REPORT 高齢者の夫婦関係 主席研究員 小谷 みどり

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高齢者の夫婦関係
主席研究員
小谷 みどり
目次
1.はじめに························································································································································· 2
2.配偶者との関係 ········································································································································· 4
3.まとめ ······························································································································································ 9
要旨
① 65歳以上の住まい方がこの30年で大きく変化している。主流が三世代同居から夫婦のみ
世帯へと移行し、晩年は子どもと別居する高齢者の姿が一般化されつつある。寿命の伸
長で、夫婦二人で暮らす期間が長くなるなか、高齢者の夫婦関係の実態を把握するため
に、有配偶高齢者を対象に意識調査を実施した。
② 病気などで一時的に寝込んだとき、あるいは寝たきりになったり、体の自由が利かなく
なったりした場合、配偶者がとても頼りになると回答した男性は6、7割を占めたが、
女性では2割程度にとどまった。配偶者を信頼している人や、配偶者から理解されてい
ると感じている人の割合も男性では多いのに対し、女性では少ない。
③ 男性の60.4%は妻との離婚を考えたことはないが、女性では7割以上が離婚を考えたこ
とがあった。また、生まれ変わったら「あまり結婚したくない」「結婚したくない」と
回答した人は男性では合わせて11.3%しかいない一方で、女性では27.5%もいた。さら
に配偶者と離死別したら、男性の41.5%がパートナーを見つけたいと考えていたが、女
性では15.5%にとどまっており、女性の中には、妻であることから解放されたいと思う
人が少なくないと推察される。
④ 中高年に限らず、性格の不一致は離婚の大きな理由だが、離婚しないまでも、こうした
夫婦の不一致や不協和は、今回の調査から、結婚して30年以上も経過した有配偶高齢者
のなかにも読み取れた。高齢期に夫婦二人で過ごすことになるというライフデザインへ
の備えと関係性の再構築を念頭に置き、日ごろから夫婦の向き合い方について話し合っ
ておく必要があるのではないだろうか。
キーワード:夫婦、離婚
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1.はじめに
(1)高齢者の「夫婦のみ世帯」の増加
高齢化の進展で、65歳以上がいる世帯が増加し、厚生労働省「国民生活基礎調査」
によれば、全世帯に占める65歳以上の人がいる世帯の割合は1980年の24.0%から2013
年には44.7%に達している。世帯構成の推移をみると、この30年余りで「三世代世帯」
の割合が50.1%から13.2%へと大幅に減少し、代わって「夫婦のみ世帯」や「単独世
帯」の割合が増加している(図表1)。
2013年には、「夫婦のみ世帯」が全体の31.1%にあたる697.4万世帯と最も多く、次
に多い「単独世帯」を合わせると、65歳以上の56.7%が、夫婦二人か、一人で暮らし
ていることになる。
図表1 65歳以上の人がいる世帯構成の年次推移
(千世帯)
25,000
20,000
15,000
その他の世帯
三世代世帯
親と未婚の子のみ世帯
夫婦のみ世帯
単独世帯
3,348
2,953
(13.2)
3,947
4,141
10,000
4,232
6,190
4,270
5,000
4,254
(50.1)
6,974
(31.1)
5,420
4,313
4,234
3,075
2,314
1,379 1,795
5,730
(25.6)
0
1980年
1985年
1990年
1995年
2000年
2005年
2010年
2013年
資料:1985年までは厚生省「厚生行政基礎調査」、1990年以降は厚生労働省「国民生活基礎調査」
一方、長寿化により、65歳以上の有配偶率は1960年以降、男女ともに増加傾向にあ
る(図表2)。将来的には生涯未婚者の増加で有配偶率は微減するものの、高齢者人口
が増加しているので、65歳以上の有配偶者は今後も増加する。
以上にかんがみると、これからは、子どもが独立した後、高齢期に夫婦二人で過ご
すことになるというライフデザインへの備えと夫婦関係の再構築が必要となってくる。
そこで本レポートでは、本研究所で有配偶高齢者に対して実施した意識調査の結果か
ら、高齢の夫婦関係の一端を浮き彫りにしてみたい。
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図表2 65歳以上の配偶者関係の年次推移(性別)
0%
20%
40%
23.1
80.6
1980年
100%
29.5
76.0
1970年
男性
80%
69.5
1960年
18.3
83.3
1990年
