 歌 の み 平 仮 名 書 き で あ る が 他 は 既 述 の 如 く 、 漢字
あつて、拾三才の者の筆の跡とは思はれがたい。
て、 真 名 本 に 近 ぃ 感 じ を と 2 め た 仮 名 交 り の 文 体 で ぁ る 。 句 読
を大字に記し、 送 仮 名 は右下に小字に附し、 間々返点などあつ
ニ九九
点は無く濁点は不規則に施されてゐる。振仮名は本文と墨色の
外 題 、 表 紙 の 左 上 に 「秋 夜 長 物 語 」 と あ り 、 右 下 に 「松 寿 丸 」
内 題 、 本 文 冒 頭 に 空 押 界 線 上 方 よ り 「秋 夜 長 物 語 」 と 記 し て あ
とS 書 、本 文 奥 書 等 と 同 時 、 同 筆 で あ る 。
字 ® 、 高 サ 約 二 十 三 •ニ 樞 。 天 地 に 空 押 の 昇 が 施 し て あ る 。
表紙、本文共紙。
装 幀 、楮 紙袋綴。 竪ニ 十 七 糙 、横 十 九 ニ ー 惺 。
写 本 、 一冊。
天 文 九 年 写 本 「秋 夜 長 物 語 」
チ カ リケリ
ニ 別 ノ袖ヲヌラサヌ者ハ
ナ ミ タ ヲ 流 シ テ 、夜 ト 共
3
:61
TiT+
TS
異なるものが僅か散見するが、 その殆んどは本文と同時のもの
と み て よ い と 思 は れ る 。 た ^ 「寝 覚 」 (ニ オ ) 「終 夜 」 (七 ゥ )
「危 徒 」 (三 十 七 ォ ) 「勅 宣 」 (三 十 八 ォ ) 「茅 屋 」 (四 十 ー ォ )の
如く左右に振仮名が施されてゐるものもある。
又文中、 四声の点と思はれる中黒の点、中白の点が附されて
ゐ る も の が 数 語 あ る 。 即ち
「常 行 三 昧 〃 阿 弥 陀 堂 」 (二 十 七 オ )
」 (三 十 三 ウ 、 三 十 四 ウ ) 等 で あ る 。
「供 御 瀬
''
従った。
三〇〇
字 鉢 は 、漢 字 、仮 名 に 異 鉢 の も の が あ り 、特
に漢字には屢々見出されて古色のほどが伺は
れる。
な ほ 漢 字 に は 遍 i (辺 )(六 オ ) 「貼 言 」 (十 七
オ ) 音 ュ (二 十 ー ゥ 〕な ど の 如 き 当 字 が 間 々 使 用
されてゐる。
ヒ 本 文 に は 又 、 ミ セ ケ チ の 筒 所 が 数 ケ 所 丨 「存
ク ワ ン 」 を 消 し 「ハン」 と 訂 せ る な ど あ る 。
—知 タ ル 」 (八 オ )、 「
板 生 坊 」 (二 十 五 オ ) の
が煩をさけて訂正せるものに依って掲げた。
そ の 他 、 振 仮 名 に 「人 ト 毎 ト 一難キ離習ィナレ
ハ」 (三 オ )、 宛 転 (二 十 九 ゥ )、 「退 江 」 (三 十
七 オ ) の如く、 仮 名 の み に 明 ら か に 誤 れ る も の
が 僅 か に 数 へ ら れ る が 、 そ れ ら は 原 本 の ま ^!に
本 書 の 本 文 は 、前 述 の 幸 節 氏 蔵 絵 巻 、 文 禄 五 年 写 本 、或は永
の多きが認められる。 上記諸本に較べると、詞章の删節せる処
和 三 年 の 古 鈔 本 に 比 し 、 詞 章 は か な り 簡 略 撲 素 、 且っ異同出入
レテ」 の 歌 を 共 に 有 し て い な い 点 、 或 は 別 項 に 於 て 既 述 せ る 諸
は、 天 理 図 書 館 蔵 写 本 と ょ く 類 似 す る 。 「寂 漠 ノ 苔 ノ 滴 _袖フ
「秋 夜 長 物 語 」 の 諸 写 本 を 、 こ X で 飜 っ て 思 ふ に 、 永 和 本 系
点など、 天理本との近似関係が考へられる。
の諸写本と、 天 理 本 並 び に天文九年本系のニ系統を大別し得る
r
のではないか。た乂し永和本系の古鈔本の、単に簡素化せるも
じ空押をした銀紙。
の長物語上」 (
中下) と書いて、表紙中央上に貼られてゐる。
題 簽 、 朱 地 に 金 泥 で 、 雲 と 霞 を 描 い た 短 冊 形 の 紙 に 、 「秋 の 夜
内 題 、 なし。
の と し て の み 、此 の 両 本 を 想 定 す る こ と は 出 来 難 い 。永 和 三 年 本
に 比 す れ は 、本 書 並 び に 天 理 本 は 、書 写 年 代 遙 か に 及 ば な い が 、
り0
備 考 一 、 各 巻 頭 に 白 紙 一 丁 分 と 、 上 巻 末 の み に 白 紙 一丁分あ
十 一 ォ 、 二 十 六 ォ (欠 )
下 巻 、 四 ォ (欠 )、十 ォ 、 十 三 ォ 、 十 五 ゥ 、 二 十 ゥ (欠 ) — ニ
— 二 十 一 才 (欠 )、二 十 八 ォ 。
中 巻 、 四 ゥ 、 八 ゥ 、 十 一 ゥ (欠 )、十 五 ォ (欠 )、二 十 ゥ (欠 )
十 四 ゥ (欠 ) 二 十 六 ゥ 。
上 巻 、 六 ォ 、 十 ゥ 、 十 四 ゥ (欠 )、 十 八 ゥ 、 二 十 ニ ォ (欠 }、 ニ
数 、 一行約八字—
H 一字。
挿 絵 、現 存 十 一 頁 分 。 欠 け て ゐ る 分 、 十頁 分 。
行数、大体十二行、下巻終りの方には、十三行の所もある。字
十 六 丁 半 (二 十 七 丁 裏 白 )。
丁 数 、 上 巻 二 十 六 丁 、 中 巻 二 十 七 丁 半 (二 十 八 丁 裏 白 )、下 巻 ニ
猶 よく 古 樸 の 感 を 失 な は ず 、 旧 姿 を と ^ む る を 思 ふ と 、 此 の ニ
つの系統の存せるは、 かなり時代を遡るものと推定される。
いづれにせよ、此 の 両 写 本 系 が 、 片仮名古活字本にと流動せ
る源たるは想像に難くない。
奈 良 絵 本 「秋 の 夜 の 長 物 語 」
武田祐吉博士旧蔵
I 本書は今 度 の 戦 災 に 遭 い 、焼失せ る 由 で あ る 。 以下所掲の解
題 並 び に 本 文 の 引 用 は 横 山 重 氏 ょ り 拝 借 せ る 本 書 の 副 本 、 解題
等にょつたものである—
奈良絵本、 上中下三冊。
装 幀 、横 本 、鳥の子紙 袋 綴 。 竪五寸一分、横 八 寸 二 分 。
る。
絵 の 欠 け た 所 は 、綴 じ 目 に 、切 り 取 っ た 跡 が 残 っ て ゐ る の で 分
は波と雲、下巻 は 、 上方に雲、霞 、遠 山 を 現 は し 、下方に松そ
かへりける」 で終り、
い ら せ 給 は ん と 、 お ほ せ ら る \ょし 申 て 、 い そ か は し け に そ 、
上 巻 は 「ふ け す き て 、 人 め っ 乂 み て 、こ れ へ 、し の ひ や か に 、
巻分次第は
の他の山の木を描き、中 間 に 波 も 見 え る 。 上巻の裏表紙は、別
表 紙 、 紺 地 に 金 泥 で 、 上 巻 は 水 辺 模 様 (水 、 芦 、 松 )な ど 、中 巻
本 文 、 竪約四寸三分、横 、 約七寸。
のものが附いてゐる。 見 返 し は 、小田文庫目録表紙の模様と同
三〇 一
中 巻 は 「さ る ほ と に 、 り つ し 、 た \
ま そ 、 なか
「し や く ま く の 、
い ま の つかひを、 き く ょ
りも、 心 ぅ か れ 、 玉しゐみ た れ て 」 に始り、
こけのしつくに、袖ぬれて、 なみたの雨の、 かはく
りける」 で終る。
ょ
I
下 巻 は 、 「か 乂 り け る 所 に 、 あ は ち の 国 の 、 も の な り と て 、
八十はかりなるおきな、 ひんはつしろく、 や せ た り け る を
る七日まんしける夜
三〇 ニ
るまことにしゆせぅなる御事
る と て 、 人々
お も ふなりすてに匕
にてこそ侍りけ
Pしきに
日にまんしける夜
抒 あ ま り に ひ た \け た ら ん
ひすて乂又こトまいりあふへ
もさすかなれはなにとなくい
以 丁 あ ま り に ひ た Xけ た ら ん
つ 、又 わ 力 山 へ そ か へ り け る
もさすかなれは石山へまいり
一 に ま い り つ \た ぅ し ん の し
けれとてたちわかれまたいし
る
かきいろをみてよろつ心をへ
てぬ有さ
かき色をみてょろつ心をへた
6け て さ て も い ふ
んなけれともむ
につけても
はり候へと、 いか
もして申
比まつ御文をあそはして給
めわか君に
はらにょひ
ま な り を の ^ ^ しゆ
たてぬさまなりけりさてむめ
えんすきけれはわらはをかた
たまはり候へゃかル申て見候
七丁まつ御ふみをあそはして
わかきみに
;H
丁ゥ
ハわらはもはや心さしのふ
ゆしト又わか山へそかへりけ
ちこにめくりあはんのねんし
ょ く わ ん を ひ る か へ し 、 かの
か 見 出 す 程 度 で あ つ て 、文 章 は 平 易 化 さ れ て ゐ る 。 振 仮 名 、句
本文は、次掲の別表— 平仮名古活字十一行本との比較丨の如
く 、 流 布 本 系 に 比 し 、 著 し く 委 細 な 一 面 を も つ て ゐ る ? がこの
増 補 の 部 分 を み る に 、古 写 本 系 の そ れ と も 異 つ て お り 、 又 、他
に か 乂 る 類 例 を 見 出 し 得 ず 、本 書 特 有 な も の で あ る が 、 それな
りに後人のさかしらになるところの本物語の近世化、或通俗化
の跡を示すが如くにも思はれる。 そしてこれら顕著な相違箇所
以 外 は 、 と り た Xて そ の 差 異 を 掲 る ほ ど も な く 、 かなり平仮名
古活字本に似通ってゐる。従って別表はそれを省略した。
(
点線ハソノ相違ヲ示スタメ私二施シタ。 丁数ハ各文頭ヲ示ス)
武田祐吉博士蔵奈良絵本
五丁たぅしんけんこそくせぅ
才
むしやうほたいとそいのりけ
1>-
^-
平仮名古活字十一行本
三 丁 た ぅ し ん け nこ
P そくせぅ
オ
無しやうほだいとそいのりけ
七丁わらはもはや心さしのふ
読点、 濁点は無い。
〔
追記〕、本書はひら仮名を主体とした文体で漢字は所々に僅
り起つてゐる。
T -t
T+
はんとそ申けるおもふこころ
をつくすほとのことの葉は
七丁わらはふみをふところよ
て見候はんと申けれはぅれし
くおもひすすりとりいたし思
ひの心をつくす程のことのは
てかへりむめわか君の御まへ
にまいり
汁仏みせしとて袖のわきにを
冲七わらは文をふところに入
M丁見せしとて袖の内にをし
りとりいたして
かくせは童ひんきあしとひま
ほしけるちこもわらはもひん
しかくしてまきらはしてそお
をまちて 日 くるXまてし こ ぅ
したるにしよゐんのまとより
きあし と
M てたちにけるかわ
らはは心もとなく思ひ日くる
Xまてしこぅしてゐたる所に
しょえんのまとょり
十九いそきもちてゆき、御返
J りっしは山へかへりける
しなりとて出しけれはりつし
めもあやによろこふて
か一あしふみてはたちと\ま
りける程に
.十丁わかこ
kろさへうらめし
のみや、御所のかたはらにし
りたるしゆとのはうの候へは
十丁ほうへんのうたあはせな
ニ计三我心さへうらめしの身
や、とあるをみていか\せん
ともたへけれはわらは をひ
かへ御所のかたはらにしりた
るしゆとのはうの候へは
上巻
什四ほうへんのうたあはせ
\むめわか君のおなレさしき
にもおはして こそと 心 もさら
にうかさりけれりつしかくて
のかたはらにたちまきれ
上巻
叶五ょしやた乂我身にそな
前に七日さんろうするな と \
てょるになれは もしやのけん
さんも有やせんとゐんけ
ら大みやうしんに七日さんろ
うするよしをいひてよるにな
よ
m そなから、
のちにせめとぉもへはぁしか
ゆく行てはかへり
見るはかりをわか身にあるち
きりにて人のなさけをこそい
十丁よしやた
もたへかたけれはしゆくくわ
んの事有てしんら大明神の御
なとして日を く
M りけるかた
«-
れはゐんけのかたはらに立ま
きれて
として日を乂 くりけるりつし
はしよくはんの事ありてしん
T-
三 ◦ 三
はらぬちきりなれはいのちこ
そうらみにゆきてはかへり
T-
ス丁いそきもちて行たるにり
つしめもあやによろこひて
八丁りつしやまへかへりける
か一あしあゆみてはみかへり
ニぁしぁゅみて1たちと\ま
りしけるほとに
r-
十丁いつまてもと人はいへと
もなかゐせん事もさすかなル
は明日はわかやまへ
上巻
仁 忖 五 ぃ ま 1たのみかしぁす
は山へ
上巻
ふトせ給ふふけすきて人めっ
什 ナ も ん し ゆ も -^た く ^ ひ
候へはふけすくるまてかへら
\み て こ れ へ し の ひ や か に い
卜もんしゆもぃたく御^ひ
れてし.
こうせられょこれへし
し申ていそか.
はしけにそかへ
十 五 た Xな く こ 袅 の み そ き こ
丁オ
えにけるその夜よりわかきみ
五 さ て は 此 ぁ ひ た れ ん ^/-
三〇 四
にて候やととひ給へは山ふし
へとて一とにうちわらひけり
と も し は ら く こ \ にやすみ給
こ ^一 に は ん し や く を
ね た 乂 な く こえのみそ聞え
中巻
けるふしきなりし事ともなり
さ る ほ と に三井寺にはわか君
托さてはこのあいたれんれ
中巻
んしのひていひかよはしけ
らせ給はんとおほせら る X よ
り け る さ るほ と に り つ し た X
る り つ し の 有 と ^-し か い が
のひやかに御いり候へしとお
ならす御まち候へしといそか
しのひていひかよはすりつし
さまかとは し と り てける と お
ふさたにをくな
のありときこえしかいかさま
しゆとぅつたつなのめならす
山もんへよせんする事はかな
ふ へ か ら す ち \ の お と ^も
1し
力しなからさんもんへよせん
らは三井寺のちしよくな りし
4な ひ か た し
ま つ ち X の大しん殿のしらせ
事もにはかには
んとの大しゆ五百よ人ははく
も ん と の し ゆ と五百よ人はく
てこのうらみを申さん と て御
ち う に さ ふ の て い 三 て う きや
ちうに京へのほり三条きやう
給はぬ事あらしいさをしよせ
うこくへをしよせて一ものこ
つ は な そ 6\さ ぅ の て い へ を
ふ所へそかきもて行けりわか
こ く へをしよせせひのあんな
君もわらはもひえの山はこ乂
しよせてうらみ申せとて御も
りたまはぬ事はよもあらしま
ほえたり此
か と へ と り て け る とて ゐ ん け
ひ か た し た か ひ に う つ ^'と も
ち は 申 に お ,よはすー,寺の
いまのつかひをきくよりも心
おほえすなみたとともに
中巻
の
うかれ
へしなみたとともに
かたくかたるにことはなかる
五丁そへつる袖のうつりかを
3系 に か く と も
筆に も を よ
十三そへつる袖のうつり香を
はあたなる物からかたみにて
中巻
,
*•
り こ\ に は ん し や く を
计丁大みねしやか乂たけとい
5-
いふ所へそかきもてゆきにけ
J 大みねのしやかのたけと
.
わかものからかたみにて
e 表にかくとも筆もおょひ
し け に い ひ す て Vかへりけり
ほ せ ら れ 候 つ る そ 門 さ ^!てか
T+
T+
T1 1
りつしこれを聞て心うかれ
T-h
T+
T+
T+
さ す や き は ら ふ お ん じ やぅ じ
いもなくたちかたなのさやを
はつしきり入けりうちにまな
に 事 と も し ら こ X かしこにに
マ、
きのこもんに
にとかのあれはふせきける人
け か く れ け れ は さ れ は こ ^-身
もなきそとて
火をかけけれはおりふしまふ
こかはなにのいしかに
ハまつじまつしや三千七百
てかやうにやきはらふらんと
しつにあ
と ひ 給 へ 1 し か - ^ のうらみ
三〇 五
く わ く
をかま
七まつしまつしや三千七百
中巻
<
たうじにしやう
りしよせん此ついてをもって
をもつてあさむくとおほえた
んもんよりいひとかめぬ事な
たうをはたらくといへともさ
事あらしかのちこゆへにわう
んのちしよくこれにすきたる
をの^ ^ せんきしけるは南も
三井寺へこそかへりけれ
事かさねて申いれんとてみな
んほくをうしなひいかさま此
給ふ事かきりなレしゆともめ
なひけるよとてなきかなしみ
ひし事はさてをきちこをうし
なりと申かれはぜ
5-
の し ゆ と こ れ に て な を い きと
を り を さ ん せ す 一 山 一 司 せ ,V
きしけるはじもんのちレよく
これにすくへからすしよせん
此ついてをもつてたうじにし
やうくわくをかまへ
うふききたつて御てんに火か
乂 つ て お ほ く の や か た ^-一つ
りことをたつぬるにさふの御
ものこさすやきはらふ比はか
1 をやきはらふならはさため
て山もんょりきをいたして三
井寺へをしょすへし其時うら
み の か つ せ ) にさんもんをほ
ろほさんとのあくきやくしゆ
との心のふてきさはほういち
むさんとそ申ける
ふ せ き た Xかはんもかなふへ
さ れ と もさ ふ は せ ん か た な く
も<
き事ならかは事すきてのかそ
T+
^-
r±
三か所へふれをくるまつきん
三 か 所 へ ふ れ を く る 、 こん
み た る む ほ kな れ は さ た め て
とは三井寺にわさと事をたく
せいつかう廿万七千余人とそ
とうしんのものおほく有へし
こくの せ い は せ あ つ ま り て 其
しるしける十月十四日、
みかたもふせいにてはかなふ
あつまる
ま し と て きんこくへ ふ れ け れ
は.
おもひ\ ^ には
三〇 六
るよせてもはれなるいくさな
れはしゆとたちにわらはれし
こ え --^た 乂 か ひ け る 大 山 も
としするをもかへりみすのり
これかためにくつれ
中巻
1 こすいもかたふきてたち
まちにこんりんさいまてをつ
つるかとそうたかはルける
まちにこんりんさいにお
十七こすいもかたふきてたち
るかとうたかはるしするをも
いきをつき給ひ一か
つ て こ ^!ろ み ん と て 一 は ん に
て一ちんをはわルらうけ給は
んさいみやうきたみついきや
ぅ レ つ ぜ ん ‘やぅはぅなんか
十七さいたぅにはしやぅきせ
丁ゥ
やうはうなんかんさいしやう
ニ十一さパたうに
丁ゥ
しやうき
かけょせる三井寺にこもる所
にはせんほうせんちうにやゐ
うちうしやうりし文うよか文
ん三たうほうきしてきをあは
の大津まつも^ の
J地下人これ
中巻
出 る 大 し ^ にはとうたうに
つ せ ん し て み せ ん と て す kみ
みな <
かひなき人々のせめやうかな
され 共 せ う ふ は み え さ り け り
こくに大手からめてしやうの
返りみつせめいりにけるよせ
うちすへてニ千心百ょ人同時
中巻
刻に大手からめて城中そうし
に と きのこ 袅 を あ け て お め き
さんもんの大しゆこれをみて
て廿万七千よ人とうじに時を
さ け ん て た \ か }け り わ に か
てにはとうたうに
これかためにくはれ
汁枝あくれは十五日のたつの
程 に ほ と な く 三 千 百ょきと
そ聞えける十月十四日、
-'+
をみて一ふせきふせきてみん
た ^'の さ ふ ら ひ と も す 、 み 出
あけてをめきさけふたい山も
ぁくれは十四日のたつの
+:- ^ -
と て も ん よりそと へきつて出
う我さきにとそかけいてける
う せ ん は う ゐ ん の は ん に ^-は
よガのきうけんちやうりんは.
^'
JS
^
5
中巻
て Xし ん ら 大 明 神 の 御 し や た
S 五一時のけふりとなりは
んよりほかはのころ所もなか
一時のけふりとなりはて
ょりほかはのこる所一もなか
り け り ふ せ く 大 し ゆ も ^ ふり
Xしんら大明神の御しやたん
りけりさるほとこ
にうちしにするも
ひ ''^"
にむせひゆきかたをうしなひ
おも
ありあはれなりし事ともなり
よせてもいまはこれまてなり
とて手をひし人をひきつれて
山 上 に こ そ か へ り け れ 、 さる
中巻
ほとに
ひてなくょりほかの事もなし
なし、
ちわひてなくよりほかの事は
十 七 た \わ ら は と と も に う
わかきみかくはかり
つくに袖ぬれてなみたの雨の
计た乂わらはと共にぅちわ
しやくまくのこけのしつくに
かはく
まそなかりけ る
(
注古活
し や く ま く のこけの し
袖ぬれてなみたの雨のかはく
一 丁 こ れ も い し ろ の ろ う の う
下巻
ヰル)
字本ノ和歌ハ本書テハ地ノ文トイツテ
汁これも石のろうの内へい
まそなき
T -
れたり一両日ありてこのをき
おきなすこしもくるしむけし
ちへそ入たりけるされとも此
きもなく二三日有てちことわ
な^ ことわらはのなきかなし
て戾と乂へは
ふ
むを見てもしその御袖やぬれ
てさやうに袖のぬれさせ
らは を つ く ^ ^ とみてなにと
下巻おきな申やうさ候は乂そ
と \ へは
二十一らぅおぅおほきにょろ
いらせん我にとりつかせ給へ
れかしふるさとへをくりてま
たやすくふるさとへかへし
こひてさ候は乂われにとりつ
さんとかたりけれはまことし
申
つけ参らせんとて翁此ちこの
て此うちを出してたへと仰け
からぬ事なルともいかにもし
りてみるに
れはおきなわか君の袖をしほ
三丁あらゆる所のものとも一
下巻
人ものこさすせなにのせて®
にのつてたい大りのきうせき
五丁三井寺よりをしよせてや
下巻
-一
一 三井寺よりをしよせて
きはらひて候なりそれよりち
三〇 七
やきはらいて庚なりとそかた
のきうせき
なんによくもにのせてだいり
十一あらゆる所のたぅそく
そてをしほりて見るに
かせ給へたやすくふるさとへ
^-
JJ
T -
r-
り け る お と X の 御 ゆ く 系 と は
•••♦•••••••♦•
\ は \も わ か 君 の 事 を な け き
紿ひいつくともしらすたつね
三◦ 八
人はともにつなきすてたる小
たるこふねに
りめくりみきはにつなきすて
いはのかけになかれか
やれはむなしきかほにたけな
る力みな力れもにみたれか
りいはこすなみにゆられてぅ
みきはのなみにふ■
ねさしよせ
きぬしつみぬしけれはあらき
んもかなはすをよきてゆかん
た よ り も な し あ れ ^^-と は か
りにてあきれかなしむはかり
なりりつしはもとよりおしき
つまんとおもひきりさかまく
いのちならねはともに身をし
お よ き つ き な く '^^-^し か い を
なみにとひいりてやぅ^^に
のせたれは
とりあけてかほをひさにかき
M
しやとこなたよりはるかに見.
Xりたるけしきをあれはあや
C
下巻
舟に
忖四いはのかげになかれか
Xり た る け し き の あ る を ふ ね
さしよせて見けれはある も む
なしきかほにてたけなるかみ
mり て い
はこすなみにゆられいたりな
なかれもにみたれか
く ' - 'と
^ りあけてかほをひさ
にかきのせたれは
T +
出させ給ひ御ゆきかたもしら
し
もかくもならめとて二人はし
T r.
んほとたちよるへきやともな
けれはさらは三弁寺にゆきて
す と 申 け れ は わ 4君 あ さ
八丁とる物
下巻
きて
た土二とる物もとりあへすた
a 〇
そきけるかわらあしたゆみて
み ち の 程 お も ふ ま \ にいそか
れねはやかてさきむまのせむ
ちをあけてそはせゆきける
せ給ひ候ちこのしろき小袖を
御とし十六七にみえさ
めしこぅはいのはかまをきて
九丁
下巻
の小袖にすいかんの一^ は か り
せ給ひ候つるちこのこぅはい
卜一めみてのちにこそと
下巻
めされて候ひしかにしにむか
^士
1 ニ御とし十六七にみえさ
きける
\二 人 む ち を あ け て は は せ ゆ
も と り あへすい
んかたなくてまつ三井寺にゆ
く お ほ し め し し は し た ち ょら
"-
にしにむかつて
C十 四 一 め 見 て の ち に こ そ と
もかくもならめとおもひてニ
T+
らてニたひ花さくならひなく
十四
下巻
二十五らつくはえたをしらて
らつくわはゆふへをし
ニたひ花さくならひなく
こ^ も お し ま す な き ふ
十五
丁オ
下巻
二十五こ^もをしますなきか
しけりあはれなりし事ともな
下巻
なりてにし山いはくらに
十六
丁ゥ
さんりんとそうの身と
りさて有へき事ならねは
なしむかくて扨しもあるへき
事ならねは
ニ^六 さ 心 り ん と さ う し け る
丁か
か後にはにし山いはくらに
十八
下卷
と+六 あ る ひ は ほ う む の 大 そ
丁ゥ
大そう正あるひはいくわんた
あるひはほうくわんの
うしやうにやみえたる力うそ
しにのり力つちうをたいせる
乂しくそくたいのかく玉のこ
すいひやうをめしくしあるひ
う四方こしにのりてしうそふ
の大しやうせんこにしにうし
下巻
^
りたるにのりてきんれいのか
たいけんのたまをかさ
はょうしやくせんけんたる
あ る ひ は い く は ん た \ しきそ
くたいのかくかつちうをたい
せるすいひやうをめしくし或
は よ う しよく せ ん け ん た る
什
1J 七 た い け ん の た ま を か さ
りたるにのりてしちよす人^
てさゆぅにあひしたかへり
ぅりをはききんれんのかふり
十七しんら大明神たまのは
り
しんら大明神玉のはし
ふりにてさうにあひしたかへ
下巻
十九
んちやうのうちへいらせ給は
をあゆみたちかへらせ給ひき
んともしときつやの大しゆ夢
はそも^ ^ さまやかいたんの
心になみたをなかして申ける
事は
二什
下巻
はかりかたくそんし候へ‘
i 、
て心よけに兔みをふくみ給ふ
ひよし山わうにたいし
きてなみたをなかして申ける
こそ存候へ
わぅもこれ を か ん
し給はんためにらいりんの心
二十ニさん
下巻
給はんためにらいりんあり我
んをんのとぅなんへんきのと
bなしつるなりいし山のくわ
十八さん王
んきの心をなしつるなり石山
三〇九
もかんたんにたへすしてくは
もこれ を か ん し
よにて候やらんはかりかたく
せたまひ& はいかなるしんり
兔みをふくみたのしみをなさ
し て ま こ と に 御 こ ^!ろ よ け に
二十八 日 よ し さ ん わ ふ に た し
は三まやかいたんの事は、
一 人 明 神 の 御 ま へ に ひ "-まつ
せ給ひける時つうやの大しう
しを御あゆみありてたち帰ら
Tr-
のくはんおんのとうなんへん
の と ^^と
くに
けたまひしもくはんおんのし
な り と ち \お と \ も こ の む さ
ひしもくわんをんのしょえん
十 新こきんのしゆつけぅ
j一 九
せ一一さてわか君の身なけ給
下巻
ょへんなりしもんのやけたる
う.
のしたい
.一
一
;
^九 さ て は わ か き み の 身 を
もさいとのほうへんなりとし
てせんにんとそなり給ひ
を と \め ほ つ し ん の 、
^ まし
三一〇
三けんのさうあんのなかはを
上人と名をかへていはくらに
•:
たき木としてこのみをひろけ
(マ、)
くもにはけてまへのおちはを
てしのちとしのこりのとしを
をくり給ふ
かならすとやある事なルはい
そありかたけれ
うのふにそいれさせ給ひける
下巻
ニ十0 し ん こ き ん の し や つ け
P つ た う に い り 御 あ と ^ とふ
き \給 ひ な け き
んきもにめいじけれは三
してともに仏道をしゆきやう
なひけるこそ有かた
き か く か や ぅ に と ^!のへて
ふのきをおこなふ廿五のほ薩
|
^
对九ほんそんに三尊らいか
ほさつきかくをしらへ
くわうのみたをそなへ廿五の
下巻
に叶四ほんそんに三そんらい
り
と ふ と す れ と も お な し さ まな
せんとてかのけいかいせんざ
も こ と ^-^く か ま ん を ふ り す
ののちくけふけのそんそうに
て さ ん り ん に と ち こ も り おこ
ね
て三井寺もとのことくにたち
た な こ \ろ を あ は せ こ れ を き
たきひしりけちえんふかき事
きやうらいすまことにありか
たなこ乂ろをあはせてこれを
れ、 そ
のなかはをくもにわけてまつ
下巻
ニ十四をん
てみれは三けんのくさゃ
の お ち は を た き Xと し て ふ し
ー^
|
叶
て こ \にらいかうすなんにょ
御めくみゆへなりとたつとく
ん よ り お こ る 事 な れ は まこと
やうらいすほとけのたねは表
こ ん くひすをつき
ならひいら力をならへしょり
てこ^
!に ら い け い す な ん に よ
のけいかいりつレはせんさい
^-
有かたくこ^ おほえける、 か
おんこんくひすをつき
このみをいのちにて残りのと
ことにこんとのらんは明神の
やうあまたつきけれはこれま
ふいはくらのあんしつへたつ
らひ給ふとなりつやの大しゆ
^-
い上人となをかへてすみたま
十余人のしゆとみなほつしん
の部にそ入させ給ひけるとく
T_
しををくりたまふ
^-
(武田祐吉博士旧蔵奈良絵本秋の夜の長物語)
ふ事なくして夜と共にたち出
にたんとくとかたれはきくひ
つとくかたりけれはきく人み
りおこる事なれはまことにた
と も な り 、 ふつしゆはえんょ
ょ と
Mも に か た り な く
ななみたをおとさすといふ事
とみななみたをおとさすとい
にけるとなり
なくて
さみふつしんをうくる此もの
る と おほえ
力たりせんさし上人のしきた
うをちやうもんす
てをの^^くわんきのおもひ
をなしにけりのちの世にいた
たふる人ことにたと
る ま て か ^る
1 ありかたき心さ
しを聞
り しやうにてふつくわを
三ニ
(二 十 七 丁 オ 終 )
す 心 さ し は ふ 力 \る へ し と そ
にいたる事おとこ女にかきら
神の
んに心さしある人はつゐに仏
ひ一たんあくしんおこる共せ
°
-
慶 長 元 和 頃 片 仮 名 古 活 字 版 「秋 夜 長 物 語 」
内 題 、 「秋 夜 長 物 語 」。
尾 題 、 「秋 夜 長 物 語 終 」。
丁 数 、 十 二 行 。 字 数 二 十 三 〜六 。
刊記、 なし。
版 心 、 「秋 夜 」 下 万 に 丁 附 。
蔵
氏
重
山
横
古 活 字 本 、 一冊 。
-
-
-
----- ---- -- --- 1 1 1
ノ 玉 棄 ヲ 聞 ず 求
绛 土 聆 ハ 生 死剁 浼 猿 卜 ナ 儿 裘 ~彿 菩
淹 顒 瘦 ノ优 瀑 ヲ % 凡 、 8 省 # タ ハ # ヨc
手 ィ1 し 無 綣 タ
—
~~
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悟 二 秋 夜 ノ 美 # 銹 ー 申馋 ヲ ン
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J — i .. I
—
■
— - —-
V
. .
又 仮 名 「セ 」 は 、 す べ て 平 仮 名 「せ 」 を 使 用 し て ゐ る 。
異体字、略体字、偽字等を甚だ多用してゐる。
飜 刻 に 際 し て は 、之 等 は 概 ね 通 行 の 字 体 に 改 め 、 「せ 」 は 「セ 」
と訂した。
その他、十数ヶ所にわたり明らかに誤植と識られるもの、或
める
こ
と
な
く
その儘に残した。
ひは同音に依り通用した当字等も間々見出すが、本文中には改
本書は慶長元和頃の印行と推定されてゐる片仮名の古活本で
と
こ ろ は な い 。 川 瀬 一 馬 氏 の 「古 活 字 版 之 研 究 」 に よ れ ば 、
めるが、勿 論 、物語の内容は平仮名古活字本以下整版本に変は
平仮名古活字本に較べ、詞章の上には、 かなりの異同出入を認
る
られてゐるが、刊行の前後は
も
か
く
として、平仮名古活字本
め、 既 述 の 古 写 本 系 統 に も 近 い
(天 理 図 書 館 蔵 写 本 と の 比 較 は 、 そ の 項 に 掲 げ た )
と
m
「元 和 .寛 永 中 の 印 行 と 認 む 可 く 、 平 仮 名 本 よ り 後 出 」 と 考 へ
系統に比し、猶よく古体をと
-r
.*«r
. , ~~
一面も見出す。
1.
<
,
松 {衆 ノ鑊
ハ 惡 ヨ ” # ニ 綉 ィ 餘 フ 水饵 荄 卜 す ク 《授 論 ノ 辦
謊杳 傳 等 ー
ユ ノ 久 ル 所 ハ 事 レ ケ 、」 ハ 中 成 詞 グ ラ
边ス
象 等 ニ フ レ事ノ
||-
は省略せる所が多い。 句読、 濁点、 振仮名はない。 又漢字には
備 考 、本 文 は 漢 文 直 訳 体 の 文 体 で 、仮 名 交 り で あ る が 、 送仮名
表紙、栗皮茶無地。
装 幀 、 大 形 本 。 美 濃 紙 袋 綴 。 竪 ニ 十 七 .八 樞 。 横 十 九 .六 榧 。
匡 郭 、 四 周 単 辺 、 竪 ニ 十 三 樞 、 横 十 六 .五 ® 。
-
(横 山 重 氏 蔵 片 仮 名 古 活 字 版 秋 夜 長 物 語 )
題 簽 、 後 補 の 白 紙 に 「秋 夜 長 物 語 」 と 墨 書 。
..
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一 た赛 ノ 花 ノ 撤 '
取 1ノ ホ ル 《上 求 菩 # ノ 機 又 ¥
、* * ^
水j 底 ? ^ 儿 ハ 下 ^ 東 生 ノ 相 ヲ 潁天
K 云事ナク^ ^ 枚
ナ 龙 タ 示 久 人 心 ^今 杜 運 ト し サ 置 動 メ げ タ ン ヤ 若 有 人
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人 間 ノ 八 苦 タ 晃 テ 防 雜 土 赭 ハ 頹剧勝菩 提 ト ナ ル 天 上
£.
猶 、 本 書 は 、 つ と に 、 雑 誌 「観 音 」 (八 の 四 .五 ) 誌 上 に 、 尾
清濁の氐別は不規則ながら附されてゐる処もある。
されてゐないが、振仮名活字、連体活字等を使用してゐる。 又
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(慶 応 義 塾 大 学 国 文 学 研 究 室 蔵
平仮名古活字十一行本秋の夜長物かたり)
読 困 難 な 箇 所 が 十 数 ケ 所 あ る 。飜 刻 の 際 、 そ れ ら は □ で 囲 み 、諸
とのほかに、印刷不明瞭なる箇所、或ひは手ずれなどによる解
料 紙 に は 、蟲 蝕 の あ と に 裏 打 ち が な さ れ て ゐ る 。こ の 紙 魚 の あ
蔵を聞かない。
こ ろ の 新 出 本 で 、 伝 本 は 本 大 学 国 文 学 研 究 室 の ほ か に 、 その所
る類である。 この十一行平仮名本は従来知られていなかつたと
寛永以後の整版本は皆、此等の平仮名本二種を以つて祖とせ
崎 久 弥 氏 に ょ る 全 文 の 飜 刻 が な さ れ て い る が 、今 回 、 平仮名古
活字本との比較対照の便をはかり、再び両本共に掲載した。
此の片仮名古活字本は、横山重氏蔵本のほかに、 天理図書館
等もに所蔵されている。
慶 長 元 和 頃 平 仮 名 古 活 字 版 「秋 の 夜 長 物 語 」
慶応義塾大学国文学研究室蔵
装幀、大形本。
美 濃 紙 袋 綴 。竪 ニ 十 七 .八 輕 。横 十 八 .八 觀 。
古 活 字 本 、 一冊。
表紙、栗皮茶無地。改装。
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本 文 、 堅 二 十 三 *ニ ® 。 横 約 十 五 .六 樞 。
題 簽 、 なし。
内 題 、 「秋 の 夜 長 物 か た り 」。
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刊記、 なし。
丁数、全 二 十 九 丁 苹 "
行 数 十 一 行 。 字数、 二十四〜五。
版心丁数のみ附す。
備 考 、平 仮 名 古 活 字 版 に は 十 一 行 本 と 十 二 行 本 と の ニ 種 あ り 、
本 書 は そ の 十 一 行 本 で あ る 。慶 長 元 和 頃 の 印 行 か 。 十 二 行 本
本 文 は 寛 永 版 よ り も 、平 仮 名 を 主 体 と し て ゐ る 。句 読 点 は 施
(竜 門 文 庫 蔵 )と は 小 異 が 認 め ら れ る が 、勿 論 同 系 統 本 で あ る 。
I
s
1'
不明な詞章、 又古活字特有な誤植、脱字等も間
刊本にょり推定せる仮名をロ内に入れた。
その他、文
三一四
備 考 、 本 文 は 平 仮 名 交 り 文 で 、 句 読 点 。が あ り 、 濁 点 、 振 仮
が か な り 多 く 使 用 さ れ 、仮 名 遣 ひ に 多 少 の 相 違 が み ら れ る が 、
名 が や X不 規 則 に つ い て ゐ る 。 平 仮 名 古 活 字 本 に 較 べ て 、 漢 字
所掲の校異の如く同一系統本である。
猶 、神 宮 文 庫 の 同 無 刊 記 本 は 、 この後印本である。 又日比谷
刻である。更 に 〔
寛 文 〕 頃 江 戸 版 、 群 書 類 従 本 等 も 、 この系統
図書館、加賀文庫蔵、京都小川多左衛門版は、此の寛永版の覆
二字ナシ(
類従 )
けるをたかひに見をりたま
は し や う の 御 ほ ん ば う (寛 永 版 十 八 丁 ォ )
心
〇 も あ き れ あ し て な へ て や が て ふ し ぬ べ き (寛 永 版 二 十 三
三字ナシ (
類従)
る ょ り (寛 永 板 二 十 ニ 丁 ォ )
................... り ◊し 童 を う ち み
ひけるそれょりも山をさしていそきける(類従)
。童 御 ふ み 取 て 山 へ た つ ね の ぼ り た れ ば .........
。け い だ い
(寛 永 板 十 四 丁 ォ )
とアリ(
類従 )
わ れ ら は か ち に て あ ゆ み 候 は ん .此 こ し に め し 候 へ ...
〇
。 て う - ^ -X
ぼふ う ち ん の そ こ (寛 永 版 ニ 丁 ゥ )
くほみ(
類従)
の小異を此処に掲げると
〔
寛文〕 頃江戸版は別項にて記すことにして、群書類従本と
文大観四、等はそれである。
る。 即 ち 、 続 史 籍 集 覧 十 二 、 日 本 文 学 全 書 、 日 本 文 学 大 系 、 国
明治以降の飜刻の多くは、 この系統本を底本とせるものであ
の本文を有し、 この刊本系の伝存は甚だ多い。
又 十 六 丁 裏 、 「お ん し や ぅ し へ は つ か ふ す る 事 、 い ぜ ん す て
慶応義塾図書館
寛 永 十 九 年 刊 安 田 十 兵 衛 版 「秋 の 夜 長 物 語 」
刊 本 、 一冊。
装 幀 、 美 濃 紙 袋 綴 。 二 十 五 .ニ 糙 、 横 十 七 •七 極 。
表 紙 、濃い藍色地に銀泥で水辺草花を描いている。
匡 郭 、 四 周 単 辺 、 竪 ニ 十 ー .六 狸 、 横 十 六 .三 樞 。
題 簽 、 「秋 の 夜 長 物 語 」 重 郭 附 、 左 上 方 に 貼 る 。
内 題 、 「秋 の 夜 長 物 語 」。
奥題、 「
秋 の 夜 長 物 語 」。
丁数、全 二 十 八 丁 。
刊記、寛永十九年五月日、安田十兵術。
行数、 十一行。字 数 、 二十〜五。
版 心 、 「秋 の 夜 」、 下 方 に 丁 附 。 挿 絵 は な い 。
<-
原本のままで、私に施したものではない。
に 六 ヶ 度 な り 」 の 片 仮 名 「ヶ」 に 「か.
