詳細な研究シーズ ( 77kb )

所 属
(ふりがな)
やまの しげる
薬学部・衛生化学教室
山野 茂
氏 名
(学部・学科)
研究分野
毒性学
研究概要
生体異物(医薬品・環境化学物質)による毒性発現と生体内分子の変動
キーワード
モルヒネ,多環芳香族炭化水素キノン,酸化ストレス,細胞毒性,遺伝子毒性
現在の研究テーマ 医薬品・環境化学物質の代謝ならびに毒性発現機構の解明
【研究内容】
生体内に取り込まれた医薬品や環境化学物質などの生体異物は,一般に,肝臓などの酵素
(系)によって極性化反応を受け,水溶性代謝物として速やかに体外に排泄される.この過
程(異物代謝)は,異物に対する生体の防御反応ととして捉えることができる.しかしなが
ら,化学物質の中には,代謝によって反応性に富む代謝物が生成し,これがタンパク質や
DNA などの生体分子と共有結合したり,代謝の過程で活性酸素を産生し,いわゆる酸化スト
レスを引き起こすものがある.このような生体高分子の修飾や活性酸素による生体高分子の
酸化損傷が,細胞毒性や遺伝子毒性発現の引き金になっていると考えられている.当研究室
では,麻薬鎮痛薬であるモルヒネおよび環境化学物質である多環芳香族炭化水素キノンの毒
性とそれらによる毒性発現機構を解明し,毒性軽減化法を確立することを目的に研究を行っ
ている.
モルヒネについては,代謝物であるモルヒノンが,1)母化合物モルヒネより強い急性毒
性を示すこと;2)マウスに前処置した場合,モルヒネの鎮痛活性を低下させ,この作用は
長期間持続すること;3)肝グルタチオン(GSH)を枯渇させ,肝毒性を示すことなどから,
この代謝物が,毒性(耐性を含めた)発現に関係していると考えている.現在,ラット肝初
代培養細胞を使って,モルヒノンによる細胞毒性発現と細胞内 GSH 量や細胞内情報伝達の
変動との関係およびモルヒノンと共有結合するタンパク質の解明を中心に研究を行っている.
多環芳香族炭化水素による毒性発現は,代謝によって生成する反応性に富むエポキシ体が
生体高分子と結合することに起因すると考えられている.また,エポキシ体は,酵素によっ
てジヒドロジオール体への水解,さらにはカテコール体に代謝される.このカテコール体は,
生理的条件下で容易に酸化され,非酵素的にキノン体に変化する.このキノン体は生体高分
子と結合したり,レドックスサイクル(生体内でキノンとカテコールの酸化還元を繰り返す)
で活性酸素やセミキノンラジカルといった活性分子を産生することから,この代謝経路で生
成するキノン体も,多環芳香族炭化水素による毒性発現の一因と考えられる.なお,ディー
ゼル車排ガス微粒子中には多環芳香族炭化水素キノン類も含まれている.種々の多環芳香族
炭化水素キノン類について,1)無細胞系での DNA 酸化損傷能やタンパク質修飾・酸化損傷
能;2)ラット肝初代培養細胞や株化された培養細胞を使って,キノン類による細胞毒性
(ネクローシスあるいはアポトーシス)発現と酸化ストレスマーカーの変動やタンパク質・
DNA 損傷との関係について調べることにより,キノン類の構造と毒性発現との関係および毒
性発現機序の解明を目指して研究を行っている.
【応用分野】
薬物代謝,環境衛生,細胞毒性