今わたしたちにできること【第5学年 寺内実践 H26】

第 5学 年
総合 学 習実 践事 例
「伝えよう!今わたしたちにできること」
(1)子 ども の学びの実 際
本単元は、子どもたちが他国の文化とかかわる初めての学習である。そのため、多様な
情報から自分の考えを
構築できるように、対象と繰り返しかかわることのできる単元構
成 と し た。 そ の た め に 以 下 の よ う な 支 援 を 行 っ た 。
ア
単 元 の 導 入 に お い て 「 世 界 」「 ア フ リ カ 」 に つ い て
ウェビングするよう促し、話し合
いの 場を設け ることで 、問 題意識に おける 共通 点に 気付 き、課題 を設定しや すくする 。
イ
ア フリ カ の国 々 につ い ての 本 やパ ン フ レ ット な どの 資料 を 教室 に 用 意し たり 、常に掲 示
したりしておく。また、必要に応じて専門家と交流す
る場を設定する。そうすることで、アフリカについて
の多 様な情報 を得やす くす る。
ウ
話し合いの際には、出てきた考えを類別して板書す
る。そうすることで、全体の意見を視覚的に捉え、整
理し 、解決方 法を見出 しや すくする 。
エ
体 験 活 動 や 専 門 家 と の 交 流 の 後 に 、「 専 門 家 か ら の 情
報収集やタンザニアの子どもたちとの交流によって、
自分の考えが変わったところ」を観点として振り返る
場を設ける。そうすることで、自己の変容を自覚し、
新た な価値に 気付くこ とが できるよ うにす る。
指導計画(全32時間)
第1次 アフリカの国々について調べる
①・② 「外国」に対するイメージを伝え合う
③~⑤ アフリカの国々について調べ、わかったこ
とを共有する
第2次 「国際協力」について考え、できることを実践する
①~③
④~⑦
⑧~⑩
⑪~⑬
⑭
⑮・⑯
⑰~⑳
JICA、小野さんと交流をする
タンザニアの子どもたちとの交流を考える
交流の準備をする
交流をする
交流の振り返りをする
タンザニアの子どもたちに手紙を書く
2度目の交流を考え、実践する
第3次 学習したことを振り返る
①~③ 学習したことをまとめて発表の準備をする
④~⑦ 5年1組に発表し、学習の振り返りをする
※下線は前述の支援との対応を表す
①
ア フリ カの国々に ついて調べ る[第1次の学 び]
第 1 次 で は 、 子 ど も た ち に 、「 外 国 」 に 対 す る 意 識 調 査 を 行 っ た 。「 外 国 と い え ば 、 ど の
国を想像しますか」と問いかけ、ウェビングをするよう促すと【支援ア】アメリカ、中国、
韓国、フランスなど、テレビや新聞でよく見聞きする国
が多くあがった一方、アフリカの国々はほとんどあがら
な か っ た 。「 み ん な が あ ま り 知 ら な い ア フ リ カ の 国 々 に つ
いて知りたいな」という意見が多くあがったため、アフ
リ カ の 国々 に 対 する イ メ ージ を ウェ ビン グ す るよ う 促 し、
交流の 場を設け た。
【 支援ア 】
「アフ リカとい えば大自然 だ」
「いろいろな動物が見られそうだな」などの明るいイメ
ー ジ の 他 に 、「 な ん だ か 怖 そ う だ 」「 生 活 す る 上 で 大 変 な
アフリカについてのウェビング
こ とが 多 いよ う な気 が す るよ 」 とい う イメ ー ジを も つ 子ど も も いた 。 ウェ ビ ング をしたこ と
を も と に ア フ リ カ の イ メ ー ジ を 伝 え 合 う こ と で 、「 ア フ リ カ の 国 々 の よ さ や 各 国 が 抱 え る 問
題など を知ろう 」という 課題 を設定す ること がで きた 。
課 題 設定 後 、ア フ リカ の 国々 に つい て 調 べ る時 間 を設 けた 。 子ど も た ちは 、各 自でイン タ
ー ネッ ト や新 聞 から 情 報 を収 集 し、 ノ ート に 書き 留 め てい っ た 。ま た 、教 室 には 、写真が 多
く 載 っ た本 や パ ン フ レ ッ ト を 置 い たり 、 各国 が 抱え る 問題
に つ い て 書 か れ た 資 料 を 掲 示 し た り し た 。【 支援 イ 】 様 々 な
資 料 を 用い る こ と で 、 子 ど も た ち は、 自 然の 様 子、 調 べた
国 の 位 置、 食 文 化 、 言 語 、 学 校 の 様子 な ど、 多 様な 情 報を
得 る こ とが で き た 。 調 べ た こ と を 交流 す る中 で 、子 ど もた
ち の 追 究 意 欲 が 高 ま り 、「 ア フ リ カ に 行 っ て 、 自 分 の 目 で
確 か め て み た い な 」「 ア フ リ カ に 行 っ た こ と の あ る 人 に 話
を聞い てみたい な」とい う声 が聞かれ た。
②
教 室に 用意 した 本や パン フレ ッ ト
国際交流を実践する [第2 次の学び]
前時の発言を受けて、青年海外協力隊としてザンビア
に派遣 されてい た小野さ んに 、話 を聞く場 を設定した 。
【支
援イ】現地で使われていた道具や衣服に触れたり、街や学
