第3編郡民所得推計の概念(PDF:177KB)

第3章
郡民所得推計の概念
第1
大島 郡民 所 得 推計の 概 念相 互関 連 図
第2
大島 郡民 所 得 推計の 概 念
第1 大島郡民所得推計の概念相互関連図(平成24年度)
(単位:億円)
産出額
(5,158)
生
郡内総生産(生産側:名目)
(付加価値)
3,280
中間投入(原材料,燃料費他)
1,878
生産・輸入品に課される税 (控除)補助金 164
産
郡内純生産(要素費用表示)
2,321
固定資本
減 耗
795
補助金
生産・輸入品に課される税
財産所得
101
郡民所得
分 (要素費用表示) 郡民雇用者報酬
配
1,477
(2,385)
企業所得
一人当たり 郡民所得(2,385億円)
=
=2,059千円
郡民所得
郡内人口(115,800人)
807
郡外からの要素所得(純) 63
郡民総所得
(3,344)
純移出等 △1,156
郡内総生産(支出側:名目) 3,280
支
出
民間最終消費支出
2,140
政府最終
消費支出
1,412
総資本
形 成
884
※ 四捨五入により,合計等は必ずしも一致しない。
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第2 大島郡民所得推計の概念
1 大島郡民所得推計とは
大島郡民所得推計は,国民経済計算の基本的な考え方や仕組みに基づき,奄美群島(1
市9町2村)という行政区域を単位として一定期間(会計年度)の経済活動の成果を計測
するものです。
奄美群島内の経済活動によって一年間に生み出された付加価値を,生産,分配,支出の
三つの側面から計量把握することにより奄美群島経済の規模,構造,水準などを明らかに
し,経済の分析や諸施策の企画立案などの基礎資料とするものです。
2 大島郡民所得推計の構成
(1) 生産:郡内総生産(生産側)
「生産」とは,郡内の経済活動によって新たに生み出される付加価値のことです。
産出額から原材料等の中間投入を差し引いて算出します。産業構造等を知ることが
できます。
(2) 分配:郡民所得
「分配」とは,生産された付加価値が,雇用者への賃金や企業の利潤等としてどの
ように配分されたのかを推計したものです。
(3) 支出:郡内総生産(支出側)
「支出」とは,モノやサービスの供給に対して企業等が行った支出について,供給
されたモノやサービスの性質と支出主体に着目して推計したものです。家計,企業
等の支出の構造を知ることができます。
3 基本的な用語
経済成長率とは
一年間(年度)の経済活動規模が前年度に比べてどれだけ増えたかを示すもので,
もっともよく利用される経済指標の一つです。
一人当たり郡民所得とは
郡民所得全体(雇用者報酬,財産所得,企業所得の合計値)を,その年の10月1
日現在の奄美群島の総人口(国勢調査,国勢調査年以外は県毎月推計人口)で割った
ものです。
個人の給与や実収入を表すのではなく,企業の利益なども含んだ郡民経済全体の所
得水準を表したものです。
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遡及改訂とは
大島郡民所得推計は,基礎資料の改訂に伴い,毎年遡及して推計値を改訂しており,
過去公表された数値とは異なっています。
(平成 24 年度大島郡民所得推計報告書については,平成 13 年度∼平成 24 年度を掲載)
これは,推計に用いるデータが毎年調査公表される資料ばかりではないため,そうし
たものについては,最新の結果が公表されれば統計的な手法で過去に遡って再計算し,
推計値を改訂しているためです。したがって,大島郡民所得推計の利用にあたっては,
常に最新のものを御利用ください。
名目と実質とデフレーター
経済成長率には「名目」と「実質」があります。
「名目」
その年度の時価で評価した値であり,その年度の経済状況を肌で実感する
ことのできる数値ということができます。産業全体に対する構成比の分析や,
経済規模の比較などに適切な指標です。
「実質」
特定の年の物価を基準として,価格上昇や下落などの価格変動分を取り除
いたもので,異なる年度間の比較をする際に適切な指標です。
「デフレーター」
この名目値と実質値の間の価格変動分を調整する指標を,「デフレーター」
といいます。なお,実質化には「固定基準年方式」と「連鎖方式」の2つの
手法があります。
