本文(和文) - 日本公認会計士協会

IFRIC解釈指針案「外貨建取引と前渡・前受対価」に対する意見
平 成 28年 1 月 19日
日本公認会計士協会
日本公認会計士協会は、IFRS解釈指針委員会の継続的な努力に敬意を表すとともに、
IFRIC解釈指針案「外貨建取引と前渡・前受対価」に対するコメントの機会を歓迎する。
以下、解釈指針案の質問項目についてコメントする。
質問1――範囲
本解釈指針案は、外貨建取引を当初認識時にIAS 第21号の第21項から第22項に従って
換算するために使用する直物為替レートを決定する目的上の取引日の決定方法を扱
っている。本解釈指針案の範囲に含まれる外貨建取引は、本解釈指針案の第4項から
第6項に記述されている。
本解釈指針案の範囲の提案に同意するか。同意しない場合、どのようなことを提案す
るか、その理由は何か。
【コメント】
本解釈指針案の範囲の提案に同意するが、以下のコメントがある。
実務においては外貨建ての法人所得税の前払が生じることも想定されるため、これ
も本解釈指針の範囲に含めた方が有用であると考えられる。また、本解釈指針の範囲
に外貨建て支払の法人所得税を含めないのであれば、本解釈指針案のBC11項(b)の
説明だけではその理由が明確ではないと考えられるため、これをより明確にすべきと
考える。
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質問2――合意事項
本解釈指針案における合意事項は、非貨幣性の前払資産又は非貨幣性の繰延収益負債
に関連し、それらの認識の中止時に認識される資産、費用又は収益(あるいはその一
部)を当初認識時に換算するために使用する直物為替レートを決定する目的上の取引
日の決定方法に関するガイダンスを示している(第8項から第11項参照)。この合意
事項の根拠はBC22項からBC33項で説明されている。これには、本解釈指針案と、IAS
第21号の第28項から第29項に従って貨幣性項目について生じる為替差額の純損益に
おける表示の相互関係についての解釈指針委員会の検討が含まれている(BC32項から
BC33項参照)。
本解釈指針案で提案された合意事項に同意するか。同意しない場合、理由は何か、ま
た、どのような代替案を提案するか。
【コメント】
本解釈指針案で提案された合意事項に同意するが、以下のコメントがある。
対価が現金以外の形である取引(例:株式、在庫、サービス提供)である場合も本
解釈指針が適用されることを、結論の背景(BC13項)のみでなく、本解釈指針の合意
事項にも記載してより明確にすべきと考える。
また、本解釈指針案の設例2では、一時点で認識される収益に対する複数回の対価
受領が取り扱われている。しかし、前払金に関しては、IFRS第15号「顧客との契約か
ら生じる収益」により、重大な金融要素があると判断される場合には、金利部分につ
いて収益が増加する場合が考えられる。前払金に関する金利要素が重大な場合、会計
上の影響も大きくなる可能性があるため、その取扱いについて検討することが有用で
あると考えられる。
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質問3――経過措置
適用開始時に、企業は本解釈指針案を次のいずれかの方法で適用することになる。
(a) IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って遡及的に
(b) 本解釈指針案の範囲に含まれるすべての外貨建資産、費用及び収益のうち、当
初認識が次のいずれかの以後であるものについて将来に向かって
(i) 企業が本解釈指針案を最初に適用する報告期間の期首
(ii) 企業が本解釈指針案を最初に適用する報告期間の財務諸表において比較情
報として表示される過去の報告期間の期首
経過措置の提案に同意するか。同意しない場合、どのようなことを提案するか、その
理由は何か。
【コメント】
経過措置の提案に同意しない。
本解釈指針案には、IFRS既適用企業に対して2通りの移行軽減措置を設けているが、
一方で、初度適用企業には軽減措置を一切設けていない。これでは、IFRS既適用企業
と初度適用企業で、解釈指針案適用のための負担が異なることになる。
本解釈指針案のBC36項では、初度適用時の有形固定資産等に対するみなし原価の採
用による問題の解決を記述しているが、初度適用企業が本解釈指針案に従う目的のた
めだけに有形固定資産等にみなし原価としての公正価値測定を用いることは、初度適
用企業に不要なコストを生じさせる。一方で、初度適用企業の負担を既適用企業と同
等にするためには、移行日前の期間については当指針を免除する等の一定の軽減措置
を定めることで十分であると考えられる。
以
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上