ロシア北極圏のエネルギー資源 開発 - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

JOGMEC
K Y M C
JOGMEC 調査部
本村 眞澄
アナリシス
ロシア北極圏のエネルギー資源
開発
はじめに
2 0 1 4 年は、ロシア北極海で大規模な油田の発見のあった年として、石油関係者の間で長く記憶され
ることになるだろう。Rosneft と ExxonMobil がカラ(Kara)海で掘削した 1 坑の井戸が 1 0 億バレルの石
油の賦存を確認したのである。北極の氷の海に新たな石油地帯が出現した。
ロシアにおける大陸棚開発と言えば、北極海、オホーツク海、黒海での油ガス田開発を指す。このう
ち、黒海の北に隣接するアゾフ(Azov)海のガス田開発やオホーツク海のサハリン大陸棚での油ガス田
は歴史があり、既に一定の成果を上げてきた。そして、次なる焦点は北極海に移りつつあった。
2 0 1 4 年のウクライナ問題に起因する対露制裁で、北極海、大水深、シェール技術が禁輸の対象となっ
た。ロシアの北極海開発は技術的に大きな障壁を抱えることになり、更に同年夏から始まった油価の下
落は、ロシアのみならずアラスカ沖など米国での取り組みにも影を投げかけた。大規模な油田開発投資
は現状では取り組める状況にないが、広域の評価作業のような地道な仕事は、浮き沈みの激しいビジネ
スの世界からは一線を画して、粛々と続けられなくてはならないだろう。再び、油価が上昇してから、
慌てて評価活動を再開するような近視眼的な取り組みは避けるべきで、その時に備えて評価作業をしっ
かりと積み上げておくことが肝要である。そして、ロシアの当局もそのような態勢で臨もうとしている。
一方、アラスカ沖チャクチ(Chukchi)海で探鉱井を掘削していた Shell は、大きな成果を上げられず、
2 0 1 5 年 9 月に撤退を表明した* 1。同様に、Statoil も 1 1 月にチャクチ海から撤退を決めた* 2。早晩、探
鉱事業を展開していた ConocoPhillips も撤退に踏み切ると見られている。しかし、このような動きと、
ロシア側の北極海への取り組みとを混同してはならないと思われる。チャクチ海からの撤退は、同地域
が基本的にガスの傾向が強く、北米大陸のガス市場の状況から見て、当面は事業化の見込みが立たない
ことによる。一方、ロシアのカラ海では大規模な石油の賦存が確認されており、油価の回復とともに事
業化が可能となるものである。
以下、最近までのロシアを中心とする北極圏開発の成果と、今後の展望に関して述べる。
1. ロシア北極海での成果
(1)
カラ海での試掘
れは、北極圏の全ての資源ポテンシャルの高さを示すも
2 0 1 4 年は、北極海の開発で大きな成果を上げた年で
のではないが、少なくともカラ海が第一級の石油地帯で
あった。同年 8 月 9日にカラ海で、Rosneft と ExxonMobil
ある可能性を示すものであった。
によって掘削が開始された Universitetskaya-1 号井は、9
Rosneft が自らのウェブサイトで発表した内容は以下
月1 2 日に米政府の発表した制裁により、掘削の停止を余
のとおりである。
儀なくされ、1 9 日には作業が停止した。しかし、2 週間
ほど経過して、石油発見の噂が流れ出し、同月末には
Rosneft は、世界最北端に位置する石油探査井である
Rosneft から、北極圏最大となる油田が発見され、ポベ
Universitetskaya-1 号井での掘削を成功裡に完了した。
ダ(Pobeda)油田と名付けられたとの発表があった。こ
掘削の結果、カラ海の東 Prinovozemelsky-1 鉱区におい
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て石油を発見した。掘削は、全ての技術的・環境保全的
デンセート鉱床を発見したことを公表する。
分析により、
な基準と要件を遵守しつつ、1 カ月半という記録的な速
シベリアの軽質原油に匹敵する驚くべき軽質油のサンプ
さで行われた。掘削地点での水深は 8 1m、垂直坑井の
ルが取得できた。資源基盤評価では、ガスが 3,3 8 0 億㎥、
じゅんしゅ
深度は 2,1 1 3m。坑井は開放水域の緯度 7 4 度、ロシア本
土から 2 5 0km 離れた沖合の地点で掘削された。今回の
し すい
掘削により、岩石のサンプル採取、試錐(深度 6 0 0m で
直径 8.5 インチ〈2 2cm〉の坑)の掘削、および水平掘削の
サンプルの採取が行われた。専門家らは膨大な量の新し
い地質学的データを取得できた。当該データを分析した
後、鉱床の資源基盤に関する最終的な評価が可能となる
であろう。現在、地質データの解析を行っており、油田
の開発モデルを作成しているところである。
また、Rosneft の Igor Sechin 社長は、掘削の終了を祝
う式典で以下のように述べた。
出所:Rosneft ウェブサイト
「新しいカラ海の産油地域で、最初の石油・ガスコン
写1 カラ海でのUniversitetskaya-1号井の掘削状況
idge
vR
onoso
Lom
Novosibirskiye Ostrova
LAPTEV SEA
Greenland
in
g
ar
Severnaya Zemlya
M
lf
e
Sh
Svalbard
Franz Josef Land
Snøhvit
No
va
ya
Ze
ml
ya
EPNZ-3
EPNZ-1
TsentralnoBarentyevsky
(Eni)
Rusanov
Leningrad
Kharasavey
Shtokman
200Km
Murmansk
Severo Kildinsk
(Belokamenka)
Prirazlomnoye
Malyginskoye
Severo Tambey
Zapadono Tambey
YuzhnoTambey
Bovanenkov
Tota-Yakninskoye
Antipayutinskoye
Semakovskoye
Yamburg
Novoport
Zapolyarnoye
Kruzenstern
Medvezhye
Urengoy
pe
Medyn-more
Eu
ro
Murmansk
s
ight
rnL
the
Nor
al
Varandey-more
NordStream
EPNZ-2
Ya
m
Gazprom
7319/12 鉱区
Russia
Rosneft
n Boun
LNG(Planning)
Norw
Boundeagian
ry Claim
dary C
laim
LNG(Working)
KARA SEA
Perseevsky BARENTS
(Statoil)
SEA
Vyborg
出所:JOGMEC 作成
図1 ExxonMobilが2014年8月9日に掘削を開始したEPNZ(East Prinovozemelsky)-1鉱区の位置
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石油が 1 億トン(約 7.3 億バレル)超である。これは、東
(Kharasavey)ガス田が、Gazprom の前身であるガス工
Prinovozemelsky-1 ライセンス鉱区(カラ海)だけの評価
業省によって発見されており、ガスの賦存する地帯と見
である。全く新しい海洋鉱床での最初の探鉱掘削の結果
なされていた。ただし、半島を北北西 - 南南東に走る背
としては、驚異的なものと言える。この成果は、わが社
斜軸に沿って、多くのガス田が成立していたが、そのう
の友人でありパートナーでもある ExxonMobil、Nord
ち最も南西にあり、オビ(Ob)湾に面しているノボポル
A t l a n t i c D r i l l i n g、S c h l u m b e r g e r、H a l l i b u r t o n、
ト(Novoport)ガス田(後述)に関しては、1 9 8 0 年代に入
Weatherford、Baker Hughes、Trendsetter、FMC
り、深掘りを行うことにより、ガス層の下位に油層が分
Technologies の専門家とともに勝ち取ったものである。
布していることが確認された。
*3
われわれはこの油田を
〈Pobeda(勝利)
〉
と名付ける」 。
すなわち、これまでガス地帯と解されていたヤマル半
島とカラ海において、より深い層準で油層が存在するこ
非常に高揚した気分が伝わってくるスピーチである
とが予見されるようになった。
が、これまでの極地での石油ガス開発の歴史や、実証さ
地質学的な議論としては、W.C. Pusey(1 9 7 3)が世界
れたカラ海の資源ポテンシャルを考え合わせると、十分
の主要油田地帯における油田成立の条件を集積して提唱
にうなずけるものがある。
した「石油ウィンドウ」の概念が知られている(図 3)。こ
れは、6 5 ℃~ 1 6 0 ℃の間を指し、深度と地温勾配を縦
(2)
カラ海の探鉱の歴史と石油鉱床への期待
横の軸に配して表示したもので、これに挟まれるウィン
石油分野の人間がカラ海にこれだけの思いを寄せるの
ドウ域で石油が生成するというものである。
この概念は、
にはわけがあった。この海域では、ソ連時代の末期、
根源岩に関する地化学的な分析もなく、生成石油の移動
Gazprom が 探 鉱 に 当 っ て い た。 こ こ で、 ル サ ノ フ
の観点が欠けているなど、今日の石油地化学から見ると
(Rusanov)とレニングラード(Leningrad)の二つの巨大
かなり単純化されたもので、近年はあまり言及されるこ
ガス田を発見している。このガス埋蔵量は公表されてい
とはないが、世界の油田地帯を比較できる利点があるこ
ないが、バレンツ海の Shtokman(Shtokman)ガス田に
とから、ここで引用しておく。
ほぼ匹敵すると言われる。
西シベリア主部に分布する油田は、下部白亜系のネオ
このすぐ南にはヤマル半島があり、1 9 7 1 年にはこの
コム統(Neocomian)の砂岩層に形成され、図 3 の「石油
地域最大のボワネンコフ(Bovanenkov)ガス田(埋蔵量
ウィンドウ」に収まる。しかし、西シベリアの北部におい