」と振仮名のあるのは、
る0
れる処もある。 が そ の 儘 整 版 本 へ と 誤 り 伝 へ ら れ た も の も あ
々散見する。 そ れ ら は 、寛 永 十 九 年 版 と の 校 異 に ょ り 、 訂正さ
1,
丁オ)
二字ナシ(
類従 )
。是 を み れ ば 或 は ほ う む の 大 そ う じ や う (
寛永版二十五丁ゥ)
■行てたつね 見給は(
類従 )
。い は く ら の あ ん あ ん じ つ へ た つ ね 行 て み れ ば (寛 永 版 二 十
七丁ゥ)
釈(
類従 一
。新 古 今 の し ゆ け う の部 (
寛永版二十八丁オ)
等四五ヶ所である。 日本文学大系、国文大観等の底本は、 こ
猶、教育大学附属図書館蔵の寛永十九年版には、平出鏗ニ郎
の群書類従本に依つたものである。
欄外に詳密な校異を朱書してあつて、同 書 の 後 表 紙 裏 左 下 に
氏 筆 か と 思 は れ る が 、 片 仮 名 古 活 字 版 を 以 つ て 、 その行間及び
「明 治 廿 ニ 年 七 月 廿 三 日 、 平 出 鏗 痴 、 読 了 」 と 貼 紙 が あ る 。
京 都 小 川 多 左 衛 門 版 「秋 の 夜 長 物 語 」
奥 題 、 「秋 の 夜 長 物 語 」 。
京都書房柳技軒小川多左衛門刻
刊記、 六角通寺町西江入町
丁数、全二十八丁。
行数、 十一行。字数二十〜五。
版 心 、 「秋 の 夜 」 下 方 に 丁 附 。 挿 絵 は な い 。
本書は寛永十九年版の覆刻である。
寛文頃江戸版秋
「
の夜
」
蔵
氏
重
山
横
。
装 幀 、 大 形 本 。 美 濃 紙 袋 綴 。 竪 ニ 七 醒 、 横 十 八 .八 蠅 。
刊本、 ニ冊。
匡 郭 、 四 周 単 辺 、 竪 ニ 十 ニ .五 喱 、 横 十 六 .三
表紙、竜紋稲妻模様の行成表紙。
装 幀 、 美 濃 紙 袋 綴 。 竪 ニ 六 .ニ 喱 、 横 十 八 •六 極 。
刊 本 、 一冊。
に 記 し 、 下 巻 の 分 は 、 一 行 分 で や-'
小字。横山重氏の解題にょ
る と 、「な ほ 『秋 の 夜 』 の 内 題 は 、 そ の 記 さ れ た 位 置 か ら 見 て 、
内 題 、 「秋 の 夜 上 (下 ) 」 と あ り 、 上 巻 の 分 は ニ 行 分 、 大 字
下に 「
秋の夜長物語上(
下)」とある。
題 簽 、 短 冊 形 重 郭 附 の 元 題 簽 、 上 方 に 「絵 入 」 と 角 書 し 、 その
表紙、縹色布目改装表紙。
『秋 の 夜 長 物 語 』 と あ つ た 内 題 の 下 方 を 略 し た も の と は 思 は れ
削除ではなくして、
ない0 即 ち 、後 刷 本 に ょ く あ る 故 意 の 版
初 め か ら 『秋 の 夜 』 と あ る の で
匡 郭 、 四 周 単 辺 、 竪 ニ 十 一 •六 醒 、 横 十 六 .三 喱 。
日比谷図書館蔵
|1
題 簽 、 「秋 の ょ な か 物 か た り 」 (
後補墨書)
内 題 、 「秋 の 夜 長 物 語 」
三一五
あ ら ぅ 」 、と述べられてゐ る 。
®'
下 巻 、 ニ 丁 ゥ I 三 丁 ォ (見 開 き ) 五 丁 ォ 、 七 丁 ォ 、 九 丁 ォ 。
上巻、 ニ丁ォ、 四丁ォ、六丁ォ、 八丁ォ、十丁ォ、
三二八
丁数、 上巻、 十一丁、下巻十一丁半。
こ さ ず や き は ら ふ 。 を ん じ や ……
と こ れ に て な ほ 云 々 」 (下 巻
ず ち \ の… … し り 給 は ぬ こ と は 云 々 」 (
下 巻 一丁オ) 「一っもの
破 損 せ る 処 が あ る 。 即 ち 「山 門 へ よ せ ん ず る 事 は か な ふ べ か ら
「ァ ヵ キ 」 「よ こ や ま 」 の 蔵 書 印 等 が あ る 。 下 巻 に は 数 ヶ 所 の
備 考 、 両 巻 の 巻 頭 巻 尾 に 、 「福 田 文 庫 」 の 印 記 、表 紙 見 返 し に 、
刊 記 、 なし。
行 数 、 十 四 行 。^ 数 、 一 行 約 二 十 八 〜 三 士 一 字 。
版 心 、 上 方 に 「む め わ か 」、 下 方 に 丁 附 。
挿 絵 、 十 頁 分 、 中 に 見 開 き 一 つ 。■
(横 山 重 代 蔵 寛 文 頃 戸 版 秋 の 夜 )
一丁ゥ) 、 「よ せ て に は 、 し ゆ せ ん ぜ ん じ く は っ さ う ゐ ん す き
.. さ い し や う こ ん り ん ゐ ん 云 々 」 (下 巻 ニ 丁 オ ) 等 の 点 線 部
分である。
此 版 本 は 「好 色 本 目 録 」 に 云 ふ 、 万 治 寛 文 頃 、 「絵 入 秋 の 夜
長物語」と同一のものであらう。
本 文 に は 、 句 点 、 濁 点 が あ り 、仮 名 書 き を 旨 と し て ゐ る の で 、
振 仮 名 が な い 。 寛 永 十 九 年 安 田 十 兵 衛 版 と 比 べ て 、殆 ん ど 、そ の
る0
差異は認められない。 その漢字交りを仮名本位としたものであ
か (
江戸版上巻一丁ゥ)
その相違を左に示すと、
。わ れ た ま - ^ そ く ち ん の き よ う が い を は な れ て (寛 永 版 ニ 丁
程 (
江戸版上巻三丁ォ)
オ ) 但 し 寛 永 版 も こ の 「ち 」 は 甚 だ 不 明 瞭 で あ る 0
,
か (
江戸版上巻三丁ゥ)
ゆ
〇め に み え た る ち ご の お も か げ 、 時 の ぼ と も 身 を は な れ ず
(寛 永 板 三 丁 ゥ )
。老 木 の は な の い ろ こ と な る 、 こ ず 糸 が き に あ ま り て (寛 永 版
(四 丁 ゥ )
て (江 戸 版 上 巻 三 丁 ゥ )
かど(
江戸版下卷三丁オ)
は
〇 5 か に 人 家 を み れ ば 花 あ れ ば す な は ち 入 と い ふ (寛 永 版 四
丁ゥ)
。さ ん も ん ょ り 此 寺 へ 、 寄 て せ め し 事 す で に 六 度 か と な り (寛
永版十七丁ォ)
て ア リ (江 戸 阪 上 巻 十 一 丁 オ )
等 は 江 戸 版 に ょ っ て 正 さ れ る 。 その他
ナ シ (江 戸 版 下 巻 四 丁 ゥ )
こX に や す み か し こ に 立 と ^ ま り .さ ら に あ ゆ み か ね さ せ 給
〇
ひ け り (寛 永 版 十 三 丁 ゥ )
し ら か は ほ こ の そ ら い ん じ 、さ ん も ん な ん と の み こ し ふ り (寛
〇
永本十八丁ゥ)
三 字 ナ シ (江 戸 版 下 巻 九 丁 ゥ )
こ 兔 もおしますなきかなしむ、 かくてa しもあるべきならね
〇
ば (
寛文版二十四丁ゥ)
ひ た る に (江 戸 版 下 巻 十 一 丁 オ )
しや.
っ (江 戸 版 下 巻 十 二 丁 オ )
。山 王 も 是 を か ん じ 給 為 に ら い り ん あ り (寛 永 版 二 十 七 丁 ォ )
。新 古 今 の し ゆ け ぅ の 部 に そ 入 さ せ 給 ひ け る (
寛永版二十八丁)
ォ)
等の小異が見出されるに、すぎない。
本 書 の 巻 分 け は 、 寛 永 版 の 第 十 四 丁 表 に あ た る 。 「ば う ば う
たるこすいのうへ。 まんまんたる雲かすみのうちをわけて。 へ
んしの間に大みねの。 しやかのだけといふところへぞかきもて
ゆ き け り 」で 上 巻 が 終 る 。 下 巻 は 次 章 「
爰にばんじやくをた\ へ
たる。 石のろぅの な か に お し こ め て を き た れ ば 。 月日のひかり
もみえず云々」といふ所ょり起ってゐる。
正 徳 六 年 版 「
秋夜長語物」
吉
田
幸
一
氏
旧
蔵
現 在 、 そ の 所 在 が 知 れ な い の で 、詳 細 は 不 明 で あ る 。
田 ロ 明 良 著 「典 籍 奏 鏡 」 に は 寛 文 十 九 版 と 並 記 し て 、
「和 玄 恵 本
和字平かな歌交
(丁 数 ) 三 十 五 丁
本
秋夜長 S B i ? 絵 入 ハ
丁 全弍冊
正徳六年正江戸日本橋南春丁目須原屋茂兵衛開
月吉日丙申洛陽京極通五条上ル町新井弥兵衛板
応々翁方山書ノ跋あり其文ハ
菝
此物語ハもと玄恵法印の述作にて一部全鉢ハ神祇釈教恋無常
は せ し 甚 深 の 物 と 也 最 心 を と Xめ始終を味ひ見るへしされと
哀傷の極致是瞻西上人の一生の徳を感し彼法印の骨髄をあら
も古来の板行所々違ひ有故に此度本書の写しをもって改め伝
るとそ書林予に抜をこふ固辞するに不許ょって右の意趣をあ
らはにす爾云」
又 、 柳 亭 種 彦 「好 色 本 目 録 」 には
と解題してゐて、 その概略は識られる。
『類 従 』に 入 れ ら れ し は 、 此 寛 永 本 に て 正 し か ら ざ る 本 な り 、
「絵 入 新 板 正 徳 六 年
穢 土 を さ い ど \誤 る の 類 最 多 し 、 は じ め の 三 本 (活 版 本 、 古
三一七
ちがひある故に本書
印 本 、絵入本) はさまで異同なし、正徳本は犬に異るところ
あ り 、 其 奥 書 は 『古 来 の 板 行 と こ ろ <
の う つ し を 以 て 改 め は ベ る 』 云 々 と あ り 、実に古写本 を 得 て
刊 行 な し X な ら ん と 思 は る X こ.
とあり、予も天正前の古写本
はてうちんとあり、後人の書改めしなるべし」
を 蔵 す 、此 写 本 と 正 徳 本 に の み と う ろ う と あ り 、 はじめ三本
と 誌 し て ゐ る 。 之 等 に ょ れ ば 、 平 仮 名 古 活 字 版 、寛 永 十 九 年 版 、
〔
寛 文 〕頃 絵 入 本 等 の 諸 刊 本 と か な り 異 る 本 文 を 有 す る こ と が 判
る。
猶 、横 山 重 氏 か ら 御 拝 借 致 し ま し た 御 資 料 に ょ り ま す と 、
装幀、 竪八寸七分、横六寸一分。袋綴。
表紙、黒葱色無地。
匡 郭 、 竪 七 寸 三 分 、横 五 寸 一 分 。
三一八
別 紙 の 菝 文 (前 記 ) と 刊 年 記 が あ る 。 又 、 表 表 紙 の 見 返 し に
「I I秋 の 夜 の 長 物 語 」 と あ る 由 で あ る 。 そ し て 「本 文 は 片 ヵ
ナ 活 字 本 に 近 い と 思 は れ る が 、 次 の や う に 『今 は む か し と も 申
べき』 が 入 つ て ゐ る 」 と の こ と で あ る 。
「典 籍 奏 鏡 」 に 丁 数 三 十 五 丁 と あ る は 、 丁 附 重 復 箇 所 六 つ を
であろう。
見 落 し た た め で あ る と 思 は れ る か ら 、 丁数は四十一丁でょいの
又 、 洒 竹 文 庫 、霞 亭 、残 花 、吉 田 、 の 印 証 が あ る と の 由 で あ
るから、吉田幸一旧蔵本と思はれる。
! 猶 本 書 は 、 江 戸 川 乱 步 氏 御 所 蔵 と 伝 聞 い て ゐ る が 、今 回 の 調 査 に は 間 に 合 は な
か つ た 。 次 号 に て 補 ひ た い 。—
例
今 回 、 本 論 集 に 掲 出 し た 「秋 夜 長 物 語 」 は 次 の 四 本 で あ る 。
凡
内 題 、 「秋 の 夜 の 長 物 語 」 。
慶応義塾図書館蔵天文九年写本
題 簽 、書 題簽。
丁数、 四十一丁。
横山重氏蔵片仮名古活字十二行本
慶応義塾大学国文学研究室蔵平仮名古活字十一行本
大東急記念文庫蔵文禄五年写本
一、 底 本 の 飜 刻 に あ た つ て は 次 の ょ う な 方 針 を と つ た 。
行 数 、 十行。 字 数 、 二十一、 二字。
十 五 … … 廿 一 、 又 廿 一 、 廿 ニ … … 廿 六 、 又 廿 六 、 廿 七 … … 三十
⑴
丁 附 、 一… … 三 、 又 三 、 四 … … 九 、 又 九 、 十 … … 十 四 、 又 十 四
一、 又 三 十 一 、 三 士 一 … … 三 十 五 。
甚 し い も の に 限 り 、(マ 、)、或 は (… … 力)と 左 註 を 施 し た 。
り 等 も 底 本 通 り そ の ま \と し た 。そ の 内 、誤 字 脱 字 等 の 特 に
本文はすべて底本通りとし、誤字、脱字、仮名遣ひの誤
版 心 、 「秋 夜 長 」 。
本 文 は 、終 了 裏 の 九 行 で 終 る 。 そ の 後 、裏 表 紙 の 見 返 し に 、
挿絵、十二頁分。
⑵
⑶
⑷
底 本 の 異 体 字 、略 字 、 異 体 の 仮 名 等 は 、 おほむね通行の
字 体 に 改 め た が 、 中 に はそ の ま ^残I し たものがある。
右 四 本 に は 、 句 読 点 は す べ て な い が 、通 読 の 便 を 考 へ
て 、 私 に 読 点 を 多 く 施 し た 。 そ れ は す べ て 、 、点 を も っ て
統一した。
底 本 の 振 仮 名 は 、 そ の ま \ に 保 存 し た 。 又 、 「寝 覚 」 、
「終 夜 」、の 如 く 、 左 右 に 振 仮 名 の 施 さ れ て ゐ る も の も あ る
文中には之を掲げす、訂正せる処に従った。
又天文九年写本、文禄五年写本の本文は— 特に前者は—
用 も 止 む を 得 な か っ た の で こ \ に合 せ 記 す 次 第 で あ る 。
得 な か っ た 。 又 同 様 な 理 由 に ょ り 、字体は多く当 用 漢 字 使
が 、印 刷 並 び に 諸 事 情 に ょ り 、遣 感 な が ら 、原型を再現し
用言の 語 尾 や 助 詞 を 仮 名 で 小 さ く 記 す 一 種 の 宣 命 体 で ある
(10
は、 大 略 の 字 数 を ロ 印 で 埋 め た 。 又 、 解 読 に 疑 問 を 猶 残 す
で玆に感謝の辞を棒る。 ま た 横山重氏には、諸本並びに多年の
許 し 下 さ っ た 大 東 急 記 念 文 庫 、 横 山 重 氏 、 幸 節 静 彦 氏 、 天理図
一字下げて、上 下 句 を 続 け て 掲 げ た 。
に記してあるものと二通りであるが、今はすべて、別行、
平仮名古活字十一行本は寛永十九年安田十安衛版を以つ
て、 そ の 校 異 を 傍 註 し た 。 但 し 漢 字 と 仮 名 、 清 濁 、 仮 名 遣
等 の 相 違 は 、煩 を避け、 之を省 略 し た 。
掲出の両写本には見消ちの筒所が各々に数ケ所ある。本
三一九
し、 御 芳 情 心 か ら 御 礼 申 上 げ る 次 第 で あ る 。
御 調 査 の 諸 資 料 の 数 々 ま で も 、貸 与 下 さ れ 、種々の便宜を恭ふ
書 館 、 東 京 大 学 附 属 図 書 館 、 神 宮 文 庫 、 日 比 谷 図 書 館 に 、 謹ん
く行を改めた。
改 行 は 底 本 通 り に て は 、如何にも読みづらいので私に多
記した。
本調査に際し、御貴重なる御蔵書の飜刻並びに披見を快く御
代順のそれではない。
序は諸本の性格に依り、之を排列したもので、必ずしも時
底 本 の 体 裁 、 特 徴 等 は 解 題 中 之 を 詳 記 し た が 、解 題 の 順
(1¢
文 字 に は 、 止 む を 得 ず 0 印 で 囲 み 、 左 下 に (… … 力 ) と 註
底本の虫蝕、手ずれ、破損等にょり、判読し得ざる処に
註 記 せ ず に 、 底 本 に 従 っ て 、 そ の ま \にと め た 。
M
「媚 」、 「釈 氏 」 、 「宴 」、 等 に は 、印 刷 の 都 合 上 、(マ 、)も
が、底 本 通 り に 残 し た 。但 し 、振 仮 名 の み 之 を 誤 る も の 、
⑶
£ 底 本 の 和 歌 は 、 上 下 句 を ニ 行 に 分 け て 記 す る も の 、 一行
⑶
(5)
(6)
三ニ〇
ヲ 振 ウ 、 誠一一是レ真俗ノ倚頼、 文 武 ノ 達 人 タ リ
天文九年写本
夫 、春ノ花ノ、樹頭ニ上ルハ、 上求莰ノ、機ヲ勧、秋ノ月ノ、
メ タ リ ケ ン 、 コハソ」 モ 何 事 ソ ヤ 、 我 レ 適 、 俗 塵 ノ 境 界 ヲ 放
稚年ノ比口、花ノ散リ、葉ノ落ルヲ見テ、寝 ヌ 夜 ノ 夢 ヤ 、覚
秋
夜
長
物
語
水 底 ニ 下 ル ハ 、 下 化 衆 生 ノ 、 相 ヲ 顕 ス 、天 物 ノ 言 ゥ 事 無 ク シ テ 、
ウ
V
七 日 ニ 満 シ ケ ル 夜 、 礼 盤 ヲ 枕 ト シ テ、 少
トマトロミタ
一心一 誠 ヲ 至 シ テ 、 道 心 堅 固 即 證 無 上 袄 ト ソ 、 祈ケル
ル夢
成 就 セント 思 テ 、 石 山 へ 詣 、 一七日カ間タ、 五 鉢 ヲ 地 一投テ、
マタクルニヤ、 サラハ、仏 袄 ノ 、 擁 護 ヲ 資 ミ 奉 テ 、 比 ノ 願 ヲ 、
(
一
サカ)
是程ニ思ィ立チヌル事ノ叶ハヌハ、邪」魔 外 道 ノ 、我 レ ヲ 抜
トソ詠シケル
何日人間栄辱眼愁然禅搨看雲眠
(
榻力)
朝々暮々風塵底失脚誤生三十年
ク、 同 朋 同 宿 ノ 別 モ 、 サ ス 力名 残 惜 シ ケ レ ハ、 心 計
a 荒 増 、徒
月 日 ヲ 送 リ ケ ル 、 其 心 中 動 テ 、 言 ハ 外 ニ顕 レ ケ ル ニヤ
一
一
、
(マこ
ト 毎 ト ニ 、 難 キ 離 習 ィ ナ レ ハ 、 醫 王 山 王 ノ 、結 」 縁 モ 捨 テ カ タ
計ノ陰家ヲモ結ハヤト、思ィケル力、 旧縁ノ繫ク所ロヲハ、人
俄一一出来ケレハ、 _ テ、 山 ヨ リ 山 ノ 奥 ヲ モ 尋 ネ 、 柴 ノ 庵 ノ 、 旦
シテ、 出 離 生 死 ノ 務 、 闕 ヌ ル 事 ノ 、 浅 猿 サ ヨ ト 、 思 ウ 心 ロ ノ 、
レテ、 釈 氏 ノ 門 室 ニ 入 リ ナ カ ラ 、 明 ケ 暮 レ ハ 、 名 聞 利 養 ノ ミ 移
物 々 是 ヲ 示 ス 、 人 心 口 ア リ 、 学 々 ト シ テ 、 山豆勤メサランヤ、 若
シ人ト有テ、 人 間 ノ 八 苦 ヲ 見 テ 、 穢 土 ヲ 献 ウ 時 ハ 、 煩悩即获ト
成 ル 」、天 上 ノ 五 衰 ヲ 聞 テ 、 浄 土 ヲ 求 ム ル 時 ハ 、 生 死 即 涅 槃 ト 成
ル、 故一一、 諸 仏 苷 ノ 、 順 逆 ノ 化 導 ヲ 垂 ル 、日 、 罪 ア ル ヲ ハ 、 邪
ヨリ正ニ入レ、 縁 無 キ ヲ ハ 、悪 ヨ リ 善 ニ 誘 給 ゥ 、 是 レ 、何ヲ以
テ 言 ト ナ ラ ハ 、 経論一一説所ハ、 書 伝 —載 セ タ レ ハ 、 申スー一事欝
ク、 語 一モ詞ハ、 不 レ 足 レ 粵 、 近 比 、 耳 一1 事 ノ 、 余 リ ニ 哀 ニ
モ」、又 貴 ク モ ア リ シ 事 ナ レ ハ 、 面 々 ノ 枕 ヲ 崎 テ サ セ 給 へ 、 老ノ
ネ
寝 覚 ニ 、 秋 ノ 夜ノ 長 物 語 リ 、 一ツ 申 ジ 侍 ラント云
ls?
(マ、)
ニ、 接 取 ノ 慈 悲 ヲ 裹 ミ 、或 ル 時 ハ 、摧伏ノ觎ノ刃一一、 忿 怒 ノ i
力 道 ヲ 歩 テ 、囊 砂 背 水 ノ 風 ヲ 上 ケ タ リ 、或 時 キ ハ 、 忍 辱 ノ 衣 ノ 袖
一ハ玉泉ノ」 流 レ ヲ 酌 ン テ 、 四 教 三 観 ノ 月 ヲ 澄 シ 、外 ニ ハ 、黄 石
相ノ律師桂海トテ、顕 密 兼 学 ノ 人 一テソアリケル、 サ レ ハ 、 内
後 ノ 堀 川 ノ 院 ノ 御 宇 ニ 、 西 山 ノ 瞻 西 上 人 ト 聞 へ テ 、 道 学 備シ
タリシ人ト有リ、本トハ、敷山東塔ノ衆徒、勧学院ノ住侶、宰
*?:
花二度
スラ イ
錦 ノ 張 ノ 内 ヨ リ 、容色美麗成ル児ノ、言ハカリナク、老
-1、
(
帳力)
ニ、
蘭 タ ル カ 、 立 出 テ 」、散 マ カ イ ケ ル 、 花 ノ 木 影 ニ 、 立 チ ヤ
タレハ、青 葉 力 チ ニ 、 繡 モ ノ シ タ ル 水 干 ノ 、遠 山 桜
カタ
テコ
モ無思ニ、
タヱカネ
テ、 若 ナ ク サ ム
キタ
マ イシ 陽 臺
ハ、 巫 山 ノ 神 女 ノ 、 雲 ト 成 リ 、 雨
ソ、法 燈 ノ 頹 風
テ、
ニ向 ウ 所
ヒケレ
惜
aヲ モ 、 挑 ケ
ト
、力 、リ ケ レ
ハ、斬足 ク
ィツチへ
レ
モ立寄
テ 、晴 間 待 ト 思 ヒ テ 、
(
辺力)
テ、 門 ノ 遍 リ ニ 、 立 寄
色 異 成梢 、 桓 ノ 外 一余リテ、 雲 ヲ 散 リ 、 遙
ハ則入ルト、 云 詩 ノ 心 ロ 引
タレ
ハ、
人
一
一家 ヲ 見 テ、 花 有
金 堂 ノ 方 へ 行 程 ニ 、 聖護院ノ御坊ノ審門ノ内一一、 老 木 ノ 花 ノ 、
レ
庭
ニ出
テ、 雪
、サ
リトモ、
ヲモケニ
カナルカ、見 ル 人 有
一、 薄 紅 ノ 柏 」 重 、 腰 I I細マ
齢 二 八 計 リ 成 児 、 水 魚 ; Iノ 水 干 -
タヲヤ
ノ内ョリ、
、 一房 折 テ
御簾
、 フカク、
ケルニヤ、
ケマワシ
サリ
枝ノ花ヲ
ニ、
シラ
ル下
力
キタ
チ 詠 テ 、花 ノ 雨 下 一、 立 ヌ レ
タル
ヲ
迷
カリ
カト」
、ウ ハ
有様、是モ花
降雨に、 ぬるとも折ぬ、山桜、雲のかへしの、風もこそふけ
ト ウ
ハレテ、 誘 風 モ ヤ ア ラ ン ト 、 シ ツ 心 ロ ナ ケ レ ハ 、
ノ袖モカナ、雲 ニ モ 霞 ニ モ 、 借 ス ヘ キ 心 地 ナ ン ト シ ケ レ ハ 、 心
ニ、 ス
ニ、 打
nシ モ
ハ、 今
レ
ノ ウ ツ 、 ニ、
チ纏 テ 、 引 留 メ タ ル ヲ 、 ホ
タカワネ
ル
ト、
ふ、
こ
Hスシ
見シ夜
、リ タ
ル 人 ノ ア リ ヤ ト 、 ア ヤ シ ク 思 ヒ テ 、 花 ヲ 手 ニ 持 乍 、 力 、リ ノ 下
ロ モ 無 キ 風 ノ 、 門 ノ 扉 ヲ キ リ ^ ^ ト、 吹 キ ナ ラ シ ケ レ ハ 、 アク
ノ糸
ヲ 静 ニ 迥 リ テ 、 歩 ミ 見 ル 房 ノ 如 ク ニ 、 ユウ^ ^ ト 、 力
、柳
(
廻力)
ノスソ
、チ
見帰リタル目ツキ、
貞ノニヲィ、
」 言計モ無シ
髪
夢ノタ
ノ夢ハウチ覚テ、 日ハ暮行ケトモ、 帰ルへキ方モ、 ヲ ホ
テ、 其 夜 ハ 金 堂 ノ 縁 ニ 、 ヒ レ フ シ テ 、 終 夜 ヲ 詠 メ 佗 ス
まょ
へマ'
乂ろなるらん
是や夢、あ り し や ぅ つ わ き か ね て 、 いつれに
ヨモスカラ
ホト
ノ
水
口
一
一
ハ、 石 山
又石山へソ」詣 リ ケ ル
IHI
開 キ テ 、 雪 ノ 如 ク 降 力 、リ タ ル ヲ 、 袖 --裹 乍 、
イッチへ行トモ
サメ ヌ
ヲ ホ へ ヌ ニ 、 暮 行 道 ニ 消 ッ 、、 見 へス 成 リ ヌ ト 見 テ 、 夢 ハ ウ チ
是 則 、所 願 成 就 ノ、 夢 想ナ リ ト 、ウ レシ ク 思 テ 、マ
ダ シ ノ 、メ
ノ、 明 ケ ハテ ヌ ニ 、立 帰 リ ヌ 、外 ヨ リ 来 ル ヘ キ 物 ヲ 待 ッ ヤ ウ ニ 、
、ナ ラ ネ ハ 、 セ ン
道 心 ノ 発 ト J居 タ レ ハ 、ナ ヲ 山 深 住 ハヤト、思 シ 心 ロ 打 忘 レ テ 、
夢 二 見 へ ッ ル 、 児 ノ 面 影 、 時 ノ 程 ト モ 、 身 ヲ ハ ナ レ ス 、 ソモ誠
ウ ツ
ト、 一爐 ノ 香 ヲ 焼 テ 、仏 前 ニ 向 へ ハ、漢 ノ 李 夫 人 ノ 、煙 ニ浮 テ 、
ニヨレ
見シ良セニ身ヲコカシ玉ヒシ、武帝ノ御思モ、身ニシラレ、 空
山ノ花ヲ挙ケテ、雲 底
ト成リ シ 、 後 ノ 面 影 ヲ 、 タッキモ」 シラス、 歎
ニ、
人 モ 失 ル ハ 、 三 尺 ノ 飆 ヲ 、 サカサ
呑力如シト、悲シミ玉ウナレハ、我力離山ヲ、何 様
ニ ハ、 衆徒ノー
ノ 御 涙 モ 、 ヨソナラス
マニ
山王ノ御神詫
命生キ
チ申サメト思
レ、 暮 待 程 ノ 露 ノ 身 モ 今 ハ ア ラ シ ト 、 思
ナリトモ、
シ ク 思 食 シ テ 、 道 心 ヲ ハ ワ ス レ サ セ 給 ウ ニ ヤ 、 喩 、 サヤウノ
神慮
ンス
観音.
ヲコソ、 カ コ
三 井 寺 ノ 前 ヲ 通 リ ケ ル ニ 、降 ル ト モ シ ラ ヌ 春 雨 ノ 、 良
-1、
三ニー
'--
リ ケ ル 」所
三ニニ
シ テ、 昼 ル ハ 、 籠 ノ 内 ノ 鳥 リ ノ 、 雲 ヲ 恋 ウ ル ニ 身 ヲ タ ト へ 、 夜
ノイタ
ハ、 昨 日 ノ 所 ニ 行 テ 、 御 坊 ノ 傍 ニ
ハ
ハ、 童 ハ 、 申 ヤ ウ ハ 、 サ 程 ニ 思 召
酒 ヲ 」勧 メ ケ ル 次 ニ 、梅若公ノ御姿タ、 一目見マイラセシヨ
リケレ
リ、
ニ、 聖 護 院 ノ 御 坊 ノ ー
一、 昔 シ 申 通 シ タ ル 人 ノ ア リ ケ ル ヲ 、 尋
(
辺力)
ネ行テ、 一 旦 百 ト ス ル 程 ニ 、 ア リ シ童ニ寄合ヒテ、茶 ヲ 呑 、
シ サ ノ 余リ
キヨゲ成力、 ヌキスノ下ノ水、捨ントテ、門ノ外
ケヌレ
童ノイト
事
へ、
夜モ明
ラント、
ル ハ 、 陡ノ鶏ノ鳴クー一、 涙 ヲ 諍 テ 、明 シ 暮 シ ケ ル 程 —、次 第 ニ 、
ハ、 何 事 ニ テ 候 ヤ
衰 命 ア ル ヘ シ ト モ 、 不 覚 、サ レ ハ 、 セ メ テ ノ 、 ナ ツ 力
ヒケレ
ニ出 タ リ 、
是 ヤ 若 昨 日 ノ 児 ノ 、御 事 ヲ モ 存 知 タ ル ラ ン ト 、思 ヒ テ 、
ノ外ナル気色モ無シ
立 寄 テ 、物 申 候 ハ ン ト 、 云
律 師 ハ 、 ゥ レ シ ク 思 ヒ テ 、 立 寄 テ 、 問 ケ ル ヤ ゥ ハ、 昨 日 、 此
院家
シ ツ 心 。無 キ 由 ヲ 、 語
サハ、 御 文 ヲ ア ソ ハ シ 候 へ 、 彼 ノ 御 方 へ 、 マ イ ラ セ テ 見 候 ラ
シケレハ、中 ^ ^ 、
哥ハ
カリニ
テ、
テ、 文 ヲ 出 ケ ル 、 詞 ハ ヲ 書 ハ 、 岳 ヲ 集
力キリアルマ
ヤカ
へ サ セ 給 ヒ テ 候 ツ ル 少 人 ハ、 イ カ ナ ル 」 人 ニテ、 ワ タ ラ セ 給 ヒ
テ」
クストモ、
ハメト
メツ
ント、 云 ヒ ケ レ ハ 、
ト
ト、 書 テ 、 童 ニ ト ラ セ タ リ ケ レ ハ 、 童 、 此 文 ヲ 取 テ 、 懐 ロ ニ 押
こ ^!ろを
し ら せ は や 、 ほ の み し 花 の 、 面 影 に 、 立 ち そ ふ 雲 の 、 まょふ
月 ノ 、 ク マ ナ キ 光 リ ヲ 、 靜 風 情 一 一 テ 候 、 此 御 所 ノ」 御 ア リ サ
ノ 影 ニ 、 御 立 チ 候 シ ヲ 、 或 ル 人 、 風 ニ 見 マ イ ラ セ テ 、 ® 一心ロ無
入テ、彼 方 へ 参 リ テ 、申 シ ケ ル ハ 、何 ソ ヤ 、春 雨 ノ 絶 間 ニ 、 花
ク 、 ア ク カ レ 候 思 ヒ ノ 色 P ヲ 御 ラ ン シ 候 へ ト テ 、 懷 ロ ヨ リ 、」
ハ、 タ ヤ ス ク 御 出 テ モ 候 ラ ハ ス 、 只 イ ツ ト ナ ク 、 深 窓 一向テ、
^
不 参 シ テ 、 是 レ ヨ リ 我 山 ヱ ソ 」 帰リケル
へ ト モ 、 余 リ ヒ タ 、ケ タ ラ ン ハ 、 サ モ サ ス カ ナ レ ハ 、 石 山 へ モ
シ ル へ -テ
1 、 坪 ノ 石 歩 ミ ツ テ ニ 、 心 ロノ 奥 ヲ シ ラ セ ハ ヤト 、 思
斬足、童 ハ 祗 候 シ テ ソ 居 タ リ ケ ル 、ヤ 、ア リ テ 、
書院ノ紗窓ヨリ、
ヲ袖ノ下へ、 力クシ玉ヒケレハ、今ハ御返事アラシト、思テ、
御 簾 ヲ 上 ケ テ 、 内 チ へ 入 リ 玉 ヒ ケ レ ハ 、 サ ラ ヌ ヤ ウ ニ テ 、 此文
铜 ラ ン セ ン ト サ セ 玉 ウ 所 へ 、 出 世 ノ 、 某ヵシ僧都トヤラン申人、
ノ、 ア ル ト モ 知 ラ テ ト 、若 公 ハ 、ウ チ ワ ラ ワ セ 給 テ 、文 ノ 紐 ヲ 解 ,
彼 ノ 文 ヲ 、 取 リ 出 シ テ 、 若 公 二 、 マイラセケレハ、 サヤウノ人
律師ハ、夢ト現トノ面影一、身 ヲ コ カ シ 、 寝 モ セ ス 、ヲ キ モ セ ス
律 師 ハ 、 聞 ク ニ ツ ケ テ 、 イ ト 、、 ウ カ レ ケ レ ハ 、 躺 テ 、 此 童 ヲ
詩 ヲ 作 、 歌 ヲ 読 ミ テ 、 日 ヲ 暮 ラ シ 、夜 ヲ 明 シ 御 座 ト ソ 、 語リケ
マ、 ユ ル カ セ ナ ル 御 事 モ 候 ハ ヌ 程 ト ニ 、 詩 歌 管 絃 ノ 次 テ ナ ラ テ
シ候間、 ー 寺 ノ 老 若 ト モ 一、 春 ハ ー 木 ノ 花 ト 翫 ヒ 、 秋 ハ 夜 長 ノ
力 、 御 心 ロサマ、 ワ ク カ タ ナ ク 、 ヲ ワ シ マ
大 臣 殿 ニ テ 、 御 晒I 一候
ゥ ル 、者 —テ 候 、 此 御 名 ヲ ハ、 梅 若 公 ト 申 候 、 御 里 ハ 花 菌 ノ 左
御 為 メ ニ 、 御 尋 ネ 候 ヤ ラ ン 、 我 レコ ソ 、 其 御 方 ニ 、 召 シ ツ カ
候 ヤ ラ ン ト 、 何 ト ナ ケ ニ、 問 イ ケ レ ハ、 童 ハ打 チ 咲 ヒ テ 、 何ノ
水 魚 沙 ノ 水 干 メ サ レ テ 、 御 年 ノ 程 ハ 、 十六七計一一、 見
-1、
s -
御 返 」 事 ヲ ア ソ ハ シ テ 、 サ シ 出 サ セ 玉 ヒ ケ ル 、 童 、此 文 ヲ 取 テ 、
ヒテ、 此 御 文 ヲ 玉 ハ テ 候 也 、 是 御 ラ ン シ 候 へ ト テ 、 懷 口 ヨ リ 、
ナ、 梅 若 公 ノ 仰 セ ニ ハ 、 イ ツ ク マ テ モ 、 尋 ネ マ イ レ ト 、 仰 セ 候
ク ユ ル ハ カ リ ニ 、 匂 イ タ ル 、 文 ヲ 取 出 シ テ 、是 レ 御 ラ ン シ 候 へ 、
色 殊 ニ コ カ レ タ ル 、 色 々 重 ネ タ ル 、 薄 ヤ ウ ノ 、フ ル 、手 マ テ モ 、
急 キ 持 テ 行 ク 、 律 師 二 見 セ ケ レ ハ、 目 モ ア ヤ カ ニ 悦 テ 、 誠 ニ 、
開 テ見 レ ハ、 是 モ 詞 ハ 無 ク シ テ、 歌 斗 リ 也
身 モ ア ラ レ ヌ サ マ ナリ
a迷 ヒ ヤ マ シ -— -テ 、 一 夜 ノ 後 ノ 、 御 」 袖
ノ 上 へ 、 サ コ ソ 候 ハ メ ト テ 、 ウ チ 咲 イ テ、 戯 フ レ ケ レ ハ 、 律 師
ケ シ カ ラ ス ノ、 御 心
モ、 セ メ テ 別 レ ヲ 、 歎 ク 身 ニ テ 候 ハ ハ ヤ ト 、 打 戯 レ テ 、 文 ヲ 見
ょひを
た の ま す ょ 、 人 の 心 の 、 花 の 色 に 、 あ た な る 雲 の 、 か \ るま
ト ソ 、 ア ソ ハ シ タ リ ケル
レハ
身や
偽の、ある世をしらて、 たのめつる、我 ^ さ へ ぅ ら め し の
律 師 、 此 返 事 ヲ 見 ル ニ 付 テ モ 、」 ィ ト 、心 ロ 浮 力 レ テ 、 更 ラ 立 帰 ル ヘ キ 、 心 地 モ セ ス 、 相 ヒ 見 ヌ 前 キ ノ 、 別 レ タ ニ モ 、 セン
律 師 、 此 御 返 事 ヲ ハ 、」 ナ ニ ト 申 シ 候 ハ ン ス ル ソ ト 、 云 ヒ ケ レ
トソ、 アソハシタリケル
ヒ タ 、ケ タ レ ハ ト
ハ、 童 ハ 、申 ケ ル ハ 、御 返 事 マ テ モ ア ル マ シ ク 候 、 御 坊 ノ 傍 ニ 、
、 思 ヒ テ 、 又 社 ニ 参 リ 候 ハ メ ト テ、 童 -暇ヲ
方 タ 無 ク 、 覚 Hシ カ ハ 、 蹵 ア リ テ 、 坊 ニ 尚 モ 留 リ テ 、余 所 乍 モ 、
其 方 ノ 梢 ヲ 見 ツ 、、 ク ラ サ ハヤト 、 思 ヒ ケ レ ト モ 、余 リ 其 レ モ 、
請 、 山 へ 帰 リ ケ ル 力 、 一 足 歩 ミ テ ハ 、 立 帰 リ ケ ル 程 ニ 、春 ノ 日 、
aヒ カ レ テ、 律 師
踅 宿ヲ取リテ、御渡リ候ヒテ、御遊ノ次テヲ、御 伺 候 へ ト 、
タ ヨ ヒ 出 シ テ 、 詩 歌 、 酒 宴 ノ 遊 ヒ ニテ、 律 師 ヲ、 モ テ ナ シ ケ ル
モ テ ナ シ テ 、 朝 三 暮 四 ノ 営 ミ ア リ テ 、 常 ニ 、 旧ル」 ナ ン ト 、 アマ
サテ、 アル 坊 ニ 、 立 寄 テ 、 居 タ リ ゲ レ ハ 、 其 坊 主 モ 、 懇 ニ
ハ、 又 三 井 寺 へ ソ 、 行 キ ヶ ル
長 シ ト 云 へ ト モ 、 ホト近キ、坂本 ノ 坊 マ テ モ 、 行 キ 不 レ 着 、 日
(
辺力)
仰 セ 候 ヒ ツ ル ト 、 申 シ ケ レ ハ、 思 ウ 方 ニ 、 心
レ
暮 レ ケ レ ハ 、」戸 津 ノ 遍 ニ ア リ ケ ル 、 羽 丹 生 ノ 小 屋 ニ ソ 、 留 リ ケ
テ タ レ ト モ 、 千 引 ノ 繩 ヲ 、 腰 ニ 付 ケ タ ル カ 如 ク ニ テ、 引 返 サ レ
終 夜 、 佗ア カ シ テ 、朝 ニ ナ レ ハ 、 山 へ 登 ラ ン ト テ 、庭マテ出
テ 、 又 戸 津 3リ 、 大 津 ノ 方 へ ソ 、 ア ク カ レ 行 キ ケ ル
雨 、 シ メ く ト 、降 ケ レ ハ 、蓑 笠 ウ チ 著 テ 、旅 人 ノ ヤ ウ ニ 、身
ス ル ト 、 云 ヒ テ 、 昼 ル ハ 、 社 壇 ニ 詣 テ 、、 何 事 ヲ 祈 ト モ ナ ク 、
サル程ニ、 桂 海 ハ 、 新 羅 大 明 神 二 、 所 願 ア リ テ 、 七日 、参詣
築山ノ松ノ木陰ヲ、
便リトシ、
前 裁 ノ 草 ニ 置 露 ノ 、身ノホサヌ思
只 、 茫 然 ト シ テ ソ 、 居 タ リ ケ ル 、 夜 ル ハ 、 院家ノ遍リー一ノイ、
ヲ ヤ ツ シ 、 行 キ ケ ル 所 へ 、 騎 馬 ノ 客 、 道 二 行 合 テ 、 誰レヤラン
ト 、 見 ケ レ ハ 、 童 ニ」 テ ソ ア リ ケル
彼 ノ 童 、 律 師 ニ 、申 シ ケ ル ハ 、 ウ レ シ ク 、 行 合 ヒ 申 タ ル 物 力
三二三
ニ、
アクカレ居タリ
カナト、 モトムルサマナレトモ、 カナワテ、出テカネサセ玉'
'
ヒ
児 モ 、 ハヤ、」其 ノ 人 ノ 、 我 ヲ 忍 ト 、 心 得 へ サ セ 玉 ヒ テ 、 人 目 モ
タ ル 心 ロ グ ク シ 、 見 ル ニ 中 ' ^ 、 心 P苦 敷 ケ レ ハ 、 ヨ シ ヤ 、 只
力 命 チー
セメト
I
マテ
、 思 ヒ テ 、 帰 リ テ ハ 行 キ 、行 キ テ ハ 又 帰 リ 、兔
余 所 乍 、身 ハ カ リ ヲ 、 我 方 ニ ア ル 契 リ ニ テ 、 人 ノ 情 ケ ヲ コ ン 、
我
ィツ
モト、 人 ハ 云 へ ト モ 、 長 居 セ ン 」事 モ 、 サ ス カ ナ レ ハ 、 明ケナ
角 ス ル 程 ニ 、 日 数 モ 、 ハヤ十日余リニ.
