バリアフリー ニュース (第4号)

平成27年3月31日発行
東北運輸局 交通環境部 消費者行政・情報課
バリアフリー
ニュース (第4号)
3.11 東日本大震災から4年となります。
みなさまのもとへバリアフリーニュース(第4号)をお届けします。
川柳でつづる東日本大震災の記録
丸山 あずさ さん(宮城リーダー)
今日は平成27年3月11日。東日本大震災からちょうど4年目である。明日から震災
5年目がスタートする。今日、被災地では追悼の行事や式典がおこなわれ、地震や津波で
亡くなった2万人もの犠牲者を静かに悼んだ。
この4年間で東日本大震災からの復興はどこまで進んだのだろうか?海沿いの市町村
の現状は一体どうなっているのだろうか?例えば災害復興住宅は、建設予定のまだ20%
も完成していないと言う。高台移転や土地のかさ上げの進捗率もまだまだである。町作り
の青写真も、4年経って変更せざるを得ないケースもあると言う。復興の遅れにしびれを
切らした住民が、泣く泣く故郷を離れざるを得ないと言う苦渋の選択をした人も少なくな
い。水産業の復興においては販路の開拓の難しさや労働力不足など、問題は山積している
。
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このようになかなか計画通りに行かないもどかしさに、心を痛めている被災者も多い。
復興の道程は、長く厳しい。復興に携わる人びとが、心身共に疲弊してはいないだろうか
。長引く避難生活で、被災者が持病を悪化させたり、運動不足になっていないだろうか。
またコミュニケーションがうまく取れずに孤立し、孤独感をより深めていないだろうか。
この4年間、がむしゃらに頑張って頑張って来たのに、突如としてポキンと心が折れてし
まう人も増えていると精神科医は言う。子どもたちも大なり小なりストレスを溜め込み、
本来の子どもらしい成長に影響を及ぼすケースも見られるとか。このように被災地の現状
はかなり深刻・過酷で、根が深い。
そんな被災地からの、声にならない声。被災者の目線に立った川柳を私は作り続けてい
る。言うまでもなく川柳は五七五の17音。季語も切れ字もいらない。人間の喜怒哀楽を
ありのままにコトバにするだけ。時には権力に対しての叫びや、誰にもぶつけようのない
憤怒や慟哭を五七五につむぐ。一方で自分を見つめ、客観視することで、魂のカタルシス
も図れる。荒れた心をコントロールする効果も川柳にはある。私にとって川柳を紡ぐこと
は、自己との対峙であり、過酷な現実を見つめることでもあった。私は目が不自由だが、
川柳は心で作るもの。だから目が見える見えないはさほど影響ない。この4年間に作った
膨大な句の中から、東日本大震災の復興の軌跡を探りたい。未来へ繋がるひとすじの光が
垣間見えれば幸いである。
☆ 2011年の句
震度七じっと寄り添う盲導犬
あんなにも星が綺麗で震えていた
水がめが溢れたままの現在地
ウグイスの声だ私は生きている
ありがとう友が差し出す塩結び
撮らないでください泣いているのです
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避難所のアイドルですね燕の子
哀しみを分かち合うため手を繋ぐ
半壊の屋根から星が降って来た
缶詰めがこんなに美味しかったとは
瓦礫背にまっすぐ歩くカタツムリ
子を探すホタルは今日も海へ行く
☆ 2012年の句
朱鷺色の朝日を拝む丸い背な
仮設の灯それぞれにある影法師
ありがとう全国からのボランティア
私には真っ赤に見える放射能
風評に耐えてサクラは凛と咲く
思い切り泣いていいよと風が言う
生きていますここにいますと窓開ける
満月が青い墓標をそっと抱く
漂流の友に毎日メールする
☆ 2013年の句
緋のダリア見つめる先に波頭
語り部のような海鳴り聴いてます
ひこばえが生きよ生きよと叫んでいる
汚染水どくどく青い青い海
傷口にそうっと忍びこむ夕日
ヒマワリが活断層の上に咲く
鎮魂の祈りでしょうか海女の笛
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渾身の力で雲は立っている
葉っぱのフレデイ頑張らなくていいんだよ
灯籠流しゆらりゆらりと仏の灯
瑠璃色のコップの嗚咽きいてます
☆ 2014年の句 「四度目の星祭り」(第三回東北川柳文学大賞受賞作品)
裟婆を見る窓は大きく開けておく
ふるさとの地図が踏み絵になっていた
蟻の列 死者の臭いのするほうへ
孤独死の仮設の屋根に天の川
ほんとうの修羅場 四年目の夏
サルビアが燃える泣くもんか泣くもんか
あれからのいのちを歌うハーモニカ
満月へ繋ぐ天旗あげている
