リバランスとキャッシュマネジメント

2015 年 4 月 6 日
R&I レポート
vol.59
リバランスとキャッシュマネジメント
年金事業部
チーフアナリスト 舎利弗 孝通
昨年度に引き続き、2014年度の年金基金の運用実績も概ね好調に推移したようである。弊社の
推定値によると、厚生年金基金で約13%、企業年金基金等でも9.5%程度の年間収益率となってい
る(いずれも単純平均)。こうした好調な運用実績を受けて、多くの年金基金が考えなければな
らない事項の1つがリバランスであろう。 もちろん、個々の年金基金によって事情は異なるもの
の、国内株式等の時価ウェイトが政策アセットミックスの比率から乖離した年金基金も少なくな
いと考えられる。特に、年度末でもある3月末は、運用ルールに従いリバランス基準に抵触してい
るかどうかを検証することが多い時期でもある。
そもそも、リバランスを実施する理由は、言うまでもなく、政策アセットミックスを維持する
ためである。リスク許容度に変化がなく、各資産クラスのリターン・リスク等の期待値が長期的
に機能するという前提のもとでは、政策アセットミックスを維持することによってポートフォリ
オの期待効用が満たされるという考え方である。逆に言えば、リバランスを実施しなければ、政
策アセットミックスを維持することはできず、長期的に期待通りの運用成果・効用を享受できな
いことになる。
このリバランスを実施する手法は、主として2つ挙げられる。1つは、資産間による売買である。
例えば、基準ウェイトを上回っている国内株式及び外国株式を売却し、基準ウェイトを下回って
いる国内債券等を購入するという売買である。おそらく、これがリバランスにおける通常の手法
と考えられている。
もう1つの手法が、掛金・給付にて資産配分を調整する方法である。例えば、掛金>給付の場合、
基準ウェイトに比較して不足している資産に資金(掛金マイナス給付)を投入することで、ウェ
イトを引き上げることが可能となる。この手法のメリットは、資産間の売買を避け、売買による
コストを削減することが出来ることである。ただし、この手法で留意すべき事項として、ポート
フォリオの調整スピードを考えなければならないことである。掛金・給付等のみでリバランスを
行うことになると、場合によっては、本来の基準ウェイトに達するまでに多くの時間を要する可
能性がある。その場合、一定期間、基準ウェイトに満たない資産配分での運用が継続されること
を考えると、リスク管理の観点から、問題がないとは言えない可能性も出てくるであろう。掛金・
給付等のみによるリバランス手法は、あくまで資産間の売買によるリバランスの補完的な手法と
いう整理が必要であろう。
ただし、こうした補完的な手法であっても、掛金・給付といった必然性の高い資金のキャッシ
ュマネジメントとリバランスの実施を組み合わせることで、より効率的なポートフォリオ運営・
管理を行うことは可能となる。こうした機会に、改めて年金基金におけるキャッシュマネジメン
トを見直すことも必要であろう。
株式会社格付投資情報センター
2015 年 4 月 6 日
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