、成リケレハ、
ハ、 山 へ 帰 ラ ン ト 、 思 ヒ ケ ル 所 ロ ニ 、 例 ノ 童 来 テ 、 申 ケ ル ハ 、
今 夜 コ ソ 、 御 坊 へ 、 都 ヨ リ 客 人 、 御 入 候 程 ニ 、'
若公ノ御隙ァル
へウ候、 門 主 モ 、 ィ タ ク 御 酔 候 へ ハ 、 御 寝 ノ 隙 ニ 、 是 へ 忍 ヒ ヤ
居 タ リ 、夜フクル」 ホ
(
廼力)
r迴 ル マ テ 、 待 居 タ ル
、月 ノ 南 -
カ レ
力 ニ 御 出 ァ ル へ キ 由 シ 、 仰 セ 候 、門 サ 、テ、御 待 チ 候 へ ト 、 申シ
(
鹏ヵ
捨 テ 、、 細 テ 、 童 ハ 、 帰 リ ケ リ
ク く ト
律 師 ハ '夢 幻 ノ 心 地 シ テ 、 ァ ク
ト ニ 、深 更 ノ 鐘 ノ 、 ツ
所 ニ 、唐垣ノ戸ヲ、密カニ人ノ開ク音スレハ、書院ノ障子ノ間
タルカ
ト 、 覚 へ テ 、光
リノカスカ
ナルヲ持セテ、
ヨリ、 遙 二 見 ケ レ ハ 、 例 ノ 童 ヲ 、 前 キ ニ 立 テ 、 魚 脳 ノ 燈 爐 ニ 、
蟹ヲ集メテ入レ
燈 ノ 影 ヨ リ 、 此 児 ヲ 見 レ ハ 、 金 沙 ノ 水 干 、ナ ヨ ヤ カ ニ メ サ セ 、
児 、 御入ァリ
鉢 ニテ、見ル人モヤアルラント、忍ヒタル風情
シヲタレタル
y ナク、 イ ツ ク シ キ 、 姿 タ 也
本 ト ニ 、立 ヤ ス ラ イ テ 、 立 玉 へ ハ 、 乱 テ 懸 ル
打
イウハカ
リノ
糸、
ニテ、 榦 ノ 」懸
青柳ノ
童 ハ 是 ヲ 見 テ 、内 へ 入 テ 、
三ニ四
力シコヲホトト叩イ
テ 、 是ニ
御 渡 候 カ ト 、 云 ケ レ ハ 、律 師 、余 リ ノ 事 ニ 、何ニト云事モナク
方ヲソ
、 招 キ ケ ル 、児 ハ 、イト ゥレ
テ、 少 シ 傍 一、 身 ヲ 側 、 気 色 —テ 有 由 シ ヲ ソ 、 知 セ ケ ル
童 ハ 、 ハヤ心得テ、 小 人 ノ 御
シケナル有様ニテ、蓬夜ノ妻戸ヲ、押シ開キ、内へ入セ玉ヲ、
、力
ワ 嶋 ノ 、 水 ノ 流 ノ 未 タ 絶 テ 、 尚契ル
間 」 遠 ナ リ シ 袖 ノ 移 リ 香 モ 、 ハヤ身一一フル、ホ ト 也 、 夜 半 ノ 下
紐、打解 、今夜ノ枕ヲ
キナクー一、 菌 寒 シ テ ハ 、 蘭 風 ノ 夢 、
別 レ テ 、 留 メ 難 ク 、 シ ノ 、小 篠
タツ
ヲノ
ノ花ノ
ヘキ、 肟 言 ト モ 、 未
トノ
力
、窓
ノ児ノ
メシ契リ、
レヌ
黒 髪 ハ 寝 乱 レ テ 、 貝 ニ ハ ラ ' ^ ト 懸 リ 、 宛転タル
ヒソ
、帰ヱラントスル姿ヲ見
ノ月ノ
グ ル 鳥 。ネ モ 、 ハ ヤ 聞 ヱ ケ レ ハ 、
彼
I、
ニ成テ、 立 別 レ ナ ン ト ス 、 明 方
トツ
覚 安 ク 、春 ノ 栄 ニ 、連 理
フシ
力 、 。 ヒ ヤ、
.力
キ
ヌ
^
ノー節ノ夜ハ、 明 ヌ
レノ
レハ、 撣 娟 タ ル 秋 ノ 蟬 ノ 、 初 モ ト ユ イ ノ 、 ム ス
西 」 ヨリ、 指 シ 入 リ タ ル ー
アカヌ別
ヘキ有様也
蛾 眉 ノ 、黛 ノ 匂 ヒ 、 ホ ゲ ヤ カ ニ シ テ 、月 ニ モ 嫉 レ 、 花 ニ モ 妬
ハ、 ヲ モ
ワネ
トモ、 サテ、 ア ル ヘ キ ナ ラ ネ ハ 、 ナク^ ^ 、 律師
去 レ ハ 、今 マ 別 テ 、 又 後 ニ 合 ゥ へ キ マ テ ノ 、命 モ ア ル へ シ ト
カ れ し イ
ハ、 児 ヲ 送 テ 、 」 其 マ 、内 へ モ 入 ラ ス 、 門 ノ 唐 居 敷 ノ 上 ニ 、 立
アリ
ヤスライテ居タル所へ、童、児ノ文ヲ持テ来リタリ
取 テ 見 レ ハ 、 サ シ テ 詞 ハ 、 ヲ 、カ ラ ス 、 謌
我 が 袖 に 、 や と し や は て む 、 き ぬ / \ の、 な み た に わ け し 、
有明の月
ト ソ
、 アソハシケル、律師、雜 而 」
と も に 見 し 、 月 を 名 残 の 、袖 の 露 、 払 は て い く 夜 、 歎き明さ
む
ソ イ
ト、 魂 モ ウ カ レ テ 、 人
ノ物
ヲ イ
ヱトモ、
ツ ル 、 袖 ノ 移 香 。ノ カ 物 乍 、 形 見 ニ テ 、 山 へ 帰 リ
カヤウニ、御返事申、律師ハ、夢トタニ、 思ハサリツルヲ、 ヲ
ノカ身ニ
タレハ、 心 モ ホ レ
返 事 モ セ ス 、 涙 タ 人 n 一一余リテ、 ヲ サ ウ ル 袖 モ 、 朽 ハ テ ヌ へ ケ
レハ、 少 シ イ タ ワ ル 」 事 ノ ア リ ト 、 云 テ 、 人 ニ モ ア ワ ス シ テ 、
打 臥 シ テ ソ 、 居タリケル
不
一
一審 、 心 苦 シ ク 思 シ 召
シケル程 ト ニ 、 ツキセヌ思ニ、 御 気 色 常 ヨ リ モ 、 打シヲレサセ
児 モ 、 此 由 ヲ 伝 へ 聞 給 ヒ ケ レ ハ、 誠
給 ヒ テ 、 今 ヤ 、 音 信 ノ ア ル ト 、 待 チ 給 へ ト モ 、 ソナタノ便リト
テ、 心 ヲ ナ ク サ ム ル 人 モ 無 シ 、 或 時 、 少 人 ハ 、彼 童 ヲ 近 付 ケ テ、
仰 セ ア リ ケ ル ハ、 ア リ シ 夜 ノ 夢 ノ タ 、チ モ 、 現 少 成 ヌ ル コ ソ
ウラメシケレ、其 」 上、風 ノ 心地トヤラン、 聞キシ ゾ カ シ 、 ア
サ マ シ ヤ 、 槿 ノ 暮 待 程 ノ、露 ノ 命 ノ 、 若 シ 消 ナ ン 後 ハ 、 無 キ 跡
ヲ 問 ト 云 ト モ 、 今 生 ニ ハ、 相 イ カ タ シ 、 何 成 山 ノ奥、 海ノハ
テ 成 ト モ 、 其 人 ノ 有 所 ヲ 、 通 路 ト シ テ 、 尋 行 ハ ヤ ト 、思 エ ト モ 、
何 ト 申 置 事 モ 無 ク 出 テ ナ ハ、 定 メ テ 門 主 モ 、 サ コ ソ 御 驚 キ ア ラ
ン ト 思 へハ、 其 モ 不 レ 叶 、 又 彼 人 ノ 有 リ 所 、 何 ッ 方 ト モ 、 サダ
力 ニ 知 ラ サ レハ、 今 マ マ テ ハ 、 忍 シ 也 、 今 ハ 彼 ノ 人 ヲ 、 」 尋 ネ
相 ス ハ 、 我 、命 モ ア リ ヌ ヘ シ ト モ 不 レ 覚 、何 成 ル 、虎 臥 野 遍 、
(
辺力)
觫 ノ ヨ ル、 嶋 成 リ ト モ 、
シ■
キ尋 ネ
カ行 ク ヘ シ 、相 ヲ 限 リ ノ 恋 路 ナ レ ハ 、
ハ ラ ' 'ト
' 泣玉ウ
行 末 モ 不 知 、 ハ テ モ ナ ク 、 迷 イ 行 ン 旅 ノ 空 、 思 ヤ ラ レ テ 、 カナ
シケレ卜テ、
サ ス 力 、 未 幻 ナ キ 、 アダシ心ニテ、 サ コ ソ ハ カ リ ニ 契 リ
(
幼力)
,
シ人一、 思 付 キ 玉 へ ル 、 御 心 ノ 内 ノ 、 ハ カ ナ サ ヨ ト 思 へ ト モ 、
ニ、 御心ツクシ一一、 申 サ ン 事 モ 、 サ ス 力 ニ テ 、 童 、 申 ケ ル ハ 、
此 御 気 色 ヲ 、見参スルー一、今 ハ 何 ト 申 共 、 御 留 リ 有 間 敷 キ 物 」 故
律 師 ノ 御 坊 ノ 御 入 候 所 ヲ ハ 、自 ラ 力 、能 々 承 テ 候 へ ハ 、御 伴 申
候 ハ ン ト テ 、 若 公 ヲ ツ レ マ イ ラ セ テ 、 院家ヲソ出ニケル
ノ、 駕 ナ ラ テ ハ 、 カ リ ニ モ 、 御 出 ナ シ 、 サ レ ハ 、 泥 土 ヲ 歩 ミ
若 公 ハ 、本 ヨ リ 、 三 公 九 棘 ノ 家 一、 生 サ セ 玉 ヒ テ y 香 車 乗 馬
テ ハ 、 マ ロ ヒ ナ ン ト シ 玉 ヒ テ 、 更 ラ ニ 歩 ミ 玉 ハ ス 、 童 、 アマリ
給 ウ 事 ハ 、 是 ヲ 始 メ 也 ケ レ ハ 、 コ 、 ニ テ ハ 、 ヤ ス ミ 、 力シコニ
ノ 御 イ タ ワ 」 シサ 一、
我ヲ取テ、
1 哀 レ 何 成 ル 天 狗 、 ハケ物成共、
ケ ル 所 -、 年 シ 長 タ ル 、 山 臥 ノ 、 四 方 輿 一乗リタルカ来テ、 申
飯 山 へ 上 セ ヨ カ シ ト 、 云テ、唐 崎 ノ 松 ノ 影 一、 ヤ ス ミ テ 居 タ リ
ニ、 答 へ ケ ル
ケルハ、 是 ハ 何 ッ 方 へ 、 御 入 候 ソ ト 、 云 ケ レ ハ 、童 ア リ ノ マ 、
ソ
n 、御 尋 候 御 坊 近 ク 、登 ル 者 ニ .
テ候へ、 余 リ ニ 御 イ タ ワ シ ク 候 へ ハ 、 此 ノ 輿 ニ 、 メサレ候へ、
其時、山臥、申ケルハ、我
我 レ ハ カ チ - 1、
御 ト モ 申 候 ハ ン ト テ 、 児 ト 童 ヲ 、輿 打 」 乗 セ テ 、
カ 者 士 一 人 ニ 力 、セ、 鳥 ノ 飛 カ 如 ク ニ ソ 、 行 キ ケ ル 、茫 々 タ ル 、
湖 水 ノ 上 ヲ 通 リ 、 蒙 々 タ ル 、 雲 霧 ノ 中 ヲ ワ ケ テ、 片 時 ノ 間 ニ 、
大 峯 ノ 、 尺 迦 ノ 嶽 ト 云 所 P へソ、 来 ケ ル
三ニ五
、 見 タマワ ス 、 只 、 道 俗 男 女 、 多ク有ト
爱 ニ 、 盤 石 ヲ タ 、ミ タ ル 、 石 ノ 籠 ノ 中 二 、 ヲ シ コ メ テ 、 置 ゲ レ
ハ、 月 日 ノ 光 ヲ タ ニ モ
三ニ六
ワ セ、 屛 ヲ 塗 リ 迥 ラ シ テ 、 ハヤ、 三 摩 耶 戒 壇 ヲ ソ 、 建 立 シ タリ
(
廻力)
ケル
戒 壇 ノ 事 ニ ヨ リ テ 、 菌 城 寺 へ 発 向 ス ル 事 ハ、 以 前 既 ニ、 六 ケ 度
サ ル 程 ニ 、 山 門 ニ ハ 、 是 ヲ 聞 テ 、 ナ ジ 力 ハ 、蜂 起 セ サ ル へ キ 、
サ ル 程 ト ニ 、 三 井 寺 ニ ハ 、梅若公ノ、失玉ヒタリトテ、」門
覚 テ 、 泣キ悲ム.
立日ユ計 リ コ ソ、 聞 ヱケル
シ、 武 家 ニ 訴 ル マ テ モ 、ア ル へ カ ラ ス 、
也、 サレハ、公 家 ニ
ヲ分テ、 尋 ネ ケ レ ト モ 、更 二 見 へ サ セ 給 ハ サ リ ケ ル 所 、東坂本
主 ヲ 始 メ 参 セ テ 、 上 下 ノ 周 章 斜 ス 、 イ タ ラ ヌ ク マ モ ナ ク 、手
ヨリ、 大 津 へ 通 リ ケ ル 、 旅 人 ノ 申 ケ ル ハ 、 左 様 ノ 少 人 ハ 、 昨 日
ノ暮程ニ、 童 一 人 召 具 シ テ 、唐崎ノ.
方へ、御渡候ツルトソ、申
ケル、 委 ク 問 ヒ ケ レ ハ 、 御 年 ノ 程 、 御 衣 装 ノ ヤ ウ 、 ウ タ カウ所
ロナシ
サテハ、 此 間 、連 々 、 山法師ノ、 忍ヒテ」通イケル力、 勾引
テ 、行 キ タ ル ニ コ ソ ト テ 、ー 寺 ノ 衆 徒 、 周 章 云 ハ カ リ ナ シ 、 父ノ
左 大 臣 殿 モ 、 御 存 知 ナ キ 事 ハ 、 ヨ モ ア ラ 。ト テ 、 先 ツ 花 菌 ノ 、
左 苻 ノ 御 所 旧 宅 へ 、 押 シ 寄 テ 、サ シ モ 、イ ミ シ カ リ シ 御 所 ヲ 、 一
一同ニ、 僉 儀 シ ケ ル ハ 、 寺 門 ノ 恥 辱 、 是 ニ 過 キ タ ル 事 ハ 、ア ル 」
宇 モ 不 X残 焼 払 イ ヌ
菌 城 寺 ノ 衆 徒 、 是 ニ モ 尚 ヲ 、 イ キ ト ヲ リ 、 サ ン セ ス ト テ 、 一山
へカラス、 所 詮 此 次 テ ヲ 以 、 当 寺 ヲ 城 槨 一 一 構 へ 、 三 摩 耶 戒 壇
籌 リ コ ト ナ ル ヘ シ 、 又 、 邪執ヲシ
k
ヲ 建 立 ス ヘ シ 、 其 時 キ ハ 、 山 門 ヨ リ モ 定 メ テ 、当 寺 へ 寄 セ ナ ン 、
ヒ
ロ
是 、他ノ利ニ付テ、 敗 ヲ 亡
(
地力)
レ 送 ル
ルカト、 ウ タ カ ワ レ ケル、 死 人 ヲモ 不
顧 、 手 負 ヲ モ カイハウ
太 山 モ 、 是 レ カ 為 メ ニ 倒 、 湖 水 モ 傾 テ 、 忽 ニ 金 輪 際 ニ 、 落ツ
へ、 押 寄 セ タ リ 、 纏 テ 、 同 時 一、 時 ノ 音 ヲ ソ 、 上 ケ タ リ ケ ル 、
サル程ニ、明 ク レ ハ 十 五 日 、辰ノ剋ニ、追手、搦手、城ノ中
タリ
神 水 ヲ 呑 テ 、 マ ダ シ ノ 、メ ノ 明 ヌ 間 ニ 、 如 意 越 ヨ リ 、 寄 セ 懸 リ
ヲ戦場1
、 留 メ ン ス ル 物 ヲ ト 、 思 切 テ、 勝 レ タ ル 同 宿 若 党 、 皆
レ故 ニ 、 起 リ タ ル」 事 ナ レ ハ 、 人 ヨ リ 前 キ ニ 、 一 合 戦 シ テ 、 尸
思 々 、 心 々 ニソ 、 寄 セ ケ ル 中 二 モ、 桂 海 ハ 、 此 乱 ハ 、併 ラ、我
水 ノ 朝 サ ナ キ ニ 、 舟一一 捍 サ ス 、 大 衆 モ有リ
力 、リ テ 、 駒 ニ 鞭 打 、 衆 徒 モ ア リ 、 或 ハ 、 眇 々 タ ル 、 煙 波 、 湖
先 、 卯 ノ 尅 ニ 、 押 シ 寄 セ 、 或 ハ 、 慢 々 タ ル 、志 賀 唐 崎 ノ 浜 路 1
、
ル へ カ ラ ス ト テ、 谷 々 院 々 ノ 大 衆 、 各 ノー 同 シ 、 七 手 ニ 分 テ 、
去 ル 十 月 十 四 日 ハ、 中 ノ 申 ノ 日 ナ リ 、 是 ニ マ サ ル 吉 日 ハ 、 ア
トソ、
シケル
急 キ 押 寄 テ 、焼 キ 払 へ ト テ 、 末 寺 末 社 、 三 千 七 百 三 ケ 所 H 、
触
及
一
一ス 、 先 、 近 国 ヨ リ 馳 セ 集 ル 其 」 勢 、 廿 万 七 千 余 騎
^-
セ ス 、 命 ヲ 捨 テ ソ 、 責 メ タ 、 カイケル
S
7-
リソケテ、戒法ヲ弘ムル道タルヘシ、 天爰二、時節ヲ得タリ、
斬足クモ、 時 日 ヲ 迥 ス へ カ ラ ス ト テ 、 一 味 同 心 ノ 衆 徒 、ニ 千 余 人 、
(
廻力、
サカモキ
シ
、 カ
キ
シ
ケ
如意越ノ道ヲ、 ホリキリ、所 々 1
、 逆 木 ヲ 引 、 鹿 」 垣ヲ重クュ
K ;
寄 手 一ハ、 東 塔 ノ 住 侶 、 修 禅 坊 、 禅 智 坊 、 円 宗 坊 、 板 生 坊 、
勝坊、金輪院、妙観院、 坐禅院、椹本坊、山本坊、 西連坊、
(
廻力)
十 文 字 ト 云 物 ニ 、 四 角 八 方 、追 立 々 々 、切テ迥ヮリケル
阢ク大衆一一ハ、 円 満 院 ノ 鬼 駿 河 、 唐 院 ノ 七 天 狗 、 千 人 切 リ ノ 荒
言 ヲ 始 メ ト シ テ 、 命 捨 テ ソ 、 責入リケル
横 川 二 ハ 、 善 法 坊 、 善 住 坊 、 般 若 院 、 其 外 、 三 塔 蜂 合 ノ 」 義ト
師 ノ 御 影 堂 、 三 門 跡 ノ 御 坊 ニ 至 ル マ テ 、惣 而 、三 千 六 余 宇 ノ 、 堂
ノ阿弥陀堂、 普 賢 行 願 ノ 如 法 堂 、教 待 和尚ノ」 御本 堂 、智證大
余 煙 四 方 ニ 、掩 ヶ レ ハ 、 金 堂 、講 堂 、鐘 楼 、 経 蔵 、常 行 三 昧
入 テ 、堂 舎 仏 閣 一、火 ヲ ソ 懸 タ リ ケ ル 、 折 節 、 魔風頻リ一一吹テ、
々 ニ ソ 落 チ ニ ケ ル 、 纏 而 、 桂 海 力 手 ノ 物 共 、 院 々 谷 々 へ 、 乱レ
サ ル ホ ト ニ 、 如 意 越 ヲ 堅 メ タ リ 、 大 衆 コ ラ ヱ ガ タ ク シ テ 、 思ヒ
讃 岐 、 金 棒 ツ カ ィ ノ 悪 大 夫 、 八 方 破 ノ 武 蔵 坊 、三 町 礫 ノ 円 月 房 、
一灰煙ト成テ、 只 、 新 羅 大 明 神
X残 、 一 時 ノ、 社 壇 斗 ソ 、 残 リ ケ ル
舎 、 仏 閣 、 一宇モ不
メ サ ス シ テ 、 石 ノ 籠 ノ 内 ニ 、 御 入 ア ル ケ ル 所 ニ 、 天 狗 共 、 集リ
若公 ハ 、 三井寺ノ、 カヤウニ成リタル事ヲハ、夢一一モシロシ
居 テ 、 サ マ く ノ 、雑 談 シ ケ ル 中 二 、 或 ル 天 狗 、申 ケ ル ハ 、我
寄 手 ハ 、 大 勢 ナ リ ケ レ ハ 、 ウ タ ル 、ヲ モ 、 カ エ リ ミ ス 、 手 負 ヲ
コ 、ヤ、 力 シ コ ノ 、 ツ マ リ ニ テ 、 追 立 -^^•、 三 時 計 リ 戦 ィ
等 力 、 面 白 ク 思 事 ニ ハ 」、焼 亡 、 辻 風 、 小 諍 、 論 ノ 相 撲 ノ 事 ト
合戦ヲソ留ケル
テ タ リ 、 力 、リ ケ ル 所 、 桂 海 、 大 キ ニ 忿 テ 、 申 シ ケ ル ハ 、 何 程
城ノ中チ一ハ、 弥 々 、 勝 二 乗 テ 、 手 前 キ ヲ 迥 シ テ 、 打 出
無 キ 堀 ヲ ハ 、 死 人 ニ テ 、 ウ メ タ ラ ン ニ 、ナ ト カ 是 程 ト ノ 城 ヲ ハ 、
責 メ 落 ル へ キ ト 、 飽 ク マ デ 」 広 言 吐 テ 、薬 研 堀 ノ 、底 セ ハ ナ ル 中
此 等 コ ソ 、 興 有 見 物 ト 思 ィ ツ ル 二 、 昨 日 ノ三 井 寺 ノ 合 戦 ハ 、 前 ;
ル ハ 、力 シ コ ク ソ 、此 若 公 ヲ 取 リ 奉 リ ケ ル ソ 、 サ ナ ク ハ 、 是 程 ノ
代 未 聞 ノ 見 物 ニ テ ソ 有 ケ ル ト 、 申 セ ハ 、 ソ ハ ナ ル 天 狗 、 云ヒケ
mモ ア ラ シ 、 門 主 ヲ 始 メ 申 テ 、 落 チ フ タ メ カ セ シ カ 、 ヲ
力 シ サ ニ 、 我 レ コ ソ 、 興 ア ル 」 腰 折 レ 哥 ヲ 、 一首読テ候へ
軍ハ、
をのみそなく
ト 、 語 リ ケ レ ハ、 座 中 ノ 天 狗 共 、 咲 ツ ボ ニ 入 テ ソ 、 咲 ヒ ケ ル
憂 か り け る 、 恥 三 井 寺 の 、 あ り さ ま は 、 か い つ く り て は 、 ね.
若 公 ハ 、是 ヲ 聞 シ 召 シ テ 、浅 増 シ ヤ 、 去 ハ 我 レ 故 一、 三 井 寺 ハ 、
ヲ踏ンテ、_ 上 リテ、 塗 余 シ タ ル 屛 株 ニ 、 手ヲカクルカト見へ
火 ヲ 散 シ テ ソ 、 懸 リ ケ ル 、 一太刀切リ、 退 リ テ 進 ム 追 懸 切 、 将
三ニ七
碁 倒 ノ 払 ィ 切 、 磯 打 浪 ノ マ ク リ 切 リ 、 乱 文 、裏 繡 、蜘 蛛 、 懸 索 」、
シカハ、 _ 而、 屛 ヲ 越 、敵 三 百 余 人 カ 中 へ 、 只 ー 人 乱 レ 入 テ 、
へ、 カ ツ ハ ト 飛 ヒ 入 テ 、 ニ 丈 計 リ ノ 切 リ 岸 シ .
ノ上へ、 楣ノサン
出 シ 、 白 川 梓 ノ 空 印 地 、 山 門 南 都 ノ 御 輿 振 、五 山 ノ 僧 ノ 門 徒 立 、
タ リ ケ ル 、 寄 手 、 已ー一三千余人、 半 死 半 生 一、 手 ヲ ィ テ 、斬足ク、
モ、 見 捨 テ 、、 責 」 ケ リ 、 防 キ 手 ハ 、ア ン ノ ウ チ ノ モ ノ ナ レ ハ 、
禦乾ィヶリ
サ ケ 切 好 ノ 増 長 坊 、 其 外 ノ 悪 僧 ト モ 、 命 モ 惜 マ ス 、 入 替 / 、、
西塔一ハ、 常 喜 坊 、 膳 明 々 、 南 岸 々 、 西 明 々 、 行 泉 々 、行 住 々 、
ftT
タ ル 事 ノ 由 ヲ 、 始 メ ヨ リ 終 リ マ テ 語 ケ ル 、 サ テ 我 レ 故 ニ 、 是レ
三二八
焼 失 セ ケ ル ト 、 思 食 シ テ 、今 マ ー 入 、御歎キソ増リケル
菌 城 寺 ノ 有 様 ヲ 、 御 ラ ン シ ケ レ ハ 、 仏 閣 僧 坊 、 一 宇 モ 残 ラス
々、 三 井 寺 へ ソ 、 御 入 ア リ ケ ル
カクテ、 一 両 日 ア リ テ 、此 翁 、 児 ト 童 二 相 テ 、申 ケ ル ハ 、 若
シテ、 閑 庭 草 露 一泣、 空 山 ノ 松 風 吟
一
一ス 、 是 ソ 門 主 ノ 御 坊 ノ 御
跡 ヨ ト 、 ナ ツ カ シ ク 思 シ 召 テ 、 彼 方 此 方 ヲ 、 御 ラ ン ス レハ、 砌
サエ、 カ ヤ ウ ニ 成 リ ヌ ル 事 ノ 、 カ ナ シ サ ヨ ト 、 思 シ 召 シ テ 、 泣
へハ 、 サ コ ソ ハ 候 ラ ハ メ ト 、 仰 セ ア リ ケ レ ハ 、 翁ナ、大 ニ 悦 テ 、
シ御涙タニ、袖ヤヌレテ候ト、問ヒケレハ、 ホサヌ思ィニテ候
ノ石ハ、 焼 ケ 碎 ケ テ 、 苔 ノ 緑 リ モ 、 紅 ィ ニ 」 変 シ 、 軒 ノ 梅 モ 、
力 、リケル所一一、 淡 路 ノ 国 ヨ リ 」、進 物 ト テ 、 八 十 有 余 ノ 、 老
サラハ、 我 レ ニ 取 リ ツ 力 セ 玉 ヒ 候 へ 、 御 古 郷 へ 、 送リ申候ハン
枝 枯 レ テ 、袖ナツカシキ風モ無シ
翁ヲ一人、高 手 小 手 一誡メテ、 此 籠 ノ 内 へ 入 レ タ リ
ト テ 、 若 公 ノ 御 袖 ヲ 弓 寄 テ 、 シホリ.
テ見レハ、 白玉力何ソト、
サコソ 神 慮 ニ モ 違 イ 、 人 口 ニ モ ヲチヌラント、
人 ノ 問 ハ カ リ ナ ル 」、涙 ノ 露 、 小 滴 リ 、 翁ナ、 此 露 ヲ 左 ノ 掌 ニ 入
ケ テ モ 、 御 涙 ノ ミ ソ 進 ミ ケ ル 、 久 シ ク 住 ミ習 ワ セ 給 ヒ シ 所 ロナ
物 異 一 一 代 リ ハ テ ヌ ル 、 世 ノ ア ワ レ サ 、只 我 レ ユ Hノ 科 ナ レ ハ 、
思 食 シ ケ ル ニ付
テ 、 其 レ ヲ 丸 ス ル ヤ ウ ニ 、宛転スルー一、 コ ノ 露 、 ヤ
C 鞠ノ勢ニ成
•
、暮 レ ケ レ ハ、
リ、 ニ ツ ノ 露 、 次 第 く ニ 、 大 二 成 テ 、 石 ノ 籠 ノ 中 、 大水二ソ
ウ
リ タ リ 、 是 ヲ ニ ツー一分 ケ テ、左 右 ノ 掌 ノ 上 一
一
置 テ 、ユ ル カ シ 居 タ
シケレトモ、事 問 ヘ キ 人 モ ナ シ 、 日モ、 ヤ
レ ハ 、 灰 煙 マ テ モ 、 ナ ツ カ シ ク 思 召 シ テ 、 彼 方 此 方 ヲ、 御 ラン
ヲM メ給ウ
其 夜 ハ 、 新 羅 大 明 神 ノ 、 社 壇 一 一 御籠リアリテ、 泣 々 」、湖 水 ノ 月
成リタリケル
動 力 シ 、 電 光 天 一 一 翫 マ カ ス 、 サ シ モ 義 勢 ノ 天 狗 共 、 此竜一一恐
其時ニ、 翁ナ、 俄 二 人 身 ヲ ア ラ .
タメ、 大 竜 ト 成 テ 、 雷鼓地ヲ
座 ナ シ ト 、申 シ ケ レ ハ 、只 巣 ヲ 放 レ タ ル 、ヒ ナ ノ 心 地 シ テ 、行 方 失
召テ、 石山へ尋ネ、御入リアリケレトモ、是ニモ聖護院ハ、御
大 裏 ノ 旧 跡 、 神 泉 薄 ノ 池 ノ 遍 y ニソ、 置 タ リ ケ ル 、 上 下 ク 男 女
ナ イ 、 ア キ レ 立 給 へ ル 、 御 ア リ サ マ 、 何 ニ タ ト Hン 方 ソ ナ キ
童 ハ 申 シ ケ ル ハ 、 今 夜 ハ 、 参詣ノ人ノ鉢一一テ、 本 堂 —御 座 候
明ケヌレハ、門主ハ、定 メ テ 石 山 ニソ 、御入アルラント、思
是 若 公 ノ 御 恩 也 ト 、 悦 テ 、 皆 ナ 己 々 カ 栖 力へソ
H 一
一
、
レ テ 、 四 方 へ 逃 失 ヌ 」、去 此 竜 、 石 ノ 籠 ヲ 、タ ヤ ス ク 、ケ 破 テ 、 児
帰リケル
へ、 某 ハ 、 山 へ 登 リ 、 律 師 ノ 御 坊 二 相 ヒ 申 テ 、 御 迎 ヲ 参 ラ セ ン
ト 童 ヲ ツ レ テ 出 テ 、 其 外 ノ 道 俗 男 女 、 皆 雲 二 乗 セ テ 、出 テ ツ 、、
若公ハ、先ツ父ノ御所へ、御 入 ア リ テ 、御ランシケレハ、皆
ツ マ シ キ 身 ナ レ ハ 、 迎 モ ナ ニ力 セ ン ト 、 思 シ 召 シ ケ レ ト モ 、 中
ト 、 申 ケ レ ハ 」、若 公 、 聞 シ 召 シ テ 、 ト テ モ 今 ハ 、 浮 世 ニ在リハ
ハ、 偏
ア タ リ ノ 人 ニ .、 コ ハ イ カ ニ ト 、 問 ヒ 」 玉 へ ハ 、 三 井 寺 ヨ リ 寄 セ
焼 野 ノ 原 ト ソ 、成 リ ニ ケ ル 、 コワイカニト、 ア サ マ シク思テ、
、 此 者 無 ク ハ、 心 安 ク、 何 成 淵 川 一一モ 沉 ミ ナ ン ト 、思 食 シ 、
泣 々 、 御 文 ヲ ア ソ ハシーア、童 ニソ 、タ ヒ ニ ケ ル、 御 文 ヲ 給 テ 、 急
<
目 モ ク レ、 心 モ 消 へ テ 、 更 ラ ニ 行 ク ヘ キ 方 モ 覚 ヘ ス 、 様 々 、 心
ヲ 取 リ ナ ヲ シ 、 馬 ヲ 早 メ テ、橋 爪 へ 、行 テ 見 レ ハ、 何 ツ モ 御 身 ヲ
不ス 放
一、 米 瑠 璃 ノ 小 珠 」 数 ヲ 取
X サ、懸 ケ 玉 ヒ シ 、 金 欄 ノ 御 守 副 へ テ 、橋 ノ 柱 ニ 懸 テ 、 御置アリ
キ 山 へ 登 テ 、 律 師 ノ 御 房 二 相 申 シ テ 、ウ カ リ シ 事 共 ヲ 語 リ ツ 、、
御文ヲサシ出シタリ
ントスルニ、 同 宿 ト モ 、 云 ヤ ウ ハ 、 セメテ、 カワル御有様ヲナ
是 ヲ 見 テ 、 律 師 モ 童 モ 、同 シ 道 ニ 、御 伴 モ 申 サ ン ト テ 、 身 ヲ 投 ケ
ヲ ハ
、心
ロ
ニモ、
力
ケ サ セ 玉 ヒ 候 ハ テ 、 何ト
底 マ テ 照 ラ セ 、 山ノ端ノ
一
一
、
リ ト モ 、 今 一 度 、 御 ラ ソ シ テ 後 ニ 、 免 ニ モ 角 ニ モ 、 ナラセ玉ヒ
月 ト 、ア ソ ハ シ タ ル
候ハンスレ、其上、御 最 後 ノ 御 哥
ケ レ
ハ、 カ 不 ド 及 ハ 、 更 御 死 害 ヲ 、 尋 ネ ヨ ト テ 、繫 キ 捨 テ
:
テ、云 甲 斐 無 ク 、自 害 セ ン ト ハ 、 仰 セ 候 ソ ト 、 ヤ ウ / \ 」ト 、メ
更ラ二見へ玉マハス
海士小舟一一取乗リ、深 キ 淵 ノ 底 、浅 キ 瀬 ノ 汀 ヲ 、 尋 ネ ケ レ ト モ 、
ノ 瀬 ノ 下 モ ニ 、セ カ レ テ 留 ル 、落 葉 ノ 、 紅 ィ 深 キ 色 モ 、 打 衰 口 へ '
猶 モ 、 流 レ ノ 末 社 、 アヤシケレトテ、 尋 ネ ク タ ル 程 一 一 、供御
姿"也
?
イ ノ
カ ン サ シ ハ 、 汀 ノ 水 ニ ユ ラ レ 、 蛾眉ノ
I
*、
=ビ
モ、 落 花 枝 ヲ 去 テ 、 二 度 咲 ク 習 ィ ナ シ 、 童 ハ 、足 ヲ 懐 ロ ニ 入 テ 、
リ、律 師 ハ 、顔 膝 ニ 力 キ ノ セ テ 、 天 ニ 仰 キ 、 泣カナシミケレト
Hハテ、 百 ノ 媚 ア ル
眼 コ モ 、 ハヤ塞リテ、 事 切 レ ハ テ タ ル 、 御 死 骸 ヲ 、 泣 々 取 上 奉
雪 ノ 如 ク ナ ル 御 膚 へ モ 、荒キ 河 水 ニ 、 ヒ
黛 ハ 」、岩 打 ツ 波 ニ 、 ア ラ ハ レ テ 、 空 ッ 蟬 ミ ノ 、 有 ル モ 空 シ キ 御
テ、 見 ケ レ ハ 、 ヒ ス
テ 、 岩ノ影ー一、 押 寄 セ ラ レ テ 、 流 レ 留 マ リ 玉 ヘ リ 、 舟 ネ サ シ 寄
チ 寄 、 委 ク 問 へ ハ 、 旅 人 、 申 シ ヶ ル ハ 、 只 今 、瀬 田 ノ 橋 ヲ 、渡リ
ノ、 紅 梅 ノ 少 袖 ニ 、 水 干 ノ 下 モ 斗 リ 、 被
(
小力)
下リ、供 御 ノ 瀬 ト 云 所
知 ヌ 夷 ス マ テ モ 、 袖 ヲ ソ 、 シホリケル
三ニ九
是 ヲ 聞 ク ニ 、 年 ノ 程 ト 、 衣 装 ノ 様 、 ウ タ カ ウ 所 モ ナ ケ レ ハ、
ワサル間タ、 ムナシク、罷 リ 通 リ 候 也 ト 、東 ノ 奥 、 情 ケ モ 不
テ
一見へサセ玉
一
一、 尋 ネ 候 へ 共 、 サ ラ -
大 キ ナ ル 河 ニ テ 」 候 程 ト ニ 、 見 へ サ セ 給 ヒ 候 ハ ス 、 遙カー一尋ネ
セ 給 ヒ テ 候 程 ト ニ 、 我 等 ラ 取 上 ヶ 参 ラ セ ン ト テ 、走 行 P 候 へ 共 、
向 ヒ テ 、念 仏 十 反 斗 、御 唱 候 ト 覚 テ 候 ヒ シ カ 、 纏 而 、 御 身 ヲ 投 サ
X召 候 ヒ ツ ル カ 、 西一一
候 ヒ ツ ル ニ、 御 年 ノ 程 ト 、十 六 七 斗 一、見 へ サ セ 玉 ヒ 候 ヒ ツ ル 児
ル恨有テ、身 ヲ ハ 投 ケ 玉 ウ ラ ン ト 、語 リ ケ レ ハ 、 佐 思 テ 、立
ニ、 旅 人 ノ 云 ヒ ケ ル ハ 、 ア ラ 哀 ヤ 」
、 遮 モ 莫 、 今 ノ 児 ハ、 何 成
童ト同 道 シ テ 、 石山へ社、急キ ケ レ ハ 、 大津ヲ過キ行キヶル所
ラ 申 承 ハ ラ ン ト テ 、 石 山 へ 参 リ 候 ハ ン ト テ 、 取 物 モ 取 ア ヱ ス、
律 師 、 色 ヲ 失 ナ ィ 、 此 御 哥 ノ 心 。元 ナ サ ヨ 、 何 事 モ 、 道 ス カ
トソ、 アソハシタリケル
の端の月
我身さて、 しつみはてなは、 ふかき瀬の、底まててらせ、山
律師、文 ヲ 開 テ 見 ル 一、 ア ヤ シ キ 哥 ア リ 」
X
!11
我 ヲ ッ レ テ行キ
へ ト テ、 地 一臥シ、 叫 ヒ 、 歎 ケ 、ト モ 、 残 月
帰
II 事 ナ ケ レ ハ 、」歎 キ ハ 、 桂 海 力 身 ノ 中 チ □ 留
或ハ、氬&
i娟 タ ル 夫 人 ノ、 軽
三三〇
一乗テ、 t 十
kノ 玉 ヲ 把 リ タ ル -
人 ノ 侍 女 ハ 、 鳳 舄 ヲ ハ キ 、 金 蓮 ノ 冠 ヲ 、 左右一一、相 ヒ 随 イ タ リ 、
サ テ 、 コ ノ 上 客 ノ 、 皆 社 壇 ノ 内 へ 入 給 、 新 羅 大 明 神 モ 、 玉ノ
御 入 候 ト ソ 、 申シケル
ソ ト 、 問 イ ケ レ ハ、 是 社 、 東 坂 本 ニ御 」 坐 マ ス 、日 吉 山 王 ニテ、
ケ レ ト モ 、 桂 海 ト 童 ハ 、 一堆ノ灰ニ向テ、 空 キ 跡 ト ニ 、 三ケ日
冠 ヲ 正 ク シ テ 、威 儀 ヲ 刷 ロ イ 、 金 殿 ノ 内 ヨ リ 、出テ向ヒ給ヒ
跡 ニ サ カ リ タ ル 、 退 江 ノ 仕 丁 ニ、 是 ハ 何 力成 ル 人 ニテ、 御 入 候
マ テ 、 泣 居 タ リ ケ ル 、 同 シ 苔 ノ 下 露 ト 、 ナ ラ ハ ヤ ト 、思 へ ト モ 、
リ、 若 君 ノ 御 观 ハ 、 三 途 ノ 旧 宅 へ ソ 、 帰リケル
底 マ テ 照 ノ 御 哥 .ハ、 只 無 キ 跡 ヲ 訪 へト 、 思 シ 召 シ タ ル 御 心 ソ カ
テ、 賓 主 ノ 座 ヲ 定 メ 、 猷 酚 ノ 礼 ヲ 至 シ 、 舞 曲 ノ 宴 ア リ テ 、明 神 、
大 人 高 客 ノ 、 来 ル イキヲイア
キ俗 牀 ノ 客 、 利 冑 ヲ 齡 セ ル 、
随兵ヲぼ具シ、
候 へ ハ 、 ヨ モ 衆 徒 ノ僻ヵ
度 々 ニ 及 、勅 定 ヲ 背 キ 、 種 々 ノ 魔 障
-1、
J事 一 一 テ ハ 候 ハ シ ト コ ソ 存 シ 候 へ 、然ル
延
一
一
、磨 寺 ノ 大 衆 、 仰 ヲ キ 申 ス 日 吉 山 王
衆 徒 ノ 恨 ミ 申 所 、 一往モ、 其 理 有 ル 二 雖
X似 、 是 皆 、 一 愚 ノ 妄
ハ、 明 神 、 通 夜 ノ 大 衆 ヲ 、 皆 御 前 ニ 召 シ テ 、 仰 セ ア リ ケ レ ハ '
返 々 モ 、 不 審 ニ 」 候 へ 、何 成 神 慮 ニ テ 候 ヤ ト 、 泣 々 、 申 シ ケ レ
ニ、 御 対 面 候 テ 、誡 ニ 御 咲 ヲ 含 ミ 、楽 ミ ヲ 、ナ サ セ 給 候 御 事 コ ソ 、
サ セ 給 候 ラ ン ト 、存 候 処
ヲ 成 シ テ 、 当 寺 ヲ 赖 払 イ 候 へ ハ 、サ コ ソ 、神 明 仏 陀 モ 、 御 心 ヲ 悩
ヲ、 山 門 ノ 大 衆 、 慢 リ
セテ、 我 山 ノ 興 隆 ヲ 存 シ 候 テ 社 、 興 行 仕 ラ ン ト 思 ヒ 立 シ 事 ニ テ
申シケルハ、抑、 三摩耶戒壇建立ノ事ハ、既ニ往古ノ勅宣ニ任
アリケル時二、通夜ノ大衆、明 神 ノ 御 前 一 跪 イ テ 、涙 ヲ 流 シ 、
マ リ ア リ 、 角 テ 、 新 羅 大 明 神 、 玉 ノ 階 ヲ 御 渡 リ ア リ テ 、 御帰リ
ノ門」外 マ テ 、 御 送 ニ 御 出 テ ア リ テ 、 互 一貴礼ヲ至シテ、 御 留
夜既ニ、明 ナ ン ト シ ケ レ ハ 、山王、還御成シ給ゥ、明神ハ遙
シ ト 、 思 ヒ テ 、御 骨 ヲ 取 、頸 ニ 懸 ケ 、 高 野 山 ニ 納 メ 置 テ 、 山 臥 斗
コ Uモ
誠トニ興酣ノ心ヲ、楽シメサセ玉ウカト見へタリ
シ、 或 ハ 、 衣 k
大」 僧正ト見へテ、 四 方 輿 一乗テ、 扈 徒 ノ 大 衆 、 前 後 一囲遶
リ、 ア ヤ シ ヤ 、 誰 成 ル ラ ン ト 思 ヒ テ 、 是 ヲ 見 レ ハ 、 或 ハ 、 法 務
馳 、 車 ヲ 飛 ハ セ 、 ヲ ヒ タ 、シ キ 、
晓 ケ 方 ニ 、 夢 現 ノ 堺 モ シ ラ ヌ ニ、 東 ノ 方 ノ 、 虚 空 ヨ リ 、 馬ヲ
味 ヲ 備 ヘシ、 通 夜 、 念 誦 シ テ 居 タ リ
ハ ヤ ト 思 テ 、 皆 ナ 新 羅 大 明 神 ノ 御 前 ー 1、 通 夜 0 、 是 ヲ 限 リ ノ 法
内 」 證 深 心 ノ 、 法 施 ヲ モ 奉 リ 、 又 、 発 心 修 行 ノ 由 シ ヲ モ 、 申サ
トソ、定 メ ケ ル 、乍 レ 去 、今 一 度 、寺 門 ノ 焼 跡 一、 立 帰 リ テ 、
住 へ キ ヤ ウ モ ナ カ リ ケ レ ハ 、 何 事 モ 無 益 ト 思 テ 、皆離山ヲセン
其後、 円城寺ノ、戒 壇 ノ 事 一依テ、 三 千 余 人 、 今 ハ 立 帰 リ 、
ヲ ヤ ッ シ 、 高 野 山 ニ 、 籠リケル
テ、無 キ 人 ト ノ 跡 ヲ 、訪 ィ ケ ル 、童 モ 纏 而 、髪 ヲ 剃 、濃 墨 染 一 一 、 身
ア ツノ
藥 ノ 」行 ヲ 修 シ 、後 ニ ハ 、東 山 ノ 岩 蔵 ト 云 所 ニ 、 庵 リ ヲ 結 テ 、爰ニ
角 ク テ 、 サ テ 、 ア ル ヘキ ナ ラ ネ ハ 、 其 後 、 同 宿 以 下 、 山へ帰リ
西 ニ 傾 テ 、中 空
|&
TEf
見 也 、 夫 、 神 明 仏 陀 ノ 、 利 生 方 便 ヲ 垂 ル 、日 、 彼 ヲ 是 シ テ 、 福
力 、ル 中 力 ニ .
