-調査結果(要旨)- 平成26年度 生命保険協会調査 株式価値向上に向けた取り組みについて 生命保険協会は、株主・投資家の立場から、株式発行企業による株式価値向上に向けた取り組みについて、昭和49年度より41年間に亘り継 続的に調査を行っております。 平成26年度は、上場企業1,074社、機関投資家159社を対象として実施したアンケート調査等をもとに、株式発行企業による株式価値向上に 向けた取組みに関する現状分析を行い、当協会の要望をまとめました。 当調査においては、同じアンケート項目に関して企業と投資家の回答を比較することで両者の意識がどのように異なるのか、あるいは従来 から継続して調査を行っている項目を時系列で比較することで企業や投資家の意識・行動にどのような変化が見られるのか、といった視点を 中心に分析を行っております。 当協会では、企業と株主のコミュニケーションの充実、ならびに課題意識の共有化が株式価値を向上させ、ひいては株式市場全体の活性化 に繋がるものと期待しており、当調査結果を踏まえ、『①経営目標の設定・公表、②株主還元の一層の充実、③コーポレート・ガバナンスの 充実』の3点を要望致します。 ○アンケート実施概要 【企業向けアンケート】 調査対象 【投資家向けアンケート】 : 上場企業 1,074社(※) 調査対象 : 機関投資家 159社 ※時価総額上位1,200社のうち、実際にアンケート を送付した企業数 アンケート実施期間 : 平成26年10月10日~11月10日 回答社数 : 589社 回答率 : 54.8% アンケート実施期間 : 平成26年10月10日~11月10日 回答社数 : 86社 回答率 : 54.1% 一般社団法人 生命保険協会 平成26年度 生命保険協会調査 1 調査結果 1.はじめに (1)平成26年度調査について 当協会からの要望等 基本的な考え方 企業と投資家が建設的な対話を行い、双方 当協会ではこれまで、企業と投資家が建設的な対話を通じて双方の課題意識を共有化することが、企業の持続的 の課題意識を共有化することが、中長期的な な成長に向けた取り組みを促すものであり、中長期的な株式価値向上、ひいては株式市場全体の活性化に繋がると 株式価値向上に向けた企業の取り組みを促す の考えの下、株式価値向上に向けた取り組みについての調査を継続的に実施してきた。 当協会では平成26年度も、上記の視点から、経営目標や株主還元に対する意識、コーポレート・ガバナンス向上 のための取り組み等について、企業・投資家双方へのアンケート結果等を基に行った調査・分析を踏まえ、株式価 値向上に向け、右記3項目を提言する。 (2)株式価値向上に向けて 投資家は、企業が持続的な成長を実現し、中長期に亘り株式価値を向上させることを期待している。企業には、 投資家の期待を踏まえ、収益性を高めることで中長期的な企業価値向上を実現すると共に、成長に向けた投資や内 部留保、株主還元へ適切に資金を配分することにより株式価値を高めることが求められる。こうした企業の取り組 みの実効性を高めるためには、企業と投資家が双方向の建設的な対話を通じて課題意識の共有化を図ることで、株 式価値向上に向けたより良い経営を実現することが望ましい。 近年、我が国の対話を取り巻く環境は大きく変化している。平成26年2月に「『責任ある機関投資家』の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫」(以下、「スチュワードシップ・コード」という)が策定され、すでに 多くの投資家により受け入れが表明されている。また、平成27年3月には、「コーポレートガバナンス・コード」 が策定された。両コードにおいては、建設的な対話を行うことが、企業の持続的な成長や企業価値の向上を促す上 で有用であるとの共通認識が示されており、企業と投資家の対話の一層の活性化が望まれる。 今年度の調査では、企業・投資家双方が対話充実に向けて従来以上に高い意欲を示していることが確認された一 方、対話を充実させる上での課題等、複数の調査項目において、企業と投資家の間に依然として認識の隔たりが見 【要望1】経営目標の設定・公表 ① 中期経営計画の策定・公表と説明の充実 ② ROEの目標設定と水準の継続的な向上 ③ 適切な資本政策及び手元資金の活用と 説明の充実 ④ 株式価値向上に繋がる戦略的な投資の 推進と説明の充実 【要望2】株主還元の一層の充実 ① 株主還元方針の設定・公表及び内部留保 や投資の必要性等を含めた説明の充実 ② 中長期の平準的な水準として、配当性向 30%以上の配当還元の実施 ③ 積極的な自己株式取得の推進 【要望3】コーポレート・ガバナンスの充実 られた。企業には、ROE等で示される収益性の目標や、資本政策、資金配分に関する方針等を交えて経営の方向性 を示すと共に、各々の取り組みや背景にある考え方を投資家へ十分に説明することが求められている。投資家は、 これらの情報を踏まえ、企業の事業特性や事業戦略等に関する深い理解に基づいた対話を推進していくことが重要 である。企業・投資家の対話に向けた意欲の高さと外部環境の変化が互いに作用し合い、対話の一層の活性化を通 じて、認識ギャップが解消されると共に、企業価値向上に向けた企業の取り組みが促されることを切に期待する。 ① 株主・投資家との対話の一層の充実と 対話の前提となるディスクローズの充実 ② 株主総会議案の説明充実と議決権行使の ための環境改善 平成26年度 生命保険協会調査 2 調査結果 当協会からの要望等 【要望1-①】 2.経営目標について 中期経営計画の策定・公表と説明の充実 (1)経営目標の設定・公表 中期経営計画公表のメリットとして、投資家は ①投資家の意識 • • 中期経営計画公表のメリットとして、「経営ビジョンが把握できる」(79.1%)との回答が最も多く、「中長 企業の経営ビジョンが把握できること、企業は投 期的な具体的数値目標が把握できる」(60.5%)が続く【図表1】。 資家との対話の活性化に繋がることを挙げており、 中期経営計画の内容充実に向けて改善すべきと考えているものは、「具体的な数値目標の設定」及び「事業 計画の公表は中長期の視点から企業と投資家の相 環境や見通しに関する分析結果の説明」(48.8%)が最も多い【図表3】。 