入浴剤 - 中毒情報センター

公益財団法人 日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
【入浴剤】Ver.1.00
公益財団法人 日本中毒情報センター
保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
入浴剤
1.概要
入浴の際、湯中に投じ、水を軟化させ、快い香りをあたえるもので、バスソルト、
バスオイルがある。バスソルトは最も一般的に使用され、血行をよくして体を暖め
るもので、主成分は炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、
リン酸三ナトリウムなどで一部に硼砂(25~80%)を含むものもある。その他、色素、
香料を微量含む。バスオイルは、肌をなめらかにしたり美容を目的にしたもので、
軟カプセル剤が多いが、スティック包装やボトル入りもある。主成分はスクワラン、
サフラワー油、ハトムギ油、ミネラルオイル、オリーブ油、(ヒマシ油)など(50%以
上含有)、その他、香料(1~5%含有)、乳化剤(界面活性剤 1~10%含有)を含み、残
りは水である(1)(2)。また、洋式の風呂で泡立たせて使われるものは、バブルバス
といい、これは汚れを落とす界面活性剤を含む。
2.毒性
バスクリン(R)
:マウス経口 LD50 5.41g/kg(3)
硫酸ナトリウム
:マウス経口 LD50 5,989mg/kg(4)
炭酸水素ナトリウム:乳児の経口最小中毒量 1,260mg/kg(4)
ラット経口 LD50 4,220mg/kg(4)
リン酸三ナトリウム:ラット経口 LD50 7.4g/kg(4)
硼砂
:ヒト経口最小致死量 214mg/kg(6)
乳児経口最小致死量 1g/kg(4)
ラット経口 LD50 2,660mg/kg(4)
ミネラルオイル
:ヒト経口推定致死量 15g/kg 以上(5)
(米国で緩下剤として成人 10~90mL、6 歳以上の
小児に 1 日 1 回 10~20mL 使用される)(1)
(ヒマシ油:ヒト経口推定致死量 5~15g/kg(5))
3.症状
バスソルト:小児の誤飲程度であれば、悪心、嘔吐、下痢、腹痛程度。
大量の場合、炭酸水素ナトリウムによる体液・電解質バランス
(高ナトリウム血症、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、
低カルシウム血症)異常の可能性あり(1)。 硼砂を含むものの
場合は、ホウ酸(ゴキブリ団子の項参照)による中毒も考慮。
バスオイル:大量服用においても消化器症状程度(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)
である。気管内に吸引すると化学性肺炎を生じる可能性あり
4.処置
家庭で可能な処置
バスソルトを大量服用した場合:催吐(ただし、乳幼児の場合吐物を気
管内に吸い込むことがあり要注意)
医療機関での処置
小児の誤飲程度なら処置不要
大量の場合:一般的な中毒に対する処置
対症療法 :バスソルトでは主に体液電解質、酸塩基平衡の補正(2)
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5.確認事項
1) 商品、成分:バスソルトか、バスオイルか。バスソルトなら粉末か、固形か。
また、容器記載の成分を確認。とくに硼砂の含有の有無
2) 摂取量:浴槽の湯に溶かした状態の希釈液を飲んだのか、固体の状態で口に
したのかを確認し、固体の場合は、さらになめただけか、ある
いは大量に食べたのか確認
3) 患者の状態:悪心、嘔吐、下痢、その他変化の有無(バスオイルの場合、
とくに気管に入って咳込んでいる様子はないかに注意)
6.情報提供時の要点
1) バスソルトもバスオイルも大量でなければ家庭で経過観察し、変化の
あるときは容器持参で受診を指示
2) バスオイル大量の場合:一般の人に催吐を勧めると気管に入ってしま
う危険性が大きいので禁忌
3) バスオイルが気管に入った様子があれば、直ちに受診を指示
7.体内動態
炭酸水素ナトリウム:経口でよく吸収され、腎から排泄
ミネラルオイル
:消化管からの吸収はわずかで 12 時間以内に開始
8.中毒学的薬理作用
炭酸水素ナトリウム:胃酸で中和され二酸化炭素を発生
(体液電解質、酸塩基平衡に異常を与える)
硫酸ナトリウム:塩類下剤の作用あり
ミネラルオイル、ヒマシ油:下剤の作用あり
9.治療上の注意点
バスオイルの場合:ミネラルオイルや各種の油による緩下の作用がある
ので、下剤の投与はしない
11.参考文献
(1) Poisindex(1989)
(2) 商品大辞典(1976)
(3) 急性中毒情報ファイル(1996)
(4) RTECS(1992)
(5) Clinical Toxicology of Commercial Products (1984)
(6) 産業中毒便覧(1981)
12.作成日
19900215 Ver.1.00
ID M70187_0100_2
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