モ
テ、 菓 ヲ 拾 テ 、 命 ヲ 続 ィ テ ソ 、 年 月 ヲ 送 リ ケ ル
ヲ
U
人ノ 跡 ヲ 」訪
限 、 御 感 有 テ 、 新古今ノ釈 教 部 一 一 、 撰 ヒ 入 レ サ セ 給 ヒ ケ リ
ト 、 書 院 ノ 石 壁 ニ 、 書 キ 付 ケ タ リ 、是 ヲ 、君 ミ 聞 シ 召 シ テ 、 無
ん
む か し 見 し 、月 の 光 を 、 し るへにて、今 夜や君か西袅ゆくら
ゥ毎ぃ度、 月 見 ル 袖 ノ 、 ヌ レ ケ ル ニ ヤ
、 浮 世 ノ 夢 ノ 、 サ メ - ^ ト、 無 キ
ヲ与ルモ、真 実 ノ 非 一本意一、 此 レ ヲ 非 シ テ 、 罰 ヲ 行 ウ モ 、 慈
赴 也 、 去 レ ハ 、 今 度 ノ合 戦
ヲ
a ハ 、 人 未 不 r 可知
;
,、 我 喜 所
依
テ 、 当 寺 ノ 悉 ク 焼 ケ タ ルヲ、
一
一
悲 之 至 也 、 只 順 逆 ノ ニ 縁 ヲ 以 テ 、 遂 ィ ニ 無 」 上 袄 ニ 、 為 k 令い
偏 へ ニ 、我 喜 フ 也 ト 、思 ウ 心
X聞 、 仏 閣 僧 坊 ノ 焼 ケ 失 セ タ ル ハ 、造 営 ス ル ニ 、
財 施 ノ 利 益 有 リ 、 経 論 聖 教 之 紛 失 シ タ ル ハ 、 是 ヲ 書 ク ニ 、書写
汝等ニ語テ、 可
掌 ヲ 合 セ テ 、 是ヲ敬礼ス
天文九年m 神無月中旬
右筆拾三才
主松寿丸常住
又当来ノ仏種ヲモ、御植アルへク候」
(
辺力)
見 ノ 人 々 ハ 、 念 仏 御 申 ア ツ テ 、 彼 少 人 ノ 御 苷 ヲ モ 、御 訪 ヒ ア リ 、
慈 大 悲 ノ 方 便 哉 ト 、語 リ ケ レ ハ 、 聞 人 、皆 莰 心 ヲ 発 シ ケ ル 、後
仏 種 齡 縁 , ト 、 仏 ノ 説 キ 給 ハ 、 力 、ル 事 社 候 へ 、 誠 難
X在 、 大
一一依テ、 遠 近 ノ 貴 賤 ハ 、 踵 ヲ 継 テ 」、爰 一参詣シ、遍 土 ノ 男 女 ハ 、
へ サ セ 給 ゥ 在 リ 様 ヲ 見 ル 人 、信心ヲ発サスト云事ハ無シ、是
(ー サ ヵ )
トモ、 同 様 ナ ル 桑 門 ノ 人 、東 西 ヨ リ 、来 リ 集 リ ケ レ ハ 、 都コ近
キ所ニ、寺 ヲ 立 テ 、 人 ヲ モ 利 益 セ ン ト テ 、東 山 ニ 、雲孤寺ト云
徳 ハ 孤 リ ナ ラ ス 、 必 ス 隣 ミ 有 リ ト 、 云 事 ナ レ ハ 」、猷 ゥ ト ス レ
依 ニ テ 此 乱 I、桂 海 力 」 発 心 シ テ 、 若 干 ノ 化 導 ヲ 、 至 ス 事 ノ ウ
レ シ サ ニ 、 万 事 ヲ 忘 レ テ 、是 ヲ 悦 コ フ 也 、日 吉 山 王 モ 、 此 事 ヲ 慶
ゥ御堂ヲ、建 立 シ テ 、春 ノ 暮 月 ニ 、 三 尊 来 迎 ノ 儀 ヲ 、 行 給
X之一 報
I 仏一、 豈 生 滅 ノ 相 無 ラ ン ヤ 、 只 、
ハセ給ハン力為メ一一、 来 臨 ア リ 、 我 モ 感 歎 一 一 堪 ヘ ス シ テ 、 歓 喜
ゥ 、 サ レ ハ 、 廿 五 ノ 苷 、 伎 楽 歌 詠 ヲ 調 へ テ 、 往 生 ノ 人 ヲ 、 迎ヵ
ノ結縁有リ、有 レ 為
ヲ 現 ハ シ ツ ル ナ リ 、 石 山 ノ観 音 ノ 、 童 男 ノ 変 化 ニ 依 リ テ 、
tl
心
桂 海 力 、 永 ク 生 死 ヲ 離 レ テ、 仏 果 ニ 至 ラ ン 事 社 、嬉 レ シ ケ レト、
仰 セ ア リ テ 、明 神 ハ 、 錦 ノ 張 ノ 内 へ 、入 ラ セ 」 玉 ウ 、去 テ 、 卅 人 ノ
(
帳力)
通 夜 ノ 衆 徒 ハ 、 同 時 ニ 、 夢 メ 覚 メ テ、 各 々 同 様 一ソ、 語 リ ケ ル
去 テ ハ 、 梅 若 公 ノ 、 身 ヲ 投 玉 ヒ シ モ 、 観 音 ノ 所 変 也 、 寺門ノ
k度 ノ 方 便 ニ テ ア リ ゲ ル ト 、 信 心 、 肝 ニ 銘 シ ケ
ルハ、 卅 人 ノ 衆 徒 、 皆 発 心 シ テ 、 共 ニ 仏 ヲ 修 セ ン ト テ 、 彼 桂 海
焼ヶケルモ、
力 、 遁一一シテ、 後 ニ 名 ヲ 改 テ 、 瞻 西 上 人 ト 云 テ 、 岩 蔵 一庵ヲ
結 ン テ 」、居 タ リ ケ ル 所 へ 尋 行 テ 、共 ニ 仏 道 ヲ 修 セ ン ト 思 テ 、尋 ネ
行テ見レハ、 三間ノ茅 屋 中 半 雲 一陰レテ、霊 山 浄 土 モ 云 ツ ヘ シ 、
、 谷 ノ 水 ノ 流 ル 、響 キ モ 、 浮 世 ノ 夢 モ 覚
ヌへシ ト 悦 テ 、 共 ニ 行 ヒ ケ ル 、 松 ノ 落 葉 ヲ 搔 集 メ テ 、 煙リヲ立
峯ノ嵐シノ吹ク音ト
三三一
X
文
禄 五年 写本
三
三
ニ
はそも、何 事 そ や 、我 、適 、 俗塵の境界をはなれ、 釈氏の門室
秋
夫 レ 、 春 ノ 花 ノ 樹 頭 ニ 挙 ハ 、 上 求 菩 提 ノ 檄 ヲ 勸 メ 、 秋 ノ月ノ
に」 入 な か ら 、 明 暮 、 た 乂 名 聞 利 養 の 心 の み 起 し て 、 出 離 生 死
語物長夜
水庭一一下タルハ、 下 化 衆 生 ノ 相 ヲ 顕 ス 、 天 言 ハ 無 シ 、 物 々 皆 ナ
に、 月 日 を 送 り け る
かたく、 同 朋 同 宿 の 離 別 も 、 さ すかに、 名 残 お し 」 け れ は 、 徒
所をは、人毎に、 はなれかたき事なれは、伊王山王の結縁も捨
はかりの隠家をも、 結はや と は 、 おもひけれ共、 旧縁のつなく
の い と な み に 、 を こ た り ぬ る 事 の 、 あ さ ま し さ よ と 、 思ふ心の
顕 示 ス 、 人 心 ロ 有 リ 、 敗 々 ト シ テ 豈 不 \勤 乎 、 若 シ 人 有 テ 、 人
間 ノ 八 苦 ヲ 見 テ 、 穢 と ヲ 献 時 ハ 、 煩 悩 即 菩 提 ト 成 リ 、 天 上 ノ五
出 来 け れ は 、 總 而 、 山 よ り 山 の お く を も 尋 、 柴 の 庵 の 、 しはし
縁 、 悪 ヨ リ 善 ニ 誘 へ 給 ふ 、 何 ニ ヲ 以 テ 云 と な れ は 、 経論
衰 ヲ 聞 テ 、 浄 と ヲ 求 時 ハ 、 生 死 即 l§ uト 成 ル 、爰 ニ 諸 仏 菩 薩
ノ、 順 逆 ノ 化 導 ヲ 垂 ル 、日 、 罪 有 ル ヲ ハ 、 邪 ヨ リ 正 ニ 入 レ、
無?
其 心 、内 に ぅ こ き て 、 ことは、 外 に あ ら は れ け る に や 、
朝々暮々風塵ノ底失脚誤生ス三十年
何日人間栄辱眼コ古松ノ陰ノ裏看 雲
X ヲ眠ル
是程に思ひ立 ぬ る 事 の 、 かなはぬは、 邪魔外道の、我をさまた
と 思 ひ て 、 石 山 に 詣 て つ 一 七 ヶ 日 か 」 あ ひ た 、 五鉢を地に
く る に や 、 さらは、 仏 菩 薩 の 、擁 護 を 頼 て 、此 願 を 、成就せん
セ
ン
サ
ィ
今 は 昔 と や 可 申 、後 堀 川 院 の 御 宇 に 、 西山の瞻西上人と聞へ
あ て や か な る か 、 立 出 て 、 ちり ま か ひ た る 、 花 の 木 陰 に 、 立や
仏殿の錦帳の内より、容色美麗なる児の、 ゆふはかりもなく?
七日 満 し け る 夜 、 礼 盤 を 枕 に し て 、 ちと、 まとろみたる夢に、
水 の 風 を 挙 た り 、 さ水は、 或 時 は 、 忍 辱 の 衣 の 袖 に 、摂 受 の 慈
す ら ひ た れ は 、 青 葉 か ち に 、 ぬ ひ た る 水 干 の 、 遠 山 桜 に 、 花ニ
なけ 、 一心にまことを致て、道 心 堅 固 即 證 苷 と そ 、 祈 け タ
悲 を 裹 み 、 或 時 は 、 催 伏 の 鈕 の 刃 に 、猛 気 の 勇 鐃 を 揮 、誠 に 、 真
相 の 律 師 、 桂 海 と い ふ 人 に て そ 有 」 け る 、内 に は 、 玉泉の流を
俗の倚頼、文武の達者也
度、咲たるかと被
X疑 、 雪 の こ と く 、 ふ り か Xり た る 」 を 、 袖
壮 年 に 、 飛 花 落 葉 の 色 を 見 て 、 ね ぬ 夜 の 夢 や 、覚 ぬ ら ん 、 こ
酌 而 、 四 教 三 観 の 月 を 澄 し 、 外 に は 、 黄 石 の 道 を 踏 て 、曩沙 背
て、 学 道 兼 備 た り し 人 、 元 は 、 北 嶺 東 塔 の 衆 徒 に 、 勧 学 院 の 宰
ニ条院ィ
峙 さ せ 給 へ 、 老 の ね 覚 に 、 秋 の 夜 の 永 物 語 、 一つ申侍らむ、
近 来 、 耳 に ふ れ し 事 の 、 あ ま り に 不 思 議 な り し か は 、面々枕を
に所k 説 ク 書 伝 一所 \」 載 、 事 し け X れ は 、 申 に 言 不 レ 足 、
/'
て、 や か て 、 見 え す な り ぬ と 見 て 、 夢 は す な は ち 、 さ め に け り
に つ Xみ な か ら 、 何 方 へ 行 と も 覚 ぬ に 、 く れ ゆ く 気 色 に け さ れ
砂 の 水 干 に 、 薄 紅 の あ こ め か さ ね て 、 腰 の ま は り 、 ほそやか
に、 け ま は し ふ か く 」み
、や
. ひ や が な る か、 見 る 人 有 共 、 し ら す
心 に ひ か れ て 、 門 の 傍 に 、 立 寄 た れ は 、 齢 二 八 計 成 児 の 、 水魚
も や あ り け ん 、 み す の 内 よ り 、 庭 に 立 出 て 、雲 お も け に 咲 た る 、
Mめ
下 枝 の 花 を 、 一ふさ手に持て
是 則 、所 願 成 就 の 、夢 想 な り と 、_ 敷 思 ひ て 、 また、 し の
の、 あ け は て ぬ に 、 立 帰 、 外 よ り 可 来 物 を 待 様 に 、 今 や 道 心 の
け
降 雨 に 、 ぬ る とも折ん、 山 さ く ら 、 雲 の 返 し の 、 風もこそふ
を こる と、 待 ゐ た れ は 、 猶 、 山 深 住 は や と 、 思 ひ し 心 は 打 失
て、 夢 に み へ つ る 、 児 の 面 影 、 時 の 程 も 、 身 を は な れ す 」 そ れ
掩ィ
と、打 詠 し て 、花 の し つ く に 、 た ち ぬ れたる鉢、是 も 花 か と 、
も、誠 の ぅ つ 乂 な ら ね は 、 せんかたなき思ひに、 たえかねて、
拟 し も や、 若 な く さ む 、 ー炤の香をたきて、 仏 前 に 向 へ は 、 漢
の神女、 雲 と 成 、 雨 と 成 て 、 夢 の 後 の 面 影 、 た つ き も し ら す
思ひ も 、身 に し ら れ 、 空山の花を詠して、雲 庭 に よ れ は 、 巫,
と あ や し け に み や り て 、 花 を 手 に 持 な か ら 、 か -^り の も と を め
心 な き 風 の 、 と ひ ら を 、 き り ^~^と 、 吹 な ら し た る に 、 人 有 «
り の 袖 も か な と 、 雲 に も 、 霞 み に も 、か す へ き 心 な ん し け る に 、
ま と は れ て 、 さ そ ふ 風 も や あ ら ん と 、 し つ 心 な け れ は 」、思 は か
と、 な け き 給 ひ け ん 、襄王の御 涙 も よ そ な ら す
く り て 、 静 に 歩 む に 、 み る ふ さ の 如 に て 、 ゆ ふ ''^と 、 か ^り
1
のり ふじんめ、 反 魂 香 の 煙 に 、 身 を こ か し た ま ひ し 、 武帝の御
を 、 さ か さ ま に 如 ぃ 呑 と 、 悲 み 給 ひ し か は 、 我 離 山 を 、 いかさ
山 王 の 御 神 詫 」 に、 我 レ ー 人 の 衆 徒 を ぅ し な ふ は 、 三 尺 の 想
と 、 見 帰 り た る 目 つ き 、か ほ の に ほ ひ 、 ゆ ふ 計 も な き さ ま 、
た る 髪 の す そ 、 楊 の 糸 に 、 打 ま と は れ て 、 引 と め た る を 、 ほれ
行 衛 も 」な く 、我 を ま と は し つ る 、 夢 の た 乂 ち に 、 す こ し も 、 た
ま、 山 王 の お し み 思 召 て 、道 心 を は 、 さ ま た け さ せ 給 ふ に や 、
Xけ む す れ 、 暮 待 程 の 、 露 の 身 も あ ら し 、今 は と 思 ひ 佗 け れ は 、
縦 、 さ 様 の 神慮成共、命 い き て こ そ 、法 燈 の 頹 風 に 向 を も 、 か
へき方もおほへす
か は ね は 、 今 の ぅ つ \ に、 み し 夜 の 夢 は 打 忘 て 、 日 暮 れ 共 、 行
た る に 、 童 の い と き よ け な る か 、 ぬ き す の し た の 、 水 捨 ん とて
夜明ぬれは、きのふの所に行て、御 房 の 傍 に 、立やすら」 ひ
心 な るら む
これやゆめ、あ り し や ぅ つ - 4 、
わ き か ね て 、い つ れ に ま よ ふ、
(
縁力)
其夜は、金堂の椽に、 ひれふして、夜もすから、詠めわひぬ、
石山の観音をこそ、 かこち申さめと思ひて、 又、 石山へそ参け
る」
三井寺の前を、過 けるに、降 と も し ら ぬ 春 雨 の 、 か ほ に ほ ろ
と 懸 け れ は 、 雨 や と り せ ん と 思 ひ て 、金 堂 の 方 へ ゆ く 処 に 、
り て 、 雲 を 茂 り 、 遙 に 人 家 を み て 、 花 あ れ は 即 入 、 と 云 、 詩の
(
朱i セリ
聖 護 院 の 御 房 の 庭 に 、 老 木 の 花 、 色 こ と な る か 、 梢 、 垣にあま
三三三
三三四
寿 と て 、万 情 の 色 深 く し て 、 上 下 に 賞 翫 せ ら る X事 、 無 k疑 と 語
れ は 、 そ れ な ん 、 よ び よ せ て 、 物 語 せ ん 事 は 、い か \と 問 へ は 、
の 外 に 出 た り 、 是 や 若 、 昨 日 の 児 の 、 童 な る ら ん と 、思 ひ て 、
立 寄 て 、 ちと物申 さ ん 、 と 云 へ は 、何 事 に て 候 や 覧 と て 、事外
して、 桂 寿 が 心 を 」 取 て 、語 け る は 、我 前 世 の 宿 習 に や 、彼御
亭 主 、 安 事 也 と て 、 即 、 彼 桂 寿 を 招 き よ せ て 、 茶 を 呑 、 酒を催
そ ま す 、 ね て も 覚 て も 、 只 此 御 事 を の み 、 案 し 候 へ は 、妄執の
姿 を み 奉 て 後 は 、 万 心 も み た れ 、観 念 座 禅 の 行 学 も 、 更に心に
なる気色もなし
の程、 十 六 七 に み へ さ せ 給 つ る 、小 人 の 御 事 や 、 しり参せ給た
名 を は 、梅 若 公 と 申 、 御 里 は 、花 菌 の 左 大 臣 殿 に て 候 、 御心分
と思召て、御所中の御暇を、伺はせ給て、花の木影の御戯れを
月、晴かたふして、心地の花、開す候へは、偏に人をたすくる
な く 、 深 窓 の 内 に 」 向 て 、 詩 を 作 、 哥 を 詠 し て 、 なほさりに
御 渡 り 候 程 に 、 管 絃 す 會 の 席 な ら て は 、 御 出 も 候 は す 、 いつと
ら そ ふ 風 情 に て 候 を 、 此 御 所 の 御 あ り さ ま 、余 に ゆ る す 方 な く 、
余所に散心もなく、仲秋の月の、 くまなきに、皆我家の光をあ
く と 申 て 、み 候 は ん に 、な と か は 、苦 し か る へ き と 、 い ひ け れ は 、
誠さやぅに、御 心 指 深 く 御 座 候 は 一
頼 み 申 由 、 泣 々 、 桂 寿 に 語 り け れ は 、 童 は 、あ は れ に 思 ひ つ X、
仏 陀 の 感 応 に も れ 、 我 身 の す 袅 も 、 浅 間 敷 候 へ は 、か や ぅ に は 、
り 思 ひ 侍 れ 共 、 心 中 に 積 り ゐ て 、 い は ぬ 思 ひ の 尽 せ ぬ は 、 興顕
比 日 比 も 、不レ知 身の、 か 様 の 事 、 打 」 解 申 は 、 如 何 と 、 は X か
も、今一目奉ぃ見は、 其 を 憂 世 の 思 出 と し て 、 可罷帰、 只、年
月 日 を 送 ら せ 給 候 也 と そ、語りける
つ ほ の 石 ふ み つ て に て も 、 心 の 奥 を 知 せ は や と は 思 へ 共 、 あま
い か 」 に 書 と も 、 つ く し か た け れ は 、 中 '^^哥 計
律師、嬉敷思ひて、鑛而、色こき紙に、思ふ心を尽程の事は、
乂ろを
知 ら せ は や 、 ほ の み し 花 の 、 面 影 に 、 立 そ ふ 雲 の 、 まよふこ
影 に 立 ぬ れ て 、 御 渡 り 候 け る を 、 或 人 、 ほ の か に 奉 r見 て 、 人
童 、 文 を 懐 よ り 、 取出 し 、 是 御 覧 候 へ 、 日外、 雨の 夕 、花の木
つX み か ね た る 様 に 、 み へ 候 そ や と 、 申 せ は 」、若 公 、 か ほ 打 あ
し れ す 、 思 ひ そ め け る 、 袖 の 色 も 、 は や 紅 の ふ り 出 て 、泣 計 に 、
日を暮しけるか、聖護院の傍に、昔 知 た る 人 の 有 」けるを、 た
先 の 童 を た つ ね た る に 、 さ る 事 あ り 、 彼 梅 若 公 に 付 奉 k随 、 桂
へ比以下イ本)
し た る 鉢 に て 、 一夜ニ夜を明す事、度 々 な り け り
つね出して、 或 時 は 、 詩 謌 の 会 に 事 を ょ せ 、 或 時 は 、 酒宴に興
一:*iは、 夢 と ぅ つ \ と の 面 影 に 、 起 も せ す 、寝 も せ ぬ 夜 を 明 し 、
従 是 又 、吾山へそ帰ける
り に 、 ひ た \け た ら ん わ さ も 、 さ す か な れ は 、石 山 へ は 参 ら て 、
筆、御文を給候て、 か
聞 に 付 て も 、 い と \、 心 も ぅ か れ ぬ れ は 、 纏 て 、此 童 を 使 に て 、
候 へ は 、 一 寺 の 老 僧 、 若 輩 、 春 に を く れ た る 、一 木 の 花 を も ち 、
方 も な く 、偽 の 有 世 と た に 、思 召 れ ぬ 程 の 、 は か な き 、 御 心 に て
る と 、問へは、童は打笑て、此御方に、 召被仕者にて候、御」
律 師 、 嬉 敷 思 ひ 、き の ふ 此 院 家 に 、 水 魚 砂 の 水 干 め さ れ て 、御 年
PI
の 僧 都 と 哉 覧 云 人 、 渡 殿 の 板 、 踏 鳴 て 、 内 へ 入 に 、 此 文 を み 'せ
かめて、 文 の ひ も を 、 と か ん と 仕 給 ふ に 、 出 世 な る 、 なにかし
んと、 み や り た れ は 、 桂 寿 に て そ 、有ける
し、 行 所 に 、 唐 笠 指 た る 、 騎 馬 の 客 、 道 に 行 逢 た り 、 誰 な る ら
て も 、 尋 参 ら ん と し つ る に 嬉 敷 も 、 参 合 た る 物 哉 と て 、 馬よ
桂 寿 、律 師 を み て 、 あ な 不 思 護 や 、 申 へ き 事 有 て 、 しらぬ山ま
り と ひ を り て 、律 師 か 手 を 取 て 、 傍 成 、辻 堂 」 に立よりける
しと、 袖 の 内 に 、 押 隠 給 つ 桂 寿 、 便 り あ れ と 隙 を 待 て 、 日
窓ィ
暮 る 迄 、祗 候 仕 た る に 、暫 有 て 、 書 院 の す た れ よ り 、 御 返 事 書 て
指出し給ひたり
さ へ 、 く ゆ る 計 に 匂 ひ た る を 、 取 出 し て 、い か な る 山 の 奥 迄 も 、
何 事 に や と 問 は 、桂 寿 、懐 よ り 、色 殊 、 こかれたる文の、觸袖
く 、思 ひ し か は 、
あ た りの宿に止て、余 所 な か ら 、 そなたの梢をた
御 所 の 傍 に 、知 た る 衆 徒の房の候へは、其 に 、 しはらく、御座
第八
の身や
偽 の 、 在 世 を 知 ら て 、 た の み け む 」 我 こ ^'ろ さ へ 、 ぅ ら め し
戯て、文をみれは、
れて 、打 袅 め は 、律 師 も 、 せ め て 別 れ を 歎 く 事 に て 候 は や と 、
ひ 候 や 、 ま し て 、 一 夜 の 後 の 袖 の 上 、 さ こ そ は 露 の と 、 たはふ
聞 し 計 を し る へ に て 、尋 参 と 仰 候 つ る 、け し か ら す の 、御心迷
^
一里は、 取 手 も か ろ く 、 嬉 敷 て 、 急 き 持 て 行 た る に 、 律 師 、 目 も
(
悦力)
披 て 」 みれは、 是も詞はなくて
しはらくは、
もせ す 、 あ ひ み ぬ さ き の 別 れ も、 せんかたな
律 師 、 此 御 返 事 を み て 、 心 い と Xぅ か れ て 、 更 、 立 帰 へ き 心 地
まよひは
た の ま す よ 、 人 の 心 の 、 花 の い ろ に 、 あ た な る 雲 の 、 か Xる
たちそふィ
あ や に 祝 て 、誠 に 身 もあられぬ様の鉢也
>1
にいさなへは、 思方に心ひかれて、律 師 、 又三井寺へ行ぬ
候 て 、 玉 簾 の ひ ま を も 、 御 心 に か け ら れ 候 へ か し と 、童 し き り
に み つ X、 暮 さ は や と は 思 へ と も 、 そ れ も さ 」 す か に 、 ひ た
け る わ さ な れ は 、 又 こ そ ま ひ ら め と 、 桂 寿 に 暇 乞 て 、 山へ帰り
の日雖永と、程 近 、坂 本 ま て も 、 行 つ か す し て 、 日 暮 けれは、
け る か 、 一足歩みてはみかへり、 二 足 歩 て は 立留りけれは、春
の主、懇 な る さ ま に も て な し て 、常 は 児 達 あ ま た 出 し つ 乂 、 管
桂 寿 、 しはしか程の、宿 借 て 、或坊の学問所に置たれは、其坊
気 色 に て 、人目 も 哉 と 、求る様 な れ 共 、叶はで、 出かねたる心
せ ん さ ひ の 草の露の底に、隠 れ ゐ た る に 、 若 公 も 、 早心得たる
て 、 夜 に な れ は 、 院 家 の 傍 に 、 立 ま き れ て 、つ き 山 の 松 の 木 影 、
律 師 は 、所 願 の 事 在 て 、森 羅 大 明 神 に 、 七 日 参 詣 す る 由 を い ひ
絃 を し 、褒 貶 の 哥 あ は せ な ん と し て 」 そ 、 日を過しける
戸津の辺に有ける、 はにふの小屋にそ、 とまりけ る
共 、け ひ き の つ な を 、腰 に つ け ら ん こ と く 、我 な か ら 、 心に引
終 夜 、 思 明 て 、朝 に な れ は 、 山 へ の ほ ら ん と て 、 庭 ま て 出 た れ
(
ち力)
かれ行ける
と X め ら れ 」 け れ は 、 又 戸 津 よ り 引 返 て 、 大 津 の 方 へ そ 、 あこ
雨 し め や か に 、 降 け れ は 、 蓑 笠 打 著 て 、旅 人 の 形 に 、 身 を や つ
三三五
三三六
よりそひて、打傾たれは嬋娟たる秋の蝉の、 はつもとゆひ、宛
入 給 ぬ 、 さ し も ま と を な ら す 、 袖 の 移 り 香 も 、 身 に ふ る \計 、
み る 計 を 、我 方 に あ る 契 り に て 、人 の 情 を こ そ 、命にせめ と 思
転 た る 蛾 眉 の 、 黛 の 匂 ひ 、 花 に も ね た ま れ 、月にもそねまるへ
尽 し 、 み る も 中 ^ - いたはしけれは、 よしや只、余 所 な か ら 、
へは、 行 て は 」 帰 り - ^ て は 行 、 日 数 も 十 日 余 に 成 に け り
涙 と 共 に 、 む す ほ れ し 、 心 の 下 ひ ほ 、 打 解 て 、 小 夜 の 枕 、 かは
葉もなかるへし
き 、百 の か ほ は せ 、 千 々 の 媚 、 畫 に 書 と も 、 筆 も 難 及
X 、語に言
山 へ 帰 ら ん と 、 思 ひ け る 所 に 、 桂 寿 来 て 、 申 け る は 、今 夜 こ そ 、
嶋 の 、 水 の な か れ も 、 浅 か ら 」 す 、 行 す 袅 ま て の 、む つ こ と も 、
何 ま て も と 、 人 は 云 へ 共 、 長 居 せ ん 事 、 さ す か な れ は 、 明日は
も 、 い た く 酔 せ 給 候 へ は 、 更 過 る ま て 、帰 ら て 、祗 候 せ よ 、 召 く
此 御 所 へ 、 京 よ り 客 人 御 入 候 て 、 御 酒 宴 に て 候 つ る 程 に 、 門主
ま だ つ き な く に 、 ね や さ ふ ふ し て 、紫 蘭 の 夢 、 さ めやすく、
し に 、 明 ぬ と つ く る 、 鳥 の 音 も 、 ぅ ら め し く 、 を の か き ぬ .-^^
爐 断 て は 、 紅 涙 の 別 れ も 、 と め か た け れ は 、 し の \小 篠 の ー ふ
せ ら れ て 、 是 へ 忍 ひ や か に 、 御 入 候 へ し と 、 仰 せ 候 つ る 、 門さ
乂て、 御 待 候 へ と 、 い そ か は し け に 、 云 捨 て そ 、 帰 り け る 」
ひ や k か に な り て 、 立 別 れ な ん と す る に 、 明 方 の 月 の 、 まとの
と、 月 の 南 に 廻 迄 、 待兼たる所
と も 覚 す 、 更 行 鐘 の 、 つ《
と 、 か \ り た る は づ 」 れ よ り 、 眉 の に ほ ひ 、 ほ け や か に 、 ほの
西より、 くまなく、 さし
律 師 は 、 是 を 聞 よ り 、 心 も ぅ か れ 、魂 乱 れ 、何 方 に あ る 、我身
に、 唐 垣 の 戸 、 人 の あ く る 音 す れ は 、 書 院 の 福 障 子 よ り 、 遙 に
か な る か ほ の 、 思 へ る 色 ふ か く 、 み え た る様 、 別 れ て 後 の 面 影
入 た れ は 、 ね み た れ か み の 、 はら^-
み 出 し た れ は 、 例 の 童 は 、先 に 立 て 、魚 脳 の 燈 爐 に 、螢を入て
よ や か に 、打 し ほ れ た る 鉢 に て 、 み る 人 も や と 、 かかりの下に
持 た る 、其 形 青 螢 と し て 、朦 朧 た り 、 若 公 は 、金 砂 の 水 干 、 な
立 や す ら ひ た 」 れ は 、 乱 れ て か X る 青 柳 の 、 い と Xゆ ふ は か り
も入らす、門の唐居敷の上に、立かねたる所に、童は又来て、
も、 又逢ふまてを待程の、命あるへしともおほへす
第十
律 師 は 、 若 公 を 送 て 、 あ か つ き 出 た り つ る ま \ に て 、 末 、 内へ
な く 、 み え た る に 、 律 師 、 い つ し か 、 は や 、 ほれ^ ^ となり
あ け て 見 れ は 、 ことは、 さ し も 、 を ほ か ら て 」
の、 な み た に わ け し 、 在
御 文 と て 、指出したり
我袖に、 やとしやはてむ、きぬ<
て、 あ る も あ ら れ ぬ さ ま な り
明の月
童 、 先 ッ 内 へ 入 て 、螢 を は 、 沙 窓 の 軒 に か け 、書 院 の 戸 を 、 ほ
と ''^と た
きて
X、 是 に 御 渡 り 候 や ら ん と 、 案 内 す れ は 、 律 師
と も に み し 、 月 を 名 残 の 、 袖 の 露 、 は ら は て 幾 夜 、なけき明
律 師 、書院に帰て
可 答 様 も 知 ら て 、 ち と傍に、 身 を そ は む る 、気 色 計 に あ る よ し
を、知せたり
童 、 庭 に 帰 て 、 は や と 申 せ は 、 若 公 、先 に 立 て 、妻 戸 よ り 」 内へ
童 思 知 て 、 其 人 の 在 所 を は 、 委 く 承 て 候 し か は 、御 供 申 候 は ん 、
と 桂 寿 と 只 二 人 、 ゆ く へ き 方 も し ら す 、立出ぬ
御 所 の 御 意 、 あ し く 候 は \、 後 に 何 共 、 申 さ せ 給 へ と て 、 若 公
さむ
律 師 は 、 夢 と た に 、 思 ひ 分 さ り つ る 面 影 を 、 身 に そ へ 、 ふれつ
一は元来、 三 台 九 棘 の 家 に 生 れ て 、 き や う 車 」 宝 馬 の 、 乗 物
ならては、 いまた泥土を踏給はす、あしたゆく、心つかれて、
#
る 移 り 香 を 、 を の か 物 か ら 、 か た み に て 」、山 へ 帰 り た れ は 、 心
しほれて、世の人ことの、物いひかはす、 返事もせられぬ、 只
更 、あ ゆ み か ね 給 へ り 、御 手 を 引 け る 童 さ へ 、くたびれはてけ
泣 と し も 、 お ほ え ぬ 涙 、 人 目 に あ ま り て 、 を さ ふ る 袖 も 、 朽果
ぬへけれは、少 も い た は る 事 あ り と 、 披 露 し て 、 人に対面もせ
れ は 、 あ は れ 、何 成 天 狗 、 t 者 成 共 、 我 を 取 て 、 比 敷 山 へ 、 の
た ま し め 、 や す ら ひ 居 た る 所 に 、.