15.2
2000年
83.1
13.6
2010年
81.8
14.5
2020年
7.8
75.8
11.3
2030年
71.2
17.5
71.8
31.4
1970年
67.5
35.4
1980年
62.4
40.1
1990年
56.6
45.5
2000年
49.6
49.6
2010年
2020年 4.7
2030年
16.5
27.1
1960年
女性
60%
6.5
46.4
49.9
45.4
46.7
46.8
未婚
有配偶
離死別
資料:2010年までは総務省「国勢調査」、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」
2013年1月推計。
(2)意識調査の概要
調査の概要は以下の通り。
<調査対象者> 60歳以上79歳以下の全国の男女600名(第一生命経済研究所生活調査
モニターより抽出)
<調査時期>
2014 年 11 月 11 日~11 月 30 日
<調査方法>
郵送調査法
<有効回収数>
552 名(有効回収率 92.0%)
(単位:人)
男性
女性
60代
134
146
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70代
138
134
合計
272
280
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2.配偶者との関係
(1)配偶者は頼りになるか
病気などで一時的に寝込んだとき、あるいは寝たきりになったり、体の自由が利か
なくなったりした場合、配偶者はどの程度頼りになるかをたずねた。その結果、病気
などで一時的に寝込んだときに「頼りになる」と回答した人は全体では 49.0%いたが、
男性では 71.5%であったのに対し、女性では 26.4%と、男女で大きな差があった(図
表3)。「あまり頼りにならない」「頼りにならない」と回答した女性は合わせると
34.7%にものぼった。
また寝たきりになったり、体の自由がきかなくなったりした場合、配偶者が「頼り
になる」と回答した人は 40.0%おり、一時的に寝込んだ場合に比べると、頼りになる
と回答した人の割合は若干少ない。性別にみると、男性では「頼りになる」と回答し
た人は 58.5%と過半数を占めたが、女性では 21.5%しかいない。
図表3 配偶者は頼りになるか(全体、性別)
寝たきりになったり、体
の自由がきかなくなった 病気などで、一時的に寝
場合
込んだ場合
0%
20%
全体
40%
60%
80%
31.1
49.0
100%
14.4
5.5
3.0
男性
女性
38.9
26.4
全体
21.5
17.6
32.7
58.5
36.6
頼りになる
25.6
34.6
40.0
男性
女性
23.6
71.5
まあ頼りになる
29.1
あまり頼りにならない
1.9
9.1
7.8
6.1
2.7
12.8
頼りにならない
(2)配偶者との信頼関係
配偶者を信頼しているかたずねたところ、「信頼している」と回答した人は 53.8%
と半数を超える程度であった(図表4)。性別にみると、男性では「信頼している」と
回答した人は 68.4%いたが、女性では 39.2%しかおらず、30 ポイント近い開きがあ
った。女性では、「あまり信頼していない」(13.6%)、「信頼していない」(5.3%)を
合わせると 18.9%が夫を信頼していなかった。
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図表4 配偶者を信頼しているか(全体、性別)
0%
20%
全体
40%
60%
80%
100%
35.2
53.8
2.7
8.3
3.1
男性
68.4
女性
28.5
39.2
信頼している
41.9
まあ信頼している
-
13.6
あまり信頼していない
5.3
信頼していない
次に、配偶者は回答者のことをよく理解していると思うかをたずねたところ、男性
では「そう思う」と回答した人は過半数の50.2%、「まあそう思う」(42.6%)を合わ
せると92.8%が理解されていると感じているのに対し、女性では「そう思う」は20.4%
にとどまり、「あまりそう思わない」(22.3%)、「そう思わない」(9.8%)を合わせる
と32.1%の女性は夫から理解されていないと感じていた(図表5)。
これを結婚するまでの交際期間別にみると、男性では、交際期間の長さと、妻から
理解されている度合いには特筆すべき関連はなかったが、女性では交際期間「6ヶ月
未満」で、夫から理解されていると思っている人が最も少なく、
「そう思う」
(18.0%)、
「まあそう思う」(38.0%)を合わせても、56.0%しかいなかった(図表省略)。
図表5 配偶者はあなたのことを理解しているか(全体、性別)
0%
20%
全体
40%
60%
80%
45.0
35.3
100%
14.2
5.5
6.1
男性
女性
42.6
50.2
47.5
20.4
そう思う
まあそう思う
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1.1
22.3
あまりそう思わない
9.8
そう思わない
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(3)離婚の意思
現在の配偶者と離婚したいと考えたことがあるかたずねたところ、男性では60.4%
が「考えたことはない」と回答したが、女性では29.4%にとどまり、7割以上の女性