真っ白な夜明けがきっと来る 歩く
傍観者になるな血を吐くホトトギス
☆ 2015年 今年引退する盲導犬のニコに捧げる句
ありがとう翼をくれた盲導犬
春夏秋冬キミと探した未来地図
ゆらゆらしっぽ光の束があたたかい
抱きしめるキミはひなたの匂いする
盲導犬のニコは天使ねありがとう
ハーネスを着けるとプロの顔になる
迷路から抜けた真っ赤な薔薇を買う
盲導犬のいびき優しいセレナーデ
噴水へ行こう行こうと盲導犬
光る海 盲導犬と風になる
2015年3月12日に記す。
バリアフリーリーダー 丸山あずさ&盲導犬ニコ
障害のある方・高齢の方とご家族のための旅行サポートブック
伊藤 清市 さん(宮城リーダー)
私が理事長を務めているNPO法人ゆにふりみやぎでは、宮城・仙台のバリアフリー情報
を発信しております。元々は宮城県在住の方に向けたバリアフリー情報を提供していたの
ですが、5年前からバリアフリー観光ということを念頭に置き、日本バリアフリー観光推
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進機構の一員となりました。そして今年度、宮城県からの委託事業で「障害のある方・高
齢の方とご家族のためのバリアフリー旅行サポートブック」を作成することになりました
。
このサポートブックは、普段から旅慣れていらっしゃるという方より、旅行をしたいけ
ど何から準備したらいいのかわからない、インターネットでバリアフリーの宿を探してい
るけど、自分の障害にあったところが見つからない、高齢の親と旅行したいけど交通機関
は何がよいのかなど、これからの一歩を踏み出したい方を対象に作成しました。
今回作成するにあたっての大きなポイントは視覚障害のある方の旅について。足の不自
由な方についてのバリアフリー情報は以前よりも入手しやすくなっておりますが(もちろ
んまだまだ不十分です)、視覚障害のある方についての旅の情報は本当に少ないことがわ
かり、大学教授や視覚障害者団体にご協力いただき、日本三景の一つである松島と東日本
大震災で甚大な被害を受けた石巻を取材して回りました
石巻では、宮城県出身の石ノ森章太郎氏の立像が出迎えてくれるJR石巻駅から石ノ森
萬画館へ続く「マンガロード」を歩き、視覚障害の方にとって縁遠いと思われるマンガを
立像に触れることによって、キャラクターを身近に感じることができることがわかりまし
た。松島ではかき小屋に行き牡蠣の殻に触れたり牡蠣むきの道具を触れおいしく牡蠣をい
ただきました。また、温泉宿のご協力を得て視覚障害の方が大浴場に入るポイントなどを
取材しました。
サポートブックには他にも、車いすで七夕まつりを楽しむポイント、航空機や新幹線な
どの予約から利用までの手順、障害者割引などのお役立ち情報などを掲載しています。
こうした取材を通じて感じたことは、受け入れてくださる事業者の意識にまだ差がある
こと。今回取材掲載させていただいた事業者はとても快く受け入れてくださいましたが、
中にはバリアフリーのバの字を出すだけでお断りされるところもありました。また、受け
入れたいけども前例がなく躊躇しているという事業者も多く、今回のサポートブックが旅
行者のみならず、事業者にとっても役に立つ情報であればと思っております。
3月末に完成予定のサポートブック。部発行予定で部数に限りがあるため、個人の方に
行き渡らないこともあると思いますが、宮城県内の関係機関に配布させていただき、宮城
県リハビリテーション支援センターのサイトからもダウンロードできる予定ですので、ぜ
ひ一度ご覧いただければ幸いです。
私ども、ゆにふりみやぎではバリアフリー観光に特化した団体として、昨年8月に「仙
台バリアフリーツアーセンター」を設立しました。バリアフリー観光についてどんなこと
でもご相談お受けしますので、どうぞ気軽にお問い合わせください。
特定非営利活動法人ゆにふりみやぎ
理事長
仙台バリアフリーツアーセンター
TEL:022-726-7503
FAX:022-726-7289
email:[email protected]
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伊藤清市
url:http://sendaibftc.info
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利用者の声こそがバリアフリーへの一歩
菅野 真由美 さん(福島リーダー)
NPO法人
ユニバーサルデザイン・結
菅野 真由美
私たちバリアフリーリーダーは、各県の運輸支局が主催する「公共交通利便性向上・バ