年 い と た け た る 山 伏 の 、 四方
ほ せ よ か し と 云 ひ て 、 唐 崎 の 松 の 木 影 に 、 湖 水 の 月 に 、 心をい
す 、 伏 し つ み て そ 、 日を送りける
輿 に の り た る か 、 輿 を 前 に 」、か き す え さ せ て 、 是 は 何 方 よ り 何
童 は 、 此 由 を 伝 へ 聞 て 、若 公 に か く と 、語 り 申 け れ は 、若公も
れ 」給 ふ に 、 今 も や 音 信 あ る と 、 し は ら く 、 心 に 籠 て 、 待 給 ひ
誠 覚 束 な く 、 心 く る し き 事 に 思 ひ て 、気 色 常 ょ ヶ も 、打しほ
り は つ へ き 、 風 の 心 地 と 哉 覧 、 聞 し は 、 露 の 命 も 、 い か \な り
ぬ る を 、 た か 方 の 、 つ ら さ に な し て か 、、
其 儘 に 、擁 て 、遠さか
者 十 二 人 、 鳥 の 飛 か 如 に ゆ き け る か 、 茫 々 た る 、湖 水 を し の き 、
はん、 此 輿 に 、 め さ れ 候 へ と て 、 児 と 童 と を 、 か き の せ て 、力
の に て 候 へ 、あ ま り に 痛 敷 、み 奉 り 候 へ は 、 我 は か ち に て 、 歩 候
山 氏 、輿 よ り を り て 、我こ そ 、御 た つ ね 候 房 の 、憐へのほるも
に答へにけ
ま -'
方 へ 、御 渡 り 候 哉 ら ん と 、問 け れ は 、童 、在 の
ぬ ら む 、 若 は か な く な ら は 、 な か ら ん 跡 を 問 と て も 、其 」甲 斐
重 々 た る 」、雲 霧 を わ け て 、 片 時 の あ ひ た に 、 大 峯 の 釈 迦 か 嶽 へ
り
け る か 、 余 り に 、 日 数 経 れ は 、 童 を ょ ひ 寄 て 、a も あ り し 夜 の 、
な し 、 何 な る 山 の 奥 成 共 、 尋 行 は や と 思 へ 共 、申 置 事 の な く て 、
こ 乂 に て 、 盤 石 を た \み た る 、 石 の 楼 の 中 に 、 押 籠 て 、 置 た れ
夢 の た Xち も 、 ぅ つ ^
す く な き に 、不 \驚 便 り も な く て 、 程 経 り
出 な は 、門 主 の 御 心 も 、 さこそと思はれて、 其 も 不 叶
X 、 行す
袅 も し ら ぬ 、 あ た 人 の 、 只 い ひ 捨 し 言 葉 を 、 誠 に し て 、我に心
は、夜 昼 の 境 ひ も し ら す 、 月 日 の 光 を も み す 、 苔 の |卞、 松 の 嵐 、
(隣 力 )
を つ け し も 、誰 せ し わ さ そ や 、 今 の 程 に 、 我 を 指 南 し て 、何成
そ 、 かき持行ける
山 、 何 方 の 浦 に 成 共 、 た つ ね て 行 け と 、 か こ ち 給 ひ て 、 涙をは
第 十 一
三三七
涙 の か は く 、ひ ま も な し 、道 俗 男 女 、 を \く と ら れ て け り と 覚 へ
て、た 乂 、め ひ ま う た る 闇 室 に 、 泣 声 の み そ 、 き こ へ け る 」
けなき、あたし心にて、人に又なき
ら - ^と 、 こ ほ し 給 ふ
さすかに、 い ま だ い
其 夜 よ り 、 三井寺には、 若 公 う せ 給 ぬ る 事 、 た Xことにあらす
と 」
思 ひ 、付給ひぬ る は 、 す る わ さ もなき習なれは、実 も 理 哉 と
-'
人 行 相 て 、 さ 様 の 小 人 は 、 夕 戌 剋 計 に 、唐 崎 の 浜 に て こ そ 、 ゆ
も 、 知 人 、更 、 な か り け る 所 に 、東 坂 本 よ り 、大 津 へ 通 る 、旅
と、門 主 、御 歎 き 在 て 、 いたらぬ く ま も な く 、御 尋 あ りけれと
は、 眇 々 た る 、 志 賀 唐 崎 の 浜 路 に 、 駒 に 鞭 打 衆 徒 も あ り 、 或 は
十万騎の勢を、 七手に分て、 をうて、 からめてより押よる、或
十 月 十 四 日 は 、 中 の 申 に て 、 是 に ま さ る 吉 日 、 有 へ か ら す と て、
の勢馳集り、山上坂本に充満せり
へしとて、 末 寺 末 社 、 三 千 七 百 余 」 ヶ所へ、 觸 送 る 、 先 、 近 国
三三八
き 相 せ 給 ひ て 候 し か と そ 、語ける
其 中 に 、桂 海 律 師 は 、 今 此 」監 傷 は 、併 、我 身 よ り 、 をこりし
によせける
漫 々 た る 煙 波 、 湖 水 の 朝 な き に 、 船 に 棹 さ す 大 衆 も あ り 、 思々
拔 は 、 此 あ ひ た 、忍 ひ て い ひ 合 す 、 山 徒 の あ り と » しか、 何様
X斜
るへし、先、花 菌 の 左 苻の帝へ押寄て、恨み申せとて、御門徒
る物をと、思ひけれは、勝たる、 同宿若党、 五百人、皆神水を
わ さ な れ は 、 人 よ り 前 に 、 一合戦して、 名 を 後 代 に 、 あ け ん す
父 の 大 臣 、存 知 給 は ぬ 事 は あ ら し 、 山 門 へ よ せ ん 事 は 、 難儀な
勾 取 て け 」 りと、院家の周章は不 及
X 申
X 、 一寺の欝胸不
の大衆、 五 百 余 人 、 白 中 に 、 左 苻 の 帝 宅 、 三 条 京 極へ押寄たる
マ 、
に、 近 所 の 祗 候 の 人 、 五 十 余 人 、 身 命 を 軽 し て 防 き 戦 、 大 衆 、
事 と も せ す 、責 入 け る あ ひ た 、渡 殿 、 釣 殿 、 泉 殿 、 甍 を な 」 ら
を う て 、 か ら め て 、 城 の 内 、 す へ て 十 万 千 余 人 、 同 時 に 、 時の
呑 て 、 五 更 の 天 も 明 ぬ に 、如 意 越 へ よ り そ 、 よせたりける
水輪際に落る揪と、うたかはる」
声 を 揚 た れ は 、 大 山 も 、 是 か た め に く つ れ 、 湖 水 も 傾 き 、忽 に 、
へて作りける、 玉 の ら ん か ん 、 一宇ものこさす焼払ふ
同 に 、 僉 議 し け る は 、 寺 門 の 恥 辱 、 是 に 過 た る 事 は 、有 へ か ら
杉 本 、 山 本 、 妙 観 院 、 十 乗 、成 願 、妙 光 坊 、 西 塔 に は 、常 住 、
は、 先 ッ 本 院 に 、 習 禅 、 禅 智 、 円 宗 院 、 榴 生 、 西 勝 、 金 輸 院 、
手負をも不レ顧、 死 人 を も 不 レ 痛 、 の り こ へ < ; 貢 入、 寄 手 に
菌城寺の衆徒、 是にも猶、 いきとをりを、 不 散
X し て 、 一寺一
す 、所 詮 、 此 次 手 を も っ て 、 当 寺 に 、 三 摩 耶 戒 壇 を 建 は 、 山門
定 而 、 よ せ ん す ら ん 、 此 則 、 他 の 利 に 付 て 、敵 を ほ ろ ほ す 媒 尬 、
又 は 邪 執 を し り そ け て 、 戒 法 を 弘 む る 道 た る へ し 」、天 爰 に 、 時
常 善 、乗 実 坊 、 南 岸 、行 往 、行 泉 房 、横 川 に は 、善 法 、善 住 、
(
地力)
を 得 た り 、 暫 も 遅 々 す へ か ら す と て 、 一 味 同 心 の 衆 徒 、ニ 千 人 、
爰を纪途と」
ill% 、
防 く 所 の 大 衆 に は 、 円 満 院 の 鬼 駿 河 、当 院 の 七 天 狗 、南 院 の 化
戦
般若院、此人々を前として、 三 塔 蜂 合 義
山 門 、 是 を 聞 を 、 な し か は 、蜂 起 せ さ る へ き 、戒 旦 の 事 に よ り
三町飛礫の円月房、提切好の覚増、義を金石に比、命 を 塵 _
介に
金 剛 、 千 人 切 の 荒 讚 岐 、 金 さ ひ ば う の 悪 大 夫 、八 方 破 の 武 蔵 坊 、
(
堀力)
て、 園 城 寺 へ 発 向 す る 事 、 い前、 既 、 六 ケ 度 也 、 公 家 に 奏 し 、
をそ、立たりける
如 意 越 の 道 、所 々 湄 切 、 寺 中 を 城 廓 に 構 而 、頓 而 、 三摩耶戒旦
武 家 に 觸 る ま て も 、 有 へ か ら す 、 時 を 不 V移、 押 寄 て 、焼払
中 に 、 押 籠 ら れ て 、 明 暮 、 泣 沈 み て 、 を は し け る 所 に 、 無量の
若 公 は 、 三 井 寺 の 、 か や う に 成 た る も 、 知 せ 給 は す 、 石の楼の
、防 き 戦 、 鏃、甲胄綴し、鋅さき煙塵をま
ひて、 三時 計 戦 た る に 、 ょせて七千余人、手 負 て 、半死半生に
軽 し て 、打出 <
天 狗 共 、 集 り て 、 四 方 山 の 物 語 仕 け る 中 に 、或 小 天 狗 申 け る は 、
桂海、 是を見て、大 に 忿 て 申 け る は 、 云甲斐なき人々の、合
成 け れ は 、 此 城 、 尽 未 来 際 を 経 共 、 可」 落 と も 、 更 、 みえす
白川ほこのそらいんち、山門南都の御輿振、 五山の僧の門徒た
我面白事には、焼亡、辻風、 こいさかひ、 論 の 相 撲 の 事 出 、
て、此 等 こ そ 、狂 有 見 物 も 出 来 て 」、一 風 情 あ る と 思 ひ つ る に 、 昨
戦の仕様哉、幾程もなき、 堀一は、 死人にて、 むめたらんに、
(
堀力)
な と か、 責 を と さ
祝な
.
力
®
ノ
r
て、 や け ん 掘 の 、
るへき、我 と 思 は ん 人 々 は 、 続 ゐ て 、 桂海
>1
か手柄の程を見ょと、あくまて荒言
堅 の さ んを踏て、 はねあかり、塗 残 し 」 たる壁の柱に、手を打
懸 、 ゆ ら り と は ね 越 て 、 か た き 三 百 余 人 か 中 へ 、 唯 一 人 、 切て
入
さ け 切 、 袈 裟 切 、 車 切 、 そ む け て も て る 一 刀 、 し さ り て す Xむ
追懸切、将碁たをしの払ひ切、礒打波のまくり切、らんもん、
ひ し ぬ ひ 、 八 ッ 花 形 、 く も て 、 かく繩、 十 文 字 、 四 角 八 方 を 、
ゆ く 、
追 立 ^ - 、 足 を も た め す 、 切 て 廻 る に 、 如 意 越 を 、防 き け る 、つ
は も の 、三 百 余 人 、か な し と や 思 ひ け む 、右 手 」 左 手 へ 落 て
か ら め て の 勢 共 、 続 て 責 入 け れ は 、桂 海 か 手 の も の 、 五百余人
こ そ 、 狂 有 折 句 の 哥 を 、 一 首 よ み て 候 し か と 語 を 、座 上 の 天 狗 、
長絹の衣けたれて、方々へ、 にけさせ給しか、 をかしさに、我
何とよみたりけるそと、問へは」
_
う か り け る 、 恥 三 井 寺 の 、 分 野 や 、 か ひ を 作 り て 、 ねをのみ
そなく
第十七
と 、 読 て 候 也 と 語 れ は 、 座 中 の 天 狗 共 、 袅 つ ほ に 入 て そ 、 わら
ひける
四 方 に 、 覆 ひ け れ は 、 金 堂 、 講 堂 、 鐘 楼 、 経 蔵 、常 行 三 昧 の 阿
縛 り て 、楼の内へ入て、申けるは、此翁、 日照の雨雲のはつれ
か \ る 所 に 、 淡 路 国 よ り 、 進 物 と て 、 八 十 余 成 老 翁 を 、 一人」
共に、打 佗て、 泣より外の、事そなき
る や と 、 思 給 へ 共 、 委 た つ ね 問 へ き 、 人 も な け れ は 、 只、 童と
若 公 、 是 を 聞 給 ひ て 、 あ な 浅 間 敷 や 、.
三 井 寺 、我 故 に 、 うせけ
影 堂 、 両 門 跡 の 御 房 に 至 迄 、 都 而 三 千 七 百 余 宇 、 一時に、 灰 燼
三三九
名 を 付 て 、 召 仕 候 へ 、 虚 空 を か け り 候 は ん 事 、 誰 に も 、 をとり
より、 踏 は つ し て 、 土 に 落 て 候 つ る を 、 と ら へ て 参 せ 候 、 何 共
り
と 成 は て V、 森 羅 大 明 神 の 社 壇 ょ り 外 は 、 残 」 房 一 も な か り け
弥 陀 堂 、普賢行 願 の 如 法 堂 、教待和 尚 の 御 本 坊 、智證大師の御
走 散 て 、院 々谷々に、 火を懸た る に 、魔風し き り に 吹 て 、余炎
のいくさ、 何 故 に か 出 来 へ き 、戦 ひ の 蕺 中 に 、寺 の 門 主 達 の 、
日の三井寺の合戦は、世に無 類
x 、見 事 哉 と 申 せ は 、 又 そ は 成 小
天狗 、 いしくも、此 梅 若 公 を は 、 取 た り け り 、 さ ら す は 、此等
1£
る中へ、 がはと飛をり、 ニ丈余に見えたる、切 き し の 上 へ に 、
^;
一 両 日 在 て 、此 翁 、児 と 童 と の 、 泣 悲 む を 聞 て 、 若 、 御 袖 や ぬ れ
候 は し と そ 、 申ける
とる <
ら は 、 三 井 寺 へ ゆ き て 、 門 主 の 御 事 を も 、た つ ね 申 さ む と て 、た
大 臣 の 御 行 末 」、尋 候 は ん 程 の 、 立 よ る へ き 宿 も な け れ は 、 さ あ
候 は し と て 、 三 井 寺 よ り 押 寄 て 、 焼 払 て 候 也 と そ 、 かたりける
三四〇
て候と、 問 け れ ば 、 児 も 童 も 、 住 馴 し 所 を 、 かりそめなから立
松、 風に吟す、 是を我往捨し、 むかしの跡よとて、 みれは、 石
房 、 一宇も不残、 皆 焼 払 は れ て 、 閑 庭 の 草 、 露 に 泣 、 空山の
、 童 に 手 を 引 れ て、 三 井 寺 に 行 て 、 見 給 へ は 、 仏 閣 僧
別 て 、 此 天 狗 道 に 落 ぬ れ は 、 父 母 の 悲 み 、 師 匠 の 歎 き 」、想 像 ら
る \度 毎 に 、 涙 の 落 ぬ 暇 な け れ は 、 さ こ そ は 袖 も 、 ぬ れ て 候 ら
す へ の 石 も、 焼 く たけて、 苔 の 緑 も、 色 替 り 、軒 端 の 梅 も、 枝
め と そ、 答 け る
こそ 神 慮 に も 違 、 人 口 に も 落 ぬ ら ん と 、
浅 間 敷 覚 て 、み る に 目 も
毎レ物、 替 果 ぬ る 、 世 の 哀 さ 、 只 我 ゆ へ な り し 、 事 な れ は 、 さ
枯 て 」、匂 ひ を 待 し 風 も な し
玉 か 何 そ と 、 人 の 問 計 、 泪 の 露 、 し た \り け り 、 翁 、 此 露 を 、
つ け参せ候はんとて、翁 、此 若 公 の 袖 を 、 し ほ り てみるに、 白
老 翁 、 大 に 悦 て 、 さ 候 は 我 に 取 付 せ 給 ひ 候 へ 、輙 く 都 に 、
左 の 手 に 入 て 、 'ゾ
t 、 円 転 す る に 、 露 の 玉 、 程 な く 、 鞠の勢に
るも、 名 残 お し け れ は 、 其 夜 は 、 新 羅 大 明 神 の 拝 殿 に 、 湖水の
あ て ら れ ぬ 様 也 、 去 共 、 年 久 、 住 馴 し 跡 な れ は 、 や か て 、 み捨
門 主 は 、 若 石 山 に や 、 御 座 有 ら む と て 、 尋 行 た れ 共 」、是 に も 御
月 を 詠 て 、 泣あかしつ
森歟
ニ の 露 、次 第 に 犬 に 成 て 、 石 の 楼 の 内 に 、 漫々たる大海のこと
成 ぬ 、 是 を ニ に 分 て 、 左 右 の 掌 に 入 て 、 ゆ る か し ゐ た 」 るに、
くに 、成にけり
燠 ;け れ は 、 義 勢 の 天 狗 共 、 怖 畏 て 、 十 方 へ 逃 失 け れ は 、竜 神 、
座なしと、申けれは、桂寿、 さあらは、今夜は、参詣の人の鉢
第十九
此時、老翁、忽に大竜と成て、雷鼓、 地を動し、 電 光 、 天に
に て 、 本 堂 に 御 座 候 へ 、 我 、山 門 へ 罷 上 て 、律 師 の 御 房 を 、 たつ
内ィ
、 取と
して、 泣 々 消 息 書 て 、 童 に た ひ け る 、 是 を 限 り と は 、 よも」 し
む る 人 な く は 、 心 の ま ^!に、何 成 淵 川 へ も 、身 を 沈 め む と 、 思 め
と、 深 く 思 さ た め 給 ふ 心 、 を は し け れ は 、 よしや中 <
ね申候はんと、申けれは、若公は、 只憂世にあらぬ身とならん
石 の 楼 を け 破 り て 、 児 、 童 の み な ら す 、 あ ら ゆ る 、道 俗 男 女 を 、
1に
1 のせて、大裏の旧跡、神泉 毙の辺にそ、置たりける
道 俗 男 女 は 、 皆 是 ょ り 分 て 、 を の か さ ま ^ ^ へ帰ぬ
若 公 と 」 童 と は 、 我 故 郷 を 尋 て 、 花 菌 へ ゆ き 給 ひ た れ は 、 さし
て、 更 に 物 も い ひ え す 、 先 、 さ め ^ ^ と そ 、 な き け る 、 童 も 涙
童 は 、 御 文 を 給 て 、 いそき、 山 へ の ほ り た れ は 、 律 師 、 童をみ
ら し と 、 哀 に て 、 遙 に 、 み 送 り て 、 立給ふ
あ た り な る 僧 房 に て 、 事 の 様 を 尋 れ は 、左 大 臣 殿 の 公 達 若 公 を 、
て、 事 問 へ き 、 人 も な し
も 甍 を な ら へ て 、作 り た り し 、帝 宅 茅 屋 ま て 、皆焼野の原と成
比 敷 山 へ 奪 は れ さ せ 給 ひ て 候 を 、御 里 に 、 しろしめされぬ事は
を拭て、此間有つる事を、 かたらんとすれは、 まつ御文を、 み
是 を み て 、 律 師 も 童 も 、同 し 流 に 、身 を 沈 め ん と 、 堪 焦 け る を 、
一 目 見 て 後 こ そ 、 兎 も 角 も 、 な .ら め と 思 ひ て 、桂 海 は 、つ な き 捨
同 宿共あまた、 取止け れ は 、 ょしや、其む な し き 御 質 を 成 共 、
わ か 身 さ て 、 し つ み も は て は 、 深 き 瀬 の 」、底 ま て て ら せ 、 山
候はんとて、押披たるに、 あやしき哥のことはあり
た る 、 海 士 小 船 に 乗 て 、 淵 の 底 を 、 望 み み れ は 、同 宿 中 間 共 は 、
皆 裸 に 成 て 、 岩 の は ざ ま 」、岸 の 陰 ま て 、 残 ら す 、さ が し け れ 共 、
の端の月
律師、 あ はて^
'
、 是 御 覧 候 へ 、 御 哥 、 心 も と な く 、 みえて候へ
紅深き色かとみえて、岩のかけに、 な
曾 而 、 み え 給 は ね は 、 天 に 仰 き 、 地 に 伏 て 、 泣 叫 ふ 事 、 不斜
の、
は、 何 事 も 、 道 す か ら 、 御 物 語 候 へ 、 先 々 、 い そ き 参 候 は ん と
れてとまる、紅 葉 々
遙 に 時 移 り て 、 供 御 の 瀬 と 、 い ふ 所 ま て 、 求 め 下 た れ は 、 せか
了
て、 坂 本 ょ り 、 童 を 前 に 立 、取 も の も 取 あ へ す 、石 山 へ そ 、 わし
りゆき^ る
第廿
大津を過て、行所に、旅人あまた行相て、あな哀や、此児、 い
ゆられゐたり」
か れ か Mり た る 物 の あ る を 、 船 指 寄 て 、 み た れ は 、 有 も む な し
き 良 に て 、 長 な る 髪 、 流 れ 藻 に 、 み た れ か Mり て 、岩 こ す 波 に 、
ふ と こ ろ に い た き て 、 ぅ た て し の 御 分 野 や 、 我 等 を は 、 いかに
泣 々 取 上 て 、 律 師 は 、 御 か ほ を 、 膝 に か き の せ 、童 は 、 御 足 を 、
かに、 歎 き 給 は ん す ら む と い ふ を 、 あ や し く お も ひ て 、 委たつ
か な る 恨 み の あ り て か 、 身 を 投 給 ひ つ ら む 、 父 」母 、 師 匠 、 い
ね問へ は 、旅 人 、 立 と ま り て 、 只今、勢 多 の 橋 を 、渡り候つる
な れ と 思 召 て 、 か \る 事 は 、 あ り け る そ や 、 梵 天 帝 釈 、 天 神 地
所 に 、年 の 程 、 十 六 七 に 、 み え さ せ 給ひ候つる児の、 紅梅の小
計 唱 て 、 身 を 投 さ せ 給 ひ て 候 つ る を 、 余 に 悲 し く 、 みまひらせ
袖 に 、 水 干の下計、 めされて候つるか、 西に向ひて、念仏十返
せ 給 へ と 、 音も不ぃ惜、 泣 悲 共 、 落 花 、 枝 を 辞 し て 、 再 、 咲 習
祇 、 只 、 我 等 か 命 を め さ れ て 、今 一 目 、む な し か ら ぬ 御 貝 を 、 み
な く 、 残 月 、 西 に 傾 ひ て 、 又 半 天 に 、 か へ る 事 な け れ は 、ぬ れ
候 つ る 程 に 、 我 等 、 や か て 、 水 に 入 て 、 取 上 」ま ひ ら せ ん と 、
仕 候 つ れ 共 、 つゐに、 み え さ せ 給 ひ 候 は ぬ 程 に 、 力 な く 、 罷 過
.
,り し 、 緑 り の 髪 、 わ り な き 形 は 、か は ら ね 共 、一度咲、 百 の 媚 .
あ た り も 、 ひ へはてぬ、 乱 て 残 る 、 ま ゆ す み の 色 、 こほれてか.
共 、 馬 を は や め て 、 橋 爪 に ゆ き て 、み る に 、若 公 の 、 い つ も 身 を
伏まろひて、泣声更、止時なし」
て、 絶 入 計 に 、 伏 沈 み 、 同 宿 下 法 使 共 に 至 迄 、 あ た り の 苔 に 、
あ り し 、 眼 ふ さ か り 、 色 変 し ぬ れ は 、律 師 も 童 も 、跡 枕 に ひ れ 臥 ,.
J
候 也 と そ 、 語 て 、 涙 をはら < と、 こほしける
第廿一
旅 人 の 語 を 聞 に 、 年 の 程 、 衣 裳 の 様 、 疑 所 も な け れ は 、 律師も
は な た て 、 か け 給 ひ し 、 金 蘭 」の ほ そ を の 護 、 壁 瑠 璃 の 小 念 珠
て 色 こ き 紅 梅 の 、 し ほ - ^ と し た る 下 に 、 雪 の こ と く 成 、 胸の
童 も 、 心 ぁ き れ 、 足 手 も な へ て 、 _ 而、 伏 沈 む へ き 、 心地すれ
を 添 て 、 橋 の 柱 に 、 かけられたり
三四一
夫人、
三四ニ
」軒 に 乗 て 、 斯 お 数 十 人 、 左 右 に 相 "跪 ?
は さ り け れ は 、 其 夜 、 近 き 山 の 鳥 辺 野 に て 、 一片の煙となし奉
候 そ と 、 問 へ は 、是 こ そ 、 東 坂 本 に を は し ま す 、 日 吉 山 王 に て 、
御渡り候へとそ答ける
跡にさかりたる、退紅の仕丁に、 是は、何成人にて、御わたり
一 惟 の灰に向て、 三 日 ま て 、 泣 ゐ た り け る か 、 同 苔 に も 、 埋も
か て 、こ き 墨 染 に 、身 を や つ し 、 其 遺 骨 を 、 頸 に か け て 、 山 林 と
て こ そ あ れ と 、 思 ひ け れ は 、 律 師 は 、 山 へ は 不 k帰 、是 ょ り 、や
終夜、遊宴歓娯ありて、 明ぬれは、 山王還御なるに、明神、寺
り 、 新 羅 大 明 神 、 宴 、 興 に 和 し て 、 歓 喜 の 袅 み を 、ふ く み 給 ふ 、
向 せ 給 ふ 、 賓 主 、 座 定 ま り て 後 、 献 酌 の 」例 あ り 、 舞 曲 の 宴 あ
玉の冠を正しくし、威儀をかひつくろひて、 金帳の内ょり、出
此高客、皆、車ょりをりて、帳の内へ入給へは、新羅大明神、
そふしけるか、後 には、 西山の岩蔵と云所に、庵室をむすひ、
門 の 外 ま て 、奉
の大衆一人、 明神 の 御 前 に 、 ひさまつきて、 淚を な か し て 、申
X送 て 、 と \ ま ら せ 給 ひ ぬ
大明神、 玉の橋を歩みて、社壇へ、 入せ給はんとする時、通夜
其 後 、藺城寺の、 三摩耶戒壇の、張本の衆徒卅人、今は立帰り
の 興 隆 を 存 て 、 興 行 仕 し 事 に て 候 へ は 、 一塵も、 衆 徒 の ひ が
け る は 、 三 摩 耶 戒 且 建 立 の 事 は 、 已 往 」の 勅 許 に ま か せ 、 我 等
第廿三
山中をは、 いてさりけり」
て 、住 寺 す へ き 様 も な か り け れ は 、 世 の 中 、 あ ち き な く 思 ひ て 、
ひて、 皆、森羅大明神の御前に、通夜申て、今を限りの、法味
御 心 を 、 な や ま さ せ 給 ひ 候 ら め と こ そ 、存 候 に 、 当 寺 敵 対 の 神 、
々の、 魔 障 を な し 、 当 寺 を 焼 払 ひ つ れ は 、 神 明 仏 陀 も 、 さ こ そ
gを 背 て 、 種
をそ捧ける
山門擁護の、 日吉山王に対して、 宴を儲、興を尽して、遊
事 と は 、存 候 は す 、 然 を 、 山 門 、 狼 に 、度 々 の 勅
空 ょ り 、 馬 を は せ 、 車 を 轟 か す 音 し て 、 を び た V敷 、 大 人 高 客
夜 い た く 更 て 後 、 夢 ぅ 」 つ 乂 の 、さ か ひ を も し ら ぬ に 、東 方 の 虚
さ せ 給 ふ は 、 い か 成 」神 慮 に て 候 や 覧 、 難 計 こ そ 、 存 候 へ と 申
深 の 、法施をもたてまつり、発心修行の暇をも、申さはやと思
皆 離 山 せ ん と 仕 け る か 、 今 一 度 、.
寺門の焼跡に立帰り、内證甚
第廿ニ
後 生 菩 提 を 訪 、童も、 やかて、髪 剃 落 し 、
'高 野 山 に 閑 籠 、 終 に
山 の 端 の 月 、 と あ り し 」は 、 な か ら む 跡 を も 、 訪 へ と の た め に
れ は や と 思 へ と も 、 今 は 軒 端 に 、 送 り 給 し 哥 に 、底 ま て て ら せ 、
る 、 同 宿 中 間 共 は 、煙 尽 て 後 、皆 帰 れ 共 、 律 師 と 童 と は 、 不 帰
X、
其 日 は 、 も し や と 、 胸 を あ て X、 あ た ^!め け れ 共 、つ ゐ に 、かな
|1?
に乗て、扈 従 の 大 衆 、前 後 に 囲 、 或は 、 衣 冠 正 キ 俗 鉢 の 客 、甲
を み れ は 、 或 は 、 法 務 の 大 僧 正 に や と 、 み え た る 高 僧 、 四方輿
て、 福 を あ た ふ る も 、 真 実 の 本 意 に は あ ら す 、 是 を 非 し て 、 罰
の 管 見 也 、 夫 、 神 明 仏 陀 の 、 利 生 方 便 を 、 た る X日 、 彼 を 是 し
み 申 所 、 一往、 其 謂 れ 有 に 、 似 た り と 云 へ と も 、 是 は 皆 、 一隅
せは、大 明 神 、 通 夜 の 大 衆 を 、 皆 、御 前 に め さ れ て 、 衆徒の恨
胄をたひせる、随兵を召具し、 或は、 玉 の か ん さ し を 傾 た る
の、 来 る い き を ひ あ り 、 あ や し や 、誰 成 ら ん と 、め も あ や に 、 是
®;'
菩 提 に 為 ノ 令 メ 趣 」也 、 我 よ ろ こ ふ 事 を は 、 人 未 グ 可 k知 、 仏
を 行 も 、 慈 悲 の 至 り 也 、 只、 順 逆 の ニ 縁 を 以 て 、 終 に 、 無上
の 人 、 彼 方 此 方 ょ り 、 来 り 集 り し か は 、都 近 き 所 に 、 寺 を 建 て 、
徳不 孤
必有 隣
X ナラ 、
X 事なれは、 献とすれは、 同様になる、桑門.
の釈教の部に、撰ひ入させ給ふ
X
て、 年 々 の 春 毎 、 三 尊 来 迎 の 儀 式 を 、 執 行 し 給 ふ 、 廿 五 菩 薩 の
人 を も 広 く 、 利 益 せ ん と て 」、東 山 雲 居 寺 と 云 所 に 、 堂 を 建 立 し
妓楽歌詠して、往生の人を、向へ給ふ様、 みる人、信 心 を
ぬるも、 これを書に、書典の結 縁 有 、有 為の報仏、豈生滅の相
閣僧房の焼たるは、造営するに、財施の利益有、経論聖教の焼
な か ら む や 、 只、 此 乱 に よ り 、桂 海 か 発 心 し て 、 そこはくの化
仏種は、縁ょり起とは、 か
る事をそ申へきと語て、涙をなか
せ は 、 聞 人 共 に 、 感 歎 し て 、 袖 を ぬ ら さ ぬ は 」、な か り け り
k
ぬ
れ
「太 陰 に や す て (十 丁 ォ )」、 「夢 の た
k
教
、親 招 こ 当
i 学 観 道 之 耆 ,
J
•
た ち に も (十 八 丁 ゥ )」、「此 ,
三四三
(卅 四 丁 オ )」、 「む か し 見 し 月 の 光 の を (四 十 一 丁 オ )」、
等である。
をルの
輿 に め さ れ て 候 へ (廿 丁 ゥ )」、 「千 七 千 余 人 (廿 五 丁 ォ )」、 「ほ そ
X
追 記 本 写 本 中 に は 以 下 の 如 く 数 ヶ 所 に 亘 り 見 消 ち が あ る 。即 、
■
文禄五年林鐘中旬遂写功訖
男 変 化 之 花 一 、結 , 菩
然且者、翫 童
,
一
一提 覚 樹 之 菓 一 ト ナ リ
時之嘲弄一、 忽 忘 湲
n 混 之 誹 謗 、
1 併 染 =紫 毫 於 愛 憐 之 思 乎一、 雖
哀 哉 、眤 童
,
1子 花 髪 之 戯 、1悲 哉 、拋
嘉吉第二暦二月十五日、於台嶺本院東溪或坊之学窓、遂写功訖
秋の夜の長物語畢
こ
導を、 せさする事の嬉しさに、歓喜の心を、顕しつるなり、山
ひや君か、 西へゆ
X
、 AA
かほなれは
光を、 しるへにて、
賤 、掌を合て、是を敬礼す
さすといふ事なし、去は、遠近、踵を継て、是に参詣せし
王も、 是を感したまはんかために、来 り 給へり、 石山の観音の
明 神 、 金 帳 の 内 へ 、入 せ 給 ふ と 、 お ほ ふ れ は 、 通 夜 の 大 衆 卅 人 、
童 男 反 化 の 得 度 」、 誠 、 難 ぃ有、 大 慈 大 悲 か な と 、 仰 せ ら れ て 、
一時に、 皆 夢 覚 て 、 同 様 に そ 、 か た り け る
第 廿 四
度 の 方 便 な り と 、信 心 、 き も に銘しけれは、舟 人 の 衆 徒 、 同時
扨は、若公の身を投給も、観音の反化也、寺門の焼けるも、済
に 皆 発 心 し て 、 共 に 皆 、 仏 道 を 修 せ ん と て 、 彼 桂 海 は 、 _ 西上
は、 三 間 の 茅 屋 、 な か は 、 雲 に わ か つ て 、 三 秋 の 霜 の 後 、 敗 荷
人 と 、 名 を 替 て 、 住 」給 ふ 、 岩 蔵 の 庵 室 へ 、 た つ ね ゆ き て み れ
衣 も 薄 く 、 一 朝 の 風 の 前 に 、 落 菓 食 不 し 之 、 松 吹 嵐 、谷 の 音 、 憂
X
月の
こよ
世 の 夢 の 、 さ め *'^と 、 な き 人 を と ふ た び こ と に 、 そ て な る 月
も、 ぬる
むかしみし、
くらむ」
寂 莫 の 、苔 の 岩 戸 の 、 露 け さ に 、 なみたの雨の、 ふらぬ日そ
なき
所 院 の 石 の 壁 に 、 書 付 ら る 乂 を 、 君、 限 な く 敷 感 在 て 、 新 古今
了
夫、春
秋
夜
長
物
語
II
片仮名古活
一一ノ ホ ル ハ 、 上 求 菩 提 ノ 、 機 ヲ ス 、メ 、 秋
クタルハ、 下 化 衆 生 ノ 、 相 ヲ 顕 ス 、 天云事ナクシ
ノ 花 ノ 、樹頭
版字
三四四
壮年ノ比、花ノ散、葉ノ落ルヲ見テ、 ネヌ夜ノ夢ヤ、覚 タ リ
ケ
テ、物 ト ミ ナ 是 ヲ 示 ス 、 人 心 ア リ 、任 運 ト シ テ 、 豈勤メサラン
月ノ 、水 底
ニ入ナカラ、 明 暮 ハ 、 但 名 聞 利 欲 ニ ノ ミ 走 テ 、 出 離 生 死 ノ
ン、 コ ハ ソ モ 何 事 ソ ヤ 、 我 適 、 俗 塵 ノ 境 ヲ 離 レ テ 、 釈 氏 ノ 門 室
ヒナ
ヒケ」
レ .ハ 、
ルカ、
レ ハ 、ヤ カ テ 、
ヤ、若 有 人 、 人 間 ノ 八 苦 ヲ 見 テ 、 献 穢 土 時 ハ 、 煩悩則菩提トナ
ニケ
ニ、 怠 リ ヌ .ル 事 ノ 、 浅 猿 サ ヨ ト 、 思 フ 心 出 来
テ 、 柴 庵 ヲ ム ス マ ハ ヤ ト 、思
山
ヲモトメ
ル 、 天 上 ノ 五 衰 ヲ 聞 テ 、 求 浄 土 時 ハ 、 生 死 則 涅 槃 ト ナ ル 、 爰ニ
山ノ奥
諸 仏 菩 薩 、順 逆 ノ 化 導 ヲ タ ル 、日 、 有 罪 ヲ ハ 、邪 ヨ リ 正 ニ ィ レ 、
石流ニ、古緑ノ繁 ク 所 ハ 、 人毎ニ、離 レ カ タ キ 、 習
朝々暮々風塵底失脚誤生三十年
動 キ 、 言ノ外ニ、 顕レケルニヤ
レハ、 心 計 ニ 有 増 テ 、 徒 ラ ニ 、 月 日 ヲ ソ 送 リ ケ ル 、 其 心 、 内 一
醫 王 山 王 ノ 、 結 縁 モ 捨 カ タ ク 、 同 朋 同 宿 ノ 名 残 モ 、 イ ト 、惜 ケ
ヨリ
無 縁 ヲ ハ 、 悪ヨリ善一一、 誘 ィ 給 フ 、 以 何 云 ト ナ ラ ハ 、 経 論 ノ 所
ハ、 面 々 枕 ヲ 峙
説 、 書 伝 等 ニ ノ ス ル 所 ハ 、 事 シ ケ 、 レ ハ、 申 —詞 タ ラ ス 、近 来 、
耳ニフレシ事ノ、余ニ哀 ニ モ 、 タットカリシカ
裏余白)
テサセ給へ、老 ノ 寝 悟 一、 秋 夜 ノ 長 物 語 、 一 申 侍 ラ ン 」 (第一
丁
何日人間栄辱眼悠然禅搨看雲眠
(
榻 力)
是 程 ニ 、 思 立 ヌ ル 事 ノ 、 カ ナ ハ ヌ ハ 、 何 様 、 邪 魔 外 道 ノ 、 我ヲ
障 ル ニ ヤ 、 サ ラ ハ、 仏 菩 薩 ノ 、 擁 護 ヲ 憑 テ 、 此 願 ヲ 、 成 就 セ ハ
一 心 ニ 誠 ヲイタシテ、 道 心 堅 固 即 證 無 上 菩 提 ト ソ 、 祈リケル
七 日 満 シ ケ ル 夜 、、礼 盤 ヲ 枕 ト シ テ 、 少 マ ト ロ ミ タ ル 夢 ニ 、 錦 ノ
ヤ ト 、 思 ヒ ツ 、、 石 山 ニ 参 テ 、 一 七 ケ 日 カ 間 、五 体 ヲ 地 ニ 投 テ 、
人 二 .テ ソ 有 ケ ル 、 内 ニ ハ 玉 泉 ノ 流 ヲ 汲 テ 、 四 教 三 観 ノ 月 ヲ ス マ
戸張ノ内ヨリ、容顔美麗ナル児ノ、云計ナク、勝ヤカナルカ、
シ人ハ、 元ハ、北 嶺 東 塔 ノ 衆 徒 、勧 学 院 ノ 宰 相 律 師 桂 海 ト 、 云
ハ
一
一黄 石 力 路 ヲ 踏 テ 、 曩 沙 背 水 ノ 風 ヲ 挙 タ リ 、 サ レ ハ 、
力 チ ニ 、 縫 物 シ タ ル 水 于 ノ 、 遠 山 桜 ニ 、 花 ノ ニ タ ヒ 咲 テ 、 雪ノ
立 山 テ 、散 」マ カ イ タ ル 、 花 ノ 木 陰 ニ 、 立 ヤ ス ラ イ タ レ ハ 、 青 葉
シ、 外
ノ刃ノ上1
、忿 怒 ノ 勇 鋭 ヲ 振 フ 、誠一一、 真 俗 倚 頼 、 文 武 ノ 達 人 ナ
或 時 ハ 、忍 辱 ノ 衣 ノ 下 一 一 、摂 受 慈 悲 ノ 玉 ヲ ツ 、ミ 、 或 時 ハ 、 摧 伏
後堀河院ノ御宇>
1
、西山ノ瞻西と人ト聞へテ、道 学 兼 備 タ リ
秋夜長物語
!|
力 ニ 、ケ マ ワ シ 、深 ク 、 タ ヲ ヤ カ ナ ル カ 、 人 有 ト モ 、」シ ラ セ 給 ハ
二 八 計 ノ 児 、 水 魚 沙 水 于 ニ、 薄 紅 柏 重 テ 、 腰 ノ マ ワ リ 、 ホ ケヤ
サ リ ケ ル ニ ヤ 、 簾 ノ 中 ヨ リ 、 庭 ニ 立 出 テ 、 雪 ヲ モ ケ ニ 、咲 タ ル 、
暮行気色一消テ、 見 ヘ ス 成 ヌ ト 見 テ 、 夢 ハ 則 覚 ニ ケ リ
下枝ノ花ヲ手折テ
降 力 、リ タ ル ヲ 、 袖 ニ ツ 、ミ ナ カ ラ 、 イ ツ チ へ 行 ト モ 覚 へ ス 、
ケヌ間ニ、立帰リヌ、外ヨリ可来物ヲ待様二、今ヤ道心発ルト
是則、 所 願 成 就 ノ 、 夢 想 ナ リ ト 、 嬉 ク 思 テ 、 マタ東雲ノ、 ア
アレ
降 雨 ニ 、 ヌルトモ手 ヲ ラ ン 、 山 桜 、 雲 ノ 力 へ シ ノ 、 風モコソ
ト 打 詠 メ テ 、 花ノ 下
1 ニ、 立 ヌ レ タ ル 姿 、 是 モ 花 カ ト 、疑 ワ レ テ 、
ル、 児 ノ 面 影 、 時 ノ 程 モ 、 身 ヲ ハ ナ レ ス 、 律 師 モ 、 誠 ノ 現 ナ ラ
ノ香ヲタキテ、仏前ニ向へハ、漢ノ李夫人ノ、返魂香ノ煙ニ咽
ネ ハ 、 詮 カ タ ナ キ 思 ニ 、 堪 カ ネ テ 、 扨 モ 、 シ ヤ 、 慰 ム ト 、 ー爐
カ ナ ト 、 雲 ニモ、 霞 ニモ、 カ ス ヘ キ 心 地 ナ ン シ ケ ル
花 ノ 露 ヲ 、 誘 フ 風 モ ヤ ア ラ ン ト 、 シ ツ 心 ナ ケ レ ハ、 覆 計 ノ 袖 モ
待 居 タ レ ハ 、猶 山 深 ク ス マ ハ ヤ ト 、 思 シ 心 ハ 打 失 テ 、 夢二見ツ
テ、 身 ヲ コ カ シ 給 シ 、 武 帝 ノ 御 思 モ 、 身 ニ シ ラ レ 、 空 山 ノ 花 錠
ヤ リ テ、花
ヲ 手 ニ 持 ナ カ ラ 、 懸 ノ 本 ヲ 廻 リ テ 、遙
アヤシケ二見
レハ、 巫 山 ノ 神 女 、 雲 ト ナ リ 、 雨 ト ナ リ シ 、 夢
心 ナ キ 風 ノ 、 扉 ヲ キ リ キ リ ト 、 吹 ナ ラ シ タ ル ニ 、明 ル 人 有 ヤ ト 、
a
ノ後ノ 面 影 一、 タ ツ キ モ シ ラ ス 、 歎 キ 給 ヒ ケ ン 、陽 臺 御 」涙 モ 、
ヒテ、 雲 底 ニ
ニ 歩 ミ 、ル フ サ ノ 如 ニ テ 、 ユ ラ ユ ラ ト 、 懸 タ ル 髪 筋 、 柳 ノ 糸 ニ
、 貌 ノ .