1 7 1.5Tcf〈兆立法フィート〉
)
、1 9 7 4 年にはハラサベイ
ては、数多くの巨大ガス田が分布し、ロシアの天然ガス
0
深度
(m)
8
1
1,500
熱分解性ガス
4
2
3
EPNZ-2
EPNZ-3
4,500
2
2
1:西シベリアの油ガス田
Leningrad
Yamal
Peninsula
Kharasavey
2:ラマル油田
(南米)
℃
Rusanov
6,000
160
No
vay
aZ
em
lya
EPNZ-1
Pobeda
65
℃
Universitetskaya-1
6
石油
7
1
3,000
生物起源ガス
5
3:エコフィスク油田
(北海)
4:ガワール油田
(中東)
5:ウィルミントン油田
(北米)
7,500
6:ミナス油田
(スマトラ)
7:南阿賀油田
(日本)
Kara Sea
Kruzenstern
Bovanenkov
出所:諸報道を基に JOGMEC 作成
図2 ポべダ(Pobeda)油田の位置
8:八橋油田
(日本)
9,000
1
2
4
6
8
10
地温勾配
(℃/100m)
出所:W.C. Pusey(1973)に加筆
「石油ウィンドウ」の概念図。西シベリア
図3 のガスが生物起源ガスであることを示す* 4
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埋蔵量の 8 0 %が集まっているとされる。これらのガス層
ガス田としても十分な規模を有しているが、これは前述の
はより上位の上部白亜系のセノマン統
(Cenomanian)
の砂
とおり上部白亜系セノマン統のガス層と思われる。
岩層に形成されたものであるが、図 3 に戻って見ると、
(3)Rosneft と ExxonMobil の共同事業
これらは生物起源(biogenic)ガスに分類されるものであ
り、
「石油ウィンドウ」
内にある西シベリア油田の上位に
2 0 11 年 8 月、RosneftとExxonMobilは戦略的提携で合
成立していると解されている。これは、Bazhenov 層な
意し、西シベリアの Bazhenov 層でのシェールオイル開発
どの石油根源岩からではなく、白亜紀後期に、堆積物に
と、海域ではカラ海の東 Prinovozemelsky 鉱区 -1、-2、-3
発生したメタンガスが濃集したものである。すなわち、
での探鉱で合意した。ここでは、Rosneft がライセンスを
西シベリアの主要部に石油地帯があり、北部にはガス地
取得し、そこからExxonMobil が 3 3.3%の権益を取得する。
帯があるという生成地域の棲み分けが存在するのではな
更に2 0 1 3 年にチャクチ海 Severo-Vrangelevsky、Yuzhno-
す
く、北部のガス地帯の下位には、下部白亜系ネオコム統
の石油層の分布が期待されるということである。
Shtokhmanov
ノボポルト(Novoport)ガス田の深部の下部白亜系ネ
オコム統に石油層が発見されたことはむしろ当然であ
Prirazlomnoye
り、これに限らず西シベリアの北部に成立しているガス
Timan Pechora
Basin
田の下位にはいずれも石油賦存の可能性があると考えら
れた。問題はその深度で、セノマン統が 1,0 0 0m 前後の
Bovanenkov
South Khylchuyu(Lukoil)
Kharyaga
Usinskoye
Vankor(Rosneft)
Yamburg
Zapolyarnoye(Gazprom)
Urengoy
Medvezhye
Komsomol(Rosneft)
Krasnoleninsk Tyan(Surgut)
Kharampur
(TNK-BP)
Yurubchen
Priob(Rosneft)
(Rosneft)
Fedorov
Priob-South
Samotlor(TNK-BP)
(Gazprom Neft) Salym
深度で掘削が大変容易であるのに対して、西シベリア北
部でネオコム統が 3,0 0 0m 前後となり、2,0 0 0m 級の掘削
リグが主流であったソ連邦の時代には、容易に取り組み
Uvat(TNK-BP)
難い面があった。
Romashkino
更に問題を難しくしているのは、西シベリア北部はガス
Volga-Ural Basin
生産を生業としているGazprom が事業展開をしている地
出所:JOGMEC 作成
域であり、輸送インフラとしてガスパイプラインの整備が
Luginets(Rosneft)
West Siberia Basin
西シベリアにおける主要部の巨大
図4 油田と北部の巨大ガス田の分布
進められてきた。原油やコンデンセート等の液分を生産す
れば経済的に有利なことは分
かっていても、そのための石
油パイプライン網を広範に敷
設することは膨大な事業であ
り、長距離の輸送は後回しに
2
せざるを得なかった。液分は
Severo-Karsky
操業現場でのローカル消費に
充てられた。石油関係者にし
Shtokman
いた地域で、今回ついにカラ
海で念願の大規模油田の発見
を実現したのである。
AnisinskoNovosibirsky
Ust-Lensky
1
Prirazlomnoye
3
2
Rusanov
Leningrad
Bovanenkov
Medvezhye
Ust-Oleneksky
Magadan
Vankor
Lisyansky
Kashevarovsky
Yamburg
Urengoy
Zapolyarnoye
1
2
3
Sakhalin-1
Sakhalin-2
なお、ポベダ油田の確認埋
蔵 量 に 関 し て、 そ の 後 の
1
East
Prinovozemelsky
てみれば、膨大な石油の可能
性を前にしながら諦めかけて
YuzhnoChukotsky
SeveroVrangelevsky
Roseneft鉱区
Gazprom鉱区
堆積盆地
Chayanda
Priob
DeGolyer and MacNaughton
Yurubchen-Tohomo
Kovykta
による試算によれば、石油が
1 億1,3 0 0 万トン(約 8 億 4,0 0 0
万バレル)
、天燃ガス3,7 5 0 億
㎥
(13.2Tcf)
と拡大している*5。
出所:Rosneft のウェブサイトによる
図5 Rosneft と Gazprom が取得したノバヤ = ゼムリヤ以東の北極海鉱区
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
Chukotsky、ラプテフ(Laptev)海 Ust Oleneksky、Ust
長が 9 日のカラ海の現場での開坑式に参列しても、米政
Lensky、東シベリア海 Anisinsko Novosibirsky、カラ海
府からは特段の否定的なコメントはなく、黙認されたも
Severo-Karskyの6 鉱区を追加した(図5)
。また、2 0 1 4 年
のと受け止められた。
9 月初めには、両社は共同で 2 次元地震探鉱を Anisinsko
しかし、9 月 1 2 日の米国による制裁内容に「北極海で
*6
NovosibirskyとUst Oleneksky 両鉱区で実施した 。
の探鉱・生産を支援する機器類、サービス、技術の米国
カラ海は 冬 季は 結 氷し、冬 季に 氷 のない バレンツ
からの提供、輸出、再輸出」が含まれたことから、特に
(Barents)海よりも開発条件は厳しいが、ロシア東部のラ
北極海での海洋掘削における「サービスの提供」
に抵触す
プテフ海、東シベリア海より結氷度は低い。ExxonMobil
ると解されるようになった。
は、カラ海の、よりノバヤ = ゼムリャに近い堆積盆地周
米国と EU が各社に対しロシア北極圏の深海または
辺地域での石油の発見を目指すと表明していた。米国メ
シェール油田開発の支援禁止を発表した数日後の 9 月 1 9
ジャーは当初から浅い深度での石油狙いの探鉱を展開す
日に、掘削作業は停止された。米国政府はウクライナの
るもくろみであった。
情勢悪化をめぐる対ロシア制裁の一環として、米企業に
2 0 1 4 年 8 月 9 日、ExxonMobil と Rosneft は カ ラ 海 の
対して 9 月 2 6 日までに撤収を含む全ての掘削と試掘作
東 Prinovozemelsky 鉱区 -1 において、北緯 7 4 度という
業を停止するよう指示した* 7。
北極海最北の坑井 Universitetskaya-1 号井を開坑した。
9 月 2 9 日、ExxonMobil の 広 報 担 当 者 で あ る Alan
これに先立つ 7 月 3 1 日に EU(欧州連合)、8 月 6 日に米
Jeffers は、
「Rosneft との 1 0 件の共同事業のうち 9 件を、
政府がウクライナ問題に起因する経済制裁を発動したば
期限である 9 月 2 6 日までに中断した」と述べた。両社の
かりであった。米国および EU がロシアに対して課した
戦略的協力関係は、黒海大陸棚、北極圏、西シベリアに
制裁の内容を表 1 に示す。
お け る 探 鉱・ 開 発 に 及 ん で い た。Rosneft 側 は、
この掘削リグ“West Alpha”はノルウェーの Sea Drill
「ExxonMobil が本事業からの撤退を余儀なくされている
社のもので、その契約締結日が 7 月 3 0 日であり、EU に
が、Rosneft はこれらの事業の新しいパートナーを探す
よる経済制裁には 8 月 1 日以前に締結された契約には適
ことはない」と述べた。Rosneft の Sechin 社長は 2 0 1 4 年
用しないと記してあることから、抵触しないことは明ら
9 月、「制裁措置のせいで Rosneft との共同事業からの撤
かであった。ただし、米国の制裁に関しては曖昧な表現
退を余儀なくされているパートナー企業に対しは、当該
が多く、これに抵触するか否かは予断を許さなかった。
事業に復帰できるようにする選択肢を与える予定であ
Rosneft の Sechin 社長、ExxonMobil Russia の Waller 社
る」と述べた* 8。Rosneft は事業の枠組みを維持する姿勢
