ビジネス界の愛棋家に聞く す。 劇の地下にあった大きな碁 的に始めました。当時、日 会所に行ったりしましたよ。 例えば、仕事のことを問 いかければ、仕事のことを るということですね。 囲碁は、私にとって人生 の師であり、相談相手であ やすく、話がスムーズに行 るとなぜか信用してもらい ですが、趣味が囲碁とわか て店舗を出す・ビジネスを として銀行からお金を借り 能力です。例えば、経営者 答えてくれますし、遊びな く。当然、本業がお粗末で 大きくすることもあるわけ ら遊びの楽しさを教えてく れます。 いいという話にはならない っていただけるという 事は と仲良くなり、人柄を分か 通じて、お客様やお取引先 われます。そこで、囲碁を そ も そ も、中 小 企 業 は、 オーナーの資質・人柄が問 わけですが︵笑︶ 。 問いを立てる側に応じて 色 々な 面 を 見 せてく れ る。 そのような存在だというこ とに気づかされました。 【囲碁と ビジネスについて】 人に１人くらいは 囲碁がビジネス・経営に 活かされると気づいたのは、 でしょうか？ まって、色々と助かりました。 ったという時代背景もあい 碁を打っていたような時代、 時は、 本当に有難いお話です。当 多店舗化し、自らが経営者 ︱︱ 具体的にビジネスに はどのように活かされるの 月に１回ご自宅にお邪魔し として何度も苦労を経験し れるということです。 ２つ目は、ビジネスで求 められる本質を身につけら このように囲碁人口も多か くなり、母が一人で私を 含 腕を磨きました。古武士と て数年にわたり教えを受け、 いろな整理の仕方はできる 先 手 必 勝、捨 石・ 要 石、 手順 前 後、こういった考え 呼ばれた先生からは、囲碁 生に 教 わ る 機 会 に 恵 ま れ、 む 兄 弟 ４人 を 育 てな が ら、 た昭和 そ して、昭 和 年 ごろ、 日本棋院七段、向井一男先 囲碁は中学校１年生の時 に兄から教わったのがきっ 店を切り盛りしているよう 方は、まさに経営そのもの ように思いますが、ビジネ スに関連する部分には３つ です。本質を見極めて、即 の楽しさ・厳しさなどいろ あると思っています。 お 店 を 手 伝ってい ま し た。 いろな面を教わりました。 まず、１つ目は人脈構築 らっていたのですが、２年 安定し、囲碁を打つ余裕が 年代になってお店が た時に、 〝師匠がよかったか でてきましたところで本格 ︱︱ 囲碁のいろいろな面 と言いますと？ 昭和 50 学生時代はほとんど打っ ていなかったです。父が亡 かけでした。戦後間もない な 状 態 で し た か ら、私 は、 年代頃です。いろ 古本屋の店主から教えても ︱︱ 学生時代もずっと打 たれていたのでしょうか？ っていたのはいい思い出で 株式会社玉寿司 会長 私と囲碁 中野里孝正 【囲碁との出会い】 中野里孝正 なかのり たかまさ 時 代 で し た ね。そ の 兄 は、 ︱︱ いつから囲碁を始め られたのでしょうか？ 大正13年（1924年）3月創業、 全国に27店舗を展 開する老舗寿司店、築地玉寿司を商号とする、株式 会社玉寿司の三代目会長。 公益財団法人 日本ペア 碁協会評議員。1937年生まれ、東京都出身。 35 10 Profile もたたないうちに兄を抜い らだな〟と負け惜しみを言 30 Vol.4 す。 断をしていくということで と思います。しかし、これ いことはよくわかっている によって決まるものではな 要となるものかは、石の数 し玉寿司もたちまち債務超 に隠れていた損失が表面化 の如 く、バランスシート上 ていたわけですから、当然 た。これまで簿価で計算し 価値を計算するようになっ ビ ジ ネ ス に 役 立 つ 囲 碁 の「 戦 略 性 」 １．人脈構築に役立つ ２．ビジネスの本質を身につけられる ３ ． 大 局 観・ 勝 負 勘 が 磨 か れ る 例えば、捨石と要石。囲 碁を打たれる方にとっては、 か実践できない がいざ経営になるとなかな えますが、私はそう は 思っていない。ど んな時にでもやるべ きことがあるのです。 デフレの時 だからこ そやるべきこともあ るはずですし、それ を正しい順番でやる べきなのです。 ビジネスは、負け ないことそのもので きで最 後に勝つこと はなく、七転び八起 が重要です。相撲で です。暖 簾、後継者はもっ タイミングの勝 負なのかと のであって、むしろ、どの 連敗しても取り返せばいい でいいのです。仮に最 初３ 過に陥り、銀行からの借入 とも重要な要石です。 いうことを見極めることが のが現実。 多くの経営者が土地、建 物などに執着し、結果うま 例えれば、８勝７敗 た。 くいかなかった例をたくさ はストップしてしまいまし 良債権処理のお 極め、要石以外は、すべて に当たり、要石と捨石を見 大切です。 ブル崩壊後の不 話をしましょう。 ん見て参りました。 私の体験です が、具 体 的にバ 当時は、土地神 手放す決意で、迅速に処理 ゆえに、大局観・勝負勘 が大切になるわけです。非 話が崩れ、地価 すが、意外と基本と基礎を を進めていきました。こう 履き違えている経営者が多 が３ 分の１、４ ご存知の通り、なんでも 勝負事は、タイミングと手 いのです。 常に基本的な話ではありま たしました。 間ではデフレが悪い、景 気 順が重要です。例えば、世 ３つ目は大局観・勝負勘 が磨かれるということです。 代でした。さら ここで言う要石は、店舗、 社員、取引先であり、捨石 が悪いなどを理由にビジネ ︵ ページ続く︶ 72 年、完全に再建を果 理ということで、 に、不良債権処 は土地建物、金融資産、そ スが厳しいという声も聞こ 平成 会計基準が変わ れと社長の地位やプライド して自主再建への道が開け、 り、時価で資産 分の１になって 「囲碁は生涯の友、人生の師」と中野里孝正会長。 しまうような時 このような緊急事態にあ って、私は銀行と交渉する その石が捨てるべきものか 捨石と要石。囲碁も経営も見極めることが大切。 24
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