匂 、 云
打マトワレテ、引留タルヲ、見 力
テコ ソ 、 法 灯 頹 風 ニ 向 ヲ モ 、 排 ケ ン ス レ 、暮 待 程 ノ 、 露ノ身モ
其夜ハ、金 堂 ノ 縁 一、 ヒ レ フ シ テ 、 竟 夜 、 詠 佗 ヌ 」
覚へス
今ノ現一、 見 シ 夜 ノ 夢 ハ 、 打 忘 テ 、 日 暮 ケ レ ト モ 、 行 へ キ 方 モ
クヱナク、我 ヲ 迷 シ ツ ル 、 夢 ノ 姿 ニ 、少モタカワ
11
目付
山王ノ神託一、 吾 一 人 衆 徒 ヲ 失 フ ハ 、 三 尺 ノ 剣 ヲ 、 呑 カ 如 シ
余所ナラス
ス
計ナキ様、
ル、
ト、 悲 ミ 給 ヒ ケ レ ハ 、 我 力 離 山 ヲ 、 如 何 様 、 山 王 ノ 惜 ミ 思 食
〈リ タ
テ、道 心 ヲ 障 ケ サ セ 給 ニ ヤ 、仮 令 、左 様 神 慮 ナ リ ト モ 、命アリ
フテ、 又 石 山 へ ソ 参 リ ケ ル
少 ト 物 申 サ ン 、 トィへハ、 何 事 ニ テ 候 ヤ ラ ン ト テ 、 事ノ外ナル
ケ ル 、 是 ヤ 昨 日 ノ 御 児 ノ 、 童 子 ナ ル ラ ン ト 、 思 テ 、 立 寄 ツ 、、
童 子ノ、最清気 ナ ル 力 、 ヌキスノ水、捨 ントテ、門外ニ出タリ
夜 明 ヌ レ ハ 、 又、昨 日 ノ 所 ニ 行 テ 、御 坊 ノ 傍 ニ 、 \
ィミケルニ、
是 ヤ 夢 、 アリシヤ現、 ワキカネテ、何 ニ マ ヨ ウ 、 心ナルラン
アラシ 、 今 ハ ト 思 佗 テ 、 石 山 ノ 観 音 ヲ コ ソ 、 カ コ チ 申 サ メ ト 思
三 井 寺 ノ 前 ヲ 、 過 ケ ル ニ 、降 ト モ シ レ ヌ 春 雨 / 、貌 ニ ホ ロ ^ * ト
力 、リ ケ レ ハ 、 且 ク 立 寄 テ 、 晴 間 ヲ マ タ ン ト 、 思 ツ 、、 金 堂
梢 、 垣 ニ ア マ リ テ 、 雲 ヲ 布 ケ リ 、 遙 カ 二 人 家 ヲ 見 テ、 花 ア レ ハ
ノ方へ行処ニ、聖 護 院 ノ 御 坊 ノ 庭 一、 老 木 ノ 花 ノ 、 色 コ ト ナ ル
則 入 、 ト 云 フ 、 詩 ノ 心 ニ ヒ カ レ テ 、 門 ノ 傍 ニ 、 立 寄 タ レ ハ、 齢
三四五
気色モナシ
律 師 、 嬉 ク 思 テ 、 昨 日 、 此院家一一、 水 魚 沙 水 干 メ サ レ テ 、 御
年 ノ 程 、十六七計ニ、見 サ セ 給 フ 、御児ノ御事ャ、 知セ給テ候
ト 、 問 ケ レ ハ 、 童 子 打 咲 テ 、 吾 コ ソ 、 其 御 方 二、 召 仕 ハ レ 候
者」テ
一候 、 御 名 ヲ ハ 、 梅 若 公 ト 申 候 、 御 里 ハ 、 花 菌 ノ 左 大 臣 殿
ニテ、 御 座 侍 リ 、 御 心 、 ワ ク カ タ ナ ク 、 基 ナ キ 、 御 心 ア テ ニ テ
候 へ ハ 、 ー寺ノ老僧、 若 輩 、 春 一 ヲ ク レ タ ル 、一 木 ノ 花 ヲ 見 テ 、
ノ 内 ニ 向 テ 、詩 ヲ 作 リ 、 歌 ヲ読 テ 、 等 閑 ニ 、 日 ヲ ク
舞 ノ 席 ナ ラ テ ハ 、 輙 ク モ 御 出 候 ハ ス 、 何ト
外 ニ 散 ル 心 モ ナ ク、
中
秋
ノ月ノ、 ク マ ナ キ 1
、皆吾家ノ光ヲ諍
フ 風 情一
一テ 、御 座 」候 ヲ 、 此 御 所 ノ 御 在 様 、 余 一
一許 ス 方 ナ ク 、 御
ナ ク、
深
窓
渡 リ 候 程 ニ 、管
絃
哥
三四六
立 ソ フ 雲 ノ 、 力 、ルマヨ
一
一
、
程 、 言 ノ 葉 ハ、 ク ロ ミ 過 ル ト モ 、 尽 シ カ タ ケ レ
ホへヌ由ヲ、語リケレハ、先御文ヲ給リ候へ、申入テ見候ハン
サテ、梅 若 君 一、 思 ヒ 迷 へ ル 、 心 ノ 闇 、 イ ツ ハ ル ヘ シ ト モ 、 ヲ
ト ソ 、 申ケル
思フ心ヲツクス
知 セ ハ ヤ 、 ホ ノ ミ シ 花 ノ 、面 影
ハ、 中 々 歌 計 ニ テ
Vヲ
童 子 、 文 ヲ 懷 ヨ リ 、 取 出 シ テ 、 是 御 覧 候 へ 、 何 ソ ヤ 、 雨 ノ夕 ノ
ラセテ、 人 シ レ ヌ 、 思 ヒ ソ メ ケ ル 、袖 ノ 色 モ 、 ハヤ紅フカクナ
花 ノ 本 ニ 、 立 ヌ レ テ 、御 渡 リ 候 ヶ ル ヲ 、有 人 、髡 髴 ニ 、見マイ
リテ、裹 ヵ ネ タ ル 様 ニ 、見 へ 候 ト 、申 シ ヶ レ ハ 、梅 若 君 、貌 打
ア カ メ テ 、 文 ノ紐ヲ 、 ホ ト カ ン ト シ 給 フ 処 ニ 、 出 世 ナ ル 、 某 /
テ 、 袖 ノ 中 へ 、 押 カ ク セ ハ 、 桂 寿 ハ 、 時 節 ア シ 、ト 、隙 ヲ 待 テ 、
僧都トヤラン云人、 簾ヲ挙テ、 中へ 入 ニ 、 此 文 ヲ 、 見セシト
ラシ、 夜 ヲ ア カ サ セ 給 フ ト ソ 、語リケル
律 師 ハ 、 聞 ニ ツ ケ テ 、 心 ゥ カ レ ヌ レ ハ 、 _ テ、 此 童 子 ヲ 便 リ ニ
日 暮 ル 、 マ テ 、 祗 候 シ タ ル ニ 、書 」院 ノ 窓 ヨ リ 、 御 返 事 、 指 出 シ
二、 律 師 、 目 モ ア ヤ ニ 悦 ヒ テ 、 誠 ニ 身 モ ア ラ ヌ 様 ナ リ
給 タ レ ハ 、 童 子 、 ト ル 手 モ 軽 ク 、 嬉 ク 思 テ 、急 キ 持 テ 、行タル
テ、 壺 ノ 石 文 ノ ツ テ ニ テ モ 、 心 ノ 奥 ヲ 知 セ ハ ヤ ト 、 思 へ ト モ 、
余 ニ ヒ タ 、ケ タ ラ ン 熊 モ 、 石 流 ナ レ ハ 、石 山 へ ハ 参 ラ ス シ テ 、又
(
態力)
是 ヨ リ 吾 山 へ ソ 帰 リ ケル
披 テ 見 レ ハ 、是 モ 言 葉 ハ 、 サシモ多カラテ
タ ノ マ ス ヨ 、 人 ノ 心 ノ 、 花 ノ 色 ニ、 ア タ ナ ル 雲 ノ 、 力 、ル 思
シ、 思 ヒ ア 力 シ ケ ル カ 、 聖 護 院 ノ 、 御 坊 ノ ア タ リ
律師ハ、夢ト現トノ面影」
一、 ヲ キ モ セ ス 、 ネ モ セ テ 、 歎 キ ク ラ
ヒハ
昔シ知タ
一
一
、
ル人ノ有ケルヲ、尋出シテ、或時ハ、詩歌ノ会ニ事ヲヨセ、或
ハ、 暫 ハ 、 ア タ リ ノ 宿 二 、 留 リ テ 、 尚 モ 、 3 ソ ナ カ ラ 、 ソ .ナ タ
キ 、 心 地 モ セ ス 、 ア イ ミ ヌ 前 ノ 別 レ モ 、 セ ン 方 ナ ク 、 覚 へ シカ
律 師 、 此 御 返 事 ヲ 見 テ 、 心 イ ト 、ゥ ヵ レ シ 力 ハ 、 更 ニ 立 帰 ル へ
時 ハ 、 酒 宴 ニ 興 シ タ ル 体 ニ テ 、 一夜ニ夜ヲ明ス事、度々ニ成ニ
ケリ
カ タ ラ イ ヨ リ テ 、茶 ヲ 飲 、 酒ヲ勧メ
一
一
、
テソ、遊 ヒ ケ ル 故 一、 童 子 」 モ 、ヨ ロ ツ 心 ヲ 、へ タ テ ヌ 様 ナ リ 、
其後、先ノ童子、桂 寿
ノ 梢 ヲ タ ニ 見 ツ 、 、 暮 サ ハ ヤ ト 、 思 へ ト モ 、 余 ニ ソ レ モ 、 ヒタ
御 所 ノ 傍 ニ 、 知タル坊 ノ 候 へ ハ 、其 所 一、 暫 ク 、 御 渡 リ 候 テ 、
ノ身ヤ
、ケ タ
玉簾ノ隙ヲモ、御 心 一力ケラレ候へト、童 子 、頻 一誘引ハ、 思
レ ハ 、 又 コ ソ 、 参 リ 候 ハメト テ 、 童 子 ニ 暇 乞 シ テ 、 律 師
ハ、 山 へ 帰 リ ケ ル 力 、 一 足 歩 テ ハ 、 見 力 ヘ リ 、 二 足 歩 テ ハ 、 立
桂 寿 、 シ ハ シ ノ 程 ノ 、 宿 カ リ テ 、 ア ル 坊 ノ 学 文 処 ニ 、 置タレ
方 ニ 、心引レテ、律 師 、又 三 井 寺
行
一
一ヌ
留 リ シ ケ ル 程 ニ、 春 ノ 日 、 長 ト ィ へ ト モ 、 程 近 キ 、 坂 本 ノ 里 坊
ハ、 ソ コ ノ 坊 主 、 懇 切 ニ モ テ ナ シ 、 常
リ
ク、 行 テ ハ 帰 リ 、 還 リ テ ハ 往 ク 、 漸 ク 日 数 モ 、 十 日 計 ニ 成 ニ ケ
我 方 ニ ア ル 契 ニ テ 、 人 ノ 情 ヲ コ ソ 、 命 ニ セ メ ト 思 へ ハ 、 足アユ
タル 心 尽 シ ヽ 見 モ 中 々 、 心 苦 シ ケ レ ハ 、 只 余 所 ナ カ ラ 見 計 ヲ 、
テ、 人 目 モ 哉 ト 、 求 メ タ ル 様 ナ レ ト モ 、 カ ナ ハ テ 、 出 力 」 ネ
栽 ノ 草 ノ 底 ニ 、 隠 レ 居 タ レ ハ 、 若 君 モ 、 早 ヤ 心 得 タ ル 、 気色ニ
ヲ 云 テ 、 夜一一ナレハ、 院 家 ノ 傍 一立紛レ、 築 山 ノ 松 ノ 木 陰 、 前
律 師 ハ 、所 願 ノ 事 ア リ テ 、新 羅 大 明 神 一、 一 七 日 、 参 籠 ス ル 由
管 絃 ヲ シ 、褒 貶 ノ 哥 合 ナ ト シ テ ソ 、 日ヲ送ケル
、
>一児 達 余 多 出 シ ツ 、、
迄 モ 、 行 ツ カ テ 、 日 暮 ケ レ ハ 、 戸 津 ノ 辺 ニ ア リ ケ ル 、 埴 生 ノ小
屋 ニ ソ 、 留リケル
付
一
一タ ル カ 如 ク 、 ワ レ ナ ラ ヌ 心 ニ 、 弓 ト
終 夜 、 思 ヒ 明 シ テ 、朝 」ニ ナ レ ハ 、 山 へ 登 ラ ン ト テ 、 庭 マ テ 出 タ
レトモ、千 引 繩 ヲ 、腰
、メ ラ レ テ 、 戸 津 ヨ リ 、 又 大 津 ノ 方 へ ソ 、 ア コ カ レ 行
雨 シ メ ヤ カ ニ 、降 ケ レ ハ 、簑 笠 打 著 テ 、旅 人 ノ 姿 ニ 、 身ヲヤツ
シ ツ 、、 行 所 ニ 、 傘 サ シ タ ル 、 騎 馬 ノ 若 党 二 、 行 相 タ リ 、 誰 レ
ナルラント、見 ヤ リ タ レ ハ 、桂寿ニテソ有ケル
律師ヲ見テ、 アナ不思議ヤ、申ヘキ事有テ、 シラヌ山迄モ、尋
参 ラ ン ト シ ツ ル ニ 、嬉 モ 是 二 テ 、参 合 タ ル 物 哉 ト テ 、 馬ヨリ飛
ハ、 吾 力 山 へ 、 帰 リ ナ ン ト 、 思 ヒ ケ ル 処 ユ 、童 子 来 テ 申 ケ ル ハ 、
何 迄 ト 、人ハィ へ ト モ 、余 ニ 長 居セン事モ、 石流ナレハ、 明日
下 テ 、 律 師 力 手 ヲ ト リ テ 、 傍 ナ ル 辻 堂 ニ ソ 、 立寄ケル
扨 テ 、 何 事 ニ テ 力 候 ト 、 問 へ ハ 、童 子 、 懷 ヨ リ 、 色 殊 ニ 、コカレ
今宵コソ、 アノ御所へ、京ヨリ客人、御入候テ、御 酒 宴 一テ候
タ ル 、 紅 葉 重 ノ 、 薄 様 ノ 、 觸 タ ル 手 サ へ、 ク ユ ル 計 ニ、 匂 ヒ タ
ニテ、 尋 ネ マ イ レ ト 、 仰 セ 候 ツ ル 、 ケ シ カ ラ ヌ 、 御 心 迷 ソ ヤ 、
ル 、 文 ヲ 取 出 シ テ 、 何 ナ ル 山 ニ 、 踏 迷 ト モ 、 キ 、 シ ヲ 、 シルへ
サ 、テ 、 御 待 候 へ ト 、 急 シ ケ ニ 云 捨 テ ソ 、 帰 リ ケ ル
モ、 ヲ ホ ヘ ス 、 更 行 鐘 ノ 、 ツ ク く ト 、 月 ノ
南 -一 転 ル 迄 、 待 力
律 師 ハ 、 是 ヲ 聞 ヨ リ モ 、 心 ウカレ 、 魂 乱 レテ 、 何 一 一 ア ル 我 身 ト
ツル程
門 主 モ 、 痛 ク 酔 セ 給 テ 候 へ ハ 、深 過 ル 迄 、 伺 候 セ ヨ 、
>1、
召 具 セ ラ レ テ 、 是 へ 忍 ヒ ヤ カ ニ、 御 出 候 へ シ ト 、 仰 ラ レ 候 、 門
ミ コ シ 、 我 心 サ へ、 ウ ラ メ シ
マ シ テ 一 夜 ノ 後 ノ 御 袖 、 サ コ ソ ハ 露 ニ 、 ヌ レ 」 候 ハ ン ト 、 云ヒ
r
タ ノ
ケ レ ハ 、 律 師 モ 、 責 テ 別 ヲ 歎 ク 身 ナ ラ テ ト 、 打 咲 テ、 文 ヲ 見 レ
\
偽 リ ノ 、 アル世ヲシラテ、
三四七
ネタル処一、 唐 垣 ノ 戸 ヲ 、 人 ノ 明 ル 音 ス レ ハ 、 書 院 ノ 、 椹 障 子
門ノ唐居敷ノ上一一、 立テ居タル処ー一、 童 子 又 来 テ 、 御 文 ト テ 、
律 師 ハ 、御 児 ヲ 送 テ 、出 タ リ シ 、 暁 ノ 儘 ニ テ 、
未タ内へモイラス、
命 モ 有 へ シ ト ハ 、 ヲホヘス
三四八
ノ ヒ マ ヨ リ 、 遙 ニ 見 出 シ タ ル ニ 、 例 ノ 童 」子 、先 ニ 立 テ 、 魚 脳 ノ
指出シタリ
燈爐一一、 螢 ヲ 入 テ 、 炬 ト シ 、 其光幽朧 ナル一一、若 君 、 金
紗ノ水
披 テ 見 レ ハ 、 詞 ハ サ シ モ 多 カラ ス
リ香ヲ 已カ物カラ、形 見 一
一テ 、 山 へ 帰 リ タ レ ト モ 、 心 シ ホ レ 、
マ'
律 師 ハ 、 夢 ト タ ニ 、 思 ヒ ヮ ケ サ ル 面 影 、身 ニ 觸 ツ ル 、袖ノ■
ゥツ
リ ノ 、 袖 ノ 露 、 ハ ラ ハ テ イ ク 夜 、 歎キ
色 計 ア ル 由 ヲ 、 シラセタリ
魂 ゥ カ レ テ、 万 ノ 事 、 人 ノ 物 云 ヒ カ ハ ス モ 、 返 事 モ セ ス 、 只 位
明サン
トモ二見シヽ月ヲナコ
律 師 、 書院一一帰リテ、 カ ク 計
我 袖 ニ 、 ヤ ト シ ヤ ハ テ ン 、 衣 々 ノ 、 涙 ニ ワ ケ シ 、在 明 ノ 月 」
干 、 ナヨヤカニ'
、 打 シ ホ レ タ ル 体 ニ テ 、 見 ル 人 モ 有 ヤ ト 、 懸ノ
ニ、 律 師 、イ ツ シ カ 、ホ レ *
'
^
^
^
ト成 テ 、 アルモアラレヌ様ナリ
本 ニ 立 ヤ ス ラ イ タ ル ハ 、 乱 レ テ 力 、ル 青 柳 ノ 、 イ ト 、乱 レ タ ル
ヲ、 ホ ト ^ ^ ト 扣 キ テ 、 是
童 子 、先 内 入 テ 、 螢 ヲ ハ 、 紗 窓 ノ軒 、 簾台 一力ケテ、 書 院 ノ 戸
御
一
一渡 リ 候 ヤ ラ ン ト 、 案 内 ヲ 申 ケ レ
童子、又 庭 一立帰リ、 早 ト 申 セ ハ 、 御 児 先 一立テ、 妻 戸 ヨ リ 、
ハ、 律 師 、 答 へ キ 様 ヲ シ ラ テ 、 少 シ,
傍 ニ、 身 ヲ ソ ハ メ ツ 、、 気
内 へ 入 セ 給 ヌ 、指 モ 間 遠 ナ ラ ス 、 寄 添 テ 、 袖 打 力 タ フ ケ タ レ ハ 、
ハ、 少 シ 労 ル 事 ア リ ト 、 披 露 シ テ 、 人 ニ 対 面 モ セ ス 、 伏 沈 ミ テ
ト シモ、覚 へ ヌ 涙 、人 目 ニ 余 リ テ 、 押 ル 袖 モ 、 朽ハテヌへケレ
ソ、 日 ヲ 送 リ ケ ル
嬋 娟 タ ル 秋 ノ 蝉 ノ 、 ハ ツ モ ト ヱ イ 、 宛 転 タ ル 娥 眉 ノ 、黛 ノ 匂 ヒ 、
書 ト モ 、 筆 ニ モ 及 ヒ カ タ ク 、語 ト モ 、 詞モナカルヘシ
花 ニ モ 嫉 マ レ 、 月 ニ モ 妬 マ レ ヌ ヘ キ ヽ 百 ノ 顔 セ 、 千 ノ 媚 、 絵ニ
サヌニ、 閨 冷 ク シ テ 、蘭 風 ノ 夢 、 覚 ヤ ス ク 、春 尽 テ 、連理ノ花
ヮ シ マ ノ 、 水 ノ 流 モ 、 末 タ ヘ ス 、 猶 契 ル ヘ キ 、 睦 語 モ、 マタ尽
給 ケ ル 力 、余 リ ニ 、 日数 へ ニ ケ レ ハ 、童 子 ヲ 呼 寄 テ 、扨 モ 、有
打 シ ホ レ 給 ヘ リ 、今 モ ヤ 、音 信 ノ 有 ト 、 暫 ク ハ 、 心 ニ 籠 テ 、待
誠 ニ 覚 束 ナ ク 、 心 苦 シ キ 事 ニ 、 思 ヒ ク ツ ヲ レ テ 、気 色 常 3リ モ 、
童 子 、 此 由 ヲ 伝 へ 聞 テ 、 若 君 ニ 、 カ ク ト 語 リ 申 ケ レ ハ 、若 君 モ 、
ノ 離 レ 、 留 メ カ タ ケ レ ハ 、 小 條 ー 節 モ 、明ヌト出ロル、 鳥ノ立日モ、
ハ、 誰 カ 方 ノ 、 難 面 ニ 成 」テ 力 、其 儘 ニ 、 鑛 テ ハ 、 遠 サ カ リ ハ ツ
シ 夜 ノ 、 夢 ノ タ 、チ 現 ス タ ナ キ ニ 、 驚 ス 便 リ モ 無 テ 、 程 へ ヌ レ
泪 ト 」 俱一一、 ム ス ホ 、レ シ 、 心 ノ 下 紐 、打 ト ケ テ 、小 夜 ノ 枕 ヲ 力
マ'
ノ 月 、 窓 ノ 西 ヨ リ 、 狼 ナ ク 指 入 タ ル -、ネ ミ タ レ 髪 ノ 、ハラ^ ^
ン、 若 基 ナ ク 成 ナ ハ 、 空 シ キ 跡 ヲ 問 テ モ 、 其 甲 斐 ナ カ ル ヘ シ 、
ヘキ、 風 ノ 心 地 ト ヤ ラ ン 、 聞 シ カ ハ 、 露 ノ 命 モ 、 イ カ 、成 ヌ ラ
ウ ラ メ シ ク 、已 カ 衣 々 、冷 力 ニ ナ リ テ 、立 別 レ ナ ン ト ス ル ニ 、明 方
マ'
ト 、 懸 リ タ ル 迦 ヨ リ 、 眉 ノ 匂 ヒ 、 ホ ケ ヤ カ ニ 、 髡 髴 ナ ル 、 顔ノ
香 セ 、 色 深 ク 見 へ タ ル 様 、別 レ ノ 後 ノ 面 影 一、又 逢 迄 ヲ 待 程 ノ 、
テ、
中ヲワケテ、片時力間ニ、大峰ノ、釈 迦 力 嶽 ト 云 所 一ソ、 舁 モ
ケ ル 、 石 ノ籠ノ内ニ、押 コ メ
見 ス 、 道 俗 男 女 、 其 数 多 ク 有 ト 、 ヲホ
タ ミ タ リ
何 ナ ル 山ノ奥ナリトモ、尋ネ行ハヤト、 思 へトモ、申置事モナ
ヲタ」
テ来リケル
テ、 盤 石
ク テ 、 罷 出 ナ ハ 、 門 主 ノ 御 意 モ 、 サ コ ソ ト 思 ハ レ テ 、 其モ叶ハ
ア タ 人 ノ 、 只 云 捨 シ 言 ノ 葉 ヲ 、誠 ト 思 ヒ テ 、
爰ニ
ラ ヌ、
ス、 行 末 モ シ
置 タレハ、月日ノ光ヲモ
モアラシ、 先花菌ノ 左 苻 ノ 亭 へ 押 寄
m
シケルハ、寺 門恥辱、 是 一過へカラス、 所 詮 、 次 ヲ 以 テ 、 当 寺
園城寺ノ衆徒、是 一モ猶、 墳 リ 散 セ ス シ テ 、 一 山 一 同 ニ 、 僉 議
宅 、 三 条 京 極 へ 押 寄 テ 、 一宇モ」 残 サ ス 焼 払 フ
テ、 恨 ミ 申 セ ト テ 、 御 門 徒 ノ 大 衆 、 五 百 人 、 白 昼 一、 左 苻 ノ 住
臣 殿 モ 、存 給 ハ ヌ 事 ハ 、
墳 斜 ナ ラ ス 、 山 門 へ 、押 寄 ス ヘ キ 事 ハ 、 叶 フ へ カ ラ ス 、 父ノ大
何 様 勾 引 ヒ シ テ ン ケ リ ト 、 院 家 ノ 周 章 、 申一一及ハス、 一 寺 ノ 欝
サ テ ハ 此 間 、 連 々 、忍 ヒ テ 、云 カ ワ ス 、 山 徒 ノ 有 ト 、 聞 へ シ カ 、
ノ方 へ ソ 、 御 渡 リ 候 シ カ ト ソ 、 語リケル
左様ノ少人コソ、童子一人召具シテ、昨 夜 、戌 ノ 尅 計 1
、唐 崎
ナカリケル処ー一、 東 坂 本 ヨ リ 、 大 津 へ 通 ル 、 旅 人 ノ 有 ケ ル 力 、
御歎キアリテ、到ラヌ猥モナク、御尋有ケレトモ、知人更ニ、
其 夜 ヨ リ 、若 君 ノ 失 セ 給 ヒ ヌ ル 事 、只 事 ナ ラ ス ト テ 、 門 主 大 ニ 、
へテ、 只 声 ノミソ 聞 へ ケ ル
我 二 心 ヲ 付 シ モ 、 誰 セ シ 熊 ソ ヤ 、 今ノ程一一、 我 ヲ シ ル ヘ シ テ 、
何 ナ ル 、虎臥野辺、鯨鯢寄浦ナリトモ、 尋 ネ ユ ケ ト 、 カコチ給
ヒテ、 1
候 ヲ ハ ラ ^^^ト 、 コ ホ シ 給 フ
未 タ 幼 稚 、 ア タ シ 心 ニ モ 、 又 想 ヒ ヲ 付 ヌ ル ハ 、 熊モナ
一
一
、
キ習ヒ、実モ理リ哉ト、童 子思知テ、其人ノ在所ヲハ、委ク承
右 流
リ テ 候 、 御 供 申 候 ハ ン 、 御 所 ノ 御 意 、 ア シ ク 候 ハ 、、 後一ー何ト
モ、 申 サ セ 給 ヒ 候 ト テ 、 児 ト 童 ト 只 二 人 、 行 ヘ キ 方 モ シ ラ ス 、
立出給ヒケリ」
抑 、若 君 、 元 来 ハ 、 三 台 九 棘 ノ 、家 ニ 生 テ 、 香 車 宝 馬 ノ 、乗物
ナラ テ ハ 、 仮染一一モ、 未 タ 泥 土 ヲ 、 踏 給 事 ナ ケ レ ハ 、御 手 ヲ 引 、
童サへ、 歩ミカネ侍ケリ、 桂寿、 申ケル様ハ、 何ナル天狗、
、 年 ィト 闌 タ ル 、 山 伏
処一一
妖 物 ナ リ ト モ 、 我 等 ヲ 取 テ 、 比 敷 山 へ 、 ノ ホ セ ヨカシ ト 云 テ 、
唐崎ノ松ノ木隠ニ、 ヤスラィ居タル
ノ、 四 方 輿 一、 乗 タ ル カ 、 輿 ヲ 前 ニ 、 舁 居 サ セ テ 、 是 ハ 何 ク ヨ
ヲ城郭ニ構へ、 三摩耶戒壇ヲタテハ、山門定テ、 ヨ セ ン ス ラ
ン、 是則地ノ理一一付テ、 敵 ヲ 亡 ス 、 謀 計 ナ ル ヘ シ 、 又 、 邪 執 退
へケリ
リ 、 何 方 へ 、 御 渡 リ 候 ヤ ラ ン ト 、 問 ケ レ ハ 、 童 、 有ノ 儘 一、 答
山 伏 、 輿 ヨ リ 下 テ 、 吾 コ ソ 、 御 尋 候 坊ノ隣家へ、 罷登物ニテ
モ遅疑スへ カ ラ ス ト テ 、 一味同心ノ衆徒、 三 千 余 人 、 如意越ノ
路 ヲ 、 所 々 堀 切 、 麓 一 一 逆 茂 木 ヲ 引 'ゾ 、垣 繁 ク 結 廻 シ 、三 摩 耶 戒
ケテ、戒 法 ヲ 持 ツ 、道 タ ル ヘ シ 、 天 コ ト ニ 、時 ヲ 与 へ タ リ 、 暫
雲霧ノ
.
候 、 余 ニ 御 痛 敷 、 見 マイラ セ 候 へ ハ 、 我 ハ 歩 行 一テ、 歩 ミ 候ハ
湖 水 ノ 上 、 忙 々タル、
ン、 此 輿 ニ 、 召 レ 候 へ ト テ 、 児 ト 童 ト ヲ 、 舁 ノ セ テ 、 力 者 十 二
人 、 島 ノ 飛 如 クニ テ 、 漫 々タル、
三四九
.壇 ヲ ソ 、立ニケル
山 門 、 是 ヲ 聞 テ 、 ナ シ カ ハ 、 蜂 起 セ サ ル ヘ キ 、戒 壇 ノ 事 ニ 依 テ 、
マ、
‘園 城 寺 へ 発 向 ス ル 事 、 以 前 已 ニ 、 六 ケ 度 也 、 公 家 ニ 奏 シ 、 武 家
〜
ニ訴ル迄モ、 アルへカラス、時 ヲ ゥ ツ サ ス 、 押 寄 テ 、 焼払へト
三五〇
ヲ
、シ マ ス 、入
替 々 々 、
切ノ荒讃岐、金マタノ悪大夫、 八方破ノ武蔵坊、 三町飛礫ノ経
ー坊 、 提 切 好 ノ 増 長 、 其 外 ノ 人 数 、 身 命
ヨ セ テ ハ 、 多 勢 ナ レ ハ 、 討 ル 、ヲ モ イワス 、手 負 ヲモ 顧 リ ミス、
責戦フ
相 戦 、 然 ニ 禦 キ テ ハ 、 案 内 者 ナ レ ハ 、 コ 、力 シ コ ニ 、 寄 合 テ 、
ニ、
落へシトハ、見へサリケリ
マハシテ、 切 テ 出 ル 、 カクテハ、 此 城 、 尽 未 来 際 ヲ 経 ル ト モ 、
半 死 半 生 ニ 、 ナリケレハ、城 中 ノ 者 ト モ 、 勝 二 乗 テ 、 手サキヲ
テ 、末 寺 末 社 、三 千 七 百 三 ケ 所 へ 觸 遣 ニ 、 先 近 国 ノ 勢 ト モ 馳 集 、
S
是 ニ 勝 レ タ ル 吉日、
追 立 々 々 、 切 テ 廻 ル 事 、 三 時 計 ナ リ 、 寄 テ 、 三 千 余 人 、手 負 テ 、
ニ、 アタレリ、
都 合 其 勢 、 二 十 万 七 千 余 騎 ト 」 ソ、 註 シ ケ ル
十 月 十 四 日 ハ、 中 ノ 申 ノ 日
.
有 へ カ ラ ス ト テ 、 院 々 谷 々 ノ勢ヲ 、 七 :
ニワケ テ 、マタ卯ノ
リ 、 或 ハ 、 眇 々 タ ル 煙 波 、 湖 水 ノ 朝 ナ キ ー 一 、 船一一棹指、 大 衆 モ
押 寄 ル 、 或 ハ 、 漫 々 タ ル 、 志 賀 唐 崎 / 浜 地 、 駒 ニ 鞭 打 衆 徒 モア
テ 、 埋 タ ラ ン ニ 、ナ ト カ 此 」城 、 責 破 ラ サ ラ ン ト 、 飽 迄 、 荒 言 吐
爰ニ桂海、大 一 忿テ、 申 ケ ル ハ 、 幾 程 モ ナ キ 、 堀 ー ツ 、 死 人 —
テ 、 薬 研 堀 ノ 、 底 狭 ナ ル 中 へ 、 力 ハ ト 飛 下 リ 、 ニ丈余一一見へタ
アリ
カ ク テ 、 思 々 一 一 寄 ケ ル 、 其 中 —、 桂 海 律 師 ハ 、 此 濫 觴 ハ 、併 ラ、
ル 、切 岸 ノ 上 、濫 ノ 筹 ヲ 踏 へ テ 、 侧 上 リ 、 塗 ハ ス シ タ ル 壁 柱 ニ 、
ル武 者 トモ、 足 ヲモタメス、
追 立 ラレ テ 、 シトロモトロニ、落
搔 繩 、 十 文 字 、 四 角 八 方 ヲ 、 切廻リケルー一、 如 意 越 ヲ 、 禦 キ ケ
切、将棊倒ノ払切、礒打波ノマクリ切、乱 紋 、菱縫、蛛蜘手、
提 切 、 装 裳 懸 、 車 切 、 ソ ム ケ テ モ テ ル 一 刀 、 シサ リ テ 進 ム 追 懸
力 中 へ 、 只 一 人 乱 入 テ 、 火 ヲ 散 シ テ ソ 、 戦ケル
マ'
手カクルカト見ヘシ力、 ユラリト已往へ、刻越テ、敵三百余騎
マ'
一
一
、一 合 戦 シ テ 、 名 ヲ 後 記
我身ヨリ、起シ事ナレハ、人 ヨ リ 先
ニ、 留 メ ン ス ル 者 ヲ ト 、 思 ヒ テ 、 勝 レ タ ル 、同 宿 若 党 、 五 百 人 、
皆 神 水 ヲ 呑 テ 、マタ 東 雲 ノ ア ケ ヌ ニ 、 如 意 越 ヨ リ ソ 、寄 タ リ ケ リ
サル程一、 大 手 搦 手 、 城 中 、 都 テ 二 十 万 七 千 余 騎 、 同 時 二 、 音
ヲ 挙 テ 、 ヲ メキ サ ケ フ 、 大 山 モ 是 カ 為 二 崩 レ 、 湖 水 モ 傾 ヒ テ 、
忽 金 輪 際 ニ 落 ル カ ト 、 疑 ル 、 カクテ、 大勢乱レ入ル
テ行ク
サテ、 ヨ セ テ 一ハ、 先 、 東 塔 ノ 、 習 禅 、 禅 智 、 月 蔵 院 、 杉 生 、
最 勝 、 金 輪 院 、」妙 観 院 、 杉 本 、 山 本 、 西 蓮 坊 、 西 塔 二 ハ 、常 喜 、
続 テ 責 入 、 桂 海 力 同 宿 若 党 、 五 百 余 人 、 馳 散 テ 、 院 々 谷 々 —、
ハ、 金 堂 、
火 ヲ 懸 タ ル ニ 、 魔 風 頻 ニ 吹 テ 、 余 煙 四 方 ニ 、覆
講堂、 鍾楼、経蔵、常行三昧ノ阿弥陁堂、普賢行願ノ如法堂、
ヒ ケ レ
乗 実 、善明坊、南岸、 西明、行泉、行住、 上林坊、横川ニハ、
コレ ヲ 禦 ク 、 大衆一一ハ、 円 満 院 ノ 鬼 駿 河 、 当 院 ノ 天 狗 帥 、 千 人
善 法 、 善 住 、 般 若 院 、 三塔蜂起シーア、 義 ヲ 合 ス
御
J 坊一一イタル迄、
、
11 炭 灰 ト ナ リ ハ テ 、、新 羅 大 明 神 ノ 、
教 待 和 尚 ノ 御 本 堂 、智 證 大 師 御 影 堂 、両 門 跡 ノ
以 上 三 千 六 百 余 宇 、 一時
寂 漠 ノ 、 苔ノ 下
1 ニ、 袖 ヌ レ テ 、 涙 ノ 雨 ノ 、 力 ワ ク 間 ソ ナ キ
力 、リケル 処ー一、 淡 路 国 ヨ リ 、 進 物 ト テ 、 八 十 計 ナ ル 、 老 翁 ヲ
一 宵 ア リ テ 、 此 翁 、 児 ト 童 ト ノ 、 泣 悲 ム ヲ 見 テ 、モ シ 御 袖 ヤ 、ヌ
レテ候ト、 問ゲレハ、児 モ 童 モ 、 トモニ住馴シ所、仮染ニ立出
縛 リ テ 、 石 籠 ノ 内 へ ソ 、 入タリゲル
テ、 此 石 籠 ノ 内 ニ 、 押 籠 ラ レ テ 候 へ ハ 、 父 母 ノ 悲 ミ 、 師 匠 ノ 歎
社 壇 ノ 外 ハ 、 残 ル ー 宇 モ 、 ナ カリケリ
トモ、 集 リ テ 、 四 方 山 ノ 物 語 シ テ 、 咲 ケ ル 力 、 其 中 二 、 アル小
籠ニ押コメラレテ、明暮泣沈テ、 ヲハシケル処ニ、 無量ノ天狗
テ 候 ラ メ ト ソ 、 答へケル
キ 、 想 像 毎 ニ 、 泪 ノ ヲ チ ヌ 隙 モ ナ ゲ レ 」 ハ、 サ コ ソ ハ 袖 モ 、 濡
若 君ハ、 三井寺ノ、 加様ニナリヌル事ヲモ、 シラセ給ハテ、 石
論 、 ロンノ相撲ノ事出、 白川小童空印地、 山門南都ノ御輿振、
レテ参セント云テ、翁、此児ノ袖ヲ、絞リテアレハ、白玉力何
老 翁 、 大 ニ 悦 テ 、 左 候 ハ 、、 吾 ニ 取 付 セ 給 へ 、 輙 ク 古 郷 へ 、 ツ
夫狗ノ、申ケルハ、我等力、面白ト思事ハ、焼亡、辻風、小諍
リ ト 、 思 ヒ ツ ル ニ 、 昨 日 ノ 三 井 寺 ノ 合 戦 ハ 、希 代 ノ 見 物 カナ ト 、
、 是 ヲ 又 、 ニニワケ
テ、 左 右 ノ 掌 ニ 入 テ、 暫 ク 、 ユ ル カ シ タ ル ニ 、 ニノ 露 ノ 玉 、 次
ス ル ニ 、 露 ノ 玉 、 程 ナ ク 軸 ノ セイニナリヌ
ソト、 人 ノ 問 計 ノ 、 涙 ノ 露 ヲ 、 左 ノ 手 一入テ 、 薬 ヲ 丸 ム ル 如 ク
五 山 ノ 僧 ノ 門 徒 立 、 此 等 コ ソ 、 興 ア ル 見 物 モ 出 来 テ 、 一風情有
力出来ヘキ、 軍ノ最中ニ、 寺ノ門
H
申 セ ハ 、 側 ナ ル 天 狗 ノ 申 様 、 力 シ コ ク モ 、此 若 君 ヲ 取 奉 リ ツ ル 、
サラスハ、是程ノ軍、何 ユ
破テ、児ト童トノミナラス、 アラユル処ノ、
、 差 モ 義 ノ 天 狗 モ 、 怖 ワ ナ 、イ テ 、四 方 ニ 进 失 ケ レ ハ '
、
了
道 俗 男 女 ヲ 、 雲一一乗テ、 大 内 裏 ノ 旧 跡 、 神 泉 宛1 ノ ホ ト リ —ソ 、
竜王、石ノ籠ヲ
ヒラメク
第二、大ニナリテ、 石籠ノ中、 漫々タル、大水ニ成ニケリ
主 達 ノ 、 コ 、力 シ コ へ 、 迸 サ セ 給 シ カ 、 ヲ カ シ サ ニ 、 我 コ ソ 興
入テソ、
ハ、 ネ
タルソト、問へハ
ア リ サ マ ヤ 、 力 イツクリテ
カ ル 折 句 ノ 歌 ヲ 、 一」首 読 テ 候 ト イ へ ハ 、 座 上 ナ ル 天 狗 、 何 ト 讀
ノ、
此 時 、老翁俄一一、大竜一 一成テ、 雷 鼓 、 地 ヲ ゥ コ カ シ 、 電 光 、 天ニ
ソナク
ウ カリ ケ ル 、 耻 三 井 寺
ヲ ノ ミ
Hツホニ
リヌ
置 タ リ ケ ル 、 道 浴 男 女 ハ 、 是 ヨ リ ワ カ レ テ 、 巳 カ サ マ -^•ニ帰
ヘキ、 人 モ ナ シ
ノ 原 ト、成
三五一
へテ、 造 リ タ ル 、 宮 殿 、 楼 閣 、 皆 焼 野
ハ テ 、、 事 問
若 君 ト 童 子 ト ハ 、我 力 古 郷 ヲ 尋 テ 、花 菌 へ 行 給 へ ハ 、」差 モ 甍 ヲ 並
マ'
笑ケル
若君カク計
モニ、 打 佗 テ 、 泣 ヨ リ 外 ノ 、 事 ハ ナ シ
ニヤト、 思 召 ケ レ ト モ 、 委 ク 問 へ キ 、 人 モ ナ ケ レ ハ 、 只 童 ト 、
若君、 是 ヲ 聞 給 テ 、 穴 浅 猿 ヤ 、 サ テ ハ 三 井 寺 、 我 故 —
、 亡ケル
ト 読 候 ツル ト 、 語 レ ハ、 座 中 ノ 天 狗 ト モ 、 皆
|^
ブタナル人一、 事 ノ 様 ヲ 、 尋 ネ 給 へ ハ 、 左 大 臣 殿 ハ 、 公 達 ノ 若
三五ニ
先御文ヲ、見候ハントテ、披テ見レハ、 アヤシキ詞ノ歌ナリ」
泣 ケ ル 、 童 子 涙 ヲ 押 巾 、 此 間 有 ッ ル 事 トモ、 語 ラ ン ト ス レ ハ 、
君 ヲ 、比* 山へ、奪トラレサセ給テ候ヲ、御里ニシロシメサレ
ノ月
我 身 サ テ 、 沈 ミ モ ハ テ ハ 、 フヵ キ 瀬 ノ 、 底 マ テ 照 セ 、 山 ノ 端
了
ヌ事ハ、 アラ シ ト テ 、 三 井 寺 ヨ リ 押 寄 、 焼 払 テ 候 ナ リ ト ソ 、 語
テ候へハ、何事ヲモ、 道スヵラ、御 物語候へ、 先急キ参候ハン
メテ、 馳行ケル
ト テ 、 坂 本 ヨ リ 、 童子ヲ先一一立テ、 ト ル 物 モ 取 ヘ ス 、 馬 ヲ ハ ヤ
サ テ モ 何 ナ ル 恨 ミ ア リ テ 力 、 身 ヲ 投 サ セ 給 ヒ ッ ラ ン 、父 母 師 匠 、
大 津 ヲ 過 テ 、 行 処 ニ 、 旅 人 ノ 余 多 、 行 合 タ ル ヵ 、 穴 哀 ヤ 、此 児 、
旅 人 立 止 リ テ 、 只 今 勢 多 ノ 橋 ヲ 、渡 リ 候 処 二 、年 ノ 程 、 十六七
何 ニ 歎 キ 給 ハ ン ス ラ ン ト 云 ヲ 、ア ヤ シ 、ト 思 テ 、 委 ク 尋 問 へ ハ 、
向
>1 テ 、 手 ヲ 合 セ 、 念 仏 十 返 計 唱 へ テ 、 身 ヲ 投 サ セ 給 ヒ .