互理解を促すものと言える。 アンケートでは、企業の約7割が計画を公表し ②企業の意識 • • アンケート調査によれば、70.1%の企業が中期経営計画を公表している。公表のメリットとしては、「株主・ ており、計画の公表は企業へ定着しつつある。ま 投資家との対話の活性化につながる」(87.2%)との回答が最も多く、「より緊張感のある経営につながる」 た、企業は計画の内容充実に向けて数値目標の設 (71.4%)が続く。【図表2】。 定を重視しており、投資家側も数値目標が把握で 中期経営計画を公表している企業のうち、93.2%の企業が数値目標を公表している。公表している具体的な経 きることを計画を公表することのメリットである 営指標は、「利益額・利益の伸び率」(69.6%)や「売上高・売上高の伸び率」(63.6%)が多く、「ROE」 と考えている。 一方で、9割以上の計画は数値目標を伴うもの は39.7%、「配当性向」は24.9%にとどまる【図表4】。 • 中期経営計画の内容充実に向けて企業が重視しているものとしては、「長期的な経営ビジョン・スタンスの説 の、投資家が重視するROEや配当性向等を公表す 明」(87.2%)や「具体的な数値目標の設定」(69.5%)が多い【図表3】。 る企業は依然として少なく、約半数の投資家が計 【図表1:中期経営計画公表のメリット(投資家)】 100% 80% 60% a. 79.1% 60.5% 54.7% 40% 26.7% 24.4% 20% 0% b. c. d. 2.3% e. a b c d e f f. 株主・投資家との対話の活性化に つながる より緊張感のある経営につながる 経営ビジョンが把握できる 中長期的な具体的数値目標が把握 できる 資本政策についての考え方が把握 できる ※複数回答可 その他 【図表2:中期経営計画公表のメリット(企業)】 100% 87.2% a. 71.4% 80% 41.9% 45.8% 60% 40% 20% 0% 1.2% a b c d e b. c. d. e. 株主・投資家との対話の活性化に つながる より緊張感のある経営につながる 従業員の士気が向上する 中長期保有を前提とした株主が 増加する ※複数回答可 その他 【図表3:中期経営計画の内容充実に向けた取り組み】 投資家が 改善を要望 具体的な数値目標の設定 事業環境や見通しに関する分析結果の説明 長期的な経営ビジョン・スタンスの説明 株主還元方針の説明 計画の途上評価と見直しの実施 48.8% 48.8% 46.5% 39.5% 34.9% ( +1.7pt) ( ▲1.8pt) ( ▲6.4pt) ( +15.4pt) ( +3.9pt) 企業が 重視 69.5% ( +5.1pt) 32.7% ( +0.4pt) 87.2% ( +11.7pt) 29.5% ( +2.5pt) 22.0% ( +0.1pt) 画における数値目標の設定について改善が必要で あると回答している。企業には、中長期の経営の 方向性を説明する際に、企業と投資家の相互理解 の促進に向けて、投資家の期待を踏まえた具体的 な数値目標を設定することが期待される。 ※投資家の回答の多い項目順、上位5項目、複数回答可、括弧内は対前年 【図表4:中期経営計画での数値目標の公表状況】 利益額・利益の伸び率 売上高・売上高の伸び率 売上高利益率 ROE 配当性向 企業が公表 69.6% 63.6% 50.1% 39.7% 24.9% ※回答の多い項目順、上位5項目、複数回答可 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 に対し、ROE・株主還元目標等の投資家が重視 する数値目標を含む中期経営計画の策定・公表 及び説明の充実を要望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 3 調査結果 当協会からの要望等 【要望1-②】 (2)目標とする経営指標について ROEの目標設定と水準の継続的な向上 ①日本企業のROE水準 • 平成25年度の日本企業のROE水準は、業種や事業特性等によりばらつきがあるものの、平均で8.5%となり、 し、株主の要求収益率である資本コストを上回る 前年度の5.3%を上回った【図表8】。 収益性を実現することで、持続的に株式価値を高 ②投資家の意識 • 93.0%の投資家が、経営目標として重視することが望ましい指標として「ROE」を挙げている【図表5】。 • 投資家が特に重視しているROEについて、日本企業のROE水準が資本コストを「上回っている」との回答はわ • • 投資家は、経営指標としてROEを特に重視して おり、企業が株主資本をいかに効率的に活用して 40.7%の投資家が日本企業のROE水準について中長期的に「10%以上12%未満」が望ましいと回答【図表7】。 いるかに注目している。一方、「利益の絶対額を 重視している」等の理由からROE目標値を設定し ROEの目標値を持つ企業は昨年度からは若干増加したものの、41.6%にとどまる。ROEの目標値を持っていな ていない企業は約半数に上り、両者の間には認識 い理由としては、「利益の絶対額を重視している」(32.6%)との回答が最も多かった。 の乖離がある。 足元の日本企業のROE水準は改善しているもの 自社のROE水準が資本コストを「上回っている」との回答は、30.9%にとどまる【図表6】。 の、中長期的に現水準以上を求める投資家は多 【図表5:経営目標として重視することが望ましい指標】 【図表7:中長期的に望ましいROE水準(投資家)】 投資家が 要望 企業が 重視 50% 93.0% ( +2.2pt) 59.1% ( +6.8pt) 配当性向 54.7% ( +1.8pt) 47.5% ( +0.7pt) 総還元性向 43.0% ( +5.1pt) 10.4% ( +2.4pt) 20% 利益額・利益額の伸び率 38.4% ( +0.5pt) 61.0% ( +2.2pt) 売上高利益率 32.6% ( +5.0pt) 58.7% ( ▲2.7pt) 10% ROIC 29.1% ( +6.1pt) 7.8% ( +1.4pt) ROA 26.7% ( +3.7pt) 28.0% ( ▲3.1pt) FCF 25.6% ( ▲2.0pt) 20.4% ( +1.3pt) ※投資家の回答の多い項目順、上位8項目、複数回答可、括弧内は対前年 (ROE水準が資本コストを) 上回っている 同程度 下回っている わからない 資本コストを把握していない 投資家 る」との回答も少ないことから、ROE水準に対す 0% る双方の課題意識が窺える。