T字 形配管合流部の流動特性に及ぼす Effects of

可 視 化 情 報Vol.24
Suppl.
No.2
(2004年9月)
T字 形配 管合 流部 の流 動特性 に及 ぼす
A233
乱 流 プ ロモ ー タ の 影 響
中 嶋 尚 広(愛
媛 大 院),佐
々 泰 副(愛
村 松 壽 晴(サ
イ ク ル 機 構),越
十 河 基 介(愛
媛 大 工)
媛 大 院),檜
原 秀 樹(愛
智 順 治(愛 媛 大 工),岩
媛 大 工),
本 幸 治(愛
媛 大 工),
Effects of Turbulence Promoter on Flow Characteristics
in T-junction Piping Systems
Naohiro NAKAJIMA, Taisuke SASA, Hideki HIBARA, Toshiharu MURAMATSU,
Junji OCHI, Yukiharu IWAMOTO and Motosuke SOGO
ABSTRACT
Recently in nuclear plants, it has occurred thermal fatigue failure accidents because of thermal fluctuations that
called Thermal Striping in T-junction where mixed a higher temperature sodium and a colder temperature sodium
into each other. Then, we set up turbulence promoter in T-junction piping system, effects of turbulence promoter on
flow characteristics have been investigated experimentally using flow visualization techniques (the dye injection
method) and velocity measurement
sections
becomes stronger
Keywords:
1.緒
by LDV. As a result, it is clarified
and diffusion of momentum
Flow Visualization,
Vortex, Thermal
2.実
言
近 年,高
is promoted
Striping,
速 炉 プ ラ ン トで は,フ
ラン スの 高速増 殖 炉
that secondary
in case with turbulent
験 装置 お よび方 法
実 験 装 置 の 概 略 お よび 座 標 系 をFig.1,2に
路 は 流 れ の 可 視 化 お よ びLDVに
るT字
ク リル 製 で,主
形 配 管 合 流 部 に お い て,サ ー マ ル ス トラ イ ピ ン グ と
管 は40×40mm,長
呼 称 さ れ る流 体 温 度 ゆ ら ぎ に 起 因 した 熱 疲 労 破 損 事 故 が
管 路 を,枝
発 生 して い る(1)(2).こ
作 動 流 体 に は 常 温 の 水 を 用 い た.
々 は,T字
管 に は 管 径12mm,長
さ3000mmの
さ600mmの
は 流 動 条 件 に よ り大 き く,付 着 流,偏 向 噴 流,衝 突 噴 流 に
分 類 で き る こ とや,偏 向 噴 流 の 場 合 に は サ ー マ ル ス トラ イ
ピ ン グ の 原 因 と成 り得 る 周 期 的 な 渦 放 出 現 象 が 起 こ る こ
と を 見 出 し た(3).
そ こ で 本 研 究 で は,熱 疲 労 破 損 の 原 因 と な る 流 体 温 度 ゆ
高振 幅 成
さび 形 状
突 噴 流 に よ り発 生)を
低 減 す る た め に,く
の 乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 し,合 流 部 の 流 れ の 可 視 化 お よ び
断 面 内 の 流 速 測 定 を 行 い,乱 流 プ ロ モ ー タ の 設 置 に よ る 配
管 系 サ ー マ ル ス トラ イ ピ ン グ の 緩 和 効 果 に つ い て 評 価,検
Fig.1
討 した.
135
Experimental
示 す.供 試 管
よ る流 速 測 定 が 可 能 な ア
形 配 管 合 流 部 の 流 れ に 関 す る 研 究 を 開 始 し,合 流 部 の 流 れ
ら ぎ の 低 周 波 数 成 分(渦 放 出 現 象 に よ り発 生)と
promoter.