計ナル、御児ノ、紅 梅 ノ 小 袖 一、 水 干 ノ 下 計 、 メ サ レ テ 候 ッ ル
力、 西
テ候ッルヲ、余 一
一
御痛シク、見参セテ候シ程一、 我 等 脑 テ 、 水
ニ 入 、 其 辺 リ ノ 淵 瀬 ヲ 、 サ ヵ シ 求 レ ト モ 、終 二 見 へ サ セ 給 ハ 」ヌ
シケル
程 ニ 、 カ ナ ク 罷 過 候 ナ リ ト 、 語 リ テ 、 涙 ヲ ハ ラ く ト ソ 、 コホ
行 テ 見 ハ、 朝 暮 、 身 ヲ 放
心 ア キ レハ テ 、 !
!甓 、 鐘 テ 、 伏 沈 ム ヘ キ 心 地
モ童 子 モ、 ィ ト 、
旅 人 ノ語 ル 一 付 テ 、 年 ノ 程 、 衣 装 ノ 様 、 疑 フ 処 ナ ケ レ ハ、 律 師
馬 ヲ早メテ、橋 ノ ッ メ -一
、
添 テ 、 橋 柱 ニ 懸 ラレタリ
サテ、懸 サ セ 給 シ 、 金 襴 ノ 細 緒 ノ 御 守 一、 碧 溜 璃 ノ 、 小 念 珠 ヲ
スレトモ、
ア ラ シ ト 、 深 ク 思 定 給 フ 、 御 心 ア リ テ 、 ヨ シ ヤ 中 々 ニ 、 取止ム
律 師 ハ 、 童 子 ヲ 打 見 テ 、 更 ニ 物 ヲ モ 云 ヒ ヘ ス 、只 サ メ ^ ^ ト ソ 、
ケル
召 テ 、 消 息 遊 シ テ 、 童 子 ニ タ ヒ ゲ レ ハ 、急 キ 山 へ ソ 、 尋ネ登リ
ル人ナク、 思ノ儘ニ、何ナル淵河ニモ、身ヲ沈メント、嬉ク思
師 ノ 御 坊 ヲ 、 尋 申 候 ハ ン ト 、 申 ケ レ ハ 、 若 君 、 今 ハ 只 、 憂世ニ
詣 ノ 人 ノ 体 ニ テ 、 本堂一 御
I 座候へ、 某、 山門へ罷登候テ、律
律 師 ハ 、 色 ヲ 変 シ テ 、 是 御 覧 候 へ 、 御 歌 ノ 体 、 心 元 ナ ク 、 見へ
リケル
.
大 臣 殿 ノ 御 行 末 、委 ク 尋 ヌ ヘ キ 、便 リ モ ナ ケ レ ハ 、 サラハ三井
寺 ニ 往 、 門 主 ノ 御 事 ヲ 、 尋 申 サ ン ト テ 、 タトル^ ^ 、 童子ヲツ
レテ、 三 井 寺 ニ 行 テ 、 見 給 へ ハ 、 仏 閣 僧 坊 、 悉 ク 焼 払 へ ハ 、 閑
庭 ノ 草 ノ 露 ニ ナ キ 、空 山 ノ 松 風 ノ 吟 ス ル 、 是 ソ 住 馴 シ 、 昔 ノ 跡
ト テ 、 見 レ ハ 、 礎 へ ノ 石 モ 、 焼 研 テ 、 苔ノ一 下I モ、 紅 一変シ、 軒
端 ノ 梅 モ 、 枝 枯 テ、 袖 ナ ツ カ シ キ 、 風 モ ナ シ
物 毎 ニ 、替リ絶タル、世ノ有様、 只我ユへナリシ、事ナレハ、
.#慮 モ 、仏音 モ
1 、サ コ ソ 浅 猿 ク 覚 へ テ 見 ニ 、目 モ ア テ ラ レ ネ ト モ 、
石 流 年 久 ク 、」住 馴 シ 跡 ナ レ ハ 、 鱅 テ 見 捨 モ 、 余 波 惜 ク テ 、 其 夜
ハ、 新 羅 大 明 神 之 拝 殿 一 一 、 湖 水 ノ 月 ヲ 詠 テ 、 泣 明
主、 モシ石山ニヤ、御座有ラント、尋行タレトモ、是ニモ御
1
座 ナ シ ト 、 申 ケ レ ハ 、 童 子 申 ケ ル 様 ハ 、 左 候 ハ 、、 今 宵 ハ 、 参
P
モ 、 余 多 寄 テ 、取 止 メ ケ レ ハ 、美 サ ラ ハ 、 空 キ カ ラ タ ナ リ ト モ 、
律師モ童子モ、同 流 一、 身 ヲ 沈 メ ン ト 、 悶 焦 レ ケ ル ヲ 、 同 宿 ト
苔 ノ下ニ モ、 埋 レ ハ ヤ ト 思 へ ト モ 、 今 ハ ノ際ニ 、 連 ネテ 送 リ 給
ヲ 、 訪 へ ト ノ 為 二 テコ ソ ア レ ト '
、 思ケレハ、 爰ヨリ、山へモ帰
シ 、 御 歌 ニ 、 底 マテ 照 セ 、 山 ノ端ノ 月 、 ト ア ル ハ 、 ナ カ ラ ン 跡
ラ ス 、 其 遺 骨 ヲ頸ニ懸
一日見テ後ニコソ、 免 モ 角 モ ナ ラ メ ト 思 テ 、 二 人 俱 ニ 、 繁捨タ
ル、 海 士 ノ 小 舟 ニ 、 打 乗 テ 、 深 キ 淵 ノ 底 ヲ 、 臨 ミ 見 レ ハ 、 若 党
ニソ、 閉 籠 ケ ル
岩 蔵 ト 云 処 一 一 、 庵 室 ヲ結テ、
勤 メ行フ 、 童 子 モ 髪 剃 テ、 高 野 山
、 山 林 斗 藪 シ ケ ル カ 、 後 ニ ハ、 西 山 ノ 、
処ナク、 サカシケレトモ、曾テ見へ給ハス
下 法 師 ト モ ハ 、 皆 赤 裸 ニ ナ リ テ 、 岩 ノ ハ サ マ 、 岸 ノ 陰 迄 、 残ル
住 寺 ス ヘ キ 様 モ ナ ケ レ ハ 、 今 ハ 世 間 ニ 、 無 端 思 テ 、 皆離山セン
其 後 、 園 城 寺 ノ 三 摩 耶 戒 壇 張 本 ノ 衆 徒 、 三 十 余 人 、今 ハ 立 帰 テ 、
ト、 仕 ケ ル 力 、 今 一 度 、 寺 門 ノ 焼 跡 ニ 立 帰 リ 、 内 證 信 心 ノ 、 法
テ 止 ル 、 紅 葉 々 ノ 、深 」キ 色 カ ト 見 へ テ 、 岩 陰 二 流 レ セ カ レ テ 有
ヲ、 船 指 寄 テ 見 レ ハ 、 空 キ 形 チ 、 長 ナ ル 髪 、 流 レ 藻 ニ 、 乱 レ カ
大明神之御前一、 通 夜 シ テ 、 是 ヲ 限 ノ 法 味 ヲ ソ 、 捧 ケ ル
施ヲモ奉リ、発心修行ノ、 暇乞ヲモ、申サハヤト思テ、皆新羅
遙 ニ 時 移 リ テ 、 供 御 ノ 瀬 ト 、 云 所 迄 、 尋 ネ 至 リ テ 見 ハ 、 セカレ
、リ テ 、 岩 コ ス 波 ニ 、 ユラ レ 居 タ リ
夜 更 ル 程 ニ ナ リ テ 、 夢 現 ノ 境 シ ラ 」ヌ ニ 、東 ノ 方 ノ 、 虚 空 ヨ リ 、
モ、
是 ヲ 、 泣々取上テ、御 顔 ヲ 、膝 ノ 上 ニ 舁 乗 奉 レ ハ 、 濡テ色コキ
ヒ へ 終 テ 、、 乱 テ 残 ル 黛 ノ 色 、 コ ホ レ テ 力 、リ シ 縁 ノ 髪 、 ワク
紅 葉 ノ 、 シ ホ -^-ト シ タ ル ニ 、 雪 ノ 如 ク ナ ル 、御 胸 ノアタリ
フ勢力アリ、 アヤシヤ、誰ナルラ ン ト 、是 ヲ 見 ハ 、 或ハ、法務
馬 ヲ 馳 セ 、 車 ヲ « ス 音 シ テ 、 ヲ ヒ タ 、シ キ 、 大 人 高 容 ノ 、 来 給
(
緑力)
ル 形 ハ 替 ラ ネ ト モ 、 一ヒ咲ハ、 百 ノ 媚 ァ リ シ 、 眼 閉 リ 、 色変シ
大 僧 正 ニ ヤ ト 覚 タ ル 高 僧 、 四 方 輿 二 乗 テ 、 扈 従 ノ 大 衆 、 前後ニ
律 師 ハ 、 顔 ヲ 膝 二 乗 テ 、 天 ニ仰 テ 、 泪 悲 ム 、 童 子 ハ 、 御 足 ヲ 懷
或 ハ 、 容 色 千 媚 タ ル 夫 人 、 軽 軒 香 車 、 玉ヲ飾リタルー一乗ヲ、 侍
囲 繞 シ 、 或 ハ 、 衣 冠 正 キ 俗 体 客 、 甲 胄 ヲ 帯 セ ル 、随 兵 ヲ 召 具 シ 、
ヌ レ ハ、 目モアテラレス
ニ入、 我 ヲ ハ 何 ト ナ レ ト 思 召 テ 、 捨 置 セ 給 ソ 、 ウ タ テ ノ 御 心 ヤ
何 迄 、サ テ 、有 ヘ キ 事 ナ ラ ネ ハ 、 其 夜 、 近 キ 山 辺 ニ テ 、 空 キ 煙 ト
血ノ涙、袖行水ト流レケリ
西 一傾テ、 又 半 天 ニ帰 ル 事 ナ ケ レ ハ 、 サ ケ フ 声 サ へ 、 枯 終 テ 、
ノ冠ヲ正クシ、威儀ヲ刷ヒテ、 金殿ノ内ヨリ、 出向ヒ給フ、 賓
此高客、皆輿車ヨリ下テ、幕ノ中へ入給へハ、新摧大明神、玉
吉 山 王 ニ テ 、 御 渡 リ 候 ソ ト 、答へケル
ト、 問 へ ハ 、 未 タ 知 セ .
給ハスヤ、是コソ、東 坂 本 一御座候、 日
女 数 十 人 、 凰 腸 金 蓮 ノ 冠 -テ
1 、 左右一一随従セリ
後 ニ 下 リ タ ル 、 退 紅 ノ 仕 丁 ニ 、 是 ハ 何 ナ ル 人 一テ
I 、 御 渡 リ候ソ
ト、 地 一
一伏 テ 、泣 ト モ 、落 花 枝 ヲ 辞 シ テ 、 ニ タヒ 咲 習 ナ ク 、 残 月
ハ、 力 へ ラ テ 、 一 惟 ノ 灰 ニ 向 テ 、 三 日 迄 、 泣 居 タ リ ケ ル 力 、 内
三五三
ナ シ 奉 ル 、 煙 尽 レ ハ 、同 宿 同 」朋 共 ハ 、 帰 レ ト モ 、 律 師 ト 童 子 ト
了
興 酬 ニ 最 モ 心 楽 ミ」給 へ ル 、御 気 色 ニ テ 、 夜 既 ニ 、 明 ナ ン トスレ
主 、 座 定 リ テ 、 斟 酚 礼 ア リ テ 、 舞 曲 ノ 宴 ア リ 、新 羅 大 明 神 、誠 ニ
様 ニ ソ 、語 リ ケル
給 ヌ ト 見 へ ケ レ ハ 、 通 夜 ノ 大 衆 、 三 十人、 一同ニ皆夢覚テ、同
ニ 有 力 タ キ 大 慈 悲 哉 ト 、 仰 ラ レ テ 、 明 神 、 錦 ノ 帳 ノ 内 へ 、 入セ
三五四
ハ、 山 王 還 御 ナ ル 一、 明 神 、 寺 門 ノ 外 迄 、 送 リ 給 テ 、 立 帰 ラ セ
ト、 信 心 、 肝 ニ 銘 シ ケ レ ハ 、 三 十
タ ル モ 、 斉 度 ノ 方 便 ナリケリ
サ テ ハ 若 君 ノ 」、身 ヲ 投 サ セ 給 シ モ 、 観 音 ノ 所 変 ナ リ 、 寺 門 ノ 焼
仏
一
一道 修 行 セ ン ト テ 、 彼 桂 海 力 、 瞻
ノ大衆一人、明 神 ノ 御 前 一 脆 ィ テ 、涙 ヲ 流 シ 、申 ケ ル ハ 、 今 度 、
西上人ト、名ヲ替テ、住ケル、岩蔵ノ庵室へ、尋行テ見レハ、
人ノ衆徒、皆発心シテ、俱
給 ヒ 、 玉ノ御階シヲ歩ミ、 宝殿ニ、 入セ給ハントセシ時、通夜
三摩耶戒壇建立ノ事、吾寺ノ興隆ヲ存シテ、興行仕リシ事ニテ
ヮケテ、 松 ノ 落 葉 ヲ 薪 ト シ 、 拾菓ヲ命ト
11
テ、福 ヲ 与 ル モ 、真 実 ノ 本 意 一アラス、 是 ヲ 非 ト シ テ 、 罰 ヲ 行
管 見 ナ リ 、夫 レ 神 明 仏 」陁 ノ 、 利 生 方 便 ヲ 垂 ル 、日 、 彼 ヲ 是 ト シ
申 処 モ 、 一 往 其 理 ア ル ニ 、 似 タ リ ト ィ へ ト モ 、 是 モ 皆 、 一隅ノ
へト、 申 セ ハ 、 大 明 神 、 通 夜 ノ 大 衆 ヲ 、 皆 御 前 へ 召 レ 、 衆 徒 ノ
ル桑門、 東 西 ヨ リ 、来 集 シ カ ハ 、 都 近 処 1
、 寺 ヲ 建 立 シ 、 人ヲ
徳 者 不 孤 、 必 有 隣 ト 、 ィ ヘ ル 事 ナ レ ハ、 獸 トスレ ト モ 、 同 様 ナ
古今釈教ノ部ニ、撰ヒ入サセ給ケリ
ト 書 院 ノ 墻 壁 ニ 、 書 付 ケ ル ヲ 、 君 、 限 リナ ク 、 戴 感 アリ テ 、 新
昔 シ ミ シ 、 月 ノ 光 ヲ 、 シ へ ル ニ テ 、 今 宵 ヤ 君 力 、 西 へ 往 ラン
、
11 月 見 ル 袂 モ 、 儒 ケ
フモ、 慈 悲 ノ 至 リ ニ ア ラ ス 、 只 順 逆 ノ ニ 縁 ヲ 以 テ 、 無上菩提ニ
モ広ク、 利 益 セ ン ト テ 、東 山 一、雲 」居 寺 ト 云 所 ヲ 、 草 創 シ テ 、
ルニヤ
浮 世 ノ 夢 ノ 、サ メ -^-ト 、ナ キ 人 ヲ 問 度 毎
シテ、 残 年 ヲ 送 給 フ
三間ノ茅屋、半 ヲ 雲
候 へ ハ 、 ー塵モ、 衆 従 ノ 僻 事 ト ハ 、 存 知 候 ハ ス 、 然 ヲ 、 山 門 猥
ニ、 度 々 ノ 勅 栽 ヲ 背 キ 、 種 々 ノ 魔 漳 ヲ ナ シ テ 、 当 寺 ヲ 焼 払 ヒ 申
へ 力)
対
一
一シ テ 、 誠 ニ 御 快 ケ ニ 、 咲 ヲ 含 ミ 、 楽 ミ ヲ ナ
趣 力 シ メ ン カ 為 ナ リ 、 サ レ ハ 、 吾 カ 悦 フ 処 ヲ ハ 、シ ル へ カ ラ ス 、
例 年 ノ 春 毎 ニ、 三 尊 来 迎 ノ 儀 式 ヲ 、 執 行 フ 、 二 十 五 ノ 菩 薩 、 妓
財施ノ功徳アリ、経論聖教
一
一
、
ノ失タルハ、 是 又 、書 写 ノ 結 縁 タ リ 、有 為 ノ 報 仏 、 豈生滅ノ相
コ サ ス ト 、 云 事 ナ ケ レ ハ 、遠 近 、 踵 ヲ 継 ネ 、 爰 ニ 来 詣 シ 、 男 女 、
秋夜長物語終
掌 ヲ 合 セ テ 、 敬 礼 ス 、 仏 種 ハ 、 縁 ヨリ 起 ル ト ハ 、 加 様 ノ 事ヲソ
度 、誠
ヲ 、 イ タ サ ン ス ル 事 ノ 嬉 サ ニ 、 万 事 ヲ 忘 レ ケ ル ソヤ、 山 王 モ 、
ノ得
申 へ キ ト 、語 リ ケ レ ハ、聞 人 感 シ テ 、 袖 ヲ ヌ ラ サ ヌハ ナ カリケリ
歓 喜 ノ 心 ヲ 、 ナ シ ツ ル ナ リ 、 石 山 ノ 観 音 ノ 、童 男 変 化
是ヲ賀シ給ハン為二、来臨アリケリ、我 モ 感 歎
タ
一
一へ ス シ テ 、
ナカラサランヤ、只此乱ニ依テ、桂海力発心シテ、若干ノ化導
楽ノ歌詠ヲ調へテ、往生ノ人ヲ、迎へ給フ、見ル人、信 心 ヲ 、
仏閣僧坊ノ焼タルハ、造 営 ス ル
サセ給フ事、何ナル神慮ニテ、御座候ヤラン、難測コソ、存候
処二、日吉山王
ツルハ、 神 明 仏 陁 モ 、 サコソ御心ヲ、 悩 マサレ候ラント、存候
^-
秋
の
夜
長
物
か
た
り
それ、春のはなの、 しゆとうにのほるは、 じやうぐ
X
X
、 みやうもん、 り や う に の み し
やと、 おもひけるか、 さすかに、 ふ
よ り 、や ま の お く を も 、た つ ね 、 柴 の い ほ り の 、し は し は か り の 、
しかりける事かなと、 おもふ心、 いてきにけれは、 やかて、 山
て、 し ゆ つ り 、 し や う し の 、 つ と め に 、 お こ た り ぬ る 、 あ さ ま
入なから、あけくれは、 た
く ち ん の 、 き や う かいを、 はなれて、 し やくしのもんしつに、
か
さ め た り け ん 、 こ は そ も 、 な に 事 そ や 、 わ れ 、 た ま ''^、 そ
けいねんのころ、花のちる春のくれをみて、 ねぬよのゆめや、
ふのたつじんなり
ん ぬ の ゆ ^ い を 、 ふ る ふ 、 ま こ と に 、 し ん そ く の い る ひ 、 ふん
乂み、 あ る と き は 、 さ い ふ く の つ る き の 、 や き は の う へ に 、 ふ
ある時は、 にんにくの、 ころもの袖に、 せつしゆのじひを、 つ
き か 、 み ち を ふ み て 、 な う さ は い す い の か せ を 、 か」 か け た り
をくんて、 四 け ふ 三 く は ん の 月 を 、 す ま し 、外 に は 、くはうせ
ほか
い ふ人にてそ、 お は し け る 、 う ち に は 、 ぎ よ く せ ん の 、 なかれ
平仮名古活字十一行本
^ の、 き
15
を す X め、 秋 の 月 の 、 す い て い に く た る は 、 け け 衆 し や う の 、
さうをあらはす、天いふ事なくしては、 ぶつとみなこれをしめ
ナシ
何
んけんの八くをみて、 さいとをいとふときは、 ほんなふすなは
す、人心ありしては、あにつとめさらんや、もし人ありて、 に
ち ほ た い と な る 、 天 上 の 五 す い .聞 て 、 し や う と を も と む る 時
は 、 し や う じ す な は ち ね は ん と な る 、 か る か ゆ へ に 、 し よ ふつ
ナシ
ほ さ つ 、 し ゆ つ き や く の け た う を た るX 日 、 つみ あ る を は、 し
や よ りしやうにいれ、 えんなきをは、 あ く よ りぜんに、 おも
れ
む 力 し め 給 ふ 、 何 を も つ て い ふ 」 と な ら は 、 き やう ろ ん の しよ
せつ、 し よ てんにのする処、 しけけれは、申 に こ と はたらす、
ち か こ ろ 、み \ に ふ れ 、こ と の あ ま り に あ は れ に も 、 た つ と か り
し か は 、 め ん ' ^ に、 ま く ら を そ は た て 給 へ 、 老 の ね さ め に 、
かくれがをも、むす」 は
後 堀 河 の ゐ ん の 御 宇 に 、 に し や ま の 、 せ ん さ い 上 人 と て 、 たう
かりに、 あ ら ま し て 、 いたつらに、 月 日 を を く り け る 、 その心
と う り よ の わ か れ も 、 さ す か に 、 な こ り を し か り け れ は 、 心は
は、 い わ う さ ん わ ふ の 、 け ち 系 ん も 、 す て か た く 、 と う は う 、
あ き の 夜 の 長 物 か た り 、 一申侍らん
か く 、 け ん ひ し た り し 人 、 も と は 、 ほ く れ い と う た う の 、 しゆ
る き 袅 ん の 、 つ な く 所 は 、 人 こ と に 、は な れ か た き 、な ら ひ な れ
と に 、 く は ん か く ゐ ん の 、 さ い し や う の 、り つ し 、 け い か い と 、
三五五
の、 う ち に う こ き 、 こ と は の 、 ほ か に あ ら は れ け る に や
三五六
はわすれて、ゆめにみえたる、 ちこのおもかけ、時のほとも、
うほだいとそ、 いのりけ る
山 王 の し ん た く に 、 我 一 人 の 、 し ゆ と を う し な ふ は 、 三しや
やうたいの、御 な み た も 、 よそならす
めの後の、 おもかけに、 たつきもしらす、 なけきたまひけん、
によれは、 ふ山のしん」 ちよか、く も と なり、雨となりし、 ゆ
い の 御 思 ひ も 、身 に し ら れ 、く ら 山 の 、 花 ほ こ ろ ひ て 、 う ん て い
は ん こ ん か う の 、け ふ り に む せ ひ て 、身 を こ か し た ま ひ し 、 ふ て
ろのかうを、 たきては、仏せんにむかへは、 かんのりふしん、
な ら ね は 、 せんか
てう^ ^ ほ乂、 ふうちんのそこ、 しつきやくしては、あやま
たなき思ひに、 たへかねて、 さてもや、もし、 なくさむと、 一
身をはなれす、 りつしも、 まことの、う つ
、一 七 日 か あ ひ た は 、 五 た い を 地 に な け て 、
X
つて三十年しやうす、 い つ れ の 日 か 、 にんけん、 ^ いしよく
のまな こ 、 ゆ う せ ん と し て は 、 せ ん し ゆ か ん う ん に 、 ねふる
らん
こ れ ほ と に 、思 ひ た ち ぬ る 事 の 、か な は ぬ は 、い か さ ま 、 し や ま 、
け た う の 、我をさ ま た く る に や、 さらは、 ぶつほさつの、 おう
X
こをたの」 みて、此く は ん を 、 しやうじゆせんと、 おもひて、
右山に、 まふてつ
七日まんし け る 夜 、 ら い は ん を ま く ら として、すこし、 まとろ
みたるゆめに、 にしきの、 とちやうのうちより、 ようがん、 び
みえ
X
ひさきて、
ち り ま か へ る 、 花 の 木 か け に 、 や す ら ひ た れ は 、あ を は か ち に 、
れ い な る ち こ の 、い は ん か た な く 、ら う た け た る か 、 た ち 出 て 、
ぬ ひ も の し た る 、す い か ん の 、袅 ん さ ん に 、 花 ふ た
ゆ き の こ と く に 、 ふ り か ^り
t た り け る を 、 袖 に つ ^み
I なから、
い つ ち へ行とも、 お ほ え ぬ に 、 く れ ゆ く い ろ に き え て 、 みえす
な-り ぬ と 」 見 て 、 ゆ め は さ め ぬ
つゆの身もあらし、 いまはと、 おもひわひけるか、 石山の、 く
いふうに、 むかふ所をも、 さまたけんすれ、 くれまつほとの、
はんおんをこそ、 かこち申さめと思ひて、又いしやまへこそま
ふてけれ
三 井 寺 の ま へ を 」、す き け る に 、 ふ る と も し ら ぬ は一るI さ め の 、 か
ほに、 ほろ ^ ^ と、 か Xり け れ は 、 し は ら く た ち よ り 、 はれま
の、 御 房 の 庭 に 、 老 木 の は な の 、 い ろ こ と な る こ す 袅 、 か き に
を ま た ん と 思 ひ て 、 こ ん た う の か た へ 行 ほ と に、 し や う こ ゐ ん
めも、 あ け ぬ ま に 、 たちか へ り ぬ 、 よ
ると、 まちいたれは、 なを山ふかく、 すまはやと、 おもひし心
X
これすなはち、 諸 く は ん じ や う し ゆ の 、 む さ う な り と 、 うれし
-%
.
そょ り 、来 る へ き も の を 、 ま っゃぅに、 ぃまゃ、 たぅしんぉこ
くおほえて、またしの
み お ほ し め し た う し ん を 、さ ま た け さ せ 、 た ま ふ に や 、 た
いの
と ひ 、さ や う の し ゆ り よ な り と も 、命 い き て こ そ 、ほ つ と う の た
く の つ る き を 、 さかさ ま に の む に 、 ことならすと、 かなしひた
れら
ま ひ し か は 、 わ ..か り さ ん を 、 い か さ ま 、 さ ん わ ふ の 、 を し
一心に、 ま こ と を い た し て 、 た う し ん け ん こ 、 そ く せ う 無 し や
•0
あまりて、
く
も
お し け り 、 は る か に 、 人 家 を み れ は 、花 あ れ は 、
みえし
かと
X
、 わ き か ね て 、い つ れ に ま よ う 、
そ のよは、 こんたうの兔んに、 ひれふして、 よもすから、 なか
これやゆめ、あ り し や う つ
めわひぬ
こころなるらん
夜 あ く れ は 、 又 、 き の ふ の と こ ろ に 行 て 、御 ば う の か た は ら に 、
に、 た ち よ り た れ は 、 よ は い 、 二 八 は か り な る ち こ の 、 す い ぎ
すなはち入、 といふ、 しの心、 ひきいれられて、門のかたはら
よかんに、うすくれなゐの、あこめかさねて、 こしのまはり、
た \す み た る に 、 わ ら は の 、 い と き よ け な る か 、 ぬ き す の し た
ち こ の 、 わ ら は な る ら ん と 、 思 ひ て 、 た ち よ り つ \ 」、ち と 物 申
の、 み つ す て ん と て 、 も ん の ほ か ま て 出 た り 、 是 や 、 き の ふ の
外
ほけやかに、けまはしふかく、 たをやかなる力、 人ありとも
.し ら さ る に や 、 み す の う ち よ り 、 に は に た ち 出 て 、 ゆ き を も け
にさきたる、下えたのはなを、手おりて」
ふるあめ.
に 、 ぬ る と も お ら ん 、 や ま さ く ら 、く も の 力 へ し の 、
けに、すいきよしやの、すいかんめされて、御 と し の ほ と 十
ナシ
る、 け し きも な し、 り つ し 、 う わ し く思ひて、 きのふ、 此ゐん
候 は ん と 、 いへは、 な に 事 に て 候 や ら ん と て 、 こ と の ほ か な
と 、 う ち な か め て 、 花 の し つ く に 、 立 ぬ れ た る て い 、 これも、
かせ も こ そふけ
花 か と 、 あ や ま た れ て 、 さ そ ふ か せ も や あ ら ん と 、 し つ こ \ろ
六 七はかりに、 みえさせたまふ、 おさ あ ひ 人 の 御 事 や 、 し り ま
ちに、すこしも、 たかはぬは、 いまのうつ
X
に、 み し 夜 の
X
大臣とのにて、御わたり候、御心わ
一寺の ら う そ う 、 し や く
な ら て は 、 お ん い て も 候 は す 、た \ い つ と な く 、 ふ か き ま と に 、
ゆるすかたなく、御座候ほとに、くはんけん、すかの、 むしろ
あ ら そ ふ 、 ふ せ い に て 候 を 、 此 御 所 の 、 御 あ り さ ま 、あ ま り に 、
く な り、秋の月の」くまなきには、 みなわかいへの、 ひかりを
はい、春 に を く れ た る 、 一木の花をみては、 よそにちる心もな.
と の 、 を ん こ 乂 ろ あ て に て候 へ
I はI 、
くかたなく、 いつはりの、あるよとたにも、 おほしめされぬほ
申候、御さとは、花 そ の
た に 、 め し つ か は る 乂も の に て 候 へ 、 御 な を は 、 梅 わ か き み と
い ら さ せ 給 ふ と 、 と へ は 、— 1 う ち 袅 み て 、 わ れ こ そ 、 其 御 か
な け れ は 、 お ほ ふ は か り の 、 袖 も か な と 、 雲 に も 、か す み に も 、
かと
か す へ き 、 こ \ち な と し け る に 、 心 な き 風 の 門 の と ひ ら を 、 き
り ^^--と 、 ふ き な ら し た る に 、 あ く る 人 あ る や と 、あ や し み て 、
見 や り て 、 は な を 手 に も ち な か ら 、か 乂 り の も と を 、 め く り て 、
は る か に 、 あ ゆ み け る に 、 み る ふ さ の こ と く に て 、ゆ ら '''^と 、
め た る を 、 ほ れ - ^ と 、 見 か へ り た る 一 目 つ き 、 かほの
>1
かかりたるかみのすち、 やなきのいとに、うちまとはれて、 ひ
き と
X
にほひはかりなき様、行衛なく、 われをまよはしつるゆめの、
た
ゆめは、うちわすれて、 日くれけれとも、行へきかたをも、 お
ほえす
三五七
て
七字ナシ
む か ひ て は 、 し を っ く り 、 う た を よ み .な を さ り た う に 、 日 を
く ら し 、 夜 を あ か さ せ た ま ひ 候 そ や と そ 、 かたりける
を、 しらせは や と 、
お も へ共、あまりに、
ひ た Xけ た ら ん
も 、
き く に 付 て も 、 い と >1
心 も 、 う か れ ぬ れ は 、 や か て 、 このわ
ら は を 、 たよ り に て 、 つほの石ふみってにても、 こころのおく
さ す か な れは、 石 山 へ ま い り っ 又 わ か 山 へ そ 、 か へ り け る
せ て 、 な 」 け き く ら し 、 お も ひ あ か し け る か 、し や う こ ゐ ん の 、
り っ し は 、ゆ め か 、う っ X か の 、 お も か け に 、 を き も せ す 、 ね も
御 は う の へ ん に 、 む か し 、 し り た り し 人 の あ る を 、 たっねいた
しゆえんに、 けうしたるていに
て、
一夜ニ夜を、 あ か す
して、 あ る と き は 、 し い か の く わ い に 、 こと よ せ 、 又、 あると
き は 、
事 、 た ひ -'^に、 な り に け り
を た \ へて、 あ そ ひ け る っ い て に 、 と か ね の う ち は た の 、 た ち
其 の ち 、 さ き の わ ら は を 、 か た ら ひ よ せ て 、 ち や を の み 、 さけ
え力
は な に 、 た き も の を い れ て 、 ね り ぬ き 、 か ら あ や 、ふ せ ん れ う 、
色 ^ ^ の小袖、 十 か さ ね 、 を く り た り 、 わ ら は も 、 はや心さし
の、 ふ か き い ろ を み て 、 よ ろ つ、 心 を へ た て ぬ さ ま な り け り 、
さ て 、 む め わ か き み に 、 お も ひ ま よ へ る 、 心 の や み 、 いつはる
〈し と も 、 お ほ え ぬ よ し を 」 か た り け れ は 、 ま っ 、 御 ふ み を あ
三五八
これ御らん
しらせはや、 ほのみし花の、 おもかけに、 たちそふくもの、
く る と も 、あ り か た け れ は 、 うたはかりにて
まよふこころを
とかきて、 おくりけ る
わ ら は ふ み を ふ と こj ろj よ り と り V た し て
わ た り 候 け る を 、 あ る 人 、 ほ の か に 、 見 玄 い ら せ て 、人 し れ す 、
候 へ 、 いつそや、 雨 の た へ ま の 、花 の か け に 、 た ちぬれて、御
思 ひ そ め た る 、袖 の い ろ も 、 はやくれなゐに、 ふかくなりて、
は、 梅 わ か き み 、 か ほ う ち あ か め て 、 文 の ひ ほ を 、 と か ん と し
な く は か り に 、 つ 乂 み か ね て 候 や う に 」 み え 候 そ や と 、 かたれ
い ふ 人 の 、 み す を 、 か -^け て 、 う ち へ い る に 、 見 せ し と て 、 袖
たまひける処に、 しゆつせなる、 なにかしの、 そうつとやらん
の内に、 を し か く せ は 、 童 、 ひ ん き あ し と 、 ひ ま を ま ち て 、 日
くる乂まて、 しこうしたるに、 しよゐんのまとより、御返事か
ナシ
ち て 、 行 た る に 、 り つ し 、 め も あ や に 、よ ろ こ ひ て 、 ま こ と に 、
き て 、 た ひ た り 、 わ ら は 、 手 も か ろ く 、 う れ し く て 、 いそきも
身 も あ ら れ ぬ さ ま の 、 ていなり
三字ナ シ
ひ ら き て み れ は 、 こ れ も 、 こ と は Xな く て
ま よ ひは」
た の ま す よ 、 人 の こ X ろ の 、 は な の い ろ に 、あ た な る く も の 、
る
か-/1
た ち か へ る へ き 心 も せ す 、 あ ひ 見 ぬ さ き の わ か れ た に も 、 せん
り つ し 、 此 へ ん じ を 見 て 、 心 い と X、 う か れ し か は 、 さ ら に 、
そ は し て 、 た ま は り 候 へ 、 や か て 、 申 て 、 見 候 は ん と そ 、申
お も ふ こ ^!ろ を 、 つ く す ほ と の 、 こ と の 葉 は 、 い か に く ろ み す
ける
よ そ な か ら 、 そ な た の 、 木 す ^ を も 、 み つ ^!、
くらさは
か た な く 、 お ほ へ し か は 、 し は し 、あ た り の や と に 、な を も と X
ま り 、
や と は 、 お も へ と も 、 あ ま り に そ れ も 、 ひ た -け
1 た れ は 、 又こ
るも の か な と 、
わらはに、 い と ま こ ひ つ り つ し 、
そ 、 参 り 候 は め 、 う れ し く も 、 か よ ふ 心 の 、 し る へ と 、 ならせ
たまひぬ
や ま へ か へ り け る か 、 一あしあゆみては、 み か へ り 、 ニあしあ
日く
ゆ み て は 、 た ち と Xま り し け る ほ と に 、 春 の 日 、 なかしといへ
とも、 程ちかき、 さかもとのさとばうまて、 ゆきつかて、
に
四字ナシ
二字ナシ
、.
ふれけるてざへ、
扱、阿事にかと、 とへは、 わらは、 ふところより、色ことに、
こかれたる、もみちかさねの、 う す や う
よ ふ と も、 き 乂 し は か り を 、 し る へ に て 、 た つ ね て ま い れ と 、
くゆるはかりなる文を、 とりいたして、 いかなる山に、 みち ま
お ほ せ さ ふ ら ひ つ る 、 け し か ら す の 、 御 こ ^!ろ ま よ ひ そ や 、 ま
して一夜の後の、御 袖 の う へ 、 さこそは、 つゆのたはふれと、
い つ は り の 、 あ る よ と し ら て 、ち き り け ん 」、わ か こ こ ろ さ へ 、
てと、 た は ふ れ 、 か よはして、 ふみをみれは
う ち わ ら へ は 、 りつし も 、 せめて、 わ か れ を な け く 、身となら
うらめしのみや
と て 、 にはまて、 出 た れ 共 、 ち ひ き の な は を 、 こしにつけたる
らi
三五九
日 、 さ ん ろ う す る よ し を い ひ て 」、よ る に な れ は 、 ゐ ん け の か た
り つ し は、 し よ く は ん の 事 あ り て 、 し ん ら 大 み や う し ん に 、 七
日を乂 く り け る
たして、くはんけんをし、 ほうへんの、 うたあはせなとして、
四 の 、 い と な み な と あ り て 、 つねには、 ち こ と も を 、 あまたい
に、を き け れ は 、そ の は う す も 、ね ん こ ろ な る さ ま に 、.て う 三 ほ
里1、 し は し の ほ と の 、 や と か り て 、 あ る は う の 、 かくもんしよ
ていろい6
.
X ろ ひ か れ て 、 り っ し 、 又、 三 井 寺 に 、 ゆきぬ
候へ か し と 、 わらは、 しきりに、 いさなへは、 思ふかたに、 こ
しはらく、御座候て、御すた れ の 、 ひまをも、御心にかけられ
御 所 の か た は ら に 、 し り た る 、し ゆ と の は う の 候 へ は 、 そ れ に 、
ま り ^^る
れ に け れ は 、 と つ の へ ん に あ り け る 」、は に ふ の こ .
やにそ、 と \
©-
夜 も す か ら 、 おもひあかして、 あしたになれは、 山へのほらん
り、
四字ナシ
かことく、 われならぬ心に、引ととめら れ け れ は 、 と つ
又ひきかへして、大津のかたへそ、あくかれ行
雨 、 し め や か に 、 ふ り け れ は 、 み の か さ 、 う ち き て 、 たひひと
の、 す か た に 、 身 を や つ し つ ^
'
、 行 と こ ろ に 、 か ら か さ 、 さし
んと 、 み や り た り け れ は 、 梅 わ か き み の 、 な か た ち せ し 童 に て
かけたる、 む ま の り の 、 み ち に て 、 ゆ き あ ひ た り 、 たれなるら
そ 、 ありける
り つ し を み て 、 あ な ふ し き や 、 申 へ き 事 あ り て 、 しらぬ山まて
も 、 た つ ね 参 ら ん と 、 し つ る に 、 う れ し く 、参 り あ ひ た る も の 」
へ そ、 たちよりける
か な と て 、 む ま よ り と ひ お り て 、 り つ し か 、 手 を と り て 、 かた
は ら な る 、 つじた う
tt
^-
は ら に 、 立 ま き れ て 、 つき山の、 ま つ の こ か け 、 せ ん さ い の 、
と も 、
く さ の そ こ に 、 か く れ て ゐ た る に 、 ち こ も 、 は や 、 こ ^一 ろえ た
る、 け し き に て 、 人 め も か な と 、 な か め た る や う な れ
くるしけ
か
なはて、 出かねたる、 こころつくし、見るも^
れは、 よ し や た よ そ な か ら 、見るはかりを、 わか身にある、
ちきりにて、人のなさけをこそ、 いのちにせめと、 おもへは、
はや
あ し あ ゆ く 、 行 て は か へ り 、 か ヘ リ -は ゆ き 、 よ な ^ ^ 、 日 か
す、 十日あまりニもなりにナり
い つ ま て も と 、 人 は い へ と も 、 な か ゐ せ ん 事 も 、さ す か な れ は 、
明 日 は 、 わかやまへかへりなんと、 おもひける処に、 わらは、
来り'
て、 こ よ ひ こ そ 、 あ の 御 所 へ 、 き や う 」よ り 、き や く 人 、 御
いり 候 て 、 御 し ゆ え ん に て 、 候 つ る に 、 も ん し ゆ も 、 いたく、
こ れ へ 、 し の ひ や か に 、 御 い り 候 へ し と 、お ほ せ ら れ 候 つ る そ 、
御 袅 ひ 候 へ は 、 ふ け す く る ま て 、か へ ら れ て 、し こ う せ ら れ よ 、
かと
三字ナシ
門 さ \ て、 か な ら す 、 御 ま ち 候 へ し と 、 い そ か し け に 、 いひす
て - 1、
かへりけり
り つ し 、 こ れ を聞て、 心 う か れ 、 た し ゐ み た れ て 、 いっくにあ
(
ま欠力)
る 、 我 身 と も お ほ え す 、 ふ け ゆ く か ね の 、 つく- ' と 、 月 の 、
ょ り 、 はるか
にしに、 め く るまて、 ま ち か ね た る 所 に 、 か ら か き の と を 、 人
のあく る お と す る に 、 し よ ゐ ん の 、 す き 1ゃ ぅ
に見いたしたるに、 れい の わ ら は 、 さ きにたちて、 きよなふの
1'.
