返り点のカッコ付き表示 およびレ点の位置 湯城吉信(ゆうきよしのぶ) 大阪府立工業高等専門学校 自己紹介 • 大阪大学文学部中国哲学科出身 • 現在は、大阪府立高専で、国語や中国語を 教えるかたわら、懐徳堂研究に従事している。 • 最近は、特に、中井履軒の自然科学関係の 著作を研究対象としている〔持参論考「中井 履軒の宇宙観―その天文関係図を読む」参 照〕。 cf.〔懐徳堂〕:江戸時代の大坂の漢学塾。 今日の発表について • 「漢文訓読」特に「返り点」という記号に特化し たもの。 • 「瑣末である」「本質的でない」として、全国漢 文教育学会から、発表を拒否された。 • 対象は瑣末かもしれないが、意味のないこと ではないと考える。 • 広い分野の方のご意見を伺いたい。 きっかけ • 和算研究者の島野達雄氏と訓点付き漢文を 書き下し文に直すコンピュータソフトができな いかという話が発端。 • 数学出身の島野達雄氏が、訓読のアルゴリ ズム分析を行った〔持参論考参照〕。 cf.九段高校篠崎秀樹氏が「漢文エディタ」なる ソフトを公開している。 結論 • 現行の返り点(レ点、一二点、上下点など)は、 カッコだけで置き換えることができる。 読レ書 → 読(書) 読二其書一 → 読(其書) →そうすると、見えてくるものがある。 • レ点を下の字に付ける伝統的表示は十分に 意味のあるものであった。 カッコ付き表示の実際 • 読二漢書一 → 読(漢書) • 有下朋自二遠方一来上 → 有(朋自(遠方)来) • 我使三彼読二其書一 → 我使(彼読(其書)) • 不レ看レ書 → 不(看(書)) カッコ付き表示から見えるもの • 文の構造の明確化(入れ子構造) ←→〔返り点〕順番 *私の読み方(弧を使う)に近い。 *カッコはどこからはずしてもよい。 *グラフ表示 • レ点の特殊性 *始点と終点 レ点の位置 • 〔現在〕:漢字の下についていると考える。 ex. 不レ 問 ↑ (実はこの間の明治~戦前は微妙) ↓ • 〔江戸時代以前〕:漢字の上についていると考 えた。 ex. 不 レ問 現在のレ点の位置の理由 • 教育上の都合 「左下に返り点がある字は読む順番を操作す る」 *他の返り点と統一。 江戸時代のレ点の位置の理由 • 〔原田種成氏〕(『私の漢文講義』) 一点と組み合わさる場合、一点が上、レ点が 下にあるから(歴史実証的説明)。 江戸時代のレ点の位置の理由 • 〔形態的分析〕 ○かりがね点?(『日国大』『大言海』には、 左右対称の噴水型の記号が描かれている) ○実物は、チェックのような記号 →「下を上に跳ね上げる記号」 (「鉤挑」という名(『大言海』)がぴったり ) レ点の位置の理由(江戸時代) • 〔歴史的分析〕 ○付ける立場から読む立場へ ・付ける立場…まず下の字に付ける ・読む立場…上の字から読む 私の提案 • 伝統に従い、改行時のレ点は次行冒頭に置く。 • レ点の説明 「他の返り点とは違い単独の記号であり、下を 上に跳ね上げる記号」 →ほとんどの教師・生徒が気づかないかもしれ ないが、疑問を感じる人のために、その形態 を留めておくことは必要。
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