リアフリー推進会議」に、交通アドバイザーとして参加しています。福島県でも、平成1
4年度から始まった「交通アドバイザー会議」が平成21年度からは名称を変え、福島市、
郡山市での会議を終え、平成26年度からは再び会津若松市において開催されています。
この会議には、高齢者や障がいのある人、外国人や学生、学識経験者や私を含めた交通
アドバイザーというユーザーの立場の人、交通事業者、そして行政の立場の人と三つの異
なる立場の方が参加します。ユーザーからはあらかじめ公共交通機関の利便性に関する意
見や要望が出され、それに対する事業者や行政の回答の説明があります。
たとえば、車いすユーザーの方から「鉄道を利用する場合、一週間前に予約が必要とい
うことだが、親戚に不幸があった場合など緊急の場合には臨機応変に対応してほしい」と
いう要望がありました。これに対し鉄道事業者からは、「できる限りの対応をさせていた
だきたい。実際に対応をする窓口の社員指導も徹底する。」といった回答がなされました
。しかし、これはもっと大きな意味を含んでおり、車いすユーザーの方が自立して円滑に
公共交通機関を利用できる環境づくりは、国のバリアフリー施策とも連動した大変重要な
課題です。
さらに、視覚障がいの方からも「バリアフリー法での、一日の利用者が3,000人以上の
駅の整備を優先する、という合理的配慮の考え方について説明してほしい。」という要望
がありました。福島運輸支局からの説明と交通政策が専門で座長である福島大学吉田 樹
先生の補足により、「誰もが自由に出かけるという権利に対して、いろいろな選択肢を用
意してお出かけ手段を確保していく。」という意味であることがわかりました。このよう
に、「バリアフリー新法」や今後施行される「障害者差別解消法」などが、きちんと理解
されその浸透が実感できる社会をつくっていくことが何より重要なことだと思います。
また私から、知的障がいのある子どもたちがバス利用時に運転手と意思の疎通がうまく
いくように「コミュニケーション支援ボード」を設置している例を報告させていただきま
した。郡山市にある特別支援学校と事業者が連携したこの取り組みは、ファミリーレスト
ランなどにも波及しています。これがきっかけとなってNPO法人ユニバーサルデザイン
・結では、行政窓口で使う「指さし会話版(ボード)」の制作や、携帯できる「指さし会
話カード」を作成し、難聴者・中途失聴者の会の皆さんに提供する活動をしています。事
故や災害時に障がいのある方の不安解消につながるものと思います。
震災から4年が経ち、あちらこちらで街が変わっていく感じがするこの頃です。変化の
時は、バリアフリーやユニバーサルデザインを導入するチャンスでもあります。このよう
な会議でユーザーが積極的に声を出し、サービス提供者や行政と一緒に「気づき」を共有
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しながら問題を解決していくことによって、より良いまちづくりが進むものと期待してい
ます。
「コミュニケーション支援ボード」公益財団法人 明治安田こころの健康財団
http://www.my-kokoro.jp/kokoro/communication_board/
「指さし会話カード」
http://www.ud-yui.com/
特定非営利活動法人
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ユニバーサルデザイン・結
【編集後記】
平成 26 年度は、4 月にバリアフリー教室を皮切りに、バリアフリーリーダーの皆様にはご協力
いただき感謝申し上げます。
また、去る 2 月 26 日(木)には、バリアフリーリーダー連絡会議に出席いただき、ありがとう
ございました。今回都合で出席できなかったリーダーの方々には、次回出席いただけるよう
に日程調整を図ってまいります。
平成 27 年度におきましても、ご協力、ご指導をよろしくお願いします。
(発行)
東北運輸局交通環境部消費者行政・情報課
〒983- 8537
仙台市宮城野区鉄砲部町1番地
TEL:022-791-7513
FAX:022-791-7539
E-mail:[email protected]
※東北運輸局発行のバリアフリーニュースはホームページに掲載しております。
http://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/index.html
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