第9章 調査結果のとりまとめ;pdf

第9
章
調査結果のとりまとめ
1. 調査結果
(1)緑被調査
区全体の緑被地面積は 797.17ha、緑被率は 19.93
%であった。
平成 17年度調査(最小単位 10㎡)との同基準での比較では、緑被地面積は 121.28ha、
緑被率は 2.82ポイントの増加であった。緑被地はほぼ区全域で増加しており、土地利
用の転換や建築計画における適切な緑化指導により、緑被地面積が着実に増加してい
ることが分かる。
(2)みどり率調査
みどり率とは、緑被地面積に公園内の緑被地以外の面積と河川等の水面面積を加え
たものに対する割合である。
みどり面積は 1,455.61ha
、みどり率は 36.40
%であった。
緑被地面積より 658.44ha、緑被率より 16.47ポイント高い。これは河川や運河等の
水面の占める面積が大きく、また規模の大きい公園が多数位置していることによる。
(3)屋上緑化調査
区全体の屋上緑化は 2,510箇所、26.61haであった。
緑被地全体の 3.
3%であるが、平成 17年度調査(最小単位 10㎡)との同基準での
比較では 22.44
ha増加しており、平成 17年度の屋上緑化面積の約 9倍の増加であった。
大規模な屋上緑化が南部地域を中心に分布しており、今後も南部地域の開発に伴い
増加が期待される。
(4)樹林調査
面積 100㎡、平均高さ 1.5m以上の樹木のまとまりを樹林とした。
区内の樹林は 2,167箇所、296.
98haであった。
樹木被覆地面積の約 65%が樹林であった。公園・運動場を中心に分布しており、樹
林全体の約 67%が公共用地の樹林であった。
(5)公共施設緑被調査
区立、都立、国立、その他主な民間施設の緑被率は、全体で 23.69%であった。
区立施設全体では 17.99
%で、区立小学校は 15.8
4%、区立中学校は 12.61%であっ
た。その他公共施設の緑被率は 30.10
%、主な民間施設の緑被率は 14.62
%であった。
(6)低炭素効果の評価
区内の公的空間の緑地及び永続性を担保された民有地緑地等の CO2 吸収量は年間
2,948.848t-CO
2 であった。
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2. 緑被率等調査結果におけるみどりの課題について
区内の主な緑被地は、敷地規模の大きい公園、公共公益施設、集合住宅等に分布し
ており、みどりの拠点を形成している。特に都立公園を中心とした大規模公園は、庭
園跡地や工場跡地の活用、市街地再開発事業による整備など、まちづくりの歴史の中
で形成されてきており区全域に分布している。また、南部の埋立地においては未利用
地の土地利用転換に伴い、適切な緑化指導の結果、
計画的な緑地整備が行われている。
緑化指導は臨海部だけではなく、内陸部の大規模開発においても有効に活用されてお
り、緑被率の増加傾向は緑化指導効果による影響が大きいと考えられる。
緑化指導の実績を表 8-8、図 8-4に示す。地上部緑化の緑化指導が平成 6年度、建
築物上の緑化指導が平成 12年度より行われ、年間平均約 110件の届け出があった。平
成 23年度までの緑化指導累積件数は 1,9
75件で、
地上部緑化指導累積面積は 145.87h
a、
建築物上の緑化指導累積面積は 33.78haとなっている。平成 17年度調査と平成 24年
度調査の緑被地の推移では樹木と草地の増加面積が 98.84ha、屋上緑化の増加面積が
22.44haであるが、平成 1
7年度から平成 2
3年度までの地上部緑化実績面積は 7
6.83ha、
建築物上緑化実績面積は 1
6.65haであることから、緑被地面積の増加が緑化指導によ
るところが大きいことが分かる。
このように、土地利用転換が新たに図られる場合は、敷地規模に合わせて新たな緑
地を整備することが可能である。今後の新たな緑地整備の際は、単体として整備を行
うだけではなく、周辺地域にある既存のみどりとの連続性、施設利用者だけではなく
誰でもが活用できる公開性、生物多様性等のみどりの質の向上などへの配慮が必要で
ある。
表 8-8 年度別緑化指導実績
年度
届出件数
累積(件)
地上部緑化面積
累積(㎡)
建築物上緑化面積
累積(㎡)
平成6年度
89
81,168
0
平成7年度
158
119,837
0
平成8年度
252
163,268
0
平成9年度
334
202,425
0
平成10年度
404
257,230
0
平成11年度
510
341,041
0
平成12年度
608
383,625
40,438
平成13年度
738
475,557
124,984
平成14年度
872
524,541
130,499
平成15年度
993
606,231
144,650
平成16年度
1,118
690,392
171,365
平成17年度
1,261
860,743
191,436
平成18年度
1,422
1,139,552
222,662
平成19年度
1,558
1,204,662
247,293
平成20年度
1,670
1,268,357
269,896
平成21年度
1,764
1,379,319
303,976
平成22年度
1,869
1,409,972
314,465
平成23年度
1,975
1,458,661
337,819
57
(㎡)
(件)
1,600,000
2,500
地上部緑化面積 累積(㎡)
建築物上緑化面積 累積(㎡)
1,400,000
届出件数 累積(件)
2,000
1,200,000
1,000,000
1,500
800,000
1,000
600,000
400,000
500
200,000
0
0
H6 H7 H8
H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
図 8-4 年度別緑化指導実績
一方、区北部の既成市街地では、過去の水害、関東大震災と第二次世界大戦の二度
にわたる被災によって多くのみどりを失い、現在では低層住宅と非住居系施設が混在
した密度の高い市街地が形成されており、緑被率も非常に低い状況となっている。
このような地域では防災の観点からも緑地やオープンスペースの整備が必要であり、
現在も細街路の拡幅や不燃化事業を推進しているが、防災まちづくりの事業の中でも
事業残地を活用したまちかど緑化や、生垣整備等のすき間緑化を行うことで、みどり
のまちづくりに貢献することができる。
現在江東区では「水と緑豊かな地球環境にやさしいまち」の実現を目指して、平成
24年 7月に「江東区 CIGビジョン」を策定した。
「江東区 CIGビジョン」は「世代や
立場を超えたみんなが一緒になって緑を育み、環境に配慮する品格あるまち」を将来
像として、公共施設緑化や街路樹整備等の「公共緑化」を進める一方、区民・事業者
による「民間緑化」を後押しし、総合的なまちづくりを進めることとしている。
区内の緑被地の約 6割は公園や道路等の公共用地のみどりであるが、民間施設の緑
化指導によっても多くの緑被地が増えており、今後は民有地の緑被地の増加が期待さ
れる。
また、
「江東区 CIGビジョン」の取組メニューの特徴としては、緑化が困難である商
店街やまちなかの緑化にも重点を置いている点にある。商店街やまちなか等の身近な
空間の緑化はまちなみ景観や生活環境の向上だけではなく、緑化活動を通して地域コ
ミュニティの形成や活性化が促進されるため、地域特性に応じた緑が育む文化の創造
と、緑に親しむ区民生活の定着の推進が期待される。
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