経済学の基礎講義資料(2) 2.均衡 GDP と 45 度線分析 前回の講義では「国の経済規模を表す GDP とは何か?」を学びました。では、その GDP はどのように決まるのでしょうか。ここでは 45 度線分析に基づいて GDP の決定について 考えていきます。まずは国際貿易を考えない場合の「均衡 GDP」について学びましょう。 (1)支出面(需要面)の GDP GDP を支出面から捉えると、大きく分けて ・家計(民間)の消費( ・企業の投資( ) ・政府の支出( ) ) の3つから成り立ちます。日本の GDP(2013 年度)について見てみると、家計による消費 が約[ ]%、 (住宅投資を含めた)企業の投資が約[ ]%、政府支出が約[ ]%となっ ています。 (この年は、輸出から輸入を引いた「純輸出」がマイナスであったため、これら 3つを合わせると 100%を超えてしまいます。)つまり、総支出(総需要) ( YE )は ・・・・① と表されます (2)45 度線分析 一国全体の需要(総需要)と一国全体の供給(総供給)のバランスが取れたとき、その GDP の大きさを「均衡 GDP」と呼びます。それはどのようにして決定されるのでしょう か。分配された GDP(つまり所得)を YD とし、家計の消費量(C )が ・・・② で表されるものとしましょう。この関数の事を「 」と呼びますが、詳しい 説明は後の講義で行う事にします。とりあえずここでは、c は「 」、 c 0 は「 ★[ 」と呼ばれ、その意味するところを覚えておいてください。 ]とは・・・ 消費者の所得が増加した際に、そのうちの何%を消費に回すかを表したもの。したが 1 Copyright © T. Ikeda All Rights Reserved って、 0 c 1 の範囲で成立する。 ]とは・・・ ★[ 所得に依存せず、決定される消費量。すなわち、人間が生きていくために必要不可欠 な消費量を表している。 総供給を Y とすると、均衡 GDP では ・・・③ が成立します。ここで、②の消費関数を③式に代入すると、以下の式を得ます。 ・・・④ 誰かの支出は、裏返せば、誰かの所得になるのでしたね。そこで、Y YE YD Y とお * くと、④式は ・・・⑤ となります。この Y こそ均衡 GDP の大きさなのです。図1は④式をグラフに描いたもの * で、45 度線分析と呼ばれます。⑤式の均衡 GDP がどのようなものか視覚的に確認してお きましょう。 Y この線上で均衡が成立 ④式 c Y* c0 I G 45° YD Y* 図1.45 度線分析 2 Copyright © T. Ikeda All Rights Reserved (5)均衡の変化 今、全国民が「貯蓄を増やそう!」と決心したとしましょう。GDP の大きさはどうなる でしょうか?貯蓄を増やすということは限界消費性向 c を小さくすることと同じです。そこ で限界消費性向が c から c’ に変化したとしましょう(ただし、c >c’ です)。すると④式は ・・・⑥ となり、均衡 GDP( Y )は ** ・・・⑦ となります。⑤式と⑦式を比べて見ましょう。すると、c >c’ より、 すなわち、全国民が貯蓄を増やした事により、均衡 GDP は小さくなってしまい ます。図2はこの状況を描いています。 さらに注目すべき事は、この貯蓄率の上昇は貯蓄額を増加させないということです。 なぜなら、所得から消費を引いた貯蓄額(S)は、限界消費性向の大きさに関わらず、 となるためです。すなわち、貯蓄率を上昇させる前と後で、貯蓄額は全く変わりま せん。 Y ④式 c Y* ⑥式 c’ Y ** c0 I G 45° Y ** YD Y* 図 2.貯蓄率の上昇による均衡の変化 3 Copyright © T. Ikeda All Rights Reserved もし自分ひとりだけが貯蓄率を上昇させれば、その人の貯蓄額は増加するでしょう。し かし、国民全員が貯蓄率を上昇させてしまうと、均衡 GDP が減少し、貯蓄額は増えません。 このような 個々の経済主体(消費者)の視点からは当てはまる事が、経済全体 としては当てはまらない という現象を 「 」 と呼びます。 4 Copyright © T. Ikeda All Rights Reserved
© Copyright 2025 ExpyDoc