校の様子を動画で見たりしたことで、アフリカの人々の
生活様子を深く知ることができた。アフリカには、経済
面や健康面についての問題を抱えている人がいるという
話 を 聞 い た 子 ど も た ち は 、「 募 金 を し た り 、 い ら な く な っ
た物を送ったりしたらどうかな」という思いをもった。
JICAの小野さんとの交流
し かし 、 小野 さ んは 子 ど もた ち に「 お 金や 物 を送 る の は他 の 団 体も や って い るよ 。5年2 組
に しか で きな い こと は な いだ ろ うか 」 と問 い かけ ら れ た。 こ の 言葉 を きっ か けと して、子 ど
もたち は、自分 たちにで きる 国際協力 につい て考 え始 めた のである 。
次に 、小野さ んとの学 習を 振り返り 、感じ たこ とを 伝え 合う場を 設けた。
A児
小野さんは、人とつながることが大事だとおっしゃっていたね。
S児
小野さんは、人と接することに喜びを感じてきたとお話しされていたね。
教師
これからアフリカの国々についての学習でどんなことをしていきたいですか。
K児
実際にアフリカに住んでいる人と話ができないかな。電話で話せないかな。
B児
アフリカに住んでいる人たちと交流できれば、ぼくたちの笑顔で元気にさせたり、ぼくたちも一緒 に楽
しんだりすることができるのではないかな。
H児
うん、交流してみたいね。小野さんにできるかどうか聞いてみよう。
B児 の 発言 か ら「 ア フ リカ の 子ど も たち と 交流 し よ う」 と い う新 た な課 題 をも った子ど も
た ちは 、 その 課 題の 解 決 に向 か って 、 情報 を 集め 始 め た。 子 ど もた ち が小 野 さん に電話で た
ず ねた と ころ 、 青年 海 外 協力 隊 とし て 、タ ン ザニ ア に 派遣 さ れ てい る 平野 さ んを 紹介して い
た だき 、 タン ザ ニア の 子 ども た ちと 、 手紙 で のや り と りや ス カ イプ ( イン タ ーネ ットの回 線
を 利用 し たビ デ オチ ャ ッ ト) を 使っ た 交流 を する こ と にな っ た 。交 流 の内 容 につ いて以下 の
ように 話し合っ た。
教師
交流で、どんなことをしていきたいですか。
Y児
まずは、自分たちのことを知ってもらいたいね。友達になりたいな。
U児
だったら、手紙には写真や絵を載せて、ぼくたちのことが分かるように紹介しよう。
H児
もし外国の人から手紙をもらったとき、日本語が書いてあったらうれしいよね。だから、タンザニアで
O児
スカイプでは、 スワヒリ語や英語で自己紹介をしよう。スワヒリ語で紹介したら、喜ぶと思うよ。
B児
それもいいね。友達になるために、一緒に遊べぶこともできないかな。
N児
それなら、にらめっこ、じゃんけん、あっちむいてホイ、などをしてみたら、おもしろそうだよ。
使われているスワヒリ語や英語を使って書くと、タンザニアの子どもたちはきっと喜ぶよ。
B児
うん、おもしろそうだね。日本の遊びが紹介できるし、楽しく交流できそうだね。
こ れ らの 話 し 合 い の 際 、 Y 児 、 U児 、 H 児 、O 児 の
よ う な 、こ ち ら の こ と を 「 知 っ て もら う 」 と いう 考 え
と 、 B 児、 N 児 、 の よ う な 「 一 緒 に楽 し む 」 とい う 考
え と に 類 別 し 、 板 書 し た 。【 支援 ウ 】 そ う す る こ と で 、
子どもたちは交流の目的を明確に意識しながら話し
合 い を 進 め 、「 手 紙 や ス カ イ プ を 使 っ た 自 己 紹 介 で 、
互 い を 知 り 合 う こ と 」「 一 緒 に 遊 ぶ こ と を と お し て 、
互 い の 距離 を 縮 め る こ と 」 と い う 視点 で 、 具 体的 な 交
考えをまとめた板書
流の内 容を考え ることが でき たのであ る。
ス カ イ プ を 使 っ た 交 流 で は 、「 自 己 紹 介 」「 じ ゃ ん け ん 」「 に ら め っ こ 」「 質 問 タ イ ム 」 の
4 つの プ ログ ラ ムを 行 っ た。 ス ワヒ リ 語や 英 語で 自 己 紹介 を し たり 、 じゃ ん けん やにらめ っ
こ を 行 っ た り し て 楽 し く 交 流 す る 姿 が 見 ら れ た 。 交 流 後 、「 学 習 前 と 自 分 の 考 え が 変 わ っ た
ところ 」を観点 として振 り返 るよう促 した。【支援エ】
教師
交流をとおして、どのようなことを感じましたか。
K児
じゃんけんやにらめっこをして、タンザニアは遠いのに近くに感じたよ。
S児
手を使わずに顔を変形させてすごい。ぼくにはあんなにおもしろい顔ができないよ。
教師
とても楽しい交流ができましたね。では、調べ学習や交流の前とアフリカに対する思いが変 わったとこ
ろはありますか。
U児
アフリカに対して、健康面などの問題で大変な国が多く、怖いイメージだったけれど、明るくて楽し い
交流ができて、怖くなんかないと思ったよ。
教師
怖くないとはどういうこと?