Pipe Flow
漏 洩 に み られ る よ うに,高 温 と低 温 の ナ ト リ ウ ム が 混 合 す
分(衝
in pipe
2.1実 験 装 置
「フ
ェ ニ ッ ク ス 」に お け る配 管 合 流 部 の 亀 裂 に よ るナ ト リ ウ ム
の よ うな 状 況 か ら,我
streams
apparatus
正 方形
直 円 管 を,
Fig.2
2.2実
Coordinate
system and out line of promoter
験 方 法お よび条 件
ま ず 流 れ 場 の 概 略 を 把 握 す る た め に,色 素 流 脈 法 に よ り
流 れ の 可 視 化 を 行 っ た.流 れ の 可 視 化 は 、枝 管 に 色 素 を 注
(a)
With
promoter
(ƒÁ=4.00)
入 し,そ の 流 脈 を デ ジ タ ル ビデ オ カ メ ラ を 用 い て 撮 影 す る
こ とに よ り行 っ た.そ
の 後,断
面 内 の 流 速 測 定 をLDVを
用 い て 行 い,管 路 内 の 流 動 状 態 を 調 べ た.実 験 は,主 管 流
の レイ ノル ズ 数Re(=WmDm/ν)=1000∼5000,口
(=Dm/Db)=3.33,流
速 比β(Wm/Wb)=0.2∼5、
の 高 さの 比 γ(Dm/H)=4,
径比 α
プ ロモー タ
5.33, 8の 下 で 行 っ た.
(b) With
promoter
(ƒÁ=5.33)
(c)
promoter
(ƒÁ=8.00)
With
(d) Without promoter
(a)Withoutpromoter(b)Withpromoter
Fig.3
Photograph
Fig.4
of flow patterns
136
Classification
of flow patterns
3.実
験結 果 お よび 考察
3.1流
れ の概 略
Re=1000に
お け る代 表 的 な 流 動 パ タ ー ン の 可 視 化 の 写
真 をFig.3に
示 す.合
に よ らず3つ
A),偏
流 部 の 流 れ は 乱 流 プ ロモ ー タ の 有 無
の 流 動 パ タ ー ン,す
向 噴 流(パ ター ンB),衝
な わ ち 付 着 流(パ タ ー ン
突 噴 流(パ タ ー ンC)に
分類
で き るが,プ ロモ ー タ を設 置 す る と さ らに 付 着 流 は 乱 流 プ
ロ モ ー タ の 背 後 に お け る 逆 流 の 有 無 に よ り2パ
(A1,A2)に,ま
ター ン
た,偏 向 噴 流 は 枝 管 と 反 対 側 の 乱 流 プ ロ モ
ー タ 背 後 に お け る逆 流 の 有 無(B1 ,B2)と,流
れ が2本
に分
示 す.プ
ロモ
岐 す る パ タ ー ン(B3)に 分 類 さ れ る.
流 動 パ タ ー ン と 流 動 条 件 の 関 係 をFig.4に
(a)
Without
(b)
With
promoter
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
ー タ を 設 置 した 場 合 に は ,偏 向 噴 流 か ら衝 突 噴 流 へ と遷 移
す る 流 速 比 βの 値 は プ ロ モ ー タ を 設 置 し な い 場 合 と比 べ
て 減 少 す る.よ っ て,プ ロ モ ー タ の 設 置 に よ り合 流 部 の 流
れ が 衝 突 噴 流(流 動 パ タ ー ンC)を 示 す 領 域 は 狭 くな り,温.
度 ゆ ら ぎ の 高 振 幅 成 分 の 発 生 は あ る 程 度 回 避 で き る.