ある年を基準年とし,基準年の価格体系で財・サービスの価格
固定基準年方式
を評価する方法で,基準年改定は5年ごとに行われます。
【現在の基準年は平成17年(暦年)】
連
鎖 方
式
常に前年を基準年とし,毎年毎年の積み重ねで接続していく方
法で,基準年は毎年更新されます。
「郡内ベース」と「郡民ベース」
付加価値を把握する場合に,
「郡内ベース(属地主義)
」と「郡民ベース(属人主義)」の
2つの考え方があります。
郡内ベース
(属地主義)
郡民ベース
(属人主義)
奄美群島という行政区域内(「郡内」)での経済活動に携わった
者が,郡内に居住しているか否かに関わらず把握するもので
す。
郡内に居住する者の経済活動を,経済活動が行われた地域に関
わりなく把握するものです。
大島郡民所得推計では,郡内総生産は「郡内ベース」で,郡民所得は「郡民ベース」で
把握されます。
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市場価格表示と要素費用表示
付加価値額を表す場合に,
「市場価格表示」と「要素費用表示」の2つの方法があります。
市場価格表示
市場で取引される価格で表示する方法(間接税等を含んだも
の)
。
生産のために必要とされる生産要素(労働,資本,土地)の提
要素費用表示
供者に対して分配された費用(賃金,利潤など)で表示する方
法(間接税等を除いたもの)。
総(グロス)と純(ネット)
建物・機械設備などの固定資産は,生産過程において利用による摩耗や年月の経過によ
る老朽化,陳腐化等によりその価値が減少します。こうした資産価値の減少分を固定本減
耗といいます。この固定資本減耗を含んだ郡内生産を「郡内総生産」,含まないものを「郡
内純生産」といいます。
- 50 -
郡内総生産(生産側)
一年度間に郡内における生産活動によって新たに生み出された付加価値の評価額を三つの
経済活動別に示したものです。これは,産出額から中間投入を控除したものになります。
産出額
一年間に生産された財貨・サービスの総価額のことで,自家消費のための生産
物や便益も含まれます。
中間投入
生産の過程で必要な原材料,光熱燃料費,間接費等のことで,固定資産の維持
補修,研究開発調査等もこれに含まれます。
1
産業
(1) 農林水産業
① 農業
農業サービス業,獣医業を含む
② 林業
きのこ類栽培業農業を含む
③ 水産業
(2) 鉱業
砕石製造業を含む
(3) 製造業
砕石製造業を除く
(4) 建設業
(5) 電気・ガス・水道業
上水道,廃棄物処理業(民営)を含み,下水道を除く
(6) 卸売・小売業
(7) 金融・保険業
(8) 不動産業
持ち家の帰属家賃を含む(帰属計算の説明参照)
(9) 運輸業
(10) 情報通信業
(11) サービス業
2
政府サービス生産者
医療,介護サービス業を含む
国,県,市町村などの行政機関,社会保障基金
(1) 電気・ガス・水道業
下水道,廃棄物処理業(公共)
(2) サービス業
国公立の教育,学術研究機関
(3) 公務
政府サービス生産者のうち(1)
(2)に該当しないもの
3 対家計民間非営利サービス生産者
(1) サービス業
4
小計 (1+2+3)
5
輸入品に課される税・関税
6
総資本形成に係る消費税
7
郡内総生産(生産側)
営利を目的としない民間の団体(労働組合,政党,私立
学校,宗教団体など)
投資に係る消費税の控除分
(4+5−6)
- 51 -
三つの経済活動とは
1
産業
経済的に意味のある価格で生産物のほとんど,又は全てを販売する生産者(市場生
産者)
,すなわち利潤を目的として,財貨・サービスを販売する生産者で構成されてい
ます。
なお,産業には,民間企業の事業所のほか,公的企業として産業に分類される政府
関係機関(公立病院等)も含みます。
第一次産業
農林水産業(農業,林業,水産業)
第二次産業
鉱業,製造業,建設業
第三次産業
電気・ガス・水道業,卸売・小売業,金融・保険業,不動産業,
運輸業,情報通信業,サービス業,政府サービス生産者,
対家計民間非営利サービス生産者
2
政府サービス生産者
国の出先機関や,県・市町村などの行政機関のほか,社会保障基金(国民年金や健
康保険組合など)も含みます。
3
対家計民間非営利サービス生産者
利益追求を目的とせず,他の方法では効率的に提供しえない社会的,公共的サービ
スを家計に提供する生産者(私立学校や宗教団体,労働組合,政党など)をいいます。
帰属計算とは
