自分を救った言葉元郷中学校三年吉原樹「君に夢はあるか。」そう聞かれたら胸を張って答えられる夢が僕にはある。これからどんなにつらいことがあってもこの夢だけは変わることはないと思う。それが僕の夢、プロサッカー選手になることだ。サッカーを始めてまだ九年しか経っていないが、それでもこれまで多くのことを経験してきた。苦しかったことや嬉しかったこと、いろいろあったけど、その一つ一つが自分の成長につながったと思う。そんな九年間の中でも一番に思い浮かぶ出来事がある。中学三年の夏休みのある日。その日の先発のメンバーに僕の名前はなかった。その日僕は始めてスタメン落ちをした。結局その試合は出場できず、その後に行われたサブ組の試合に出場した。僕の所属しているチームは都内でも上位のレベルに位置していて、入るためにはセレクションという四百人近く受けて、十数人しか受からないテストに合格しなければならない、いわば強豪チームである。そんなチームに所属しているのだから、スタメン落ちなんてひんぱんに起きることぐらい分かっていた。それでも、一、二年からスタメンだった僕は、自分は大丈夫という安易な考えをもっていた。そんなときに起きた自分自身の突然のスタメン落ち。頭は真っ白になった。それからの練習、試合は正直やる気が出なかった。練習の最後に行われる紅白戦でも、スタメン組とサブ組に分かれるが自分は毎回サブ組。その度に「自分もちょっと前まであっちにいたのに。なにやってんだよおれは」そんな自分自身への腹立だしさがこみ上げてきた。そんな日々が続いたある日、練習が終わって帰ろうとしていた僕はある人物に声をかけられた。その人物は、一、二年の頃僕達の代の監督をしていて、僕をスタメンとして使い続けてくれたコーチだ。「今時間あるか」そういったコーチは近くのイスにこしをかけ、僕もとなりに座った。コーチには、一、二年の頃によく、相談に乗ってもらいこうして二人で話すことが多かった。どんなに小さいなことにも耳をかたむけ、自分が気付かなかった何かを教えてくれる。そんなコーチだからこそ、自分の気持ちを正直に話すことができた。コーチは、「最近どうだ。」といつもの調子で僕にしゃべりかけた。僕は、心にとどめていた気持ちを全て話した。コーチは僕の話がおわるとこう言った。「俺はたつきがこれまで、どれだけ努力してきたかを知ってる。よく努力は人を裏切らないっていうだろう。あの言葉、たつきにぴったりだと思うぞ。」この言葉を聞いたとき、僕の気持ちが変化していくのをたしかに感じた。僕はそれから、自分ができる最大限の努力をするようになった。以前までの気持ちは自然となくなり、絶対にスタメンを取り返す。という気持ちが芽ばえたからだ。そして向えた最後の大会。勝てばまだこのチームでサッカーを続けられる。でも負ければ引退。そんな試合で僕達は負けた。試合終了のホイッスルが鳴ったとき、僕はベンチにいた。あれから必死に努力したけど、スタメンを取り返すことはできなかったからだ。僕の目からは涙がこぼれた。悔しくてたまらなかった。このチームでのサッカーが終わってしまったこと。最後まで試合に出れなかったこと。いろいろな感情が入り混じって、涙がとまらなかった。あれから数ヶ月たった今でも、あのときの気持ちは忘れられない。きっと、一生忘れることはないと思う。これからサッカーを続いていく中で、もっとつらいことや大変なこと、ときには、あの頃の僕のようにサッカーが嫌になったりすることがあるかもしれない。そんなときにこそ、努力は人を裏切らない。コーチのこの言葉をむねにがんばっていきたい。自分の夢をかなえるために。