小泉氏 [PDFファイル/613KB];pdf

ICTを活用した支援の実態
社会福祉法人
森の会
広域地域ケアセンター バオバブ
小泉 隆文
(1)ICTを活用した支援の実態
対象施設の概要
・設立されて40年の通所施設
・定員は就労支援移行6名、就労継続B型23名、自立
訓練6名
・行っている作業は、資源回収(ダンボール、新
聞、雑誌、アルミ缶)、ペットボトルのキャップ
の収集と仕分け、せんべい焼き、喫茶店、公園清
掃・草刈、自然食販売、内職
①Aさんへの実践事例
-iPad mini とSimpleMind+の活用-
<Aさんの状況>
・年齢は20代前半
・特別支援学校卒業後に入所
・療育手帳3度
・簡単な漢字は読み書きできる
・会話はある程度できるが、自分の気持ちや意思を表明する
のは難しい。特に、自分に都合の悪いことは口をつぐむ。
・パソコンでYou tubeを見るのがすき
★男性利用者Xさんの家に、夜中に何度
も電話をかけてしまった
・これが最初ではなく、これまで口頭で注意してきた
・保護者の方にも伝え、家でも本人に話をしていただいた
・その都度、夜中に電話しないことを約束するか、繰り返してし
まった
なぜ電話を繰り返してしまうのか、本人の気持ち
を引き出すことを目標としてSimpleMind+を活用
SimpleMind+
SimpleMind+を用いて本人の気持ちを整
理すると・・・
・Aさんは、夜中に電話することはいけないことで
あることは理解している。
・Aさんは特別支援学校もしくは施設の先輩として
のXさんのことが好きで、これからも今以上に一
緒に関わりたい、遊びたいと思っている。
・夜中にたまたま目が覚めてしまい、電話をしてし
まった。
②Bさんへの実践事例
-iPad miniとトーキングエイドの活用
<Bさんの状況>
・年齢は20代後半。
・特別支援学校卒業後に入所。
・自閉症で療育手帳4度。
・グループホームに住んでいる。
・簡単な漢字は読み書きできる。識字能力は高い。
・会話はできるが、自分から話すことはほとんどない。自分の気持
ちや意思を表明することもあまりない。
★同じグループホームを利用している男性利
用者Yさんの靴を夜中に何度も隠した
・普段はおだやかな性格。
・施設でもグループホームでも好かれている。
・その都度、もうしないことを約束。
どのような理由で靴を隠したのか、本当の気
持ちを探るためにトーキングエイドを活用
トーキングエイド
for iPad シンボル入力版
トーキングエイドを用いて本人の気持ち
を整理すると・・・
・いたずらの動機は、Yさんは週末には実家に帰宅
するが、Bさんには帰宅する実家がないことから
くる、Yさんの家庭環境への嫉妬。
・Yさんのことが嫌いなのではなく、困らせたかった。
・靴を隠すことは、悪いことだということは理解し
ている。
③Cさんへの実践事例
-iPad miniを活用した視覚からのアプローチ
<Cさんの状況>
・年齢は20代後半。
・高等専修学校卒業後に入所。
・自閉症で療育手帳3度。
・識字能力は高く、計算もできる。
・会話はできるが、同じことを繰り返して話したり、自分に注目してほしいがた
めに、質問をして確認する行為が多いため、集中力に欠ける。
・絵を描くのが好き。歌を歌うのも好き。
★支援者の背後から顔や頭に息を吹きかける
行為を繰り返してしまった。また、回収中
に走ってしまい、転んでケガをした
・これまで口頭で注意してきた。
・その都度、「もうしません」と約束。
・保護者の方にも伝え、家でも本人に話をしていただいた。
耳からだけではなく、目からも伝えることで
意識付けするために画像を活用
息を吹きかける
走る
繰り返して画像を用いて「人に息を吹きかけ
てはいけない」「資源回収中に走ってはいけ
ない」と伝えると・・・
・これらの行為は危険だということを本人は理解し
た様子。
・自分でもこのことを言うようになった。
(2)ICTを活用した支援における
問題点
ICTを活用して明らかになった点
①本人が特に軽度の場合、ICTなどの機器に対し、興味が強い
場合が多く、導入しやすい。
②ICTツール自体がきっかけとなり、その後の本人の気持ちの
表出の機会となる場合がある。
③当事者自身の気持ちの整理と、支援者側の課題の整理がで
き、より課題に焦点を当てた支援を考えることができる。
④ICTを活用して耳からだけではなく目で見る情報を発信する
ことで、重層的に理解できる。
課題
・就労支援へのICTの活用についての検討。
・生活態度や勤務態度を正すことに使いすぎると、ICTに関し
て「怒られる」「叱られる」といった悪いイメージがつき
かねない。
・ICTを活用するには、アプリのダウンロードと使用方法の習
得、画像の準備など、あらかじめ準備をしっかりしておか
ないと、タイムリーな時にすぐに活用できない。
ご静聴ありがとうございました