推計上の特殊な概念であり,実際には商品やサービスが市場で取引されなくても,それが
あたかも行われたかのようにみなして推計する方法で,「帰属家賃」があります。
「帰属家賃」 実際には家賃の受払いを伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)についても,通
常の借家や借間と同様のサービスが生産され消費されるものと仮定して,それ
を市場家賃で評価した帰属計算上の家賃をいいます。
生産面では不動産業を営む個人企業の生産額に,分配面ではその営業余剰は
個人企業所得に含まれ,支出面では家計の最終消費となります。
- 52 -
郡民所得
生産活動で生み出された付加価値は,労働提供者には賃金(雇用者報酬)
,資本や土地の提
供者には利子・配当・賃借料(財産所得)
,企業などには利益(企業所得)として分配されま
す。
1
2
郡民雇用者報酬
(1)賃金・俸給
現金および現物給与,役員給与手当,議員歳費および委員
(2)雇主の社会負担
報酬,給与住宅差額家賃
a 雇主の現実社会負担
各社会保険の雇主負担分
b 雇主の帰属社会負担
退職一時金,公務災害補償など
財産所得(非企業部門)
利子,配当,賃借料の純受取
a 受取
b 支払
(1)一般政府
国・県・市町村の各行政機関や社会保障基金の利子,配当,
a 受取
賃借料
b 支払
(2) 家計
① 利子
一般預貯金利子,信託預貯金利子,有価証券利子など
a 受取
家計の支払利子など
b 支払
② 配当(受取)
株式・出資金に対する配当および役員賞与など
③ 保険契約者に帰属する財産所得
保険企業(生命保険など)から受け取ることができる保険
④ 賃借料(受取)
技術準備金の投資によって得られる所得など。
(3) 対家計民間非営利団体
a 受取
b 支払
3
企業所得
営業余剰・混合所得(営業利益にほぼ相当)に,財産所得
(法人企業の分配所得受払後)
の受払(営業外収入-営業外費用)を加えたもの(経常利
(1)民間法人企業
益にほぼ相当)
a 非金融法人企業
b 金融機関
(2)公的企業
a 非金融法人企業
b 金融機関
(3)個人企業
a 農林水産業
b その他の産業(非農林水・非金融)
c 持ち家
4
郡民所得(要素費用表示)
(1+2+3)
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郡内総生産(支出側)
生産活動で生み出された付加価値が,労働や土地などの生産要素に分配されたのち,消費
や投資にどれだけ支出されたかを示すものです。
なお,経済活動を支出側からみたもので,郡内総生産(生産側)に対応しています。
1
民間最終消費支出
(1)家計最終消費支出
全世帯の消費支出(食料・非アルコール飲料,アルコー
ル飲料・たばこ,被服・履物,住居・光熱水道,家具・
家庭器具・家事サービス,保健・医療,交通,通信,娯
楽・レジャー・文化,教育,外食・宿泊,その他)の
12 大費目に分けられる
(2)対家計民間非営利団体最終消費支出
2
政府最終消費支出
一般政府が行政を行うのに必要な経費から,他部門に対
(1)国出先機関
するサービスの販売額(国公立学校の授業料など)を差
(2)県
し引いた自己消費に,医療保険の給付や教科書購入費な
(3)市町村
どの家計への現物給付を加算したもの
(4)社会保障基金
3
総資本形成
(1)総固定資本形成
新規に購入した有形(建物,道路など)
,または無形(コ
a民間
ンピュータソフトウェア)などの資産(土地購入費およ
(a)住宅
び中古品は控除)をいう
(b)企業設備
b公的
(a)住宅
公務員住宅,公営住宅にかかる建設費
(b)企業設備
(c)一般政府
(2)在庫品増加
a 民間企業
道路,橋,港湾などの公共投資
企業および一般政府が所有する棚卸資産(在庫)の増減
を金額で評価したもの
b 公的(公的企業・一般政府)
4
財貨・サービスの移出入(純)
・統計上の不突合
移出(郡外に販売した商品など)から移入(郡外から購
入した商品など)との差
郡内総生産(生産側)と,郡内総生産(支出側)とは概
念上は一致するべきものであるが,基礎資料や推計方法
5
郡内総生産(支出側)
(1+2+3+4)
が異なっているので,両者の完全一致は困難であり,そ
のために生じる計数上の不一致
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