~部活動道徳~ 彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず 孫子 ヤマト

バレーボール部通信
松戸市立根木内中学校
紫電一閃
~しでんいっせん~
第 28 号
~部活動道徳~
意義:互いを知る、個性を認める、言葉の裏を知る、絆のチームに。
1、察すること
昨日、私が朝練習に参加できなかった。行動としては信頼を失う行為である。よって『あいつはやる気
がない』と誰かが文句を言ったとしよう。参加できなかったのは事実で否定しないが、実は理由がある。
日曜 17 時半に練習を終え、学校に深夜 1 時まで仕事をしていた。帰宅し 3 時間睡眠、朝はとてもキツく
家族をたまたま駅まで送った。これもまた事実であるが、これで「やる気がない」のか?言い訳をするつ
もりはないが「あの人も一生懸命なんだな」と信頼してくれていたら、どんなに心が救われるか。
これは私に限った話ではなく、仲間同士でも起こる可能性がある。高い次元のチームは「以心伝心」が
できる。相手の心や体に対して配慮・尊重しようとする気持ちが生まれたらチームは強くなる。
極論を言えば、人と人はわかり合えない。親と子の関係であっても、そうなのだから他人となれば、な
おさらである。それを摺り合わせて「チームに!」または「勝っていこう!」と言う場合には、それ相応
の配慮が必要不可欠である。目で見えていない陰の心や行動を想像し「オレもアイツは繋がっている」
と思える人になっていたい。
また、外部からの情報により仲間への信頼が揺らぐこともあるだろう。だが、自分の信じた気持ちと外
部からの情報を天秤にかけ、信じる気持ちが勝った時が『絆のチームへと変化していく時』なのである。
彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず
孫子
2、プライドから
今回は 3 話『マコトの退部をめぐるストーリー』だが、4 話ではお金持ちの『トモ』が軽はずみな私生
活のせいで起こしたトラブルに、キャプテンの『ハル』だけが関わっていく。周りの反応は「トモの自業
自得だ」と言う。
『ヤマト』は「何故、ハルさんは関わるのか?まさか引退後の仕事先、紹介してもらう
約束をしているのか?」と疑うがハルは黙ってトモを支える。
ハルだけは知っていた。トモがお金持ちになりたくてなっているのでなく、愛人の子としてお金だけ
渡されて寂しくて苦しい思いをしている人だということ。ヤマトはハルの行動を考え抜いて仲間に語る。
ヤマト: 俺たちトモさんの事どう思ってたんだろう。あの人軽いキャラだし、どこか一
人だけファッションでホッケーしているって思っていたんじゃないかな?
仲 間: 実際そうだろ。
ヤマト: 最初は俺もそう思ったよ。でもさ、トモさんさ・・・何もこんな辛いマイナーな
スポーツする事ないんじゃん。それで思ったよ、お金持ちのボンボンがやるには
あまりに過酷なスポーツだって。それを一番分かってたのは・・・俺たちのはずな
のに。
マコト: トモさんも、そういうみんなの目・・・気づいていたでしょうね。
ヤマト: ハルさんだけは、そうは思ってなかったんだ。・・・くだらねぇよな、金がある
とかないとか。リンクの上じゃ関係ねぇよな。
目に見えているものに惑わされず、仲間を信頼できる勇気が欲しい。
3、渡邉式『特別』とは・・・
私の考える『特別』とは『一人ぼっちにしないこと』である。今までのバレーボール経験で、私は不運な
事に、何度も一人ぼっちになってきた。雑用係を一人で耐え、ケガにも一人で耐え、リベロの苦しみを一人で
耐え、セッターとして栄光と挫折を一人で耐えてきた。監督になる時に決めたことは「いずれ、俺と同じ一人
ぼっちになる選手が現れるだろう。その選手を守ってやること」である。
緩やかに見えて険しい
道だ。心して、行け!
私は、誰より挫折を味わってきた。だから、目標としている「全国」の山がどれほど険しいかを知っている。
スパイカー、セッター、リベロによって、同じ山でも道は違う。私の持論では、スパイカーは早ければ 2~4
年、セッターは 3~6 年、リベロは 6~8 年かかり、本物だけが集う「全国」という頂上を目指すのが普通で
ある。頂上に上がる前に、中学・高校のリミットが来てしまうこともある。また時間以外にも持っている装備
(体や心)にもよって登れる道が違う。でも、それは登ったことがあり、頂上から見た人しか分からないことな
のだ。私は、頂上に近いところにいるので、君達が何合目でつまづくのか、前もって見通すことができてい
る。
(実際には 1 年前から、個人の登山計画は練ってある)
「まさか!」と思う選手もいるだろうが、私の挫
折が多くの道を教えてくれているから今のチームがあるのは事実である。
15 人いたら 15 人のスピードがあり、それぞれに違う道が準備されており、誰と比べることもできない。今
は違う『特別』な道を、
『特別』な方法で、時には寄り添い、時には頂上から私が指示を出している。総体に
頂上で揃うように調節していることを知っておいて欲しい。私は新しい登り方を研究し、ゴール地点で待っ
ている。
もともと特別な
オンリーワン☆
4、評価制度
私は監督として、選手起用に『評価制度』を用いていることは知ら
ないであろう。これは「心・技・体」において、自身の力を伸ばせているか、また成長へと努力しているかを
判断するものである。
順天堂大学の蔦宗先生との対談や著書の中で、「評価制度を用いて、起用の意図を明確にする」という話
をいただいた。大学や社会人になれば、監督以外のコーチ、マネージャー、アナリストなどのチームスタッフ
が増えていき、評価が多方面から細部にわたってできパフォーマンスの高い選手を起用することが可能である。
蔦宗先生は高校の日本一を釜利谷高校で果たした際に、その評価を選手に任せ、公開した。その役割を担った
のは『ポジションリーダー』である。監督が上級生からリーダーを決め、そのリーダーが評価していく。多く
の評価が得られることは、すなわち出場機会が得られる事になる。評価があるので競争率が高まり切磋琢磨で
きる環境となる。
しかしデメリットもある。1 つは『リーダーの公平性』である。「長い付き合いだから」や「~らしい」な
どの私的な感情や空想で評価をしてしまう幼い考えでは、かえって起用が不明確になる。2 つめは、
『評価で
起用が決まると思い込んでいること』である。最終的な起用者は監督であり、これは揺るがない事実である。
他人任せの起用はあってはならない。あくまで起用の可能性の話である。安心せず、常に緊張感を持って取り
組むことが要求される。
公平かつ高いレベルで評価し合えるなら、評価制度を選手に与えても良いとも考えている。