三六〇
ち や う ち ん に 、 ほ た る を い れ て 、 と も L たり、 そ の ひ か り 、 か
す か 」な る に 、こ の ち こ 、 き ん し や の 、 す い か ん 、 な よ や か に 、
う ち し ほ れ た る て い に て 、 み る 人 も や と 、 か Xり の も と に 、 や
す ら ひ た れ は 、 み た れ て か 乂 る 、 あ を や き の 、 い と X いふはか
や う ちんを、 さ そ う ののきに、
かけて、
しよゐんの
り な き さ ま に 、み え た る に 、 り つ し 、い つ し か 、 こ,,
ろ
,、た よ ^ しくし て 、あ る 身 と も 、 おほへす
わらは、 ち
と を 、 ほ と -'^と 、 た Xき て 、 こ れ に 、 御 わ た り 候 や ら ん と 、
た わ ら に み を そ は む る 、けしきにて、
あ る よ しをそ、
しらせ
あ ん な い す れ は 、 りつし、 いふへきかたをもしらて、 ちと、 か
わ ら は 、 又 、 に は に た ち か へ り 、 は や 、御 い り 候 へ と 、 申 せ は 、
ける
ちこは、 さき た つ て 、 つまとをならす、 そ の 袖 の う つ り か も 、
身 に 」ふ る \ は か り 、よ り そ ひ て 、 う ち か た ふ き た れ は 、 せ ん け
んたる、 秋 の せ み の 、 は つ も と ^ ひ、 ^ ん て ん た る 、 かいのま
(ひ5
マ、
ゆすみのにほひ、花にもねたまれ、月にもそねまれぬへき、 も
乂 の か ほ は せ 、 ち 乂 の こ ひ 、袅 に か く と も 、 筆 も を よ ひ か た く 、
かたるに、 ことはなかるへし
な み た と と も に 、 ま く ら を か は し ま の 、水 の な か れ も 、 た へ す 、
三字ナ シ
な を ち き る へ き 、 むつ こ と も 、 またつきなくも、 ねやさむくし
ふ
一し に 、 あ け ぬ
と つ く る、
て、 ら ん ふ う の ゆ め 、 さ め や 十 く 、 れ ん り の 花 、わ か れ て 、と \
め か た け れ は 、 し の Xを さ X の、
と り の ね も 、 う ら め し く 、を の か き ぬ ^ - 、 ひ や \ か に な り て 、
いめんもせす、 ふし し つ み て そ 、 日ををくりける
かかたの、 つらさにならては、其 ま 乂 に 、 やかて、 とをさかる
すくなきに、 おとろかす、 たよりもなくて、 ほとへぬれは、 た
よ び よ せ て 、 さ て も 、 あ り し 夜 の ゆ め の 、 た 1ち も ぅ つ \
まちたまひけるか、あまりに、 日かすふりけれは、 わらはを、
た ま ひ ぬ 、 い ま も や 、 お と つ れ あ る と 、し は し は 、 心 に こ め て 、
事 に 、 お も ひ く つ を れ て 、 御 け し き 、 つねよりも、 ぅ ち し ほ れ
申 け れ は 、 わ か き み も 、 ま こ と に 、 お ほ つ か 」な く 、心 く る し き
四字ナシ
わ ら は 、 比 よ し を 、 つ た へ き \ て、 梅 若 き み に 、 か く と か た り
は ら ^^*と 、 かか
たちわかれなとするに、あけかたの月の、 まとのにしより、く
ま な く 」
も 、さ し 入 た れ は 、 ね み た れ か み の 、
かけ
り た る 、 は つ れ よ り 、 ま ゆ の に ほ ひ 、 ほ け や か に 、ほ の か な る 、
か ほ の お も へ る 色 ふ か く 、 見 ゆ る さ ま 、 わ か れ て の ち の 、 おも
か け に 、 又 あ ふ ま て を 、 ま つ ほ と の 、 い の ち あ る へ し 共 、 おほ
り つ し は 、 ち こ を を く り て 、 あ か つ き 、い て た り つ る ま ^'に て 、
えす
もせ
へき、 か せ の こ乂 .と や ら ん 、 聞 え し か は 、 露 の い の ち も 、 い
い ま た 、 う ち へ も 入 •え す 、 も ん の か ら い し き の う へ に 、 た ち
か乂なりぬらん、 もし、 はかなくなりなは、 なからんあとを、
力さ
りつるおも
、 又なく、人に思
ひ つ き ぬ る は 、 わ す る \わ さ も 、 な き な ら ひ な れ は 、 け に 、
く
こ
すかに、 またいとけなき、 あ た し こ こ ろ に
くしらのよるぅらなりとも、 たつねて行と、 かこち給へは、 さ
八字ナシ
いまの程にも、 われを、 しるへして、 いかなるとらふすのへ、
こ と か ほ に て 、 わ れ に 、 こ こ ろ を つ け し も 、た か せ し わ さ そ や 、
行 衛 も し ら ぬ 、あ たひとの、 た Xいひすてし、 ことのはを、 ま
ん し ゆ の 御 こ X ろ も 、さ こ そ と 、 お も 」は れ て 、そ れ も か な は す 、
ねゆかはやと、 おもへとも、申をく事なくて、 まかりなは、も
と ひ て も 、 そ の か ひ な し 、 い か な ら ん 、 山 の お く な り 共 、 たつ
マ、
か ね て ゐ た る 所 に 、わ ら は き た り て 、御 ふ み © て、さ し 出 し た り
の、 な み た に わ け し 、
あけてみれは、 さしもおほからす
返歌
わ か 袖 に 、 や と し や は て ん 、 きぬ <
ありあけの月
り つ し 、し よ ゐ ん に 、か へ り て 」 ..
にも思ひもわ
ともにみし、月を名残りの、袖のつゆ、 はらはていく夜、 な
けきあかさん
とた
か け を 、身 に ふ れ 、そ へ つ る 袖 の 、 う つ り 香 を 、わ か も の か ら 、か
り つ し は 、 ゆ め う つ ^'力
た み に て 、 山 へ か へ り た れ と も 、 こ Xろしほ れ 、 たましゐうか
れ て 、よ ろ つ の ひ と の 、物 い ふ 事 も 、へ ん じ も せ す 、 な く と し も 、
はしく、 承 て 候 へ は 、 御 と
とはりやと、 わらは、 おもひしりて、 その人のあり所をは、
五字ナシ
お ほ え ぬ な み た 、 人 め に あ ま り て 、 お さ う へ き そ て も 、 くちは
三六一
も申 候 は ん 、 御 所 の ぎ よ 0 、あ し く
てぬへけれは、 ちといたはる事ありと、 ひろうして、人に、 た
1:
と 、 た ^一 二人 、
ゆ く
へきかたをもしらす、 たち出にけり
候 は X、 後 に 何 と も 、 申 さ せ た ま ひ 候 へ と て 、 ち こ と 、 わ ら は
か う し や 、 し つ ば の 、 中 な ら て は 、 か り に も 、 いまた、 ていと
き み は も と 」 よりも、 三 た い き う き よ く の い 系 に 、 むまれて、
り、
を 、 あ ゆ み た ま ふ 事 な け れ は 、 こi に や す み 、 か し こ に 、 た ち
と Xま り 、 さ ら に 、 あ ゆ み か ね さ せ た ま ひ け
も.
、 わ れ ら を 、 と り て 、ひ 袅 の や ま へ 、
のほせよかしと、
わ ら は 、 あ ま り の 、 い た は し さ に 、 あ は れ 、 て ん く 、 はけもの
なりと
い ひ て 、 か ら さ き の 、 松 の 木 か げ に て 、や す み ゐ た る と こ ろ に 、
と し の い と た け た る 、 山 ぶ し の 、 四 は う こ し に 、 のりたりける
か、 こ し を 、 ま へ に 、 か き す ^ さ せ て 、 こ れ は 、 い つ く よ り 、
いつちへ、 御 わ た り 候 や ら ん と 、 いひけれは、童 切 あ り の ま X
に、 こ た へ け る
や ま ふ し 、 こ し よ り お り て 、 わ れ こ そ 、 御 た つ ね 候 房 の 」、と な
はう^ ^ たる、
こ
かきのせて、 りきしや十
こし
りへ、 まかりのほるものにて候へ、あまりに、御いたはしく、
こ と わ ら はを、
と り の とふか こ と く に 、 ゆきけるか、
に、 め し 候 へ と て 、 ち
見 ま い ら せ 候 へ は 、 われは、 かちにて、 あ ゆみ候はん、 此
二人、
す ぃ の ぅ へ 、 ま ん ^ - た る 、 雲 か す み の か を ゎ け て 、 へんしの
へたる、 石 の ろ う の 中 に 、 をしこ
あ ひ た に 、 犬 み ね の 、 し や か の た け と 、 い ふ 所 へ そ 、 かきもて
ゆきにけり
こ乂に、 は ん し や く を 、 た
'..
の二字ナシ
三六ニ
め て 、 を き た れ は 、 月 日 の ひ か り も み え す 、 夜 ひ る の 、 さかひ
乂、 な く こ 系 の み そ 、 き こ え に け る
も な し 、 た う そ く 、 な ん に よ .そ の か す あ り と 、 お ほ え て 、 た
く まもな く 、
そ の 夜 よ り 、 わ か き み 、 う せ さ せ た ま ひ た る 事 、た X」事 な ら す
と 、 も ん し ゆ 、 お ほ き に 、 御 な け き 有 て 、い た ら ぬ
御 た つ ね あ り け れ と も 、 其 ゆ く え 、い つ ち へ 共 、 し り た る ひ と 、
さらに、 なかりける処に、 ひんかしさかもとより、大津へとを
る、 た ひ 人 の あ り け る か 、 行 あ ひ て 、 さ や う の 、 お さ あ ひ 人 、
かたりける
か と へ と り て け る と て、
三字ナ シ
、 し の ひ て 、 い ひ か よ は す 、 りつ
力 ら さ き の 力 た へこそ、 御 わ た り 候 し か と そ 、
わ ら は 一 人 、め し く し て 、き の ふ の 夜 の 、 い ぬ の こ く は か り に 、
さ て は 、 此 あ ひ た 、 れん <
し の ありと、 き こ え し か 、 いかさま、
のめならす、 山 も ん へ 、 よせんする事は、 かなふへからす、 ち
ゐ ん け の う ち は 、 申 に お よ は す 、 一寺のしゆと、 う つ た つ 、 な
X の お と Xも 、 し り た ま は ぬ 事 は 、」よ も あ ら し 、 ま つ 、 は な そ
の さ う の て い へ 、 をしよせて、 うらみ申せとて、御もんと
の大しゆ、 五百 よ 人 は 、 はくちうに、 さふのてい、 三てうきや
0
う こ く へ、 を し よ せ て 、 一 •も の こ さ す 、 や き は ら ■
ふ
おん じ や う じ の し ゆ と 、 これにて、 なを、 いきとをりをさんせ
す 、 一山一同、 せ ん き し け る は 、 じ も ん の ち し よ く 、 こ れ に す
く へ か ら す 、 し よ せ ん 、 此 つ い て を も つ て 、 た う じ に 、 しやう
く わ く を か ま へ 、 三 ま や か い た ん を た て は 、さ ん も ん の 大 し ゆ 、
さ た め て 、 を し よ せ ん す ら ん 、こ れ す な は ち 、 地 の 和 に つ き て 、
か た き を ほ ろ ほ す 、 は か り 事 、 又 は 、 し や し う を 、し り そ け て 、
し は ら く も 、」と
Mこ ほ る へ か ら す 、 一 み と う し ん の し ゆ
かい ほ う を 、 ひ ろ む る 、 み ち た る へ し 、 天 爰 に 、 ときをあたへ
たり、
と 、三 千 よ に ん 、に よ い こ え を 、 所 ^ ^ 、 ほ り き り 、 ふ も と に 、
さ か も き を ひ き 、 し し か き し け く 、 ゆ ひ ま は し て 、 三まやかい
さ ん 門 に は 、 こ れ を 聞 て 、 な し か は 、 ほ う き せ さ る へ き 、 かい
たんを そ 、 たてられける
た ん の こ と に 、 お ん し や う し へ 、 は つ か ふ す る 事 、 いぜんすて
に、 六 ヶ 度 な り 、 く け に そ ふ し 、 ぶ け に ふ れ う つ た う る ま て
も あ る へ か ら す 、 時 を う つ さ す 、を し よ せ て 、 や き は ら へ と て 、
まつじ、 まつしや、 三千 七 百 三 か 所 へ 、 ふれをくる、 まつ、 き
こ く の せ い 、は せ あ つ ま り て 、 其 せ い 、つ か う 、 廿 万 七 千 余 人
七字ナシ
に、 と X め ん と 思 ひ 、 す く り た る 、 と う し ゆ く 、 わ か た う 、 五
百 よ 人 、 し ん す い の み て 、 ま た し の ^!め も 、 あ け ぬ ま に 、 によ
いが谷よりそ、 よせたりける
さ る ほ と に 、 あ く れ は 、 十 四 日 の 、 た っ の 刻 に 、 大 手 、」から め
マ'
て、 城 中 、 そ う し て 廿 万 七 千 よ 人 、 と う じ に 、 時 を あ け て 、 を
六字ナシ
っ
めきさけふ、 たい山も、 /
」れ か た め に 、 く は れ 、 こ す い も 、 か
た ふ き て 、 た ち ま ち に 、 こ ん り ん さ い ま て 、 を つ る か と 、 うた
.......
五字ナシ
ぜんし
かはる、 し す る を も 、 返 り み っ 、 せめいりにける
ゐん
よせてには、 とうたうに、 しゆせん前司くはっさうゐん、 すき
も と山 も と さいれん房、 さいたうには、
しやうきせうしつ
しやうさいせうこんりん院、 させんせうきやうめうくはん院、
すき
ぜ ん み や う は う 、 な ん か ん さ い み や う き た み っ 、 いきやうちう
ん
しやうりんはう、 よかはには、 せ ん ほ う せ ん ち う に や ゐ ん 、
これをふせく、 大 し ゆ 、 表んまん 院 の お に す る か 、 たう^ の
ナシ
とそしるしける
ま ん ^^
三たうほうきしてきをあはす
十 月 十 四 日 、 な か の さ る の 日 に 、あ た れ り 、こ れ に す き た る よ き
お し よす る 、 あるひは、
て ん く •そ つ 、 千 人 き り の あ ら さ ぬ き 、 か な ま た の 悪 太 夫 、 八
わけて、 また、 う の こくに、
日 、」あ る へ か ら す と て 、 ゐ ん た う ^^^の せ い を 、 七 て に
は う や ふ り の む さ し は う 、三 町 つ ふ て の き や う 一 房 、さ け き
あ ひ た \ かふ
一
の み の そ ふ ち や う は う 、た か ひ に 、命 を 、を し ま す 、 入 か へ ^ ^ 、
りこ
たる、 し か か ら さ き の 、 はまちに、 こま に む ち う つ 、 し
ゆ とも
あ り 、 あ る ひ は 、へう^ ^ た る 、兔 ん は 、こ す い の 、 あ さ な き に 、
船にさをさす、 たいしゆもあり
しかしなから、 わか身より、事 を お こ す 、 わさわひな
しやう、
て は 、 あ ん な い し や な り け れ は 、 爰 か し こ の 、 っ ま り ^ ^ に、
よ せ て は 、 お ほ勢 な れ は 、 う た る 乂 を も 、 か へ り み す 、 ふ せ き
お も ひ ^ ^ に、 よ せ け る 其 中 に 、 け い か い り つ し は 、 こ の ら ん
れ は 、 人 よ り さ き に 、 一かっせんして、 か は ね を 、 せ ん ち や う
三六三
よ せ あ は せ 、 を ひ 立 - ^ 、 あ ひ た \ かふ、 三 と き は か り の 、 か
つせんに、 よ せ て 、 三 千 余 人 、 手 を を ひ て 、 は ん し は ん し や う
な り け れ は 、 城 の う ち 、 いよ^ - 、 か つ に 乗 て 、 手 さ き を 、 ま
はし、 う ち 出 る
か く て は 、 此 し や う 、し ん み ら い ざ い を ふ る と も 、お と し つ へ し
共 、 み え さ る あ ひ た 、け い か い 、大 き に い か り て 、 坤 け る は 、 さ
ん も ん 」よ り 此 寺 へ 、よ せ て 、 せ め し 事 、 す て に 六 .か と な り 、
度 の た 乂 か ひ 、 これにをとらすと、 いへとも、是 ほ と に 、 せ
ゐ
ん
た
に
三六四
二字ナシ
^^*に、 火 を か く る に 、 ま か せ 、 た ち ま ち に 、
ふひて、 よ袅ん、 四 方に、 お ほ ひ け れ は 、 こん堂、 かうたう、
しゆろうたう、きやうさう、 しやうけう三まいのあみたたう、
ふけん堂、きやうくはんによほうたう、 けいだいくはしやうの
御ほんはう、 ちせう大師の御袅いたう、 三もんせきの御ばうに
よ り ほかは、 の こ る所 、
い た る ま て 、 そ ふ し て 、 三 千 六 百 余 、 一 時 の け ふ り と 、な 旧Iは
て X、 し ん ら 大 明 神 の 、 御 し
I やたん
0
—
一 .も 、 な か り け り
さるほとに、 わかきみ、 三井寺の、 かやうになりぬるをも、 し
り給はす、石のろうのなかに、 をしこめられて、あけくれは、
よも山の物かたりして、 わらひけるか、 われらか、 おもしろき
なけきしつみて、 おはしける処に、 てんくとも、あつまりて、
も ん と
に、 わ れ こ そ 、 け う か る う た を 、 よ み て さ ふ ら ふ と 、 い へ は 、
の、も ん し ゆ た ち 、か な た こ な た へ 、 に げ さ せ 給 ふ か 、 お か し さ
ゎ
や、 さらす は 、 これほ と の い く さ は 、 いてきじ、 しやうこゐん
な る て ん く 、 か し こ く こ そ 、 此 む め 若 き み を 、と り 」た り け る そ
ふ 、 三 井 寺 の 、 か っ せ ん は 、 き た い の 見 事 か な と 申 せ は 、 そは
あ る け ん ふ つ も い て き て 、 一 ふ せ い あ り と 、 思 ひ つ る に 、 きの
みこしふり、 五山の僧の
のこといたし、 しらかはほこのそらいんじ、 さんもんなんとの
たう
•た て 、 こ れ ら に こ そ は 、 け ふ
六字ナシ
と 思 ふ 事 は 、 せ う ま ふ 、 つじa 、 こ い さ か ひ 、 ろ ん の す ま ふ
け ん は き て 、 や け ん ほ り の 、 そ こ せ は な る 中 へ 、 か は と 、 とひ
しやうきたをしのはらひきり、
け い か い か 、 と う じ ゆ く 、 わ か た う 、 五 百 よ 人 、は し り ち り て 、
思 ひ - ^ に、 お ち て 行
ふ せ き け る つ は も の 、 三 百 余 人 、あ し を も た め す 、 追 た て ら れ 、
く な は 、 四かく八方を、きつてまはりけるに、 によいこえを、
い そ う 」つ な み の ま く り き り 、ら ん も ん 、 ひ し 力 た 、 く も て 力
し さ り て す 乂 む 、 ^§か け き り 、
さ け き り 、 け さ か け 、 く る ま き り 、 そ む き て も て る 、一 か た な 、
たれ入て、 ひ は な をちらしてそ、 きつたりける
ち か け 、 ゆ ら り と 、 は ね こ え て 、 かたき、 三 百 余 人 か 中 へ 、 み
を 、ふ ん て 、は ね あ か り 、 ぬ り ま は し た る 、 へ い は し ら に 、 手 う
おり、 ニ 町 あ ま り に 、 み え た る 、 き り き し の 上 へ た て の さ ん
し、 はきて三字ナシ
て、 う め た ら ん に 、 な と か 此 城 、 ■せ め や ふ ら さ ら ん と 、 く は う
め か ね た る 事 、 い ま た な し 、 い く 程 も な き 、 ほ り 一 •、 死 人 に
«?
ち こ の 、 そ て を し ほ り て 見 る に 、 し ら た ま ヵ 、何 そ と 、人 の と う
せ給へ、 たやすく、 ふるさとへ、 つけ参らせん、 とて、翁 、此
はかりに、 な み た の つ ゆ 、 し た 乂 り た り 、 おきな、 この露を、
そ は な る て ん く 、 何 と よ み た る そ と 、 とへは
ねをのみそなく
つ
さ う の た な こ X ろ に い れ て 、し は ら く 、ゆ る か し ゐ た る
つXみ 、 地 を う ご か し 、 い な ひ か り の ひ か り 、 天 に ひ ら め く 、
此 と き に 、 ら う お う 、 に は か に 、 大 り う に な り て 、ら い て ん の 」
じや
みな、 たう^ - たる大水に、 なりにけり
に、 一一.の つ ゆ 、 し た い に 、 大 き に な り て 、い し の ろ う の う ち 1
わけて、
ゆ の た ま 、 ほ と な く 、 ま り の せ い に な り ぬ 、こ れ を ま た 、ニ .に
大きさ
ひたりの手に入て、 くすりを、くはんすることくにするに、 つ
う か り け る 、 は ち み ゐ て ら の 、あ り さ ま や 、 か い つ く り て は 、
と 、 よみて候つると、 かたれは、座 中 の て ん く と も 、 みな、 え
つ^ に 入 て そ 、 わ ら ひ け る
わ か き み は 、 これを、 き 乂 給 ひ て 、 あ な あ さ ま し や 、 さ て は 、
た わ ら は と 共 にI'う ち
み ゐ て ら 、 われゆへに、 ほ ろ ひにけるにやと、 おもひたまへと
も 、く は し く 、 とふへき人もなし、
わ ひ て 、 な く よ り ほ か の 、」事 も な し
しやくまくの、 こけのしつくに、袖 ぬれて、 なみたの雨の、
わかきみかくはかり、
のみならす、 あ ら ゆ る 所 の 、 た う そ く な ん に ょ 、 くもにのせ
う せ け れ は 、 り う わ ふ 、 石 の ろ う を 、け や ふ り て 、 ち こ と 、童 と
はらは
さ し も 、 き せ い の て ん く 共 、 お ち わ な \き て 、 四 は う に 、 に げ
か 乂 々 け る と こ ろ に 、 あ は ぢ の 国 の 、 し ん も つ と て 、 八十はか
て、 だ い り の き う せ き 、 し ん せ ん 袅 ん の 、 ほ と り に て 、 お ろ し
たりけり
見 て 、 も し そ の 御 袖 や 、 ぬ れ て 候 と 、 X へは、 ち こ も 、 童 も 、
わ か き |阳|
と 、 わ ら は と は 、 我 ふ る 里 を 、 た つ ね て 、 はなその
へ、 ゆ き た ま ひ た れ は 、 か は ら を な ら へ て 、 つ く り た り し 、 く
へりぬ
た う そ く 男 女 、 み な 、 是 ょ り わ か れ て 、 を の か さ ま '''^に、 か
と も に 、 す み な れ し 所 を 、 か り そ め な か ら 、 立 出 て 、 此いしの
三六五
あ た り な る 、 そ う は う に て 、 事 の や う を 、 た つ ね と へ は 、 さた
人もなし
う て ん 、 ろうかく、 みな、 や け の ^
一はらとなりて、 事 と ふ へ き
よ ろ こ ひ て 、 さ 候 は X、
われにとりつか
ろ う に 、 を し こ め ら れ て 候 へ は 、ち 乂 は X、 師 し や う の な け き 、
おほきに、
こそは、 袖 も 、 ぬ れ 候 ら め と そ 、 こたへける
ら う お う 、
さ
お も ひ や ら る \ た ひ こ と に 、な み た お ち 」す と 、い ふ 事 な け れ は 、
一両日ありて、 こ の を き な 、 ち こ と わ ら は の 、 な き か な し む を
り
た か て こ て に 、 い ま し め て 、 こ れ も 、 石 の ろ う の 内 へ 、 いれ た
り な る 、 ら う お う の、 ひ ん は つ 、い と し ろ く 、 や せ た り け る を 、
かはくまそなき
•0
し し ん との
は き ん た ち 、わ
力」
き み を 、ひ え の 一 へ 、 う は は れ
さ-せ た ま ひ 候 を 、 御 さ と に 、し ろ し め さ れ ぬ 事 は 、 あ ら し と て 、
兰 井 て ら よ り 、 を し よ せ て 、 や き は ら い て 候 な り と そ 、 かたり
ける
お と X の御ゆく系、 とはん ほ と 、 たちよるへき、 やともなけれ
は、 さ ら は 、 三 井 寺 に 、 ゆ き て 、 も ん し ゆ の 御 事 を も 、 た つ ね
つもの こ ら
一
.
申 さ ん と て 、 た と る --^^、 わ ら は に 、 て を ひ か れ て 、 み ゐ て ら
ナシ
く さ の 、つ ゆ に な き 、か う さ
に、 行 て 、 見 た ま へ は 、 ぶ つ か く 、 そ う は う も 、
す、 やきはらはれて、 かんていの、
い し す へ の 石 も 、 や け く た け て 、 こけのみと
んの、 松 風 の 、 き ん す る 、 こ れ そ 、 わ か す み し 、 む か し の あ と
よ と て、 み れ は 、
かしき、 かせもなし
り も 、 く れ な ゐ に へ ん し 、の き は の む め も 、え た か れ て 、袖 な つ 」
I gな
l れ は 、 し ん り よ に も た か ひ 、人 く ち に も 、さこ
物 こ と に 、 か は り は て ぬ る 、 よ の あ は れ 、 た X、 わ れ ゆ へ な り
し、 わ さ わ
ぬ、 とも二字ナシ
そ か X る ら め と 、 あ さ ま し く 、 お ほ え て 、見 る に 、め も あ て ら れ
も
三六六
る 人 .な く は 、 心 の ま \ に い か な る ふ ち に
\ ^
も 、身
- 0/
申 け れ は 、 わ か き み 、 い ま は た X、 う き 世 に あ ら し と •、 ふか
と り と \む
く 、 ^ も ひ さ た め 」た ま ふ 、御 こ ^
一 ろ ありて、 よ し や 、
かきたまふ
を し つ め ん と 、 う れ し く 、 お ほ し め し 給 て 、 な く '^^、 ふ み を
わ ら は 、 御 ふ み 取 て 、 山 へ た つ ね の ほ り た れ は 、 り つ し 、 童を
う ち 見 る よ り も 、 さ ら に 、 も の も い ひ え す 、 さ め -^ 、 と そ 、
き け る 、 わ ら は も 、 な み た を を し の こ ひ て 、 此 あ ひ た 、 ありつ
しひらきたるに、あやしきうたあり
る 事 と も 、 か た ら ん と す れ は 、 ま つ 御 文 を 、 見 候 ん と て 、を
な
わ か 身 さ て 、 し つ み は て な は 、ふ か き せ の 、 そ こ ま て て ら せ 、
やまのはの月
り つ し 、 い ろ を う し な ひ て 、 こ れ 御 ら ん 候 へ 、 御 う た の 、 心」
る 物 も と り あ へ す 、 た \ 二 人 、む ち を あ け て は 、 は せ ゆ き け る 、
も と な く 候 へ は 、 なに一こニと も 、 み ち す か ら 、御 物 か た り 候 へ 、
I
ま つ い そ き 参 り 候 は ん と て 、 さ か も と よ り 、 さ き に た て >1、
と
大 津 を す き て ゆ く 処 に 、 たひ人、 あ ま た 行あひて、 あないたは
しや、 こ の ち こ 、 い か な る う ら み あ り て か 、 身 を な け た ま ふ ら
ん、 ち X は し し や う 、 い か に な け き た ま は ん す ら ん と 、 い
し ん ら 大 明 神 の 、 御はい
ひ て と を る 、 あ や し や と 、 思 ひ て 、 く は し く と ひ け れ は 、 たひ
も 、な こ り を を し み て 、
その夜は、
て ん に 、 こ す い の 月 を 、 な か め て 、 な き あ か し つ X、 し や う こ
ねと
ゐ ん は 、 も し 、 石 山 に や 、 御 座 あ る ら ん と 、た つ ね 行 た れ と も 、
ひ と 、 た ち と Xま り て 、 た X いま、 せ た の は し を 、 わ た り 候 つ
うはいの、小袖に、すいかんの下はかり、 めされて候ひしか、
るところに、御とし十六七に、 みえさせ給ひ候つるちこの、 こ
こ れ に も 、 御 座 な し と 、 申 せ は 、 童 、 さ 候 は X、 こ よ ひ は 、
さ ん け い の 人 の て い に て 、ほ ん た う に 、 御 座 候 へ 、 そ れ か し は 、
山 へ ま か り の ほ り 候 て 、り っ し の 御 ば う を 、 た つ ね 申 候 は ん と 、
に し に む か ひ て 、 念 仏 、 十 へ ん は か り 」と な へ て 、御 身 を 、 な け
二字ナシ
ふ か き 、 い ろ か と み え て 、 い は の か げ に 、 な か れ か Xり た る 、
か ほ に て 、 た け な る か み 、 な か れ .も に 、 み た れ か \ り て 、 い
け し き の あ る を 、 ふ ね さ し ょ せ て 、」見 け れ は 、 あ る も む な し き
はこすなみに、 ゆられいたり
さ せ た ま ひ 候 つ る ほ と に 、 あ ま り の い た は し さ に 、 われらやか
め申候つれとも、 みえさせたまひ候はぬほとに、 ちからなく、
るに、 ことはなかるへし
も -の
! こ ひ あ り し 、ま な し り も 、
ふ た か り て 、 色 へ ん し ぬ れ は 、 見 る に 、 目 も あ て ら れ す 、 かた
か は ら ね と も 、 一たひ袅めは、
のいろ、 こ ほ れ て か 乂 り し 、 み と り の か み , わ り な き か ほ は 、
な る 、 む ね の あ た り も 、 ひ へ は て ぬ 、 み た れ て 残 る 、 まゆすみ
れ て い ろ こ き 、 く れ な い の 、 し ほ '^•と し た る に 、 雪 の こ と く
なく ^ ^ 、 と り あ け て 、 かほを、 ひさに、 か き の せたれは、 ぬ
て、水にいり候て、 その へ ん の 、 ふちのそこまて、 さ か し もと
まかりすき候なりと、 かたりて、 なみた を 、 はら^ - とそ、 こ
ほしける
旅 人 の 、 か た る を 聞 て 、 と し の ほ と 、 い し や う の や う 、 うたか
ふ所も なけれは、り つ し も 、 わ ら は も 、心 あ き れ 、 あ し て も な
へて、 や か て 、 ふ し ぬ へ き 、 こ ^一ちす れ と も 、む ま を は や め て 、
すいしやう
は し の つ め に 、 行 て み る に 、 い つ も 、 御 身 を は な さ て 、 かけた
ま ひ し 、 き ん ら ん の 、 ほ そ を のまほりに、 へきるりのしゆす、
取 そ へ て 、 は し *^^ら に 、 か け ら れ た り 、 こ れ を み て 、 り つ し
け る を 、 と う し ゆ く 、 わ か と う 、 あ ま た ょ り て 、と \ め け れ は 、
しがひ
す て を か せ た ま ひ け る そ と 、」地 に ふ し 、 か な し ひ け れ 共 、 らつ
か な し む 、 わ ら は 、 あ し を 、 ふ と こ ろ に い れ て 、わ れ を は な と 、
り っ し は 、 かほを、 ひ さ に 、 か き のせて、 天 に あ ふ き て 、 なき
ょしや、 其 む な し き 、 か ら か な り と も、 一め見てのちにこそ、
に し に か た ふ き て 、 又、 な か そ ら に 、 か へ る 事 な け れ は 、 さけ
くは、 えたをしらて、 ニたひ、花さくならひなく、 さんけつ、
も 、 童 も 、」お な し な か れ に 、 み を し つ め ん と て 、 た へ こ か れ に
と も か く も な ら め と 、 お も ひ て 、 二 人 は と も に 、 つなきすてた
二人のおもひは、 いふにおょはす、 とぅしゆくなとのものまて
る
も、 あ た り の こ け に 、 ふ し ま ろ ひ て 、 こ兔 も を し ま す 、 なきか
ぶこ袅さへ、 かれっきて、 ちのなみた、袖 行 水 と そ 、 なかれけ
ともなし
て 、 岩 の は さ ま 、 き し の か け ま て 、 の こ る 所 な く 、 さ が し けれ
か く て 、 扨 し も 、 あ る へ き 事 な ら ね は 、 そ の 夜 、 や か て 、 ちか
なしむ
る 、 小 舟 に の り て 、 ふ か き 、 ふ ち の そ こ を 、の そ き も とむれ共、
か く て 、 は る か に 、 時 う つ り て 、 く こ の せ と 、い ふ と こ ろ ま て 、
.
さらになし、 わかとう、 しもほうしともは、 みなはたかになり
も と め く たりけれは、 せかれてとまる、 も み ちはの、 くれなゐ
三六七
と う し ゆ く 、 わかとうは、けふりつきて、
か へ れ と も 、 りつし
き 山 の 、 とりへ野にて、むなしきけふりと、なし奉りてのち、
と 、 わ ら は と は 、か へ ら す し て 、 む な し き け ふ り に 、 む か ひ て 、
.
三日まて、 なきゐたりけるか、同こけにも、うつもれはや」 と
はおもへ共、 いまはのきはに、 よみて、 を く り た ま ひ し 、御う
たに、 そこまててらせ、 山のはの月と、 ありしは、 なからんあ
と を と ぶ ら へ と の 、ためにてこそあれとおもひけれは、こ
と さ う しけるか、後には、
に し 山 、 い は く ら に 、 あん
よ り 、 やまへもかへらす、 そのゆいこつを、くびにかけて、
来りた
ま ふ 、
いきほひ
三六八
あ り 、 あ や し く 、
誰 な る ら ん と 、め も か れ
そ う しやうにや、
し うそふの、
大しやう、
す、 これをみれは、あるひは、 ほうむの、大
みえたるかうそう、四方こしにのりて、
せ ん こ に 、 い に う し 、 あ る ひ は 、 い く は ん た X しき、 そくたい
ふ 人 、 たい■
けんの、 たまを力
さり
の か く 、 か つ ち う を た い せ る 、」す い ひ や う を 、 め し く し 、 或 は
五字ナシ
よ う し よ く 、 せんけんたる、
た る に 、 のりて、 し ち よ す 人 、 ほ う り を は き 、 き ん れ ん の 、 か
ナシ
ふ り て 、 さ ゆ う に 、 あ ひ し た か へ り 、 あ と に さ か り た る 、 しち
X
きんりん
や う に 、 これは、 い か な る 人 に て 、 御 わ た り 候 そ と 、 と へ は 、
い.
また、 し ら せたまひ候はすや、 これこそ、東さか も と に 御 座
し つ を 、 む す ひ て そ 、 つ と め お こ な ひ け る 、 わ ら は 、 かみをお
■
ろし、 かう や さ ん に そ 、 とぢこもりける
此 し や う か く 、 み な 、 こ し く る ま よ り 、 御 お り あ り て 、 まくの
候 、 日 よ し さ ん わ う に て 、 御 わ た り 候 へ と そ 、 こたへける
し ゆ と 、 三 十 余 人 、 い ま は 、た ち か へ り て 、 住 寺 す へ き や う も 、
う ち へ 、 いり給へは、 しんら大明神、 たまのかふりを、 た \し
其 の ち 、 お ん じ や う し の 、 三 ま や か い た ん の 、 ちやうきやうの
な か り け れ は 、 よ の 中 も 、 あ ち き な く 、 お ほ え て 、 み な 、 りさ
かへらせたまひぬ
し
ん
しんら大明神、 たまのはしを、 御あゆみありて、 たち帰らせ給
るに、 みやうしん、 しもんのそとまて、 おくりたてまつりて、
き に て 、 よすてに、 あ け ん とすれは、 さんわふ、 くはんきよな
りを、 かたふけて、 まこと に 、御 心 た の し み た ま へ る 、 御けし
■
給 ふ 、 ひ ん し ゆ 御 座 候 た ま わ .て、 ..け ん し や く の 、 れ い あ
(
り脱力)
り 、 ふ き よ く の 、 ^ ん あ り 、 し」ん ら 大 み よ う し ん 、た ま の か ふ
• • 、•
,て
く し 、 いきを、 か い つ く ろ い 、 き ん て ん の う ち よ り 、
汁一.
字 サ ..........
さて
ん せ ん と 、 思 ひ け る か 、 い ま 一 と 、 じ も ん の や け あ と に 、 たち
か へ り 、」な い せ う 、 し ん ^ ^ の、 ほ う せ を も 奉 り 、 ほ っ し ん 、
し ゆ 行 の 、 い と ま を も 、 申 さ は や と 、 お も ひ て 、 み な -'^、 し
けける
>1
ん ら 大 明 神 の 、 御 ま へ に 、 つ や し て 、 こ れ を か き り の 、 ほうみ
.
をそ、 さ
夜 ふ く る ほ と に な り て 、 ゆ め う つ ^一の、 さ か ひ も し ら ぬ に 、 ひ
んかしのかたの、 こくうより、 むまをはしらかし、くるまを、
ざ
と ^ろ
1 力 す こ 系 し て 、 ぉ ひ た 乂 し き 、 さ ぃ に ん 、か ぅ か く の 、
.'y
く の
給 為 •に
け た う を 、 い た さ ん す る 事 の 、 うれしさ
ら さ ら ん や 、 た \、 こ れ み た り に よ つ て 、 け い か い が 、 ほ つ し
な
こうりうのこと
二字ナシ
く
はんおんの、
とうな
く と 、 まことに、ありかたき、
大じひなるをやと、
さては、 わかきみの、身なけたまひしも、く は ん お ん の 、 し
し さ ま に 、 かたりける
ゆ れ は 、 っ う や 大 し う 、 三 十 余 人 、 一 と に ゆ め さ め て 、 おな
お ほ せ ら れ て 、明 神 、き ん ち や う の う ち へ 、 い ら せ 給 ふ と 、 おほ
んへん化のと
は ん 」き の 心 を 、な し つ る な り 、 石 や ま の
ために、 らいりんあり、 我も 、 かんたんに、 たへすして、 く
に、 は ん じ を わ す れ ぬ る を や 、 さ ん 王 も 、 こ れ を か ん し 給 は ん
んして、 そ く は
け ち え ん た り 、 一いのほうぶつ、 あ に し や う め つ の 、 さうなか
わかてらの、
ひける時、 つうやの大しう一人、 明 神 の 御 ま へ に 、 ひさまつき
ち よ くさいに、 まかせ、
て、 な み た を な か し て 、 申 け る は 、 三 ま や か い た ん の 事 は 、 ゐ
わふの、
よ く さ い を 」そ む き 、し ゆ ^ ^
を、 そ ん し て 、 こうきやう、 つ か ま つ り し こ と に て 候 へ は 、
0
一 •も 、 し ゆ と の 、 ひ か 事 と は 、 そ ん し 候 は す 、 し か る を 、 さ
ん も ん 、み た り に 、 た ひ ^ ^ の、ち
の、 ま し や う を な し て 、 た う じ を 、 や き は ら ひ つ れ は 、 し ん め
し、 ぶ つ た も 、 さ こ そ 御 心 を 、な や ま さ れ 候 ら ん と こ そ 、存 て 候
r、 当 寺 て き た い の さ ん 門 、お う こ の か み 、 日 よ し さ ん わ ふ に 、
た い し て 、 ま こ と に 、 御 こ \ ろ よ け に 、 袅 み を ふ く み 、 たのし
は か り か た く こ そ 、 存 候 へ と 、 申 け れ は 、 明 神 、 つうやの大し
みを、 な さ せ た ま ひ 候 は 、 いかなる、 し ん り よ に て 候 や ら ん 、
よへんなり、 しもんのやけたるも、 さいとのはうへんなりと、
うきよのゆめのさめ■
と .....
してかくなむ
のちにて、 残 り の と し を 、 をくりたまふ
に わ け て 、 ま つ の 」お ち は を 、た き 乂 と し て 、 ふ し こ の み を 、 い
っへ、 た っ ね 行 て み れ は 、 三 け ん の く さ や の 、 な か は を 、 く も
せんざい上人と、 なをかへて、 す み たまふ、 いはくらのあんし
きもに め い じ け れ は 、 三十余人の し ゆ と 、 みなほっし
んして、 と も に 、 仏 道 を し ゆ き や う せ ん と て 、 か の け い か い 、
しん<
くはしく
の い は れ あ る に 、 に た り と い へ 共 、 こ れ は み な 、 一くのくはん
う を 、 御 ま へ に め さ れ て 、 し ゆ と の 、 う ら み 申 所 、 一わ^-、 そ
け ん な り 、 そ れ 、 し ん め い 、 ふ つ だ の 、り し や う 、 は う へ ん を 、
め
さ うをもつて、
ん い に は 、 あ ら す 、 こ れ を 」ひ し て 、は ち を お こ な ふ も 、じ ひ の 、
た る X日、 か れ を せ し て 、 福 を あ た へ た ま ふ も 、 し ん し つ の ほ
おもかりしゆへなり、 た .
^
、 し ゆ つ き や く の 、ニ
つゐに、 む し や う !
^提 に 、 い ら し め ん か た め な れ は 、 わ か よ ろ
にしに行らん
むかしみし、 月のひかりを、 しるへにて、 こよひやきみか、
と、 し よ ゐ ん の か へ に 、 か き つ け に け る を 、 み か と 、 かきりな
こふ処、 人 い ま た 、 し る へ か ら す 、 ふ つ か く 、 そ う は う の 、 や
ぶつ
よ う ろ ん し や う け う の 、仏 し つ し た る は 、こ れ を 、し よ し や の 、
»
けたるは、ざう糸いするに、 さいせつの、 りやくあるへし、き
三六九
しゆ
く 、 袅 い か ん あ り て 、 新 こ き ん の し . つ う の 部 に そ 、入 さ せ
と く 、 か な ら す と や 、 あ る 事 な れ は 、 い と ふ と す れ と も 、 おな
給ひける
み や こ ち か き 所 に 、 て ら を た て X、 人 を も 、 り や く せ ん と て 、
し さ ま な り 、 さ'
うもんの人、 とうさいより、来りあつまりて、
っ三字ナシ
ひ か し 山 に う ん こ し と い ふ 、 御 た う を 、 こ ん り う し て 、 ほん
そ ん に 、 三 尊 ら い か ふ の き を お こ 」な ふ 、廿 五 の ほ 薩 き か く か や
う に と X のへて、 わ ふ じ や う 人 を 、 む か へ た ま ふ あ り さ ま 、 見
う
つ き て 、 こ X に、 ら い け い す 、な ん に よ 、 た な こ X ろ を あ は せ 、
る人、 しん^ ^ を お こ さ す と い ふ 事 な し 、 おんこん、 くひすを
これをきやうらいす
おとさすと、 い
ほ と け の た ね は 、 袅 ん よ り 、 お こ る 事 な れ は 、 ま こ と に 、 たん
.
(
寛永十九年安田十兵衛版ヲ以テ校合)
、 夜 と 共 に た ち 出 に け る と な り 」 .......
と く と 、 かたれは、 き く ひとみな、 な みたを、
し人間の行未たつときもいやしきも後生を心かけ給は
ん事かんようとこそ申伝へけれ。
ふ事なくし
^*