企業には、売上や利 17.4% 10.5% 9.3% 1.2% 水準には 6%未満 拘らない 8.1% 1.2% 5.8% 4.7% 30.9% 800 26.7% 22.9% 600 60.5% 25.1% 400 5.8% - 200 - 12.7% 2.3% 8.3% 0 1,134 ※平均8.5% 405 353 赤字 経営を実践することで、ROEの水準を継続的に向 上させていくことを期待したい。 【図表8:日本企業のROE分布】 (社) 益の絶対額に過度にとらわれず、資本コストを意 識し、各々の事業特性等に応じて収益性を高める 6%以上 8%以上 10%以上 12%以上 14%以上 16%以上 8%未満 10%未満 12%未満 14%未満 16%未満 出所)生命保険協会調べ 対象は上場企業 (赤字企業含む、金融除き) 1,000 企業 く、企業・投資家共に資本コストを「上回ってい 40.7% 30% 1,200 【図表6:資本コストの見方】 ※平均11.4% 40% ROE 無回答 めることが求められる。 ずか4.7%、「上回っていない」との回答は87.2%となった【図表6】。 ③企業の意識 • 企業には、株主から調達した資金を有効活用 6%未満 398 275 387 186 113 6%以上 8%以上 10%以上 12%以上 14%以上 16%以上 8%未満 10%未満 12%未満 14%未満 16%未満 当協会では、このような状況を踏まえ、ROE 目標の設定・公表と、収益性への意識を高めた 経営の実践によるROE水準の継続的な向上を要 望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 4 調査結果 当協会からの要望等 【要望1-③】 (3)資本政策について ①投資家の意識 適切な資本政策及び手元資金の活用と • 説明の充実 多くの投資家は、企業の自己資本・手元資金の水準について「余裕のある水準と考えている」と回答【図表9】。 企業業績が回復する中、多くの投資家は、企業 水準の妥当性については、企業側の説明が不十分との回答が多い。 • • 企業の手元資金の使途で望ましいものとしては、「成長に向けた投資資金」(69.8%)との回答が多く、「株 が自己資本や手元資金を余剰に抱えているとの考 主還元の一層の充実のための原資」(15.1%)が続く【図表10】。 えを強めている。一方、企業の大半は現在の自己 増資の必要性について、企業から「十分に説明されている」または「一定程度説明されている」との回答は 資本・手元資金は適正な水準にあると考えており、 37.2%にとどまった【図表11】。説明について不足を感じている点としては、「増資に見合った具体的な収益 企業と投資家の間の認識に依然として大きな隔た 向上策」との回答が67.4%と最も多い【図表12】。 りがある。企業には、手元資金を成長投資や内部 ②企業の意識 留保、株主還元等に有効活用すると共に、投資家 • 自己資本・手元資金の水準については、多くの企業が「適正と考えている」と回答【図表9】。また、今後の に対して具体的な活用方法を十分に説明すること 資本政策のスタンスとしては、「自己資本比率は現水準程度を維持」(59.8%)との回答が最も多い。 が望ましい。 • • 手元資金の主な使途としては、「成長に向けた投資資金」(60.6%)との回答が最も多く、「財務安定化のた また、多くの企業は、今後、自己資本比率を現 めの手元流動性確保」(19.7%)が続く【図表10】。 水準程度で維持したいと考えているが、資本政策 増資の理由は、「将来的な収益向上に向けた布石」との回答が57.6%と最も多い。また、増資の際の説明にお については株式価値向上の観点から適切な資本構 いて企業が最も重視している点としては、「資金使途の内容」(45.8%)が最も多く、「増資に見合った具体 成を目指すことを期待したい。 増資については、投資家の多くは説明が不十分 的な収益向上策」(25.4%)が続く【図表12】。 【図表9:企業の自己資本・手元資金の水準】 余裕のある水準と考えている 適正と考えている 不足している 無回答 自己資本 投資家 企業 68.6% 26.0% 24.4% 56.7% 1.2% 14.3% 5.8% 3.1% 手元資金 投資家 企業 82.6% 28.0% 11.6% 63.7% 1.2% 4.8% 4.7% 3.6% 【図表10:企業の手元資金の使途】 投資家が 要望 成長に向けた投資資金 株主還元の一層の充実のための原資 財務安定化のための手元流動性確保 有利子負債の返済原資 特に決まっていない その他 ※投資家の回答の多い項目順 69.8% 15.1% 4.7% 0.0% 2.3% と感じているため、企業側には、具体的な収益向 【図表11:増資の必要性に関する説明(投資家)】 企業が 実施 60.6% 1.0% 19.7% 4.8% 4.9% 2.9% H26 0.0% 37.2% 48.8% 8.1% 5.8% H25 0.0% 32.2% 54.0% 10.3% 3.4% H24 1.3% 30.7% 56.0% 12.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% a. 十分に説明されている b. 一定程度説明されている c. あまり説明されていない d. ほとんど説明されていない 上策の説明の充実等を通じて、調達した資本がど のようにして企業価値向上に繋がるかを示すこと が望まれる。 