これまでの雨露をしのぎ、居住スペースを確保すればよ いだけの住宅から、ヒートアイランド現象の緩和といった 環境性能や省エネ効果などの社会的要求、住む人の健康や 暮らし方といった住まい方の創造へと、住宅に求められる 性能が変わりつつある。住まいが欧米化し、断熱性能の向 上と気密性能がさらに求められる中で改めて外断熱工法の あり方も問われている。湿式外断熱工法は今後どのように 展開されていくのか。 日本で湿式外断熱工法を推進してきたNPO法人外断熱推 進会議の理事で事務局長の田村浩一さんに会の活動と業界 の現状、そして今後の展望などについてお話を伺った。 (編集部) 改修物件の住民の声を普及に活かす ▲「中立的な立場で情報発信と業界発展に貢献していきたい」と語る田村事務 局長 このほか実際に断熱改修工事の現場の設計・監理を担当 した事例もあります。東京・八王子市南大沢の大規模改修 ― これまでの活動について教えて下さい。 工事では工事前の事前調査から、工事の設計と監理を行い、 外断熱推進会議は平成15年11月にNPO法人として設立 工事後に住人へのアンケートを実施して追跡調査も行って され、今年で13年目を迎えます。主に外断熱工法を普及す います。施工後の住人の声として冷暖房効率が飛躍的に るための活動を行っており、PR事業の一つとして『外断熱 アップし、冬場の灯油や電気消費量の削減を実感したとい 通信』を発行しています。これは、当会会員に向けて情報 う声のほか、結露やカビなどの問題が大幅に解消されたと を発信しているだけでなく地方自治体や国会議員にも配布 いう報告がされています。 し、外断熱工法について広くPRしているものです。外断熱 南大沢の大規模改修工事の事例については報告書にも纏 通信はこれまで5回発行されました。 めており、こうした住民のアンケート結果を実例報告とし また、海外視察として外断熱先進国のドイツをはじめ、 て外断熱改修の普及活動にも役立てていく所存です。 スウェーデン、カナダ、米国といった欧米諸国のほか、中 国や韓国といった東アジア地域を視察してきました。特に 改正省エネ基準へと制度が大きく変更 ドイツのフラウンホーファー研究所とは提携関係にあるこ とからドイツの視察には何度も訪れており、日本の大学教 ― 現在の業界の流れはいかがでしょう。 授や研究者のほか、メーカー技術者や施工業者の社長など 大きな流れとして昨年、 「 平成11年省エネ基準(次世代省 が参加されています。 エネ基準)」から「平成25年省エネ基準(改正省エネ基準)」へ 16 No.463 2015 年 3 月号
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