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株式会社ヴィ
・クルー
【 車体製造業 】/宮城県
「ゆりかごから墓場まで」
バスのリサイクル、
リユース市場を創造し、
総合病院的な役割を担う
同社で開発した「シャインマーカー」は同社と大手メーカーを繋ぐきっかけとなった。
「いつもご苦労さま」から始まり、その内容は自社の経営
デザイナーと木工担当の社員。新しい仕事は常に顔を合わせ、現場で議論を重ねる。
から業界の話題、景気動向にまで及ぶ。手紙は、現場作
業が忙しく、集合研修の実施が難しい同社において、研
クルマをモノではなくパートナー
として捉え、クルマに命を吹き込む
株式会社ヴィ
・クルーは、
2006 年、
代表取締役の佐藤全
な状況である。」
と同氏。そんな現状を打破するため、同
修の一環としても活用している。
また、社員のモチベーシ
顧客からのそんな期待感・安心感が社員の使命感に変
社は、
リサイクル・リユース市場を作る取り組みを始め、工
ョンは家族に支えられてこそ保たれるという想いから、手
わり、
さらに総合力を発揮する好循環となる。
場内にリサイクル工場や破砕工場を置いた。
紙を社員の家族にも読んでもらい、仕事に対する理解を
同社は、新製品の開発も進めている。代表的な製品
深めてもらうという目的もある。
これらの取り組みにより、社
は、
自動車部品として日本初のLED製品となった「シャイ
員は安心して働くことができている。
ンマーカー」だ。
この製品はバスの後輪の巻き込みを防
社員に光を当てることで
責任感と主体性を生み出す仕組みづくり
氏が父の会社を分社化する形で設立された。宮城県の白
石市を拠点とし、
バスに特化した板金塗装、
メンテナンス、
などを扱う。
また車体製造として特装車や移動図書館の
止するための路肩灯であり、以前は消耗するたびに交換
していた路肩灯を見て「もっと長く使えるものを作りたい」
顧客からの様々なニーズに対応することで、
「あてにされる関係づくり」を実現する
という想いから佐藤社長自らが考案・開発した。当時、信
バスへの二次加工も、顧客の要望に合わせ行っている。
同社は社員の採用、育成、動機付けに特徴がある。白
乗用車の年間生産台数は約900万台。それに比べ、
石市を含む南宮城地域からの人口流出に歯止めをかけ
バスの年間生産台数は15万台、大型バスに限ると1万台
るべく、
毎年1∼2名の新入社員を定期的に採用している。
自動車産業は、今後、若者のクルマ離れによる市場の
た。同社は、
この製品の特許を取得し、全国で多くの市場
というニッチな市場である。いかに効率よく、安価で標準
入社前には、必ず1週間のインターンシップを行う。入社
縮小や自動運転技術の進歩による市場の変化が予想さ
シェアを獲得。マスコミでも取り上げられたことで、大手自
化された車体作りを行うかが主流のバス業界において、
後の自分の姿を具体的に想像してもらうためだ。そのた
れる。佐藤社長は「現状のままでは、仕事がなくなってしま
動車部品メーカーから販売代理店になりたいとの打診が
総合力を生かした提案営業を行い、顧客から「あてにさ
め、納期のある仕事を任せ、
プレッシャーを与える。実際
うという危機感を持っている。中小企業である我が社が
あり全国740箇所に販売網を持つに至った。
れる関係作り」
を実践し業績を伸ばしている。
の仕事を社員と一緒に行うことで、効果的な研修となる。
生き残る為には、総合力を高め、市場に左右されない価
最小製造個数が決まっている大手メーカーにとって
一、
私達は「人と車との絆」
を大切にし地球を救う企業です。
採用権限については、その学生を受け入れた現場に委
格決定権を持つことが重要。他社がやらない、真似でき
は、市場規模は小さいが、競争力のある商品をもって新
一、
私達は「かかわる全てが元気になる」車創りに挑戦し続けます。
ねられる。そのため、現場社員は、
インターンシップでもた
ない差別化戦略をとる必要がある。」
と語る。
たな市場に参入できるという魅力があり、
ヴィ
・クルーにとっ