が離婚を考えたことがあるという結果になった(図表6)。女性では、「よく考える」
(5.5%)、「たまに考える」(17.3%)を合わせると、現在でも22.8%が離婚したいと
考えていた。
図表6 現在の配偶者と離婚したいと思ったことがあるか(全体、性別)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
3.5
全体
37.6
14.2
44.7
1.5
男性
10.9
27.2
60.4
5.5
女性
17.3
47.8
29.4
よく考える
たまに考えることがある
かつては考えたことがあったが、最近は考えない
考えたことはない
今回の調査対象者のうち、現在の配偶者と結婚して「30年以上」経過していると回
答した人は91.8%を占めたが、昨今では、婚姻期間が長い夫婦による離婚は増加傾向
にある。厚生労働省「人口動態調査」によれば、1975年には、20年以上同居した夫婦
の離婚は全体の5.8%しかいなかったが、2013年には17.6%を占めるまでになっており、
いわゆる「熟年離婚」は珍しくなくなっている(図表7)。
件数でみても、50歳以上で同居をやめて離婚した人は1990年以降、男女ともに急増
しており、2013年では1970年に比べると男性で10倍、女性で12倍となっている(図表
8)。三世代世帯が減少し、高齢の夫婦のみ世帯が増加する一方で、中高年の離婚が増
加している点は注目に値する。
また厚生労働省「平成21年度離婚に関する統計」によれば、50歳未満での離婚では、
男女ともに「妻が全児の親権をおこなう離婚」が最も多いのに対し、50歳以上の離婚
では、親権を行わなければならない子*1がいない離婚が最も多いことから(図表省略)、
婚姻期間の長い中高年夫婦の離婚は、子どもの成人や離家が一つの動機になっている
可能性があると考えられる。
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図表7 同居期間別でみた離婚の年次推移
0%
20%
40%
60%
49.4
1975年
1980年
27.7
34.0
100%
13.7
24.2
37.3
1985年
80%
17.3
10.0
19.5
21.3
13.0
14.1
6.9
7.7
12.4
1990年
38.1
1995年
39.5
21.2
13.0
9.9
16.4
2000年
37.9
23.0
13.0
9.6
16.5
2005年
36.5
14.1
10.0
16.2
2010年
35.0
2013年
34.2
21.2
23.1
14.7
22.6
15.0
22.3
5年未満
5~10年
12.7
5.8
10~15年
15~20年
14.0
10.8
16.9
10.9
17.6
20年以上
資料:厚生労働省「人口動態調査」
図表8 50歳以上で同居をやめ、離婚した人の数
(人)
45,000
40,000
36,969
38,482
34,647
35,000
35,002
男性
30,000
女性
23,443 23,753
25,000
22,571
19,557
20,000
15,000
12,250
10,000
7,036
3,564 4,625
1,852
5,000
22,806
12,606
12,502
7,788
4,244 7,488
2,709
0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2013(年)
資料:図表7と同じ
(4)再婚の意思
次に今回の調査で、生まれ変わったらまた結婚したいかどうかをたずねたところ、
男性では58.9%が「現在の配偶者とまた結婚したい」と回答したのに対し、女性では
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27.8%と少なく、
「現在の配偶者とは別の人と結婚したい」と回答した人(44.7%)の
方が多かった(図表9)。
「あまり結婚したくない」
「結婚したくない」と回答した人は
男性では合わせて11.3%しかいない一方で、女性では27.5%もいることから、図表6
で離婚を考えたことがある女性が70.6%もいたことにもかんがみると、女性の中には、
単に夫と別れたいというだけでなく、妻であることから解放されたいと思う人が少な
くないのではないかと推察される。
図表9 生まれ変わったら、また結婚したいか(全体、性別)
0%
20%
全体
60%
43.1
男性
女性
40%
80%
11.5
37.4
58.9
27.8
8.0
7.5
29.8
44.7
100%
15.4
3.8
12.1
現在の配偶者とまた結婚したい
現在の配偶者とは別の人と結婚したい
あまり結婚したくない
結婚したくない
また、配偶者と離死別し、ひとり暮らしになった中高年のなかには、入籍するかど
うかは別にして、新しいパートナーを見つけたいと考える人が増えているが、こうし
た傾向についてどう思うかをたずねたところ、「中高年になって異性と付き合うのは、
世間体がよくないと思う」と回答した人は5.3%しかおらず、シニアの再婚について忌
避観を持つ人は少なかった(図表10)。「当人が幸せならよいが、自分がその立場にな
った場合、新しいパートナーを見つけたいとは思わない」人が66.4%と多いものの、
「自分がその立場になった場合、新しいパートナーがいたらいいなと思う」と回答し
た人は28.3%もいた。
なかでも男性では41.5%がパートナーを見つけたいと考えており、「当人が幸せな
らよいが、自分がその立場になった場合、新しいパートナーを見つけたいとは思わな
