○『本屋さんのダイアナ』(柚木麻子 新潮社 2014年4月) 「大穴」と書いて「ダイアナ」と読む主人公のダイアナと、その同級生 彩子(あやこ)の物語です。ダイアナは、自分の名前がいやで仕方がありま せん。彼女の母親は自分のことをティアラと呼び、ダイアナの髪を金髪に 染めてしまう、個性たっぷりのシングルマザーです。そんなダイアナだか ら、とにかく目立ってしまいます。だから、彼女があこがれるのは普通の 女の子。その普通のお嬢さんが彩子です。家庭環境と外見はまったく正反 対の2人を結びつけたのは本の世界。小学生で親友になった2人は、中学 校、高校、大学と成長していきます。2人の友情はどうなっていくのでし ょうか。そして、ダイアナの父親はだれなのでしょうか。『赤毛のアン』 が好きな人は絶対にはまるお話です。物語に登場する、ダイアナの名のも とになったという架空の物語『秘密の森のダイアナ』。存在しない物語な のだけれど、読んでみたくなってしまいます。本好きな女子にはたまらな い、大逆転の物語です。 ○『キャプテンサンダーボルト』(和田和重 伊坂幸太郎 文藝春秋 2014年11月) 2人の有名作家の合作です。一見作風の違う2人の作家が、意気投合し て、1冊の小説を書こうということでできあがったものです。2人が競う ようにして、ネタを用意していて、とにかく面白い小説でした。舞台は、 東北。仙台、山形、そして蔵王。幼なじみで悪友の2人が、久しぶりに出 会ったと思ったら、国際テロ集団の絡む事件に巻き込まれ、どんどん深み にはまっていきます。細菌兵器を巡って、太平洋戦争末期の事件から、戦 隊ヒーローものまで、何が飛び出してくるか分からない展開で、最後まで 楽しませてくれます。どうやって2人で書いたのだろうと、疑問に思って 2人の対談を読みました。それぞれが勝手に書いたわけではなく、いっし ょに書くことが決まったら、話はとんとん拍子で進み、作品の舞台を2人 で見に行き、物語の展開まで一気に打ち合わせてしまったらしい。一章ず つ交替で書いたとのことですが、まったく違和感なく一気に読んでしまえ ます。2人の個性が打ち消し合うことなく、むしろ刺激し合ってどんどん 加速したような出来になっています。それにしても、久しぶりに出会った 幼なじみは、一気にその時代の関係に戻れるものですね。 ○『マンガ 日本の古典』(竹宮恵子他 中央公論社) 本校の図書館に『マンガ日本の古典』全32巻を寄贈しました。今年度、 国語の授業で、古典を脚本化し、演じるという試みを、2、3年生で行いま した。その授業の感想に「古典の中の人物も、現代の自分たちと同じように 悩んだりしていたんだ」というものがありました。言葉が違ったり、風俗が 違ったりと異なるところはありますが、考え方や行動は現代の私たちに通じ るところがあります。むしろ、同じ人間なのだから当然なのかも知れません。 原文で読むのはなかなか大変ですが、その壁を一気に取り払ってくれるのが この『マンガ日本の古典』です。今や日本のアニメは世界的なブームになっ ていますが、そのクールジャパンの土台を築いた豪華な執筆陣です。竹宮恵 き 子、いがらしゆみこ、里中満智子、長谷川法世、石ノ森章太郎、水木しげる、 横山光輝、さいとうたかお、といった面々が、まさに腕によりをかけて古典 に挑戦しています。教科書に出てきた作品や、問題で見た作品を読んでみる とよいでしょう。
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