一、私達は常に感謝を忘れず「夢と感動」を共有できる集団を目指します。
だ学生に仕事を教えるだけでなく、学生の仕事に取り組
中古車両の整備を行う同社へは、
日々、異なる内装加
ては、中小企業単独では獲得することが難しい、大手企
この経営理念のもと、
クルマを単なるモノではなく、命を
む姿勢やコミュニケーションなど、学生の内面まで真剣に
工の要望や異なる破損車体の修理依頼が舞い込む。前
業の技術力・販売力を自社に取り込むことができるという
吹き込むことで顧客との絆を生むパートナーと捉え、
イノベ
観察し、共に働く姿を想像しながら指導を行う。採用後
例のない仕事は日常茶飯事であり、
マニュアルには落とし
利点がある。
「ヒト・モノ・カネが不足する中小企業が大手
ーションを生み出そうとしている。
この想いから「バスの総
も、
自分達の選んだ社員がずっと一緒に働き、成長できる
込めない。それでも、顧客からの要望にその場で素早く
企業を巻き込んだモノづくりを行う時代になった」佐藤社
合病院的な役割を担う」
という会社作りを目指している。
よう責任を持って教育するという。
的確に対応することで、顧客満足を高めている。
長は語る。
シャインマーカーは今では大手メーカーの標準
これまでのバス製造業界では、
コストの面からリサイク
また、社員教育の一貫として、金融機関の方などを招
まずサービスフロントと呼ばれる工程管理部門が顧客
仕様となっている。
ルやリユースを行う概念はほとんどなかった。
日本のバス
き、年1回「経営指針発表会」を実施している。入社年次
の要望を聞き、社内で誰が対応するかを話し合う。同社
同社は、地域・社会貢献への取り組みも進めている。全
の多くが使用後は海外へ渡るのだが、
日本と同じ右ハン
に関係なく、社員が社外へ発表する場を与えることで、
自
には同業他社では珍しいデザイナーも採用しており、対
国に販売網を持つ同社は、地元意識が希薄であったが、
ドルの国は少なく、海外でそのまま利用されることは少な
分の仕事に責任感を持つようになり、
自発性や主体性、
応が難しいと思われることでも、部門を越えて関係者全
2011年の東日本大震災で考えが一変し、地域貢献として
い。
「日本車は高性能で、
中古車でも海外で活躍している
考える習慣が身に付くという。
員で知恵を出し合う。顧客と技術者が、現場で一緒に打
他の企業も巻き込んで、
同市の活性化に力を注ぐようにな
と思っていたが、実情は、海外にクルマを捨てているよう
また、毎月の給与明細には、社長の手紙が添えられる。
合せする姿も、
当り前の風景である。
った。同年5月には地元企業の横断的組織として「白石も
関係者全員を巻き込みながら、他社には無い総合力
の創り協議会」を設立。業種や事業規模の分け隔てのな
を発揮することで差別化を図り、価格決定権を維持で
い同じ地域で雇用を支える「地元企業」
として、
また一緒
きる。
「ヴィ
・クルーにお願いすれば何でもやってくれる」。
に地元を盛り上げる
「有志」
として日々、
活動を行っている。
会社
概要
同社には全国各地から様々な修理・加工の依頼が届く。
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社員の給与明細に添えられる社長の手紙は、
B5紙にびっしりと書かれている。
・法人名:株式会社ヴィ・クルー
・代表者:佐藤 全 代表取締役
・所在地:白石市斎川字伊具田25-1
・設立年月:2006年10月
・資本金:24,000,000円
号などの表示用光源にしか使われていなかったLEDと
樹脂を使い、試行錯誤を繰り返しながら、実用化に至っ
・ホームページ:http://vi-crew.co.jp/
・社員数:正規32名
・事業内容:車体整備事業(板金、塗装、電装、
リニューアル、クリーニング)、
リサイクル事業(解体、
リサイクルパーツ品販売)、
企画営業(デザイン、ディスプレー事業)、製品開発(設計、企画、販売)
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