無回答 【図表12:増資時の企業側の説明】 増資に見合った具体的な収益向上策 希薄化率など既存株主の株式価値への影響 資金使途の内容 発行条件(発行価格等)の妥当性 その他 ※投資家の回答の多い項目順 投資家 最も不足 67.4% 18.6% 5.8% 1.2% 1.2% 企業 最も重視 25.4% 6.8% 45.8% 3.4% 5.1% 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 に対し、適切な資本政策及び手元資金の活用と 説明の充実を要望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 5 調査結果 当協会からの要望等 【要望1-④】 (4)投資について ①投資家の意識 株式価値向上に繋がる戦略的な投資の推進 • と説明の充実 企業の投資実行時に重視して欲しい項目としては、「製品・サービスの競争力強化」(62.8%)や「経営戦略 企業・投資家共に投資実行時に「製品・サービ との整合性」(57.0%)、「将来の市場見通し」(37.2%)との回答が多い【図表13】。 • 投資意思決定の判断基準として適切な指標としては、「投下資本利益率」(84.9%)が最も多い【図表14】。 スの競争力強化」を重視しており、企業には、株 • 企業の投資内容に関する説明について、48.8%の投資家が「あまり十分とは言えない」あるいは「説明は不十 式価値向上に向けて、収益性向上に繋がるような 分」との回答【図表15】、より説明の充実を求めたい項目としては、「投資の採算性」(59.3%)や「投資の 戦略的な投資の実施が望まれる。 一方、投資家は投下資本利益率(ROI)を投資 前提となる市場見通し」(44.2%)との回答が多かった【図表16】。 ②企業の意識 の意思決定における適切な判断基準であると考え • 企業が投資実行時に重視する項目としては、「経営戦略との整合性」(69.3%)、「製品・サービスの競争力 ているのに対し、企業は投資資金の回収期間や売 強化」(49.6%)、「事業規模・シェア拡大」(34.0%)との回答が多かった【図表13】。 上・利益の増加額を重視しており、評価軸が異な 投資意思決定の判断基準として重視する指標は、「事業投資資金の回収期間」(62.0%)や「売上・利益の増 る。企業はROI等で示される投資効率をより意識 加額」(60.6%)が多い【図表14】。 した投資を推進することで、ROEを高め、株式価 投資家への説明にあたって重視している内容としては、「経営計画における位置づけ」(72.7%)、「競争力 値向上を実現していくことが重要である。 • • また、投資の説明についても、投資効果や前提 に与える影響」(47.9%)が多かった【図表16】。 【図表13:投資実行時に重視する項目】 投資家が 要望 製品・サービスの競争力強化 経営戦略との整合性 将来の市場見通し 投資リスク シナジー効果 事業規模・シェア拡大 62.8% 57.0% 37.2% 33.7% 18.6% 11.6% となる見通しに関する内容の充実を求める投資家 【図表15:投資内容に関する説明(投資家)】 企業が 重視 49.6% 69.3% 20.5% 23.4% 29.7% 34.0% 無回答 5.8% a 1.2% と企業の間には認識のギャップがある。企業に d 2.3% c 46.5% b 44.2% a. 十分に説明されている b. 一定程度説明されている c. あまり十分とは言えない d. 説明は不十分 は、投資がいかに効果的に企業価値向上に繋がる かを十分に説明することが望まれる。 ※投資家の回答の多い項目順、上位6項目、3つまで回答可 【図表14:投資意思決定の判断基準】 投資家が 適切と判断 投下資本利益率 内部収益率 事業投資資金の回収期間 売上・利益の増加額 正味現在価値 その他 判断基準は特に設定していない ※投資家の回答の多い項目順、複数回答可 84.9% 33.7% 32.6% 23.3% 16.3% 3.5% - 当協会では、このような状況を踏まえ、株式 【図表16:投資時の企業側の説明】 企業が 重視 27.2% 22.4% 62.0% 60.6% 20.4% 10.4% 7.6% 投資家が 要望 投資の採算性 投資の前提となる市場見通し 競争力に与える影響 経営計画における位置づけ 投資のリスク 投資の収益化の時期 59.3% 44.2% 41.9% 39.5% 39.5% 38.4% ※投資家の回答の多い項目順、上位6項目、複数回答可 企業が 重視 30.1% 36.0% 47.9% 72.7% 13.4% 21.9% 価値向上に繋がる戦略的な投資の推進と、投資 の採算性等の投資家が望む説明の充実を要望し たい。 平成26年度 生命保険協会調査 6 調査結果 当協会からの要望等 【要望2-①】 3.株主還元について 株主還元方針の設定・公表及び内部留保や (1)株主還元方針の設定・公表 投資の必要性等を含めた説明の充実 ①投資家の意識 企業の利益成長の成果配分である株主還元につ • 86.1%の投資家が、株主還元の具体的な目標値について「公表すべき」、「公表が望ましい」と回答。 • 株主還元の目標値として公表が望ましい指標としては、「配当性向」(70.3%)が最も多く、「総還元性向」 いて、投資家の9割弱が具体的な数値目標の設 (67.6%)が続く。 定・公表が望ましいと考えている。 • 配当政策に関して、内部留保・投資の必要性等を交えて十分な説明がなされているかとの問いに対しては、 一方、「安定配当を方針としている」といった 理由により数値目標を持っていない企業は依然と 「あまり説明されていない」、「ほとんど説明されていない」との回答が58.2%を占める【図表19】。 ②企業の意識 して約5割に上り、数値目標を公表している企業 • 株主還元の数値目標を持つ企業は47.2%、配当性向の数値目標を持つ企業は39.6%にとどまる【図表17】。 は約3割にとどまる。 • 企業が数値目標を持っていない理由としては、「安定配当を方針としている」との回答が77.2%と最も多い。 • • なお、時価総額上位1,200社のうち、株主還元の数値目標を公表している企業の割合は、34.2%にとどまる 投資家に一定程度以上の説明を行っていると考え (※生命保険協会調べ、平成26年度調査)【図表18】。 