3.2断
面 内 の流 れ
ま ず,軸
方 向 お よ び 水 平 方 向 の 時 間 平 均 速 度W,Uの
測 定 結 果 か ら,対 称 水 平 面 内 の 流 れ 場 の 様 子 をFig5に
す.乱
示
流 プ ロ モ ー タ を 設 置 しな い 場 合[Fig.5(a)]に は,枝 管
流 の 流 入 直 後 のZ/Dm=1に
お い て,枝
管側 に低圧 な死 水
領 域 が み られ る.ま た,主 管 へ と流 入 した 枝 管 流 の 影 響 に
よ り主 管 内 の 流 路 面 積 が 狭 ま る た め,枝 管 と反 対 側 で 流 れ
は 加 速 す る.Zのm=2で
は,管 路 中 央 部 に 低 速 流 体,そ
Fig.5
Flow in horizontal plane (z-y plane: y=0)
と流 下 して も,合 流 前 の 一 様 な 速 度 分 布 に
は 回 復 し て お らず,依 然 と して ア ー チ 渦 の 影 響 が み られ る.
(a)
(b)
Fig.6
Without
With
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
の
両 側 に 高 速 流 体 が み ら れ,ア ー チ 渦 が 確 認 で き る.そ の 後,
Z/Dm=5∼7へ
promoter
promoter
promoter
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
Flow in cross section (x-y plane, Z/Dm=2,5)
137
参考文献
一方
,乱 流 プ ロモ ー タ を 設 置 した 場 合[Fig.5(b)]に は,合
流 後 のZ/Dm=1に
お い て,プ
の 断 面 積 が よ り狭 ま る た め,流
そ の た め,渦
た,プ
い 場 合 に 比 べ て,渦 は よ り 上 流 で 形 成 され る と と も に ,下
れ は 大 き く加 速 して い る,
は よ り上 流 側 で 形 成 され,よ
向 に 移 送 され る.ま
流 プ ロ モ ー タ を 設 置 した 場 合 に は,プ ロ モ ー タ を 設 置 しな
ロモ ー タ の 設 置 に よ り流 路
流 方 向 へ の 移 送 速 度 も よ り高 速 と な る.
り高 速 で 下 流 方
ロ モ ー タ 背 後 の 流 れ は 死 水 し,
壁 面 か ら 流 れ が は く離 し て い る 。 そ の 後,Z/Dm=2付
近で
流 れ は 管 壁 に 再 付 着 し,さ
と流
ら に 下 流 のZ/Dm=5∼7へ
下 す る に つ れ て,速 度 分 布 は ほ ぼ 一 様 な 分 布 へ と移 行 す る
.次 に,水
平 方 向 お よ び 垂 直 方 向 の 時 間 平 均 速 度U,V
の 測 定 結 果 か ら,断
(a)
Without
promoter
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
面 内 の 二 次 流 れ の 速 度 ベ ク トル 図 を
Fig.6に 示 す.
枝 管 か らの 流 れ は 主 管 内 に 流 入 す る と 主 管 流 と衝 突 し,
枝 管 軸 方 向 か ら 主 管 軸 方 向 へ とそ の 向 き を 大 き く変 え る.
この 過 程 で,枝 管 か ら の 流 れ に は 遠 心 力 の 作 用 に よ り,ち
(b)
With
ょ う ど 曲 が り管 の 流 れ と同 様 に,対 称 水 平 面 付 近 に お い て
promoter
Fig.7
(Re=1000, ƒÀ=0.71)
Behavior
of vortex
左 か ら右 へ,上 下 壁 付 近 に 右 か ら 左 へ と 向 か う二 次 流 れ が
誘 起 され る.さ ら に 主 管 の 枝 管 側 は 枝 管 か ら の 流 れ の 背 後
4.結
言
とな り,低 圧 な 死 水 領 域 と な り,こ の 低 圧 領 域 に 上 流 か ら
主 管 流 が 流 れ 込 む.こ
の た め,乱 流 プ ロモ ー タ を設 置 しな
乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 したT字
形配 管 合流 領域 の流れ
い 場 合[Fig.6(a)]に は,断 面 内 に 反 時 計 回 りに 回 転 す る 流 れ
に つ い て,流 れ の 可 視 化 お よ び 流 速 測 定 を 行 っ た 結 果,以
が み られ る よ うに な る.