表1 EU、米国および日本による対露経済制裁の内容
制裁対象
EU
第1次
3月6日:3段階の対露制裁。まず、露との
(クリミア併合へ ビザ交渉凍結
の対応)
3月17日:露、クリミア当局者ら21名の
資産凍結・渡航禁止
3月21日:12名の資産凍結・渡航禁止
第2次
米国
日本
3月6日:露政府高官・軍関係者等の資産凍結・ 3月18日:ビザ緩和凍結、投
渡航禁止
資・宇宙・安全保障での協定
3月17日:7名の資産凍結・渡航禁止追加、
交渉の凍結
Yanukovichなど
3月20日:20名の資産凍結・渡航禁止追加、
Tymchenkoも
5 月 12 日:13 名、2 社 の 資 産 凍 結・ 4月28日:RosneftのSechin社長を含む7名、 4月29日:23名のビザ停止
渡航禁止
17社の資産凍結・渡航禁止
第3次
7 月 12 日:追加資産凍結・渡航禁止
7月16日:経済制裁。90日超の資金調達禁止 8月5日:クリミア、東部の不
(マレーシア航空 7 月 16 日:EIB、EBRD の融資禁止 (Gazprombank、VEB、Rosneft、Novatek)
安定化に関与する企業の資
機撃墜で強化)
7 月 31 日:大水深・北極・シェール 8月6日:大水深・北極海・シェール用機材の米 産凍結・輸入制限
オイル用機材の輸出は事前認可。ガス 国からの輸出禁止。3銀行と統一造船の米市
は非 対 象、8 月 1 日前 の契 約 は 不 問。 場調達禁止
90 日超の調達禁止(Sberbank、VTB)
9月12日:大水深・北極・シェールオイル
第4次
(ウクライナ東部 事業への掘削・テスト・検層等のサービ
停戦)
スの禁止。Rosneft、Transneft、
Gazpromneft に対する30日超の資金調
達の禁止
24名の資産凍結・渡航禁止
9月12日:5社(Gazprom、Lukoil、
9月24日:露の大手5行の日
GazpromNeft、Surgutneftegaz、Rosneft)に
本での資金調達を禁止。武器
対する大水深・北極海・シェール事業を支援
輸出・武器技術提供の制限
する機器、サービス、技術の提供禁止。5銀行
の30日超の調達禁止。Transneft、
GazpromNeftの90日超の社債禁止。9月26日
までの猶予
出所:JOGMEC 作成
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を明確にしたと言える。
る石油層が当然意識されてくる。
E x x o n M o b i l は 企 業 報 告 の な か で、 北 極 海 東
図 2 には、ポベダ油田のみが記入されているが、この
Prinovozemelsky-1、-2、-3、黒海の Tuapse 鉱区、西シ
3 鉱区内に同規模の未試掘構造が約 3 0 あると言われる。
ベリアシェールオイルに関する Rosneft との事業の停止
これらの全てが石油鉱床を形成している保証はないが、
*9
による損害を 2 0 1 4 年末時点で $1 0 億と推定した 。米
単純計算で最大 3 0 0 億バレル程度の石油が賦存している
政府による制裁で最も痛手を被ったのは、ロシアではな
可能性がある。すなわち、地球上で大規模な石油地帯が
*10
く、米国の民間企業であった
。
しかし同時に、2 0 1 4 年は約 1 0 年続いた高油価の時代
が終わりを告げた年でもあった。制裁がなくとも、カラ
海での探鉱が一時停止されることは予見されていたと言
える。ただし、GazpromNeft は、東シベリア海とチュ
コトカ
(Chukotka)
海にまたがる Severo-Vrangelevsky 鉱
区で 2 0 1 5 年夏に重磁力探査を、また 2 0 1 6 年には 2D 地
震探査を実施する予定であると述べている。ロシア側に
よる地道な調査活動は、依然として継続されている。
な お、2 0 1 5 年 に 入 り、 ロ シ ア・ エ ネ ル ギ ー 省 の
Anatoly Yanovsky 次官は、石油最大手 Rosneft は現在、
複数の中国企業との間で北極大陸棚開発への参加を交渉
中であると語った* 1 1。これが、カラ海を含むものか否
かは不明である。
(4)
西シベリア北部における原油発見の意義
西シベリア北部は産ガス地帯として知られ、この地域
にロシアの天然ガスの 8 割が賦存している。従来、この
出所:ウィキペディア
地域での探鉱はガス指向のものがほとんどであった。し
図6 北極海の大陸棚分布* 12
かし、これからの探鉱の主流として、ガス層の下位にあ
Chukchi Sea
East Siberian
Sea
Laptev
Sea
Barents Sea
● Shtokman
KhatangaYenisey
Prirazlomnoye ●
● Bovanenkov
Lena● Vankor Tunguska
Timan-Pechora
● Yamburg
Medvezhye ●● Urengoy
● Zapolyarnoye
Kara Sea
Volga-Ural
Lena-Vilyuy
East Siberia
● Chayanda
● Priob
Sakhalin
Okhotsk
● Sakhalin-1
● Sakhalin-2
● Yurubchen-Tohomo
West Siberia
● Kovykta
North Caspian
出所:JOGMEC 作成
図7 ロシアの堆積盆地の分布と北極海への延伸
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
一つ加わったことになる。
ロシアは北極海大陸棚の約 6 割にあたる 2 7 0 万 k ㎡を
擁し、北極海沿岸 5 カ国のなかでは最大の面積を占める
(図 6)
。またバレンツ海は陸域のティマン = ペチョラ盆
地、カラ海は西シベリア盆地という確立した産油ガス地
帯のそれぞれ北方延長に当たり、石油・天然ガスの資源
ポテンシャルは非常に高い(図 7)
。更に、メキシコ湾流
の流入するバレンツ海は冬季も結氷せず、作業条件とし
ては最も優れている。カラ海は冬季結氷するものの、氷
は薄く、厳冬期以外は作業が可能である(図 8)。大陸棚
の広がり、資源ポテンシャル、氷の条件の 3 点で、バレ
ンツ海とカラ海は最も恵まれた環境にある。
北極圏における石油ガス資源ポテンシャルの評価とし
て は、2 0 0 8 年 7 月 の 米 国 地 質 調 査 所(US Geological
Survey〈USGS〉
) に よ る Circum-Arctic Resource
Appraisal(CARA)*1 3 という資源調査報告が広く知られ
ている。これは北緯 6 6.5 6 °
以北を対象としたもので、ヤ
マル(Yamal)半島、タイミル(Taymyr)半島等の陸域も
出所:2009 年 3 月、National Snow and Ice Data Center、Boulder
Co. のウェブサイトより
入っており、厳密には北極海だけではないが、各国が探
図8 冬季の北極海での氷の最大分布(白い部分)
鉱活動を極地にまで拡大している地質学的な根拠を見る
180°
ARCT IC
CIRC LE
HB
YF
LS
AA
ZB
NCWF
NWC
VLK
CB
ESS
LV
AM
LSS
FS
LA
NWLS
LM
SB
TUN
YK
EB
90°W
90°E
NKB
NGS
WSB
EBB
AA
NZ
WGEC
BP
TPB
EGR
NM
MZB
JMM
未発見石油
>100億バレル
10 100億バレル
<10億バレル
量的評価のなされていない地域
炭化水素ポテンシャルの低い地域
0°
出所:USGS(2008)
図9 米国地質調査所(USGS)による北極圏石油資源ポテンシャル調査
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ことができる。
カラ海におけるポベダ油田の発見は、この評価に修正
これによれば、未発見資源量としては、石油が 9 0 0 億バ
を迫るものである。図 9 の地質区分のなかでの色分けは、
レルで世界の13%、天然ガスが1,6 7 0Tcf で世界の3 0%に
生成した未発見資源量を色合いで段階的に表したもので
あたる。石油はアラスカ・ノーススロープからチャクチ海
ある。ここでカラ海の評価は、1 0 億~ 1 0 0 億バレルだが、
にかけて(図9)が、天然ガスはこれに加えバレンツ海のロ
今回の石油発見で、もう1ランク上の、アラスカ・ノース
シア側、カラ海が突出して高い評価となっている
(図10)
。
スロープ並みの100億バレル以上という評価になるだろう。
180°
ARCT IC
CIRC LE
HB
YF
LS
AA
ZB
NCWF
VLK
NWC
ESS
LV
CB
AM
LSS
FS
LA
NWLS
LM
SB
TUN
YK
EB
90°W
90°E
NKB
NGS
WSB
EBB
AA
NZ
WGEC
BP
TPB
EGR
NM
MZB
JMM
未発見ガス
>100Tcf
6 100Tcf
<6Tcf
量的評価のなされていない地域
炭化水素ポテンシャルの低い地域
0°
出所:USGS(2008)
図10 米国地質調査所(USGS)による北極圏天然ガス資源ポテンシャル調査
2. ロシア・バレンツ海でのロシアの石油ガス開発
(1)
プリラズロムノエ油田
(ペチョラ
〈Pechora〉海)
Gazprom 子会社である Sevmorneftegaz が操業していた
①北極圏最初の海洋油田の生産開始
が、 現 在 は Gazprom の 石 油 部 門 の 子 会 社 で あ る
プリラズロムノエ
(Prirazlomnoye)
油田は、現在北極海
Gazprom Neft が操業している。確認石油埋蔵量は 6 億
で唯一の操業油田である。位置は、バレンツ海の南東部
1,0 0 0 万 バ レ ル と 大 規 模 な も の で は な い。 離 岸 距 離
で、陸のティマン = ペチョラ(Timan-Pechora)に近い海
6 0km で、油田の場所の水深は 1 9 ~ 2 0m、平均気温は
域でペチョラ海と言われている地点にある(写 2、図1)
。
氷点下 4 ℃である。既述のように、バレンツ海は通常結