ており、企業の説明が不十分であると感じている 株主還元に関して最も重視している指標は、「配当性向」(43.5%)が最も多く、「配当総額または1株当た 投資家の割合は減少している。しかしながら、5 りの配当額」(33.4%)が続く。 割強の投資家は依然として説明を不十分と感じて 配当政策に関して、内部留保・投資の必要性等を交えて投資家に説明を行っているかとの問いに対しては、 おり、認識のギャップは小さくない。 株主還元は持続的な利益成長の成果配分として 「十分行っている」あるいは「一定程度行っている」との回答が94.1%を占める。 【図表17:配当性向の数値目標の有無(企業)】 H20 調査 47.3% 52.6% 57.9% 58.2% 57.6% 58.3% 60.4% 60% 0% H21 調査 H22 調査 H23 調査 H24 調査 H25 調査 に行われることが重要である。企業には、株主還 H26 調査 公表 30.8% 31.3% 31.3% 29.8% 33.9% 34.5% 34.2% 未公表 69.2% 68.8% 68.8% 70.2% 66.1% 65.5% 65.8% 元方針について、具体的な数値目標を明示した上 で、内部留保・投資の必要性等を含め、投資家に 出所)生命保険協会調べ 上場企業時価総額上位1,200社を対象に調査 対して一層の説明充実を図ることが求められる。 【図表19:自己資本・手元資金の水準、配当政策に関する説明(投資家)】 40% 20% 内部留保や投資とのバランスを踏まえた上で適切 【図表18:企業の数値基準の公表状況】 100% 80% また、9割強の企業は配当政策について株主・ 自己資本 52.7% H20 47.4% H21 42.1% H22 有 41.8% 42.4% H23 無・無回答 H24 41.7% H25 39.6% H26 手元資金 配当政策 0.0% ( +0.0pt) 1.2% ( +1.2pt) 一定程度説明されている 23.3% ( ▲3.1pt) 16.3% ( ▲4.4pt) 36.0% ( +13.0pt) あまり説明されていない 60.5% ( +3.0pt) 61.6% ( +0.7pt) 51.2% ( ▲13.2pt) ほとんど説明されていない 11.6% ( +1.3pt) 16.3% ( +3.7pt) 7.0% ( ▲2.2pt) 4.7% ( ▲1.0pt) 4.7% ( ▲1.0pt) 4.7% ( 十分に説明されている 無回答 ※括弧内は対前年 1.2% ( +1.2pt) +1.3pt) 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 に対し、具体的な数値目標を伴う株主還元方針 の設定・公表及び内部留保や投資の必要性等を 含めた説明の充実を要望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 7 調査結果 当協会からの要望等 【要望2-②】 (2)配当還元について 中長期の平準的な水準として、配当性向30% ①投資家の意識 • 91.8%の投資家が、投資に際して配当を「最も重視している」、「相当程度重視している」あるいは「一定程 度重視している」と回答。投資指標としての配当の重要性については、59.3%の投資家が、「重要性は増して • • 以上の配当還元の実施 投資家の大半が企業の配当政策を投資の判断基 いる」あるいは「重要性はやや増している」と回答。 準として重視しており、投資指標としての配当の 企業の配当水準に対する満足度については、「満足できる企業はあまり多くない(2~4割程度)」(41.9%) 重要性も増していると回答している等、配当還元 が最も多く、「半分程度(4~6割程度)は満足できる水準」(39.5%)が続く。 は投資家の投資判断にとって重要な位置づけを占 中長期的に望ましいと考える配当性向は「30%以上40%未満」(38.4%)が最も多く、「水準には拘らない」 めている。 近年の日本企業の配当総額は増加基調にあり、 (37.2%)が続く【図表20】。 ②企業の意識 平成25年度は前年度比で19.5%増加した。配当性 • 向は概ね30%程度で推移している。 平成25年度の日本企業の配当総額(過去10年間継続してデータ取得可能な企業)は7.3兆円となり、前年度比 一方で、個別企業の配当性向にはばらつきが見 で19.5%増加した。 • 平成25年度の配当性向(赤字企業除き)は27.0%と、前年度(29.8%)を下回った【図表22】。 られ、投資家が中長期的に望ましいと考える水準 • アンケート調査によれば、平成25年度実績では、純損益が増益・黒字化・損失の減少となった企業が81.8%と (30%以上40%未満)を下回る企業は多い。ま なるも、うち増配した企業は全体の53.5%【図表23】。平成26年度の会社予想についても、純損益が増益・黒 た、配当水準について満足できる企業は「あまり 字化・損失の減少となる企業が62.1%となるも、うち増配予想の企業は全体の29.7%にとどまる。 多くない」あるいは「半分程度」と回答している 投資家は約8割に上る等、投資家は企業の配当還 【図表20:中長期的に望ましい配当性向・総還元性向(投資家)】 【図表22:日米企業の配当性向の推移】 50% 50% 配当性向 40% 37.2% 38.4% 38.4% 16.3% 20% 0% 0.0% 0.0% 10%以上 20%未満 9.3% 5.8% 1.2% 20%以上 30%未満 30%以上 40%未満 20% 12.8% 500 40%以上 50%未満 0.0% 50%以上 60%未満 3.5% 0% 60%以上 200 100 0 151 38.8% 37.5% H20 H21 28.1% H22 H23 79 49 27.0% H24 H25 米国 配当 TOPIX構成企業(赤字企業を除く) 136 29.8% 日本 企業業績が改善傾向にあり、内部留保が高水準 で推移する中、配当還元が低位にとどまる企業に は還元強化に向けた取り組みが望まれる。 【図表23:昨年度の配当還元の動向(企業) 】 出所)生命保険協会調べ 324 元の実施について、依然として改善の余地がある と考えている。 