(AEC)の発足 ~緩やかだが確実な自由化が今後も進む見込

ASEAN 経済共同体(AEC)の発足
∼緩やかだが確実な自由化が今後も進む見込∼
シンガポール駐在員事務所
佐藤
憲彦
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、11 月 22 日に開催した首脳会議で、ASEAN 経済共同体(AEC)を 12
月 31 日に発足させることを宣言しました。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、東南アジアの政治的安定
や経済成長等を目的に 1967 年に設立され、現在 10 ヶ国が加盟しています。その枠組みの中で ASEAN 自
由貿易地域(AFTA)の次の段階の経済統合として 2003 年から準備が進められてきたのが、ASEAN 経済共
同体(AEC)です。これは 1990 年代半ば以降の中国・インドに代表される新興大国に対抗する統合市場
の創設を目的としたものです。
ASEAN 経済共同体(AEC)はわかりやすく言えば「ヒト・モノ・カネの動きが自由化すること」ですが、
2015 年末までに実現するものとして以下の 4 つの戦略目標掲げて準備が進められてきました。
以下、戦略目標のうち、主要分野の進捗状況を纏めてみます。
① 関税撤廃
この分野は、既に 93 年より順次進められており、先行加盟 6 カ国(インドネシア、シンガポール、
タイ、フィリピン、ブルネイ、マレーシア)の間では、2010 年に関税が撤廃されている。後発 4 カ
国(カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス)でも既に 9 割超の関税が撤廃されており、残る品
目は、2018 年 1 月までに撤廃される見通しです。
② 非関税障壁の撤廃
この分野の撤廃は殆ど進んでいません。輸出時の手続き、検査などの規格基準の相互承認にはまだま
だ時間がかかるといわれ、関税撤廃の効果を相殺する恐れが残っています。
③ サービス自由化
2015 年末までに「ASEAN 資本企業」に対しては外資出資比率を 70%まで開放するという目標に対し
て、規制緩和が進んだシンガポールとそもそもサービス分野の投資規制が緩やかなカンボジアを除い
た国では期限内の目標達成は難しい状況です。
④ 人の移動の自由化
8 つの分野(エンジニア、看護師、建築士、測量技師、会計士、医師、歯科医、観光専門家)で資格
の相互承認協定が結ばれているが、協定発効済は 2 分野(エンジニア、建築士)にとどまっている状
況です。
このように、2015 年末の発足時の目標達成は不十分であり、劇的な変化が起こるとはいえません。これ
は、全会一致のコンセンサス方式で市場統合を漸進的に進めていることが背景にあります。2015 年末は
市場統合の通過点に過ぎず、以降の残された分野の自由化は確実に進んでいくと思われます。日本企業
もこの緩やかな変化を確実に捉えてビジネス展開を図ることが重要です。
(2016 年 1 月)
201601 広告審査済