油田はソ連時代末期の 1 9 8 9 年に発見された。その後
氷しないと言われているが、同海南部ではメキシコ湾流
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
の流入が弱く、ペチョラ海は冬季は結氷する。プラット
でに 1 1 坑井で生産する予定である。既に 2 坑の生産井
フォームは、Severodvinsk 造船所で建造され、2 0 1 1 年
が 同 鉱 床 で 掘 削 さ れ て い る。 二 つ 目 の 坑 井( 総 延 長
2 月に油田に曳航され、設置作業に入った
*14
。1 年後の
4,5 0 0m。原油生産量:1,8 0 0 トン / 日)は 2 0 1 5 年夏に操
2 0 1 2 年末に油田は生産開始となった。
業を開始した。これにより、2 0 1 5 年の同鉱床の原油生
2014年4月18日には、
Prirazlomnoye油田プラットフォー
産量は前年比 2 倍以上となる約 6 0 万トンに上る見込み
ムから最初の石油出荷が行われたことを記念する式典が
である。2 0 1 7 年末までに同鉱床での累計原油生産量は
リグ上で開催され、Putin 大統領がテレビで参加した。
5 0 0 万トンに達し、7 0 隻のタンカーで出荷する計画で
Prirazlomnoye 油田で生産される石油は、
「ARCO」原油
ある。2 0 1 5 年 9 月現在、累計生産量は 8 0 万トンで、1 2
(Arctic Oil)
と命名されている。既に欧州最大手のエネル
隻のタンカーで出荷した* 1 7。
ギー会社が直接契約で購入した。同鉱床からの石油生産
量の増加に伴い、一部は長期契約によって販売される予
*1 5
定である。生産量 6 0 0 万トン / 年を計画している
。
②北極海油田における環境問題
Prirazlomnoye 油田は、北極海における最初の生産油
その後、タンカーは 2 0 1 4 年 9 月に 2 隻目、1 1 月に 3
田となったことから、環境団体からも厳しい目で見られ
隻目が出荷された。4 隻目の出荷では、2 0 1 4 年末まで
ていた。既に、プラットフォームを設置した 2 0 1 1 年の
にタンカーが欧州北西部に到着した。同社は制裁にもか
末に、グリーンピース(Greenpeace)の一団がプラット
かわらず、北極圏での海洋事業を推進している。2 0 1 5
状と
フォームに上ろうとしたが、甲板の外縁が「鼠返し」
年には Prirazlomnoye 油田において追加で 7 坑の開発井
なっていたために果たせなかった(写 2)
。翌 2 0 1 2 年末
を 掘 削 す る。 ま た、 同 鉱 床 の 近 隣 に 位 置 す る
の生産開始試験をしている時に、グリーンピースが再び
Dolginskoye 海洋油田で 2 0 1 4 年に掘削した 1 坑井でテス
接近し、この時は甲板上に上った。
トを行ったが、その結果、二つの層からガスのフローが
グリーンピースの主張は、常海域と異なり現在石油企
*16
あり、それより深い層からは液分のフローがあった
。
ネズミ
業の持っている技術では、氷の広がる海での環境対策が
GazpromNeftとしては、2 017 年末までにPrirazlomnoye
不十分というものである。現状では、日本の研究機関で
油田において、新たに 9 坑井の操業を開始、2 0 1 8 年ま
も氷の表面の流出油を高圧力の放水で押し流す実験等は
出所:GazpromNeft ウェブサイト
写2 流氷に囲まれたプリラズロムノエ油田* 21
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行われており、さまざま施策が考案され、実用化を目指
ことは知っているか。技術者が一生に一度、出会えるか
している段階である。ロシア国内での原油流出対策の現
どうかという程の巨大ガス田だ」と言って胸を張った。
状 は あ ま り 報 道 さ れ て い な い が、Gazprom の Alexei
当方としては、ソ連が北極海に積極的に進出している様
Miller 社長は、
「Prirazlomnoye 海上プラットフォームで
子に驚いた記憶がある。Shtokman ガス田の概要につい
の生産過程もしくはタンカーへの積載過程における石油
ては、本誌 2 0 0 7 年 1 1 月号の拙稿を参照されたい* 2 2 。
流出の可能性は 1 0 0 %排除されている」
と述べている* 1 8。
技術上の問題としては、ガス輸送の上陸地点で LNG
これに関する技術的な根拠は特段挙げていないが、環境
生 産 基 地 と な る Murmansk 近 隣 の Teriberka ま で
問題への対応は計られているのであろう(1 0 0 %排除さ
5 6 5km という長大な離岸距離を、パイプ内でガスとコ
れているというのは言い過ぎとしても)
。この場合、技
ンデンセートの 2 相流で流すという点が、依然として克
術が完璧と言えないのであれば、石油生産を停止すべき
服できていなかった。更に、主要な LNG の輸出先と目
というグリーンピースの議論がどの程度支持されるのか
されていた米国でのシェールガス生産が急増してきた
が、論争を呼ぶものと思われる。
2 0 1 1 年、Shtokman ガ ス 田 の 開 発 計 画 は 頓 挫 す る。
Gazprom Neft は、世界最大規模の石油・ガス会社が
当時、同ガス田の LNG の生産から輸送までの全コスト
参加する「Arctic Oil Spill Response Technology Joint
が$500/1,000㎥($14/MMBtu)という水準にあるなかで、
Industry Programme」
(JIP)に加入するロシア初の企業
欧州市場でのLNGのスポット価格が$300/1,000㎥
($8.5/
となった。JIP は 2 0 1 2 年 1 2 月、氷海の下に拡散した石
MMBtu)と下がってきた。この時点で、同計画の存立が
油についての経過観察、実際の状況に近い環境での分散
危うくなったが、更にヤマル LNG 計画が始動し、国内
剤による実験、および視界不良や氷に覆われた地域での
でも LNG 事業の競争相手が現れ、市場での共食い状態
石油流出の検知や場所の特定などについての研究を行う
となった。当初の計画では、最終投資決定(FID)は
ため、複数地域でスタートしたものである。ここにも、
2 0 1 1 年末、生産開始は 2 0 1 6 年であったが、FID がで
極地における環境問題に対する世界的な取り組みの一端
きないまま時間が経過した。
が見て取れる
*19
。
事業パートナーであるノルウェーの Statoil は 2 0 1 2 年
ちなみに、
2 0 1 4 年 5 月 3 1 日、
ノルウェー気候環境省は、
7 月末に保有権益 2 4 %を、5 1 %を保有する Gazprom に
バレンツ海の Apollo 構造試掘に反対するグリーンピー
引き渡した。残りの 2 5 %はフランスの Total が保有し
スの申し立てを却下したと Statoil が伝えた。5 月 2 7 日
たままであった。Gazprom は Shtokman ガス田のガス産
からグリーンピースは、Transocean Spitsbergen 掘削装
出税に関して優遇税制の適用を求めるなど、延命を図っ
置に乗り込むなどの妨害活動をしたが排除された
*20
。
類似の事案はロシアにとどまらない。
たが、遂に 2 0 1 3 年には、Gazprom は計画の棚上げを決
定した。
このことは、北極海において埋蔵量的には大規模な
(2)Shtokman ガス田の開発
ガス田であっても、離岸距離の大きい沖合ガス田の場
バレンツ海の中央に位置する同ガス田は、埋蔵量 3 兆
合には、商業的な開発が非常に難しいことを示してい
7,0 0 0 億㎥(1 3 1Tcf)と北極海のガス田では最大の規模
る。将来的に、コスト削減と長大な離岸距離の問題に
を有する。1 9 9 0 年、ソ連時代の末期に筆者が Gazprom
関して、新たな展望が開けるとしたら、唯一考え得る
を訪問したところ、説明に現れた担当者は、「あなた方
技術は、Shell の提案しているような洋上 LNG 方式の採
は一昨年、バレンツ海で発見された Shtokman ガス田の
用であろう。
3. ヤマル半島での石油・ガス開発
(1)
ノボポルト油田
(オビ湾)
を起点とする鉄道が敷設された。これは、ガス田開発の
1 9 7 0 年代に、ヤマル半島の中央部の Bovanenkov 構
ための資機材・人員の輸送を主たる目的とする Gazprom
造 ま で、 ヤ マ ロ = ネ ネ ツ 自 治 管 区 の 首 府 で あ る
が所有する鉄道である。この鉄道を活用しながら、ヤマ
Salekhard 市の、オビ河を挟んだ対岸にある Obskaya 市
ル半島の中央部を北北西 - 南南東方向に延びるガス田列
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
が発見された(図 1)
。このうち、最も南南東のオビ湾近
スタートした。ヤマル半島での開発事業では、途中にソ
くに位置する Novoport ガス田に関しては、前述のよう
ビエト連邦の崩壊という政治的な事件が入ったために、
に、1 9 8 0 年代に深掘りが行われ、ガス層の下位に油層
一気には進められなかった。
が発見されている。他のガス田においても、深部での油
2 0 1 4 年、Gazprom Neft の子会社で同事業のオペレー
層の存在は当然予想されたわけであるが、まず Novoport
ターである Gazprom Neft Novy Port が Novoport 油ガス
ガス田において深掘りがなされた理由は、オビ湾に面し
田での生産掘削事業を本格的に始動した。2 0 1 4 年末ま
ており、生産原油の搬出が他のヤマル半島内陸部の油ガ
でに合計で9坑井を掘削した。2016年までに坑井群プラッ
ス田よりも容易と考えられたためと思われる。
ト フ ォ ー ム を 5 基 建 設 し、6 0 坑 井 で 掘 削 を 行 う。
ただし、実際の Bovanenkov ガス田の開発、そしてガ
