前回の問題 • あなたの関心のある会社、あるいは内定して いる会社の人事システムと、授業で話した伝 統的な日本型人事システムとは、どこが異な りますか。また、その会社の人事システムは あなたにとって、スクリーニングの役割を果た していると考えますか。説明してみましょう。 解答例 • スクリーニング – 情報を持たない側が、情報を引き出す仕組み • スクリーニングが機能しているか – 自分の特性、能力、希望を考慮したうえで、その 会社の人事システムが魅力的。 – 自分の特性、能力、希望を考慮したうえで、その 会社の人事システムは自分には合っていない。 – 人事システムが会社の決め手 – → スクリーニングが機能 契約の不完全性 不完備契約 ホールドアップ問題 所有権 債券と企業統治 不完備契約 • 不完備契約 – 起こりうる一部のことに対して、条件付けをする • 単純な契約;価格だけを定める • 「予見されてない事態では誠実に話し合う」という条項 • 完備契約 – 起こりうるすべての可能性に対して、何をすべき かを記した契約 • モラル・ハザードや逆選択の問題は契約に よっては解決できないことも • 契約の不完全性 – 将来は不確実 – 観察可能性:契約どおりの行動しているのかを調 べること – 立証可能性:契約どおりに行動しているかを立証 すること 不完備契約と効率性 • 契約後の効率性 – 話し合いなどで、効率的な資源配分 • 契約前の効率性 – 契約前の行動は、契約によって拘束できない – → 非効率な資源配分の可能性 – 不完備契約 → 契約後の行動 – → 契約前の行動 – → 効率性 1 ホールドアップ問題 レストランと客 • 関係特殊的(Relation specific)投資: – 特殊な機械設備などその関係にだけ有効な投資 おいしい • ホールドアップ問題: – ホールド・アップ:銃で脅すこと 入る まずい – 関係特殊的な投資をした後では、関係を断たれ ると投資が無駄になってしまうので、不利な立場 に追いやられること しない (0,0) 入らない ホールドアップ問題の解決 (2,1) メーカー 投資 値下げ (-1,2) 客 – または、そのような立場になることを恐れて、投 資を控えること 事前の投資 (2,1) シェフ (-1,2) • レストランの場合 – おいしい料理を作るという契約 – → 検証、立証不可能 – この場合は「評判」など他の仕組みを利用 • 事前の投資 下請け 投資しない (0,0) 費用削減投資 • 部品メーカー:企業S – ある部品を10億円で生産 – 費用削減投資=4億円 費用10億円 → 2億円 • 組み立てメーカー:企業B – 企業Sの部品を使用してある製品を生産 – 製品は8億円の価値 • 投資しない → 取引は起こらない • 投資する → 6億円の共同利益 – 「値下げ要求をしない」という契約 – → 安心して投資 • 投資したかどうかが検証できない場合は? 投資後交渉 • 企業Sの部品を5億円で企業Bへ販売 – 企業Sの利益 • 5-2=3億円 投資4億円 純利益=-1億円 – 企業Bの利益 • 8-5=3億円 – 費用削減投資はサンクコスト – → 投資後は、この分は考慮しない • 企業Sは投資しない → ホールドアップ問題 2 固定価格契約 • 企業Sの部品を7億円で企業Bへ販売 – 企業Sの利益 • 7-2=5億円 投資4億円 純利益=1億円 • 投資しなければ、取引できず、利益はゼロ – 企業Bの利益 • 8-7=1億円 • 企業Sは投資する – 投資したかどうかを条件に含める必要はない – → 不完備契約 利益を折半 • 企業Sの部品を13億円で企業Bへ販売 – 企業Sの利益 • 13-10=3億円 投資4億円 純利益=-1億円 – 企業Bの利益 • 16-13=3億円 – 費用削減投資はサンクコスト – → 投資後は、この分は考慮しない • 企業Sは投資しない → ホールドアップ問題 固定価格+アルファ • 固定価格契約だけ – 企業Bが損失の可能性 → 契約に応じない • 買うか買わないかを企業Bが選択 – 企業Bの選択 • 投資が行われれば、部品を買って利益=1億円 • 投資が行われなければ、買わずに利益=ゼロ – 企業Sの選択 • 投資すれば、部品が売れて利益=1億円 • 投資しなければ、部品が売れずに利益=ゼロ 価値増加投資 • 部品メーカー:企業S – 部品の生産費用=10億円 – 価値増加投資=4億円 企業Bの製品価値増加 • 組み立てメーカー:企業B – 企業Sの投資で製品価値 8億円 → 16億円 • 投資しない → 取引は起こらない • 投資する → 6億円の共同利益 固定価格契約による解決? • 企業Sの部品を15億円で企業Bへ販売 – 企業Sの利益 • 投資:15-10=5億円 投資4億円 純利益=1億円 • 投資しない 投資費用=ゼロ 純利益5億円 – 企業Bの利益 • 投資:16-15=1億円 • 投資しない 8-15=-7億円 • 企業Sは投資しないほうが得する – 企業Bは、固定契約に応じない → 取引できず 利己的投資と協力的投資 • 利己的投資 – 自分の利益に直接影響する投資 – 費用削減投資 投資の利益は自分に帰属 – 固定価格の不完備契約でOK • 協力的投資 – 相手の利益に直接影響する投資 – 価値増加投資 投資の利益は相手に帰属 – 固定価格の不完備契約ではだめ 3 今日の問題 4
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