リサーチ TODAY 2015 年 4 月 2 日 日本株時価総額はバブルピーク590兆円を超えるか 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 日本の株価は19,000円を超え、足元ではややもみあっているが、いずれ2万円の大台を付けるかに注目 が集まっている。確かに2万円は象徴的な水準であるが、1989年のバブルピークの4万円近い水準からは 依然大きな差がある。本日ポイントにするのは、時価総額がバブルピークの590兆円に近づいてきたことで ある。2014年度末(3月31日時点)の東証一部の時価総額は556兆円であり、過去ピークの590兆円が視野 に入るまでになってきた。2007年のミニバブル局面でも、一時バブルピークに近づいたものの、結果として その水準には到達しなかった。今回は日経平均で20,400円程度まで上昇すれば、時価総額が史上最高 になる。日本の1990年代以降の四半世紀に及ぶバブル崩壊は、結局資産デフレによるものだった。時価 総額がバブルピークに戻ることは、資産デフレからの回復の第一歩を示す象徴的なものに違いない。 ■図表:日本の株価と時価総額推移 (円) 1989年末 時価総額:590兆円 40,000 時価総額(右目盛) (兆円) 700 日経平均株価 2015年3月末 時価総額:556兆円 35,000 600 30,000 500 25,000 400 20,000 300 15,000 200 10,000 100 0 5,000 85 87 90 92 95 97 00 02 05 07 10 12 15 (年) (注)時価総額は東証 1 部(普通株)。 (資料)日経 Financial-QUEST よりみずほ総合研究所作成 次ページの図表は日本の不動産を含めた資産市場動向の推移である。日本の不動産市場のピークは 1990年前後で、その評価額は約2,500兆円程度であったが、バブル崩壊後には1,000兆円近い資産価値 の消失が生じた。日本のGDPを約500兆円とすれば、これはおよそ2年間分に相当する。日本の第二次大 戦における国富消失度合には様々な試算があるものの、当時のGDPの1.5倍程度とされる。日本のバブル 崩壊は「第二の敗戦」とされることがあるが、あながちこうした表現も誇張ともいいにくい。同様に、株式も大 1 リサーチTODAY 2015 年 4 月 2 日 幅な消失に至ったが、株式市場については概ね、バブルピークの価値を取り戻すまでに至ったと考えるこ ともできる。 ■図表:日本の不動産を含めた資産市場の動向推移 4,500 (兆円) 4,000 土地評価額 株式評価額 国富 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 (年) (注)データは 2005 年基準。ただし、2000 年以前については 2000 年基準の前年比を利用して推計。 (資料)内閣府経済社会総合研究所 今回、日本の株式市場が1989年のバブルピークまで戻ることは、資産デフレに伴う四半世紀のバランス シート調整からの脱却の象徴的な第一歩としての意義をもつ。ただし、問題は四半世紀にわたる資産デフ レの後遺症として、マインドが委縮したままにあることだ。今回の株価の戻りが果たす意味は大きいが、四半 世紀におよぶ資産デフレがもたらした影響は、想像以上に大きいものがある。日本の株式市場は、日本企 業が海外市場も含めた舞台で活躍するというマインド転換したことから、評価され今日に至った。一方、不 動産市場については日本の人口問題も踏まえると、バブル期の価値を取り戻すにはまだ道半ばである。 バブル崩壊に伴う資産デフレが四半世紀近く続くなか、企業はバランスシートに株・不動産を「持たない 経営」を鉄則とし、その結果、信用収縮が進むデフレスパイラルがもたらされた。今回、株式の時価総額が 過去ピークに達することは、株式について含み益が生じるので「持つ」という選択肢が発生する転換を意味 する。 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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