Gazprom Neft は 2 0 1 4 年、同鉱床でのパイロット生産
スの商業生産は 3 0 年を経た 2 0 1 2 年のことであり、それ
の一環としての掘削事業を完了した。合計で 8 坑の生産
に先行してまず古い鉄道を再整備することから事業が再
井を掘削し、1 7 坑の探鉱井で試験を行った。Novoport
Operating
Planning
Gas Pipeline
Gas Fields
Ka ra S ea
Ya m a l
Reg ion
CeberoTambei
ZapadnoTambei
YuzhnoTambei
Kharasabei
Bovanenkov
Tambei
Bovanenko Station
Ta zov Reg ion
Ta z ov Bay
334 KM
Novoport
P r i-Ura l
Reg ion
Pauta Station
Obi Bay
Obskaya Station
出所:Gazprom ウェブサイトより
図11 ヤマル半島におけるインフラの状況
21 石油・天然ガスレビュー
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油ガス田の C1+C2 石油埋蔵量は 2 億 3,0 0 0 万トン(約
延期すると発表した* 2 7。2 0 1 1 年に入り、「Yamal LNG
16.8億バレル)
超、
C1+C2ガス埋蔵量は2,700億㎥超。ピー
事業は、Shtokman 事業よりも早く進められるだろう」
ク生産量は 8 5 0 万トンで、2 0 2 1 年以降に達成する予定
とシュマトコ・エネルギー相(当時)は述べた* 2 8。
である* 2 3 。硫黄含有分は 0.1 %と低い。
LNG のソースとなる Yuzhno Tambey ガス田は、1 9 7 4
2 0 1 4 年 冬 は 約 3 万 5,0 0 0 ト ン の 原 油 が 同 鉱 床 か ら
年に発見された。埋蔵量はC1+C2=1兆2,560億㎥
(44Tcf)
2 0 0km の Payuta 駅まで冬季用道路によって輸送された
で、定義としては 3 0Tcf を超えており超巨大ガス田とな
( 図 1 1)
。 そ の 後、 原 油 は、Novoport 油 ガ ス 田 か ら
るが、西シベリアとしては中堅クラスと言える* 2 9。LNG
Kamenny岬へと103kmのパイプラインで送油された後、
は550万トン/年規模のトレーンが3系列あり、
合計で1,650
出荷されるようになった。パイプラインの送油能力は
万トン / 年となる。各トレーンは 2 0 1 7、2 0 1 8、2 0 1 9 年
6 0 万トン / 年
(1 万 2,0 0 0b/d)
である
*24
にそれぞれ完成する予定である* 3 0。2 0 1 5 年 6 月時点で
。
同油ガス田からの洋上出荷を開始したのは 2 0 1 4 年 8
の LNG の契約先を表 2 に示す。
月で、このシーズンに 4 隻のタンカーが 1 0 万トンを超
LNG基地が海上輸送に直結できる必要があることから、
える「Novy Port」という新油種の原油を輸送した。同鉱
このようなヤマル半島海岸のガス田が選択されたわけで
床では 2 0 1 4 年年初来、1 5 万トンの石油が生産された。
あるが、これはオビ湾に面し、比較的水深が深いことが
石油の出荷ターミナルの建設が終われば、洋上出荷は通
決め手となった。ヤマル半島西岸にも海岸域にハラサベ
年で行われる予定である
*25
。
イ(Kharasavey)
、クルゼンシュテルン(Kruzenstern)と
いった巨大ガス田があるが、西岸は遠浅の海底地形となっ
(2)
ヤマル LNG
ており、LNG 船を就航させることは困難と考えられた。
①プロジェクトの概要
2 0 0 9 年 9 月 2 4 日、Putin 首相(当時)は世界の LNG 関
係企業をヤマロ=ネネツ自治管区の Salekhard 市に招集
表2 Yamal LNG の契約先* 31
した。参加した企業は Shell をはじめ ExxonMobil、E.On、
Eni、三井物産、三菱商事、ConocoPhillips、GdF Suez、
販売先
量(万トン/年)
期間(年)
Kogas、Petronas および Suncor Energy である。ここで
Novatek
100
は、新規事業として Yamal LNG 計画が公表され、Putin
Engie
100
23
Shell
90
20
Total
400
CNPC
300
Gazprom M&T
290
Gas Natural Fenosa
250
Spot
120
首相は、ロシア政府はヤマル半島での巨大ガス開発を奨
励するために税制優遇措置を検討する用意がある旨述べ
た * 2 6。本件は 2 0 0 8 年時点では Gazprom が遂行する予
定であったが、その後、独立系第 1 位の Novatek が所管
することになった。
出所:JOGMEC 作成
この 2 0 0 9 年 9 月というタイミングは、Shtokman ガス
田の LNG 計画が大きく停滞
した時期と重なる。2 0 0 9 年
LNG 生産量
気温(℃)
多
に入り、金融危機からの欧州
平均気温
でのガス需要の落ち込みが深
20
刻になり、
翌 2 0 1 0 年 2 月 5 日、
10
Shtokman ガス田のオペレー
ターとなっている Gazprom、
0
Total、Statoil の 3 社 が、 最
から 2 0 1 1 年へ、パイプライ
ンによるガス生産開始を
2 0 1 3 年 か ら 2 0 1 6 年 へ、
LNG による供給開始を 2 0 1 4
年から 2 0 1 7 年へとそれぞれ
-10
少
終投資決定の時期を 2 0 1 0 年
1月
LNG生産量
2月
3月
4月
5月
出所:各種資料を基に JOGMEC 作成
6月
7月
8月
9月
10月
11月
-20
12月
図12 通常の LNG 生産量の季節変化を示す概念図(高温時に LNG 生産量が低下する)
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
Yamal LNG 事業における総コストは、$2 6 9 億と報道
は、 生 産 量 が 2,0 0 0 万 ト ン に 達 す る ま で 免 税 と す る。
されている。LNG の輸送船の建設だけでも総事業費の
LNG およびコンデンセートの生産に係る資機材につい
*32
約 3 割を占める
ては VAT(Value Added Tax =付加価値税)を免税とす
。
経済上のメリットと言われているのが、ガス資源の生
る。当該協定の有効期間は 2 0 4 5 年までである* 3 6。
産コストが低いこと、アジア市場向けの北極海航路を活
2 0 1 5 年 9 月 3 日、北京でプーチン大統領、習近平主席
用し、LNG タンカーの輸送日数を縮小できること、そ
立ち合いの下、Novatek と中国のシルクロード基金(Silk
して寒冷地における LNG 生産の利点もあって、全体の
Road Fund= SRF) は、Yamal LNG 事 業 で SRF が
スペックを下げることのできるメリット、そして夏季の
Novatek から 9.9 %の権益を取得することで枠組み協定に
生産レベルを下げずに生産を継続できる点が挙げられる
調印した。当該取引が規制当局によって承認されれば、
(図 1 2)。LNG は氷点下 1 6 2 ℃で生産されるため、温暖
Novatek の同事業における権益は現在の 6 0 %から 5 0.1 %
な外気ではより大きな冷却のエネルギーを要する。寒冷
へと減ることになる* 3 7。現在、本契約の締結に向けて、
地であることは、低い外気温を前提とすることから設備
作業が進められている(その後、Medvedev 首相が訪中し
を簡略化でき、LNG 製造のための電力コストもその分
た 1 2 月1 7 日、権益譲渡の合意書が交わされた)
。
低く抑えられる。このため、LNG 生産にとってメリッ
トとなる。ただし、寒冷地における設備全体の建設費自
③ LNG 施設建設事業の請負契約
体も引き上げられることは考慮に入れる必要がある。
LNG 生 産 設 備 の 建 設 に 関 す る FEED(Front End
Engineering Design =基本設計)には、CB&I(米国)、
②プロジェクトへの外資の参入
Saipem(イタリア)、千代田化工建設が参加し、CB&I が
2 0 1 1 年 3 月 2 日、Medvedev 大統領(当時)は Total 社
主導した。これには、NIPIgazpererabotka 研究所(ロシ
長 Cristophe de Margerie との会談で、ロシアにとって
ア)も参加した。Yamal-LNG 事業のプラント建設業者選
Total グループやフランスは重要な戦略パートナーであ
定の入札には、Technip/ 日揮、CB&I/Saipem/ 千代田
ると述べ、ロシアとして Total の Yamal LNG 事業参加
化工、および StroyGasConsulting(ロシア)と Petrofac(英
*33
国)の JV の三つのコンソーシアムが参加した。EPC
への明確な支持を表明した
。
MOU(Memorandum of Understanding)-1 で は、
(Engineering、Procurement、Construction、設計・調達・
Yamal 半島の Yuzhno Tambey ガス田(4 4Tcf)の開発に
建設)契約は、2 0 1 3 年 4 月に Technip(フランス)と日揮
参加し、MOU-2 では Total が Yamal LNG 事業の 2 0 %を
が結ばれた。その後、千代田化工建設が参加して、その
取得する
*34
比率は 5 0 %、2 5 %、2 5 %となった* 3 8。
。
Total は、この時点では Yamal LNG 事業と Shtokman
事業を含むロシア国内で計画されるその他の LNG 事業
④資金問題
とは、相互に補完するもので、競合するものではないと
Yamal LNG の総事業費が $2 6 9 億と言われていること
