道総研 産業技術研究本部 食品加工研究センター Forestry Research Institute ●重点研究 野菜を原料とする低GI菓子製造技術の開発 平成21~23年度(3年間) 食品加工研究センター 共同(協力)機関 Abstract 概 ((財)日本食品分析センター、(株)ホリ、(株)きのとや) 要 本道の菓子製品の付加価値を高め、市場競争力を強化するためには、保存性の高い焼き菓子の開発や、 消費者の健康志向に対応した商品企画が求められています。GI(グリセミックインデックス)は、食後の 血糖値の上昇度合いを表す指標で、値の低い食品は食後の血糖値の上昇が穏やかになるとされており、近 年、糖尿病や肥満の予防が期待できる食品として、低GI食品が注目されています 本研究では、GI値の低い焼き菓子の製造技術の開発を目的とし、食物繊維の豊富な野菜原料の配合と、 GI値の高い小麦粉の代替品の選定について検討を行いました。その結果、野菜原料としてブロッコリーを、 小麦粉の代替として小豆粉を選定しました。これらの原料を用いた焼き菓子(クッキー)の食後血糖値上 昇抑制効果について検証したところ、市販の低GI大豆クッキーと同程度効果があることを確認しました。 現在、実用化に向けた試作品製造などの技術移転を進めています。 Results 1 成 果 配合する野菜及び小麦粉の代替物の選定 ■GI値は食後2時間までの血糖値の面積の比から算出されます。ブドウ糖摂取時を100とし、55以下の場合 が低GI食品と評価されます(図1)。 ■GI値の低い食品素材は、食物繊維や難消化性でん粉を多く含むことが報告されています。そこで、これら を指標として、低GI素材の選定を行いました。 ■野菜類から低GI素材を選定するため、食物繊維量の比較を行い、ブロッコリーが高い値を示しました(図 2)。小麦粉の代替品としては、小豆粉及び大豆粉の食物繊維量が高く、また、難消化性でん粉では小豆粉 が高かったことから(図3)、ブロッコリーと小豆粉を選定することにしました(図3)。 食品(基準食と同量 の糖質を含む) GI = 100 低GI (GI値 :55以下) 総食物繊維量(g/100g乾重量) 血糖値 基準食(主にブドウ糖50g) GI 経過時間 経過時間 20 15 10 5 0 小麦粉 小豆粉 大豆粉 難消化性澱粉量(g/100g乾重量) 総食物繊維量(g/100g乾重量) 図1 GI値の概念図 6 5 4 30 25 20 15 10 5 0 3 2 1 図2 野菜類の食物繊維量 0 小麦粉 小豆粉 大豆粉 図3 小麦粉および代替物の食物繊維量と難消化性でん粉量 Hokkaido Research Organization 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 道総研 Results 2 産業技術研究本部 食品加工研究センター Forestry Research Institute 成 果 小豆粉野菜(ブロッコリー)クッキーの試作 ■クッキーの試作は、素材の違いが明確に出るように、表のよう な組成としました。 表 試作クッキーの配合割合 ■食味評価では、小豆野菜クッキーは、小麦粉のみと比較すると 野菜によるえぐみが若干感じられるものの、小豆の風味が加わり、 原料名 良好な食味となりました(写真)。 小豆粉 左上:小麦粉クッキー 右上:小麦野菜クッキー 左下:大豆野菜クッキー 右下:小豆野菜クッキー 写真 試作した各クッキー 3 重量(%) 小豆粉 大豆粉 小麦粉 野菜 野菜 野菜 小麦粉 40 - - - 小麦粉 - - 40 48 大豆粉 - 40 - - 野菜粉 8 8 8 - 無塩バター 26 26 26 26 砂糖 21 21 21 21 卵黄 5 5 5 5 動物実験による食後血糖値上昇抑制効果の検討 ■試作クッキー各種を8~9週齢のラットに経口投与して食後血糖値の推移を測定したところ、小豆野菜 クッキーは糖の一種であるグルコース及び小麦粉クッキーと比較して、低く推移しました(図4)。 血漿グルコース(mg/dl) 160 グルコース 150 平均±標準誤差(n=8) * P<0.05 (vsグルコース) 140 130 120 グルコース 市販品(大豆クッキー) 小麦粉クッキー 小麦粉野菜クッキー 大豆粉野菜クッキー 小豆粉野菜クッキー 110 小豆粉野菜 クッキー 100 90 市販品 (大豆粉クッキー) 80 0 図4 20 40 60 時間(分) 80 100 (人におけるGI値に相当する値) △AUC×100/グルコース△AUC ■食後血糖値の推移曲線の下面積を求め、グルコースの値を100とした時の面積比(AUC:ヒトのGI値に 相当)を求めたところ、小豆野菜クッキーは低GI食品に相当する55以下となり、市販低GI菓子(大豆クッ キー)と同程度であることを見出しました(図5)。 120 100 80 60 40 低GIに 相当する 範囲 20 0 120 マウスによる食後血糖値の推移 Activities 業 図5 績 マウスによる血糖値極性下面積比 【発表論文等】 佐藤理奈ほか ブロッコリーを配合した小豆粉クッキーの食後血糖上昇抑制効果:日本食品科学工学会北 海道支部会要旨集(2012) 佐藤理奈ほか 野菜を原料とする低GI菓子製造技術:食品加工研究センター 平成23年度事業報告 Dissemination 普 及 ■日本食品科学工学会本体会及び北海道支部会、 北方系機能性植物研究会などにおいて、食品 企業・団体への成果の普及を行っています。 ■道内食品企業において、実用化に向けた試作 品製造などの技術移転を行っています。 Hokkaido Research Organization Contact 問い合わせ 産業技術研究本部 食品加工研究センター 食品開発部、応用技術グループ 【電話】 011 -387 - 4115 【メール】[email protected] 【ウェブ】http://www.food.hro.or.jp 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
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