31.6% 30.5% 32.9% 32.3% 28.5% 出所)生命保険協会調べ 日本:TOPIX構成企業 米国:S&P500構成企業 (過去10年間継続してデータ取得可能な企業、赤字企業を除く) 水準には 拘らない 26 19 8 53 0%以上 10%以上 20%以上 30%以上 40%以上 50%以上 60%以上 70%以上 80%以上 90%以上 100%以上 10%未満 20%未満 30%未満 40%未満 50%未満 60%未満 70%未満 80%未満 90%未満 100%未満 純損益 300 509 368 400 32.7% 10% 4.7% 【図表21:日本企業の配当性向の分布】 600 (社) 35.7% 30% 24.4% 30% 10% 40% 総還元性向 増配 据え置き 減配 計 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 増益・黒字化・損失の減少 53.5% 27.5% 0.8% 81.8% に対し、中長期の平準的な水準として、継続的 減益・赤字転落・損失の拡大 3.6% 10.7% 2.2% 16.5% に配当性向30%以上の配当還元がなされるよう 57.0% 38.2% 3.1% 98.3% 計 (無回答:1.7%) 要望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 8 調査結果 当協会からの要望等 【要望2-③】 (3)自己株式取得について 積極的な自己株式取得の推進 ①投資家の意識 • 日本企業の足元の自己株式取得状況について、「より積極的に実施すべき」との回答が75.6%と最も多い。 • 自己株式取得を行って欲しい企業としては、「有望な投資先がなく余剰資金を抱えている企業」(87.2%)と 資本効率の向上にも繋がるものであり、株式価値 の回答が最も多く、「ROEの低い企業」(54.7%)が続く。 向上の観点からメリットは大きい。日本企業の内 自己株式の取得は株主還元の充実だけでなく、 部留保が高水準で推移している中、「余剰資金を ②企業の意識 • 58.2%の企業が、今後の自己株式取得に対して「消極的」なスタンスであると回答【図表24】。 抱えている企業」に対して自己株式取得の積極化 • 自己株式取得に消極的である理由としては、「自己株式取得より配当還元を重視している」との回答が43.4% を期待する投資家は多く、8割弱の投資家が自己 と最も多い【図表25】。 株式の取得を「より積極的に実施すべき」として いる。 ③自己株式取得状況 • 平成25年度の日本企業の自己株式取得額は4年連続で増加し、平成26年度も増加が見込まれる。また、自己株 • 式取得を実施した企業数は概ね横ばいで推移している【図表26】。 る。一方、6割弱の企業は自己株式取得に「消極 純利益に対する自己株式取得額を比較すると、日本は米国に比べて低い水準にとどまる【図表27】。 的」であるとしており、実施した企業数に大きな 【図表24:今後の自己株式取得に対するスタンス(企業)】 H26 30.2% H25 11.5% 58.2% 25.2% 356 4 (兆円) 299 H24 28.5% 0% 10.8% 8.4% 63.0% 20% 40% 積極的 60% 消極的 80% 無回答 a. b. 43.4% 40% 29.4% 30% 5.8% 10% 0% c. 16.9% 15.7% 16.0% a b c d. e. d e f 334 290 2 f. 0 100% 【図表25:自己株式取得に消極的な理由(企業)】 50% 353 3 64.0% 自己資本が十分でない 手元資金を確保する必要が ある 株価の水準が条件に 満たない 自己株式取得より配当還元 を重視している 市場での流動性が不足して しまう恐れがある その他 ※複数回答可 変化は見られないことから、企業と投資家との認 【図表26:自己株式取得額と実施企業数の推移】 1 20% 近年の自己株式取得額は増加基調で推移してい 1.2 0.7 H21 H22 H23 取得額(左軸) H24 識の違いは依然として大きく、より多く企業が取 200 企業が自己株式取得に対し「消極的」なスタン 2.5 1.9 1.6 1.6 (社) 400 274 300 100 0 H25 H26 取得社数(右軸) 式取得は配当還元と並び株主還元の重要な手段で 【図表27:日米の自己株式取得額の推移(対純利益比)】 40% 20% 0% 米国 日本 53.3% 51.3% 51.2% スである理由として、「自己株式取得より配当還 元を重視している」ことを挙げているが、自己株 出所)生命保険協会調べ 東証一部、二部上場企業の集計値 ※H26年度は12月まで 60% り組むことが期待される。 ある。日本企業の自己株式取得は米国に比べて低 い水準にとどまっており、両者のバランスを取っ 42.7% た適切な株主還元が実施されることが望ましい。 30.7% 6.9% H21 7.6% H22 11.5% H23 9.1% H24 出所)(日本)生命保険協会調べ、対象はTOPIX構成企業(赤字企業を含む) (米国)Standard & Poor’s、対象はS&P500構成企業(赤字企業を含む、暦年ベース) 6.5% H25 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 に対し、積極的な自己株式取得の推進を要望し たい。 平成26年度 生命保険協会調査 9 調査結果 当協会からの要望等 【要望3-①】 4.コーポレート・ガバナンスについて 株主・投資家との対話の一層の充実と (1)企業と投資家の対話について 対話の前提となるディスクローズの充実 中期経営計画公表のメリットとして、投資家は ①投資家の意識 • コーポレート・ガバナンスの充実に向けて、今後企業がより一層取り組むべき内容としては、「株主・投資家 コーポレート・ガバナンス向上は、企業価値の との対話の充実」(69.8%)が最も多く、「ディスクローズの充実・迅速化」(53.5%)が続く【図表28】。 持続的な向上に向けた規律ある経営を企業に促す • 企業との対話については、84.9%の投資家が今後さらに充実させていきたいと回答している。