い」人(50.7%)とほぼ二分された。一方、女性では「自分がその立場になった場合、
新しいパートナーがいたらいいなと思う」人は15.5%にとどまり、81.6%と大多数が
「当人が幸せならよいが、自分がその立場になった場合、新しいパートナーを見つけ
たいとは思わない」と回答した。
年齢層でみると、男性では70代で36.0%が「自分がその立場になった場合、新しい
パートナーがいたらいいなと思う」と回答していた。さらに、60代では47.0%と、
「当
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人が幸せならよいが、自分がその立場になった場合、新しいパートナーを見つけたい
とは思わない」(45.5%)人を上回った(図表省略)。女性では、60代でも70代でも8
割以上が「当人が幸せならよいが、自分がその立場になった場合、新しいパートナー
を見つけたいとは思わない」と回答した。
図表10 今後、配偶者と離死別したら、新しいパートナーを見つけたいか(全体、性別)
0%
20%
80%
50.7
41.5
男性
女性
60%
100%
66.4
28.3
全体
40%
15.5
5.3
7.8
2.9
81.6
自分がその立場になった場合、新しいパートナーがいたらいいなと思う
当人が幸せならよいが、自分がその立場になった場合、新しいパートナーを
見つけたいとは思わない
中高年になって異性と付き合うのは、世間体がよくないと思う
3.まとめ
長寿化や核家族化の進展で、子どもとは同居せず、夫婦二人で暮らす高齢期が伸張
しており、老いや病に直面しながらも、夫婦二人でどう支えあっていけるかが高齢期
のQOLに大きく影響することは間違いない。しかし今回の調査結果からは、男女の
温度差がかなりあることが浮き彫りになった。例えば夫は、妻が頼りになる存在であ
り、自分のよき理解者だと感じているのに対し、妻は必ずしもそう感じていないとい
う点である。
一方で、ここ数年、配偶者と離死別するなどし、新たなパートナーを見つける中高
年が増えている。中高年の結婚の場合、新しいパートナーも法定相続人となるので、
子どもたちが入籍を反対することが少なくなく、事実婚や週末婚、別居婚など多様な
結婚の形があるため、中高年の結婚件数の実数を捉えることは不可能だが、入籍した
件数だけをみても、厚生労働省「人口動態統計」によれば、50 歳以上で結婚した人は
2000 年あたりから急増しており、なかでも 65 歳以上での結婚は、男女ともに 1990 年
時点から倍増している。
今回の調査でも、配偶者がいる高齢男性の 41.5%は、配偶者と離死別したら、新し
いパートナーが欲しいと考えていた。法的に入籍するかどうかは別にして、支えあう
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パートナーがいることは、本人のみならず、離れて暮らす子どもにとっても安心につ
ながるはずだ。孤立死や認知症予防にもつながるだろう。
しかし実際に中高年向けのお見合いパーティでは、世話してくれる女性を求めて婚
活する中高年男性が少なからず見受けられる。年金証書を持参して経済的に安定して
いることを強調する男性、
「料理がうまくて、将来自分を介護してくれる人が理想」と
公言する男性は決して少数派ではない。今回の調査結果からも、高齢夫婦がお互いを
いたわり、助けあえる対等な関係を築いているとはいえず、新たなパートナーと結婚
生活を始めたとしても、夫婦がお互いに満足する関係性を継続するのは容易ではない
ことが分かる。
アメリカでは、人間関係教育の一環として、キリスト教会や大学の公開講座などで
結婚教育(marriage education)がおこなわれている。また合衆国保健福祉省(United
States Department of Health and Human Services)では、家庭は安定した社会の基
本であるという考えのもと、2006年以降、NPOなどの団体が実施する結婚教育プロ
ジェクトに対して年間1億5000万ドルの予算をつけ、国を挙げて健全な結婚(Healthy
Marriage Initiative*2)を推進している。具体的には、夫婦関係が悪化する要因は、
意見の食い違いを調整する技術がないことや家庭運営に必要な知識が欠如しているこ
とだとし、考え方の食い違いや互いの違いを認め、乗り越えるためのコミュニケーシ
ョン方法、夫婦喧嘩や争いの解決方法、相手への思いやりの示し方などを、結婚前の
カップルや夫婦にレクチャーする講座を開催している。
わが国でも、中高年に限らず、性格の不一致は離婚の大きな理由となっている。最
高裁判所「司法統計年報」によれば、離婚調停を申し立てた動機のなかでは「性格が
あわない」が男女ともに突出して多いうえ、この40年間でその割合は増加の一途をた
どっている。離婚に至らないまでも、こうした夫婦の不一致や不協和は、今回の調査
から、結婚して30年以上も経過した有配偶高齢者のなかにも読み取れた。
高齢期に夫婦二人で過ごすことになるというライフデザインへの備えと関係性の
再構築を念頭に置き、日ごろから夫婦の向き合い方について話し合っておく必要があ
るのではないだろうか。
(研究開発室
こたに みどり)
【注釈】
*1 親権を行わなければならない子とは、20 歳未満の未婚の子をいう。
*2 健全な結婚とは、「お互いを高めあい、互いに心から尊敬しあえる関係」とされている。
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