下 の よ うな 知 見 を 得 た.
一方
,乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 した 場 合[Fig.6(b)]に つ い て
(1)乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 す る と,偏
向噴 流 か ら衝突 噴 流
も,枝 管 流 が 通 過 す る 付 近 に 反 時 計 回 りに 回 転 す る 大 き な
へ と遷 移 す る流 速 比 βの 値 は 乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 し
渦 が み られ る が,そ の 渦 よ り枝 管 側 に は,プ
な い 場 合 と 比 べ て 減 少 し,合 流 部 の 流 れ が 衝 突 噴 流(流
ロモー タを設
置 し な い 場 合 に は 観 察 され な い,時 計 回 り の 小 さ な 渦 もみ
動 パ タ ー ンC)を
られ る.ま た,二 次 流 れ は 乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 しな い 場
示 す 領 域 は 狭 く な る.
(2)乱 流 プ ロモ ー タ を 設 置 す る と,渦
合 と比 べ て 強 い.よ っ て,こ の 強 い 二 次 流 れ に よ り運 動 量
され,よ
の 拡 散 が 急 速 に 進 む た め,前 述 の よ うに 軸 方 向 の 流 れ は 下
(3)乱 流 プ ロモ ー タ を 設 置 す る と,よ
流 で ほ ぼ 一 様 な 分 布 と な る([Fig.5(b)]参 照).
成 され,運
は よ り上 流 側 で 形 成
り高 速 で 下 流 方 向 に 移 送 され る.
り強 い 二 次 流 れ が 形
動 量 の 拡 散 が 急 速 に 進 む.
以 上 の こ と か ら,乱 流 プ ロモ ー タ を設 置 す る と,プ ロ モ
ー タを設 置 しな い場合 と比 べて
形 成 され,運
り強 い 二 次 流 れ が
動 量 の 拡 散 が 急 速 に 進 む.従
モ ー タ の 設 置 は,サ
謝辞
,渦 は よ り上 流 で 形 成 され,
よ り高 速 で 下 流 に移 送 され る.ま た,よ
っ て,乱 流 プ ロ
本 研 究 は,核 燃 料 サ イ ク ル 開 発 機 構 の 「先 行 基 礎 工 学 研
ー マ ル ス トラ イ ピ ン グ の 要 因 で あ る,
究 」 に よ り実 施 され た 。 こ こ に 謝 意 を 表 す る.
温 度 ゆ ら ぎ の 低 周 波 数 成 分 の緩 和 に 十 分 つ な が る も の と
考 え られ る,
3.3渦
につ い て
最 後 に 、 合 流 部 に 発 生 す る ア ー チ 渦 の 様 子 をFig.7に
示
(1)通 産 省 ・資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 編 、 高 サ イ クル 熱 疲 労 に 関
す.乱 流 プ ロ モ ー タ を 設 置 した 場 合 に も,プ ロ モ ー タ を 設
す る 技 術 基 準 運 用 ガ イ ドラ イ ン(1999).
置 し な い 場 合 と 同 様 に 渦 放 出 現 象 が 確 認 で き る 。渦 生 成 の
(2)Muramatsu, T.,Proc. The 15th nt. Conf. on Structural
仕 組 み も 基 本 的 に は 乱 流 プ ロモ ー タ を 設 置 し な い 場 合 と
Mechanics in Reactor Technology (SMiRT-15), Vol.IV,
同 じ で あ る が,合 流 部 に 観 察 さ れ る渦 は,プ
217-224(1999).
ロモ ー タ を 設
置 しな い 場 合 に み られ る よ うな きれ い な ア ー チ 渦 で は な
く,ア ー チ の 一 部 が と ぎれ た 状 態 の 渦 で あ っ た.ま
(3)檜 原 秀 樹 ・村 松 壽 晴 ・平 田 直 樹 ・須 藤 浩 三 、機 論 、70-693、
た,乱
B(2004),1192-1200.
138