【図表29】 ものであり、中長期的な株式価値向上の観点か • 投資家は、「スチュワードシップ・コード」の受け入れに伴い、従来と比べて「企業との対話内容の充実」 ら、企業の不断の取り組みが求められる。「コー (77.4%)や「課題意識の表明」(50.0%)に重点的に取り組んでいる【図表30】。 ポレートガバナンス・コード」が策定されたこと 対話内容について重視するものとしては、「経営計画や経営方針」(74.4%)が最も多く、「持続的な成長に により、企業は、持続的な成長に向けた取り組み 向けた取り組み内容」(70.9%)が続く【図表32】。 を推進すると共に、株主をはじめとしたステーク 対話活動を充実させる上での課題としては、「経営陣の関与が薄い」が41.9%と最も多く、「企業との対話に ホルダーに対する説明について一層の充実を図る 割けるリソースの不足」が38.4%、「情報開示が十分でない」及び「企業の株主・投資家に対する意識が低 ことが望ましい。 • • コーポレート・ガバナンスの充実に向けて、企 い」が31.4%と続く【図表31】。 • 対話を行うにあたり、ディスクローズ資料に関して充実を求めたい項目は、「中長期の企業価値向上に向けた 業・投資家共に対話が重要であると認識してお 戦略」(80.2%)、「コーポレート・ガバナンスに関する情報」(34.9%)との回答が多い【図表35】。 り、双方の8割強がさらに対話を充実させていき 【図表28:コーポレート・ガバナンスの充実に向けた取り組み】 投資家 【図表30:スチュワードシップ・コードの受け入れに伴う取り組み】 企業 投資家の 取り組み 期待する これまでの 今後の 取り組み 取り組み 取り組み 企業との対話内容の充実 77.4% 株主・投資家との対話の充実 69.8% 76.6% 82.3% 課題意識の表明 53.5% 71.6% 67.4% 50.0% ディスクローズの充実・迅速化 企業との対話機会の増加 35.5% たいと回答しており、従来以上に高い意欲を示し ている。企業・投資家が建設的な対話を行うこと は、企業経営に適度な緊張感を生み出し、双方の 課題意識の共有化に繋がることから、コーポレー 社外取締役の選任・拡充 51.2% 76.2% 32.8% 企業の状況の把握 ト・ガバナンスを充実させる上で対話の重要性は 30.2% 34.8% 10.4% 32.3% 業績連動型の役員報酬制度の導入・拡充 議決権行使方針の見直し 14.0% 72.3% 10.4% 24.2% 社外監査役の選任・拡充 高い。 ※投資家の回答の多い項目順、上位5項目、3つまで回答可 ※投資家の回答の多い項目順、上位5項目、複数回答可 【図表31:対話活動を充実させる上での課題(投資家)】 【図表29:対話を今後さらに充実させていきたいか(投資家)】 a. 経営陣の関与が薄い c 3.5% 50% 無回答 8.1% 41.9% 40% b 3.5% a 84.9% a. はい 30% b. いいえ 20% c. その他 10% 0% b. c. d. 38.4% 31.4% 31.4% 23.3% 23.3% e. 2.3% f. a b c d e f g g. 情報開示が十分でない 企業とのコンタクトが難しい 企業との対話に割けるリソース の不足 企業の対話に対する意識が低い 企業の株主・投資家に対する 意識が低い ※複数回答可 その他 7割強の投資家は「スチュワードシップ・コー ド」も踏まえ、「企業との対話内容の充実」に重 点的に取り組む等、対話に意欲的な姿勢を示して いる。対話内容としては、企業・投資家共に決 算・業績といった足元の動向だけでなく、「経営 計画や経営方針」や「持続的な成長に向けた取り 平成26年度 生命保険協会調査 10 調査結果 当協会からの要望等 ②企業の意識 組み内容」といった中長期的な観点から企業価値 • コーポレート・ガバナンスの充実に向けて、今後企業が重点的に取り組むべき内容としては、「株主・投資家 向上に向けた意見交換を行うことを重視してい との対話の充実」(82.3%)、「ディスクローズの充実・迅速化」(67.4%)が多い【図表28】。 る。 • • 対話内容について、重要と考えるものとしては、「経営計画や経営方針」(87.6%)が最も多く、「持続的な 成長に向けた取り組み内容」(81.8%)が続く【図表32】。 て、投資家は「経営陣の関与が薄い」や「情報開 投資家との対話内容の経営への活用については、66.2%の企業が「IRや経営企画等の担当所管で共有化するし 示が十分でない」といった点を挙げている。 約6割の企業の経営陣が投資家と対話を行い、 くみがある」と回答。「定期的に経営陣が投資家と対話を行っている」(62.1%)が続く【図表33】。 • • 一方、対話活動を充実させる上での課題とし 対話活動を充実させる上での課題としては、「開示できる情報が限られる」(43.3%)が最も多く、「株主・ 約半数の企業は投資家との対話内容を経営層で共 投資家のスタンス(短期志向等)」(40.1%)が続く【図表34】。 有化する仕組みがあるとしており、対話の一層の 対話充実に向けて、ディスクローズ資料の内容充実に関して重視している項目は、「中長期の企業価値向上に 活性化に向けて、経営陣が従来以上に投資家との 向けた戦略」(77.9%)が最も多く、「決算・業績に関する詳細な説明」(70.3%)が続く【図表35】。 対話に参画することが望ましい。 【図表32:重視する対話内容】 また、対話が建設的に行われるには、投資家が 【図表34:対話活動を充実させる上での課題(企業)】 企業の事業特性や事業戦略等について十分に理解 投資家 企業 経営計画や経営方針 74.4% ( +11.2pt) 87.6% ( ▲1.1pt) 持続的な成長に向けた取り組み内容 70.9% ( +15.7pt) 81.8% ( +5.8pt) 株主還元方針 53.5% ( +11.0pt) 59.4% ( +1.8pt) ガバナンス・経営体制 41.9% ( +9.7pt) 38.7% ( +5.8pt) 決算・業績の動向 40.7% (▲16.8pt) 80.0% ( ▲1.6pt) ※投資家の回答の多い項目順、上位5項目、複数回答可、括弧内は対前年 50% 40% 43.3% 35.1% a. b. 40.1% 30% 20% 10.9% 5.6% 10% 0% c. d. e. a b c d 対話に割けるリソースの不足 株主・投資家とのコンタクト が難しい 開示できる情報が限られる 株主・投資家のスタンス (短期志向等) その他 e した上で対話に臨むことが前提条件となることか ら、企業・投資家共に「ディスクローズの充実・ 迅速化」を重視している。