していた。特に、Shtokman 事業での経験を、Yamal 事
は先に触れた。このうちの 7 割を融資で賄う予定であった
業に適用することができるとし、開始時期も重なること
が、2 0 1 4 年 7 月 1 6 日の米政府による経済制裁により、
はないと考えていた
*35
。
Novatek 社による9 0日超の資金調達が禁止された(表1)
。
2 0 1 3 年 1 2 月 2 6 日には、ロシア政府は Yamal LNG 事
これに伴い、事実上融資を受けることができなくなった。
業実施に係る露中政府間協定を承認した。同協定により
同年 1 2 月2 7日、Dmitry Medvedev 首相は国民福祉基
CNPC は Yamal LNG 事業の 2 0 %の権益を取得すること
金(National Welfare Fund)からYamal-LNG 社(同事業の
が可能となった。長期契約の締結により CNPC は事業の
オペレーター)
に Rub(ロシアンルーブル)1,5 0 0 億
(約 $2 2
進展に伴い最低でも 3 0 0 万トン / 年の LNG を購入する
億)を支払う指令に署名した。支払いは、同額の Yamal-
こ と に な る。Yamal LNG 事 業 は、Novatek 6 0 %、
LNG 社のドル建てで発行される社債を買い取ることによ
CNPC 2 0 %、Total 2 0 %という権益比率となった。
り行われる。同社債の償還(返済)期間は1 5 年、利子の支
また、ロシアはヤマロ = ネネツ自治管区で生産される
払いは中央銀行の為替レートに基づき、ルーブル建てで
ガスに対し天然資源産出税(NRET)を免税とする。液化
行われる。同債券の最低利回りは LIBOR(ロンドン銀行
天然ガスの輸出については、生産開始から 1 2 年間を上
間取引金利)+3 %(全体で 5 %を超えないものとする)も
限として、生産量が 2,5 0 0 億㎥に達するまでは免税とす
しくは米国のインフレ率 +1%とされる。Rub1,5 0 0 億の振
る。同地域の鉱区で生産されるコンデンセートについて
り込みは、Rub7 5 0 億を 2 回に分けて行われる*3 9。
23 石油・天然ガスレビュー
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また、中国からの $2 0 0 億程度の融資の可能性がしば
2 0 1 2 年 1 1 月 7 日、コンデンセートではなく1 3 万 5,0 0 0
しば報道されているが、2 0 1 5 年 1 1 月末現在、実現して
㎥の LNG を積んだアイスクラスの LNG 船「オビ河号」が、
*40
いない
ノルウェー北部のハンメルフェスト
(Hammerfest)
を出港
。一方、Novatek への融資に対する債務保証と
し、北極海を東方に針路を取り、ベーリング海峡を通過
して、5 月には対外経済銀行
(Vnesheconombank =VEB)
*41
が $3 0 億
*4 2
、6 月には Gazprom が $3 1 億を付けた
。
して、1 2 月 5 日北九州市の戸畑にある九州電力の LNG 受
入基地に入港した。冬を間近にした北極海での航行可能
⑤北極海航路の活用
期間の最後に当たっており、航海には従来よりも 1 週間
北極海航路(Northern Sea Route = NSR)を活用して
程度長い 2 9 日を要した。LNG はノルウェーの Statoil 等
のアジア向けの商業輸送は、2 0 1 0 年夏から始まった。
が操業するスノービット(Snøhvit)ガス田のガスからのも
この年、ロシアの独立系ガス企業の Novatek が、ロシ
ので、これをロシアの国営 Gazprom の貿易部門の子会社
アの Sovcomflot のタンカーにより 7 万トンのコンデン
Gazprom Marketing and Trading が買い付け、最初の輸
セートを 、ムルマンスク(Murmansk)から北極海航路
出先として日本に運んだものである。日本にとっても北
を活用し中国の浙江省寧波まで試験輸送した。航海は
極海がにわかに身近に感じられた瞬間である
(図13)
。
2 2 日間で、日数としては 4 5 %の節約であったが、砕氷
北極海を航行するには事前にロシア政府に申請を出す
船 2 隻のエスコートが義務付けられ、全体の輸送コスト
必要がある。到着した積み荷の LNG はスポットもので
は 1 5 %の節約にとどまった。
あるが、この航海自体は周到に準備された行動と言える。
これは、Novatek が開発を目指しているヤマル半島
アジア圏では他地域よりもガスが高値で取引されてお
LNG のアジア市場向けの航路開拓が目的で、LNG の商
り、ロシアにとって日本のガス市場は欧州以上に魅力的
業輸送を念頭に置いたものであった。この LNG は、冬季
である。日本への LNG 輸出を増やすことは政策的優先
は欧州市場を対象とするものであるが、夏季は欧州市場
度の高い事業であり、将来的に北極海航路を活用した日
で の 需 要 が 落 ちることか
ら、夏場の電力需要が大き
いアジア市場に振り向けよ
うというものである。2 011
Pevek
年には同様に 1 0 隻のコン
Shtokman
tre
am Murmansk
デンセートを積載したタン
Erzurum
Dauletabad
IPI
Multan
CHINA
Shanghai
Ningpo
line
ipe
st P
PAKISTAN
復路として北極航路を選ん
でいる。今後、北極航路に
Beijing
s
Chongqing
West
Asian ngea
Pipelin-East
Pipeli
e West-East Pipe
line
TA
P
I
KOREA
MONGOLIA
-Ea
を終えた技術サービス船も
KAZAKHSTAN
UZBEKISTAN
al
TURKMENISTAN The Centr
2nd
JAPAN
Irkutsk
st
We
また、サハリン -1 での役務
SAUDI
ARABIA
Proskokvo
2nd
フィンランドに運ばれた。
Trans Caspian
East
Siberia
Kovykta
Altai
Baku
セートを運んだ帰路、韓国
でジェット燃料を積載して
West
Siberia
E
AZERBAIJAN
BT
タ ン カーはガスコンデン
Blue Stream
Sakhalin
Yamburg
CAC
用されている。Novatek の
RUSSIA
Bovanenkov
N
Bro othern Lights Yam
al
the
rho
od
Kazan
So
yuz
m
ea
Str
への復路にも北極航路が活
uth
So
一方で、アジアから欧州
o
Nabucc
べき LNG 輸送に備えた。
IGI
カーが中国へ向かい、来る
Snøhvit
No
rd
S
INDIA
おいて双方向の物流が活発
化する可能性が取りざたさ
れた。ただし、資源価格の
下落した 2 0 1 4 年は、北極
海航路の利用は半分以下に
まで減った。
出所:報道情報を基に JOGMEC 作成
2012 年晩秋、
北極海経由で日本に輸出された LNG 船の航路(青線)
図13 赤線は陸路を行く天然ガスパイプライン
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
ターとなっている Yamal-LNG 事業が、Novatek への制
裁にもかかわらず、計画どおりに進められていることを
示すものと言える。
(3)ヤマル LNG-2
2 0 1 3 年 1 2 月、ロシア政府は Yamal LNG-2 に関する
政府令を出した。これは、オビ湾を挟んだ対岸に当たる
Gydan 半 島 に あ る Salmanovskoye ガ ス 田 と
Geofizicheskoye ガ ス 田 か ら の ガ ス を Yamal 半 島 側 で
1,5 0 0 万~ 1,6 5 0 万トンの LNG とし、LNG の積み出し港
で あ る Sabetta 港 を 拡 張 し て 輸 出 す る も の。 工 事 は、
Yamal LNG-1 が 1,6 5 0 万トンとなる 2 0 1 8 年後半に開始、
第 1 トレーンは 2 0 2 2 年に、第 3 トレーンは 2 0 2 5 年に本
出所:Novatek 社資料
ヤマル LNG の夏季(北極海経由)
図14 と冬季(スエズ経由)の輸送ルート
格稼働するというものである。Gydan 半島のガス田のガ
スに対して 1 2 年間あるいは 2,5 0 0 億㎥の生産まで、コ
ンデンセートも 1 2 年間または 2,0 0 0 万トンまでの産出
税免除が与えられる* 4 6。
本向け LNG 輸出が拡大していく可能性がある。
2 0 1 5 年の 4 月になり、Novatek の Mikhelson 社長は、
Yamal LNG における輸送ルートに関しては、夏季の
今後 6 ~ 1 2 カ月以内に、Salmanovskoye ガス田(Gydan
北極海(Northern Sea Route)経由と冬季のスエズ運河経
半島)の開発、および Yamal LNG プラントに匹敵する生
由が想定されている。
これらの経済性の議論に関しては、
産能力(1,6 5 0 万トン / 年)を持ち、当該ガス田を資源基
*43
原田
(2 0 1 3)
に詳しい
。
盤とする LNG プラントの建設について、決定を下す方
北極圏の冬季には、Yamal-LNG プラントから北極圏
針である、と述べた。新しい LNG プラントを着底式プ
用タンカーでベルギーの Zeebrugge LNG ターミナルま
ラットフォームの上に建設する。2 0 1 6 年に開発計画が
で LNG を供給し、同ターミナルで通常のタンカーに
でき上がるように、Salmanovskoye ガス田では、既に 2
LNG を積み替えた後、スエズ運河を経由してアジア太
坑井の探鉱井が掘削されており、追加で 2 坑井の掘削が
平洋地域へと向かう。また、夏季は、北極海航路を経由
計画されている。LNG 出荷のための積み出し用埠頭は
してアジア太平洋地域に LNG を輸送するという計画で
