2015 年 2 月 10 日 R&I レポート vol.55 政策アセットミックスの検証とガバナンス 年金事業部 チーフアナリスト 舎利弗 孝通 今年に入ってから、債券利回りのボラティリティが大きくなっている。実際、先月の下旬には、 一時的ではあるものの、5年債までの利回りが一時マイナスとなった。若干持ち直し、利回りが上 昇している現在でも、10年債で0.3%程度の利回り水準にある。こうした環境の下、年金基金と して検討しなければならないことのひとつに、利回り低下による国内債券の期待リターンの変化 とそれが及ぼす政策アセットミックスへの影響を検証することであろう。今回は、この点に関し て考えたい。 政策アセットミックスは、言うまでもなく、中長期的に維持すべき資産配分である。政策アセ ットミックスを見直す場合には、①負債サイドの変化として、年金制度を見直した時や基礎率(予 定利率、退職率、昇給率等)を見直した時(財政再計算)があり、②資産サイドの変化として、 投資環境が大きく変化した時の 2 つの可能性がある。これは、多くの年金基金でも、運用方針に 明記されていることでもあろう。 このように、投資環境が大きく変化した時と明示されているものの、そもそも、政策アセット ミックスを策定した時点と現時点を比較した場合に、時間の経過に伴い、市場環境が異なってい るので、当然、各資産の期待リターンが変化している可能性がある。 特に、過去の実証分析によると、中長期的にはリターンの大部分が利回り水準に起因するという 国内債券の特性を踏まえると、昨今の利回りの低下に伴い、国内債券の期待リターンが変化して いる可能性は高いであろう。であるならば、政策アセットミックスの期待リターンも変化してい るはずだ。その可能性を考えれば、やはり政策アセットミックスは定期的に検証する必要がある。 一度、政策アセットミックスを策定したら、あとは次の財政再計算までは、 「何もしない」という 思考停止ではいけない。定期的に、政策アセットミックスを策定した前提条件を検証し、現在の 政策アセットミックスがどういう状態にあるのかを把握することは、運用管理者としての責務と 言えよう。 実際、ある年金基金では、政策アセットミックスに関して、以下のようなプロセスで運営管理 を行っている。 ① 政策アセットミックスの策定後も、定期的(年1回)に、政策アセットミックスの検証を実 施している ② 特に、基金の設定する予定利率と政策アセットミックスから期待されるリターンが整合的か 否かをチェックする。 ③ 更に、この結果を、資産運用委員会や理事会にて報告し、年金関係者にて共有している。 運用実績に大きな影響を及ぼす資産配分について、年金関係者間にて共有することで、ガバナン スが有効に機能している一例と言えよう。 株式会社格付投資情報センター 2015 年 2 月 10 日 • 本資料は、お客様の運用戦略や投資判断等の参考となる情報の提供を目的として作成されたもの であり、実際の投資等に係わる最終的な決定は、お客様自身のご判断で行っていただきますよう お願いいたします。 • シミュレーションやバックテスト等は参考データをご提供する目的で作成したものであり、将来の利 回りを保証するものではありません。 • データの一部は、弊社が信頼できると判断した各種情報源から入手した情報等に基づくものですが、 その情報の正確性・確実性について弊社が保証するものではありません。 • 本資料は、作成日において入手可能な情報に基づいて作成したものであり、今後予告なく変更とな る場合がございます。 • 本資料に関する一切の権利は、引用部分を除き弊社に属し、いかなる目的であれ本資料の一部ま たは全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。 • 投資評価本部における業務は、信用格付業ではなく、金融商品取引業等に関する内閣府令第29 9条第1項第28号に規定されるその他業務(信用格付業以外の業務であり、かつ、関連業務以外 の業務)です。当該業務に関しては、信用格付行為に不当な影響を及ぼさないための措置が法令 上要請されています。 • 弊社が発行する「年金情報」等の媒体にて掲載された事項と本資料において提供された情報は、そ れぞれ独立のものであり一致するものではありません。 • 本資料の内容に関して、ご不明な点等がございましたら、弊社担当者宛にご照会くださいますよう お願いいたします(年金事業部 03-3276-3417)。 株式会社格付投資情報センター 東京都中央区日本橋1-4-1 日本橋一丁目 三井ビルディング 【金融商品取引業 登録番号 関東財務局長(金商)第665号】 加入協会 株式会社格付投資情報センター 一般社団法人日本投資顧問業協会
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