企業には、対話の充実 に向けて「中長期の企業価値向上に向けた戦略」 や「コーポレート・ガバナンスに関する情報」 等、投資家の望む内容を積極的に開示することが 【図表33:対話内容の経営への活用状況(企業)】 80% 60% a. 66.2% 62.1% b. 48.4% c. 40% 17.1% 20% d. 1.2% 0% a b c d e e. 定期的に経営陣が投資家 と対話を行っている 対話内容等を経営層で共有 化するしくみがある IRや経営企画等の担当所管 で共有化するしくみがある 話を聞いた担当者が把握 している 基本的に経営の参考には していない ※複数回答可 【図表35:ディスクローズ資料の内容充実】 求められる。 投資家が 要望 企業が 重視 中長期の企業価値向上に向けた戦略 80.2% 77.9% コーポレート・ガバナンスに関する情報 34.9% 14.8% 企業のビジネスモデル 30.2% 38.7% 決算・業績に関する詳細な説明 26.7% 70.3% 業績・経営環境等に関するタイムリーな情報 22.1% 17.7% ※投資家の回答の多い項目順、上位5項目、3つまで回答可 当協会では、「コーポレートガバナンス・ コード」の策定等も踏まえ、企業に対し、株 主・投資家との対話の一層の充実と、対話の前 提となるディスクローズの充実を要望したい。 平成26年度 生命保険協会調査 11 調査結果 当協会からの要望等 【要望3-②】 (2)株主総会での議決権行使について ①投資家の意識 株主総会議案の説明充実と議決権行使 • のための環境改善 議決権行使の際に、特に重視している観点は、「コーポレート・ガバナンス体制」(62.8%)が最も多く、 投資家は議決権行使の際に企業のコーポレー 「業績・財務状況(ROE等)」(58.1%)が続く【図表36】。 • • 株主の議決権行使の充実のために企業が取り組むべき項目としては、「集中日を回避した株主総会の開催」 ト・ガバナンス体制を最も重視しており、議決権 及び「招集通知の早期発送(早期開示)」(65.1%)が最も多く、「議案の説明充実」(53.5%)が続く 行使はコーポレート・ガバナンス向上に向けた働 【図表38】。 きかけの中で重要な位置づけにある。議決権行使 投資家の44.2%が個別議案の説明について、「あまり十分とは言えない」あるいは「説明は不十分」と回答 を通じた投資家の働きかけを一層活性化するには、 【図表37】。 投資家が適宜企業と対話を行いながら議案内容を ②企業の意識 十分に検討し、各々が適切と考える判断を下すた • めの情報と時間が必要である。 株主の議決権行使の充実のために企業が取り組んでいる項目としては、「招集通知の早期発送(早期開示)」 (71.1%)が最も多く、「集中日を回避した株主総会の開催」及び「インターネットによる議決権投票」 しかしながら、投資家は個別議案について企業 (51.3%)が続く【図表38】。 の説明は十分でないと考えており、認識ギャップ • 65.5%の企業が、招集通知を総会の「20日以上前」あるいは「30日以上前」までに発送した。 は大きい。投資家が議決権行使の考え方を企業に • 企業の88.2%が個別議案の説明について、「十分に説明している」あるいは「一定程度説明している」と回答 示すと共に、企業には付議理由等も含めて議案内 【図表37】。 容を投資家へ十分に説明することが求められる。 また、招集通知の早期発送や集中日を回避した 【図表36:議決権行使で重視している観点(投資家)】【図表37:個別議案に関する説明】 80% 62.8% 60% 58.1% 38.4% 40% 20% 30.2% 9.3% 0% a. b. c. d. e. f. g. h. i. a 10.5% 7.0% 10.5% 5.8% b c d e f g コーポレート・ガバナンス体制 業績・財務状況(ROE等) 株主への利益配分 経営陣への報酬・ストックオプション 株主の権利・利益の保護 株価の状況 買収防衛策の内容 資本政策 ※3つまで回答可 その他 h 十分に説明されている 一定程度説明されている あまり十分とは言えない 説明は不十分 無回答 投資家 1.2% 45.3% 40.7% 3.5% 9.3% 企業 34.0% 54.2% 7.8% 0.5% 3.6% 株主総会の開催等といった環境改善を訴える投資 家の声は高まっている。企業には、投資家が検 討・判断するための十分な時間を確保できるよう 一段の取り組みが求められる。 【図表38:議決権行使の充実のための取り組み】 i 集中日を回避した株主総会の開催 招集通知の早期発送(早期開示) 議案の説明充実 有価証券報告書の早期開示 議決権行使プラットフォームへの参加 インターネットによる議決権投票 その他 投資家 企業 取り組むべきもの 取り組んでいるもの 65.1% 65.1% 53.5% 15.1% 14.0% 10.5% 3.5% ※投資家の回答の多い項目順、複数回答可、括弧内は対前年 ( +7.6pt) ( +9.9pt) ( ▲6.3pt) ( +4.8pt) ( +2.5pt) ( ▲6.7pt) ( +2.4pt) 51.3% 71.1% 36.3% 6.6% 43.3% 51.3% 6.6% ( ▲1.0pt) ( +1.2pt) ( +4.8pt) ( ▲0.4pt) ( +3.0pt) 当協会では、このような状況を踏まえ、企業 に対し、付議理由を含めた議案の説明充実と、 招集通知の早期発送・開示や集中日を回避した ( +3.8pt) 株主総会の開催等による議決権行使の環境改善 ( +0.3pt) を要望したい。
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