急性心筋梗塞後の難治性心室頻拍に対して

Pr
og.Med.
1
7(s
.
1):11
02
∼1
105
,1
997
uppl
一般講演
1
1
急性心筋梗塞後の難治性心室頻拍に対して
アミオダロンの経管投与が有効であった1例
亀澤 康裕
福田 正浩
草野 浩幸
磯田 菊生
疋田 浩之
渋谷 利雄
荒川
里村
高瀬 凡平
栗田
中村 治雄
明
宏
生
表1 入院時検査所見
はじめに
ロンの経管投与が有効であった1例を経験したので報
告する.
症
患
者:5
5
歳,男性.
主
訴:呼吸困難.
2
,
9
0
0
/
,RBC4
4
3
×1
0/
,Hb14
.4
WBC2
μl
μl
,Ht4
1
.
2
%,Pl
6
.
0
×1
0/
g/
dl
t1
μl
.
0
,
,
5
80
,3
45
SMAC TBi
l2
mg/
dl
AST 2
U/
L,ALT 2
.
8
,Gl
3
2
,AMY 3
00
U/
L,TP6
g/
dl
u5
mg/
dl
/
,
4
9
/
,
1
.
6
/
,
1
U L BUN mg dl Cr mg dl Na 37
.
5
5
49
mEq/
L,K 4
mEq/
L,Cl9
mEq/
L,CPK 9
CBC
急性心筋梗塞後の難治性心室頻拍に対し,アミオダ
例
BGA
家族歴:兄弟に狭心症2名,糖尿病3名.
0
.
7
%,MLC 2
6
.
3ng/
U/
L,HbA 1
ml
0
%,RR1
6
/
0
0
,SI
Fi
O 7
mi
n,TV 4
ml
MV,
pH 7.55,PaCO 32.3mmHg, PaO 273.3
mmHg, HCO 28.6mEq/L, BE 6.7mEq/
9
.
7
%
L,O SAT 9
既往歴:2
0
歳より高血圧,3
5
歳より糖尿病.
現病歴:1
9
95
年7月2
4日,無痛性の心筋梗塞を発症
し救急車にて当院に搬送された.来院時に心肺停止を
図2)
と心陰影の増大を認めた(
.
認め,救急部にて心肺蘇生術を施行された.蘇生後も
来院後に行った緊急冠動脈造影において,左冠動脈
心停止を計9回繰り返しており,当科 CCU へ入室と
図3)
近位部および回旋枝の閉塞がみられた(
.また右
なった.
冠動脈も閉塞しており,三枝完全閉塞の所見が得られ
入院時現症:HR 1
2
1
7/
6
6mmHgで,意
bpm,BP 9
識清明であった.眼瞼結膜に 血はなく,眼球結膜に
た.
図4に入院後の経過を示す.
心室頻拍(VT)
が入院当
軽度の黄疸を認めた.明らかな頸静脈怒脹はなかった.
日,および発症後2
2
病日から1
1
日間にわたって出現し,
聴診にて両側全肺野にラ音を聴取し,心音ではⅢ音,
当初 s
us
t
ai
nedVT を含め1日十数回とかなりの頻度
Ⅳ音を聴取した.肝を1横指触知し,両側下 に軽度
で発現した.
の浮腫を認めた.
図5 に VT 出現時の心電図を示す.VT に対してア
入院時検査所見:白血球2
2
,
90
0
/
,CPK 94
9
μl
U/
Lと
ミオダロン4
00
mg/日の経管投与,および静注によりプ
上昇しており,ヘモグロビン A も1
0
.7
%と上昇して
ロカインアミド,ジソピラミド,シベンゾリンなどの
い た.挿 管 後 の 血 液 ガ ス デ ー タ で は PaO は2
7
3.
3
I
a群薬,リドカイン,メキシレチンなどの I
b群薬,ピ
.来院時の心電図は,Ⅱ,Ⅲ,
mmHgであった(表1)
ルジカイニドなどの I
c群薬,およびマグネゾールなど
V 誘導の ST 上昇,心室内伝導遅
および PACが
図1)
みられた(
.また,胸部レントゲンでは両側肺水腫
を投与した.VT は当初各薬剤に抵抗性であった.
図6は,VT を繰り返していたときの s
i
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Y.Kame
zawa,M.Fukuda,H.Kus
ano,K.I
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oda,H,Hi
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a,T.Shi
buya,K.Ar
akawa,K.
Sat
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a,B.Takas
e,A.
Kur
i
t
a,
H.
Nakamur
a:防衛医科大学 第一内科
―5
81
(1
0
2
)
―
第1回アミオダロン研究会講演集
図1 入院時心電図
図3
図2
入院時胸部レントゲン写真
図4
臨床経過
―5
91
(1
0
3
)
―
左冠動脈(
LAO)
.
1
7s
.11
9
9
7
Pr
ogr
e
s
si
n Medi
ci
neVol
uppl
図5 VT
図6 VT頻回出現時の心電図
時の心電図であるが,著明な QT
長と心室内の伝導
察
遅 を認める.VT の増悪に一致して,心拍数で補正し
た 最 大 QT 時 間 と 最 小 QT 時 間 の 差(
QTcdi
s
pe
r
s
i
on) の増大が認められた.
意識障害を有する患者に対し,アミオダロンを経管
投与することにより血中濃度を上昇させることができ,
第2
2病日より循環動態が不安定になり,大動脈内バ
ルーンポンピングや人工呼吸器を 用した.この患者
は第5
5病日に CABGを施行した.
VT のコントロールおよび循環動態の安定化,さらに
CABGへの移行に有用であった.
アミオダロンとリドカインの投与後は,心電図の
図7 は,アミオダロンの血中濃度と VT 出現の頻度
QTcmaxi
mum の 長は継続したが,QTcdi
s
pe
r
s
i
on
である.アミオダロンの経管投与を開始し,開始後約
は軽減する傾向にあり,VT の減少との関連が示唆さ
2週間でアミオダロンの血中濃度は0.
4
μg/
mlと上昇
れた
してきており,この頃より VT の出現頻度は減少して
おいても VT はみられておらず,PVCもほとんど出
いる.また,QTcdi
s
per
s
i
onも減少傾向である.
現していない.
―6
01
(1
0
4
)
―
.また,内服継続により以後の Hol
t
e
r心電図に
第1回アミオダロン研究会講演集
図7
アミオダロン血中濃度の推移と VTの出現回数
献
1)Pye,
.
.
:
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