2 0 1 5 年 中 に 稼 働 を 開 始 す る 見 込 み で あ る。
ある(図 1 4) 。
Salmanovskoye ガス田の 2 0 1 4 年末時点でのガスの確認
冬 季 ル ー ト に 関 し て は、2 0 1 4 年 4 月 Yamal LNG
埋蔵量は、SEC(米国証券取引委員会)基準で 2,3 5 2 億㎥
Consortium と ベ ル ギ ー の Fluxys 社 が、 同 国 の
(8.3Tcf)
、ロシア基準で 1 兆 1,1 6 5 億㎥(3 9Tcf)。また、
Zeebrugge港のLNGターミナル経由で砕氷LNGタンカー
コンデンセートは SEC 基準で 8 6 1 万トン、ロシア基準
から通常の LNG タンカーへ積み替え輸送することで事
で 4,4 4 8 万トン。石油の埋蔵量(ロシア基準)
は、約 1,0 0 0
*44
前協定に合意している
*45
。その後、
2 0 1 5 年 3 月、両者は、
万トンである。ライセンスの有効期限は、2 0 3 1 年 8 月
Fluxys 社が保有する Zeebrugge ターミナルでの LNG 積
となっている* 4 7。
み替えサービスに関わる契約(期間 2 0 年。積載量:8 0 0
事業計画の詳細についてはまだ不明であるが、Yamal
万トン/年)
を締結した。この契約は、
Novatekがオペレー
半島での LNG に関して、意欲的な姿勢がうかがわれる。
4. ロシアの北極海開発に取り組む姿勢
(1)
ロシアの考える北極海での経済性について
2 0 1 5 年 9 月 1 5 日、ロシア・エネルギー省はサンクト
ペテルブルクで開催された「ロシア海洋会議」で、同国
の北極圏大陸棚開発について、以下のような見通しを
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アナリシス
石油・ガス産出税の優遇期間と販売額に対する優遇比率
15年間 5%:バレンツ海北部、
カラ海、
ラプテフ海、東シベリア海、
チュコト海、ベーリング海
10年間 10%:黒海100m以深、
オホーツク海北部、バレンツ海南部
Chukchi Sea
7年間 15%:白海、ペチョラ海、
オホーツク海南部、黒海浅海部
5年間 30%:アゾフ海、バルト海
East Siberian
Sea
Laptev
Sea
Barents Sea
● Shtokman
KhatangaYenisey
Prirazlomnoye ●
● Bovanenkov
Lena● Vankor Tunguska
Timan-Pechora
● Yamburg
Medvezhye●● Urengoy
● Zapolyarnoye
Kara Sea
Volga-Ural
Lena-Vilyuy
East Siberia
● Chayanda
● Priob
Sakhalin
Okhotsk
● Sakhalin-1
● Sakhalin-2
● Yurubchen-Tohomo
West Siberia
● Kovykta
North Caspian
出所:諸報道を基に JOGMEC 作成
図15 ロシア大陸棚における石油ガス開発関連の税優遇措置
示した* 4 8。
つまり、現状では北極海のエネルギー開発はかなりス
・ロシアは、2 0 1 7 年より前に北極圏大陸棚で新規に石
ローペースとならざるを得ない状況であるが、バレンツ
油掘削を開始する予定はない。また、事業の採算性が
海、ペチョラ海、カラ海に関しては開発投資は手控えつ
取れる損益分益点は WTI(West Texas Intermediate)
つも、粛々と評価作業を遂行していく方針である。
価格が $6 3/bbl であると考えている。
・現在、北極海大陸棚で生産しているのはペチョラ海の
(2)バレンツ海西部ロシア・ノルウェー境界の画定
Prirazlomnoye 油田のみで、石油生産量は 1 万 8,0 0 0b/
バレンツ海におけるロシアとノルウェーの境界画定
d であるが、エネルギー省としては、2 0 2 0 年までに
は、4 0 年にわたる係争の後、2 0 1 0 年 4 月にお互いの主
北極海大陸棚での石油生産量を現在の 3 倍に増やし、
張の中間線とすることで合意しており、法的な障壁は取
2 0 3 5 年までに 6 6 万 b/d に増やす方針である。
り除かれている。ノルウェー側の主張は、通常の中間線
・バレンツ海およびペチョラ海の掘削は2017 ~ 2021年、
生産開始は 2 0 2 4 ~ 2 0 2 9 年の見込みである。
・カ ラ海では、新たな掘削は 2 0 2 0 ~ 2 0 2 1 年、生産は
2 0 2 5 ~ 2 0 2 8 年にそれぞれ開始する。
に依拠するものであるが、ロシア側の主張は、極地に近
いことから陸上境界地点から経線方向に北極点方向に延
ばした線を境界とするという「セクター主義」
に基づくも
のである。両国の合意の背景には、北極海における資源
・ラプテフ海と東シベリア海は他の北極海に比べると探
開発の現実性が高まったこと、Shtokman ガス田開発等
鉱は進んでおらず、2 0 2 9 年以前に掘削を開始する予
で両国の協力関係が進み、お互いの信頼感が醸成された
定はない。
ことが挙げられる。
・ロ シア全体の原油・ガスコンデンセート生産が今後
この海域ではRosneft がライセンスを取得したが、2 0 1 2
2 0 年間、現在の水準である 1,0 5 0 万 b/d にとどまると
年 4 月 に、Rosneftと イ タ リ ア の Eni が、 海 域 南 側 の
した場合、
2035年までに北極圏海洋鉱床での生産量が、
Tsentralno-Barentsyevsky(Central Barents)
鉱区で、5 月
ロシア全体の原油・ガスコンデンセート生産量に占め
にはノルウェーの Statoilと海域北側の Perseevsky 鉱区の
る割合は 6.2 %にとどまる。
共同探鉱で合意した
(図1)
。外資側の権益は33.3%である。
・北 極圏海洋鉱床での損益分岐点は、$5 2/bbl ~ $8 1/
bbl と幅がある。
ただし、北極海での事業は制裁対象となっており、当面
西側企業からの投資、技術供与は期待できない。
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
(3)ロシアにおける大陸棚鉱床での石油ガス関連の優遇
税制
*49
産税は免税となる。
な お、 同 法 で は、 バ レ ン ツ 海 に あ る Gazprom の
2 0 1 3 年 7 月にロシア大陸棚鉱床における石油・ガス
Prirazlomnoye 鉱床について、新規大陸棚鉱床に対する
開発に係る優遇税制法が成立し、税制面でのインセン
措 置 を 適 用 す る 代 わ り に、Yamal 地 域 等 と 同 様 に、
ティブは確立している。同法は、内海、領海、大陸棚お
2 0 1 9 ~ 2 0 2 2 年の間、産出税を免税とすると財務省次
よびカスピ海の鉱床における石油・ガス生産に係る新し
官 Sergei Shatalov が述べている。
い税制を構築するもので、2 0 1 6 年以降に商業生産が開
更に同法では、
(S-3 事業の)Kirinskoye 鉱床について、
始となる鉱床に適用される。要件を満たす鉱床の開発期
2015年1月1日現在における各炭化水素
(随伴ガスを除く)
間中において、産出税は従価税となり、地域的なカテゴ
ごとの埋蔵量既産出率が少なくとも 5 %である場合は、
リーごとに以下のとおり定められる
(図 1 5);
2021年1月1日まで輸出税を免税とすることになっている。
①アゾフ海に 1 0 0 %属する鉱床、バルト(Baltic)海に
5 0 %以上属する鉱床には、
(2 0 2 2 年 3 月 3 1 日までの)
(4)ロシア大陸棚で事業を展開できる企業
商業生産開始から 5 年間(6 0 カ月)
、販売額に対して
ロシア連邦法 No.1 8 7-FZ「ロシア連邦の大陸棚につい
3 0 %の産出税が課税される。
て」の第 7 条「大陸棚鉱区の利用者への供与」は、2 0 0 8 年
②黒海(最大水深 1 0 0m まで)
、カスピ海のロシア領海、
4 月 2 9 日付連邦法 No.5 8-FZ により、以下のとおり改訂
ペチョラ海、白海、
(サハリン大陸棚を含む)オホーツ
された。
ク海の南部(北緯 5 5 度以南)に 5 0 %以上が属する鉱床
「 大 陸 棚 鉱 区 は、1 9 9 2 年 2 月 2 1 日 付 ロ シ ア 連 邦 法
には、(2 0 3 2 年 3 月 3 1 日までの)商業生産開始から 7
No.2 3 9 5-1〈地下資源法について〉第 9 条第 3 パラグラフ
年間(8 4 カ月)
、販売額に対して 1 5 %の産出税が課税
で定められた要件に合致する人物に供与することがで
される。
きる」
③黒海(水深 1 0 0m 超)
、オホーツク海北部(北緯 5 5 度以
ロシア連邦法No.2395-1
「地下資源法について」
第9条
「地
北)
、バレンツ海南部(北緯 7 2 度以南)に 5 0 %以上が
下資源利用者」
の第 3 パラグラフは以下のとおりである。
属する鉱床には、
(2 0 3 7 年 3 月 3 1 日までの)商業生産
「ロシア連邦の大陸棚の連邦管轄地下資源鉱区、更に
開始から 1 0 年間(1 2 0 カ月)
、販売額に対して 1 0 %の
ロシア連邦領域に位置しその大陸棚にある連邦管轄地下
産出税が課税される。
資源鉱区における地下資源の利用者となることのできる
④カラ海、バレンツ海北部(北緯 7 2 度以北)、北極海(ラ
のは、ロシア連邦法に従い設立され、5 年以上の期間ロ
プテフ海、東シベリア海、チュコト海、ベーリング海)
シア連邦大陸棚の地下資源鉱区での開発経験を有し、資
に 5 0 %以上が属する鉱床には、
(2 0 4 2 年 3 月 3 1 日ま
本金におけるロシア連邦の持ち分(出資)が 5 0 %超を占
での)商業生産開始から 1 5 年間(1 8 0 カ月)、販売額に
め、および(あるいは)その法人の資本金を構成する議決
対して 5 %の産出税が課税される。
権のある株式(持ち分)の相当する全表決権の 5 0 %超を