U児
なぜかというと、明るくて楽しい人たちだったから、行って遊んでみたいなと思えたからだよ。
T児
ああ、確かに。野球をしてみたいな。
実際に交流をすることで、U児のようにアフリカの国
や人に対するイメージが変容したことを自覚する姿が見
られた。交流をとおしてタンザニアの子どもたちを身近
に 感 じ 始 め 、「 今 度 は ス ワ ヒ リ 語 を も っ と 勉 強 し て 、 2
回目の交流をしたい」という声もあがった。その後行っ
た2回目の交流では、タンザニアの遊びをしたり、タン
ザニアの子どもたちからクイズを出題してもらったりし
た 。 ま た 、 1 回 目 の 交 流 の 後 、「 仲 良 く な れ た タ ン ザ ニ
タンザニアの子どもたちとの交流
ア の 子 ども た ち に、手 紙 を 送 っ て 日 本 の 様 子 を伝 え た い」
という子どもたちの思いから、手紙を書いて送った。そ
の手紙が届いてから2回目の交流をしたので、自分たち
が 書 い た手 紙 を タ ン ザ ニ ア の 子 ど も た ち が 見 せて く れ た。
画面上に手紙が映し出されたときは、歓声があがった。
その後、タンザニアの子どもたちからも手紙をもらい、
英語で書いてある手紙に興味津々であった。2回の交流
と手紙のやりとりをとおして、日本とタンザニア、それ
ぞれの国から情報を発信し合い、相互のやりとりを充実
子どもたちが送った手紙
さ せ た 。 子 ど も た ち は 、「 1 回 目 は 緊 張 し た け れ ど 、 明 る
くてやさしいタンザニアの人たちのおかげで、2回目は
勇 気 を も っ て 話 し か け る こ と が で き た 」「 一 緒 に 遊 ぶ こ と
を楽しめてうれしかった」などと、感想をもち、交流す
る こ と の楽 し さ を 味 わ う こ と が で き た 。
(2)
実践 を振り返っ て
単元の導入においてウェビングを行ったことで、子ど
タンザニアの子どもたちからの手紙
もたち は、アフ リカの国 々の イメージ を仲間 と共有し 、課題 を設定す ることがで きた。また、
課題の 解決に向 けて仲間 や専 門家から 情報を 収集 し、それ をもとに、交流の仕 方を話し合 い、
実 際に 交 流す る こと で 、 異な る 文化 を 理解 し 、受 け 入 れよ う と する 子 ども の 姿が 見られた 。
これら は、仲間 とのかか わり を重視し て実践 を行 った 成果 であろう 。
一 方 、教 師 の一 方 的な 投 げか け や問 い か け によ っ て、 新た な 課題 を 意 識さ せた り、情報 を
整理・ 分析する 視点を与 えた りする場 面がい くつ かあ った ことは、改 善すべきと ころであ る。
教 師が 前 面に 出 るこ と で 、子 ど も自 ら が目 的 意識 を 明 確に も っ て話 し 合っ た り、 解決方法 を
考 えた り する こ とが 十 分 には で きて い なか っ た。 今 後 は、 よ り 主体 的 に子 ど もた ちが課題 を
設 定し た り、 情 報を 整 理 ・分 析 した り でき る よう な 支 援の あ り 方に つ いて 、 研究 を進めて い
きたい 。