全ての対象鉱床について、上記と同期間、輸出税が免
ロシア連邦政府が直接的あるいは間接的に管理する権利
税となる。
を有する法人である」
(2 0 0 8 年 4 月 2 9 日付連邦法 No.5 8-
なお、当該鉱区ライセンスの保持者は、当該事業に係
FZ により改訂)。
る操業会社の直接または間接的支配株を保有していなけ
すなわち、具体的には Gazprom、Rosneft がこの対象
ればならない。要件を満たす鉱床を開発する企業は、将
となる* 5 0。
来の支出に向けた積立金を準備することで、法人税の減
免措置を受けることが可能である。累計控除額が法人税
(5)Gazprom の北極海戦略
の基準額として用いられる。課税期間中における控除額
Gazprom のガス・コンデンセート・石油生産部門の
は、当該鉱床開発によってもたらされる収入の 1 %を超
Vadim Petrenko 大 陸 棚 鉱 床 開 発 担 当 は、2 0 1 4 年 に
えない。当該法では、欠損金の繰り越し控除に特定の期
「Gazprom は北極海大陸棚の地質探鉱により、中期的
間を設けず、法人税の基準額の算定に加速償却を認めて
(2 0 2 4 年まで)に埋蔵量を 1 3 0 %増加する見込みである」
いる。
と述べ、北極海での取り組み著しい Rosneft に対抗する
収入と支出や、課税基準は、各鉱床ごとに算定される。
強い意欲を見せた。その後、資源価格の下落があったの
法人税は現行の 2 0 %のままとされ、全て連邦政府に納
で、このトーンを維持することは困難と思われる。しか
付される。条件を満たす鉱床について、VAT や固定資
し長期的な方針として具体的な鉱区、鉱床を挙げており、
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いずれ取り組んでくるものと思われる。
Tota-Yakhinskoye、Semakovskoye、Antipayutinskoye、
Gazprom の北極海での C1 埋蔵量は現在石油換算で合
そして 1 2 番目の鉱床として 2 0 1 3 年に生産を開始した
計 5.3 5 3T トン。同社の予測では、C1 埋蔵量は 2 0 2 4 年
Prirazlomnoye 鉱床である。
までに合計 1 2.1 7 9T トンまで増える。同氏は、ライセ
同社はロシア大陸棚で 3 6 の海洋鉱区ライセンスを保
ンス要件に基づき、気象条件が厳しい地域の 1 2 鉱床で
有。 そ の う ち の 3 件 の ラ イ セ ン ス(Sharapovsky、
今後 1 0 年間に生産をしなくてはならないので、2 0 2 4 年
Severo-Zapadny、および Kheisovsky 鉱区)は同社への
までには Prirazlomnoye 鉱床を含む 1 2 の大陸棚鉱床で
付与にあたり最終段階にある。海洋鉱床を生産段階に
生産をしている予定と述べた。
持っていくためには新技術の開発とインフラの整備が必
対 象 と な る 1 2 鉱 床 は 以 下 の と お り。
要とされる。Murmansk 港および Yamburg 港も、北極
K r u z e n s h t e r n s k o y e、S h t o k m a n、D o l g i n s k o y e、
海海洋鉱床の開発に利用される。既存の港の積み出し能
Kharasaveiskoye、Obskoye、Kamennomysskoye-Mor、
力を設計し直し、大陸棚開発からの炭化水素の受け入れ
Severo-Kamennomysskoye、Chugoryakhinskoye、
および積み替えの追加能力の増強を行う予定である* 5 1。
< 注・解説 >
loomberg, 2 0 1 5/9/2 8
* 1: B
* 2: P
ON, 2 0 1 5/1 1/1 8
osneft website, 2 0 1 4/9/2 7
* 3: R
* 4: 渡
(2 0 0 6 年 3 月)
での
辺芳弘
「石油・天然ガス鉱床の成立と探鉱」石油鉱業連盟主催 石油・天然ガス開発基礎講座
講演
* 5: Interfax, 2 0 1 5/2/1 6
* 6: Interfax, 2 0 1 5/2/2 6
loomberg, 2 0 1 4/9/1 9
* 7: B
* 8: P
RIME, 2 0 1 4/9/3 0
* 9: Interfax, 2 0 1 5/2/2 6
* 1 0:Interfax, 2 0 1 5/9/1 7
* 1 1:DJ, 2 0 1 5/1 1/1 6
* 1 2:http://www.bing.com/images/search?q= % e5 % 8c % 9 7 % e6 % a5 % b5 % e6 % b5 % b7 % e6 % b5 % b7 %
e5% ba% 95&view=detailv2&&id=474C1997792935CB1A6B693F3D174F80579EE9E1&selectedIndex=0&ccid=37
3G3 3 3V&simid=6 0 8 0 2 4 7 4 6 9 3 8 8 6 3 2 4 5&thid=OIP.Mdfbdc6df7dd5 4 5 5 7 3 2 0c7d8 8fb3 1 1 1a3o0&ajaxhist=0
* 1 3:USGS(2 0 0 8), Circum-Arctic Resource Appraisal: Estimates of Undiscovered Oil and Gas North of the Arctic
Circle. http://pubs.usgs.gov/fs/2 0 0 8/3 0 4 9/fs2 0 0 8-3 0 4 9.pdf
* 1 4:NYT, 2 0 1 1/2/1 5
* 1 5:Interfax, 2 0 1 4/4/1 8
* 1 6:IOD, 2 0 1 4/1 1/1 8
* 1 7:Interfax, 2 0 1 5/9/1 7
* 1 8:Interfax, 2 0 1 4/4/1 8
* 1 9:GazpromNeft website, 2 0 1 4/3/1 9
* 2 0:IOD, 2 0 1 4/6/0 2
* 2 1:http://www.gazprom-neft.com/company/business/exploration-and-production/new-projects/prirazlomnoe/
「ロシア北極海の資源ポテンシャルと Shtokman ガス田の開発」
本誌 2 0 0 7.1 1 Vol.4 1 No.6、p.1 ~ 1 2
* 2 2:拙稿
* 2 3:Interfax, 2 0 1 4/6/2 5
* 2 4:IOD, 2 0 1 4/8/2 2
2016.1 Vol.50 No.1 28
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17:22:45
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ロシア北極圏のエネルギー資源開発
* 2 5:Interfax, 2 0 1 4/1 0/1 5
* 2 6:IOD, 2 0 0 9/9/2 5
* 2 7:Interfax, 2 0 1 0/2/0 5
* 2 8:Interfax, 2 0 1 1/3/1 1
* 2 9:Interfax, 2 0 0 9/8/2 0
* 3 0:IOD, 2 0 1 5/2/1 2
* 3 1:IOD, 2 0 1 5/6/0 5
* 3 2:IOD, 2 0 1 0/9/0 8
* 3 3:Interfax, 2 0 1 1/3/0 2
* 3 4:PON, 2 0 1 1/3/0 3
* 3 5:PON, 2 0 1 1/3/0 3
* 3 6:Interfax, 2 0 1 3/1 2/3 1
* 3 7:IOD, 2 0 1 5/9/0 4
* 3 8:Interfax, 2 0 1 4/4/0 3
* 3 9:Interfax, 2 0 1 4/1 2/3 1
* 4 0:IOD, 2 0 1 5/2/1 2、WSJ、2 0 1 5/3/2 3、PRIME, 2 0 1 5/4/2 2、Interfax, 2 0 1 5/4/2 9
* 4 1:Kommersant, 2 0 1 5/5/2 2
* 4 2:IOD, 2 0 1 5/6/2 5
*4 3:原田大輔
「本格化するヤマルLNGプロジェクト-最新の状況とプロジェクト成立に向けた要因分析-」
本誌2013.7
Vol.47 No.4 p.51 ~ 73.
* 4 4:IOD, 2 0 1 5/3/0 9
* 4 5:PON, 2 0 1 4/4/0 7
* 4 6:Argus FSU Energy, 2 0 1 4/1/1 6
* 4 7:Interfax, 2 0 1 5/4/2 4
* 4 8:IOD, 2 0 1 5/9/1 6
* 4 9:Interfax, 2 0 1 3/7/0 4
* 5 0:IOD, 2 0 1 3/7/2 5
* 5 1:Interfax, 2 0 1 4/4/2 2
執筆者紹介
本村 眞澄(もとむら ますみ)
[学歴]1977年3月、東京大学大学院理学系研究科地質学専門課程修士修了。博士(工学)。
[職歴]同年4月、石油開発公団(当時)入団。1998年6月、同公団計画第一部ロシア中央アジア室長。2001年
10月、オクスフォード・エネルギー研究所客員研究員。2004年2月、独立行政法人 石油天然ガス・金
属鉱物資源機構(JOGMEG)調査部 主席研究員(ロシア担当)。
[主な研究テーマ]ロシア・カスピ海諸国の石油・天然ガス開発と輸送問題、地球資源論。
[主な著書]
(共著)技報堂出版、1984年/『石油大国ロシアの復活』アジア経済
『ガイドブック
世界の大油田』
研究所、2005年/『石油・ガスとロシア経済』
(共著)北海道大学出版会、2008年/『日本はロシアの
エネルギーをどう使うか』東洋書店、2013年
[趣味]ブルーグラス、カントリー・アンド・ウェスタン
29 石油・天然ガスレビュー
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