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キャリア教育
キャリア発達に応じた普通科フィールド制の実践
~確かな学力の育成と進路実現を目指して~
北海道千歳北陽高等学校
学 級 数
22
(校長 吉 村 恭 子)
Ⅰ
1
実践テーマの趣旨
生徒の現状
平成15年度からは進学クラス(理系進学・文系進学コース)と普通クラス(進学教養・ビジネスコー
ス)の4コース制を実施してきた。平成17年度に4コース制の検証を実施し、「生徒の将来の進路目標
が不明確」という指摘がなされた。その要因及び課題は、次のとおりである。第1学年から進路選択の指
導体制が必要なこと。各コースの指導に対する全教職員の共通理解が得られていないこと。生徒の進路意
識が希薄で本人の目標・到達点も不明確なこと。コース設
定の位置付けがあいまいで、コース目的に照らした内容を
理解しない安易な選択が多いこと。
このような経緯から、キャリア教育の観点に立った学習
を進めるための科目選択を可能にする教育環境を整備し、
自己の進路や職業についての理解を深め、将来の進路を主
体的に選択できる能力を育てることを主眼に、平成23年
度よりフィールド制を導入した。そして、フィールド制に
よる教育課程が生徒一人ひとりのキャリア発達に応じた確
かな学力の定着と向上に寄与できると考え、本研究主題を
設定した。
2 期待する成果
・ キャリア教育の考え方を教育課程編成に反映させ、基礎学力の向上と進路目標の明確化が図られる。
・ 各フィールド目的別の進路選択率を向上させることで、生徒一人ひとりの進路実現が図られる。
Ⅱ 実践の内容
1 教育課程編成の改善と学力向上
(1) 教育課程の編成
(2) 観点別学習状況評価と授業改善
(3) 学力向上対策
2 キャリア教育の推進と進路実現
(1) 系統的なキャリア教育と教育課程の多
彩な編成・実施による進路指導の充実
(2) 高大連携
Ⅲ
1
実践の概要
教育課程編成の改善と学力向上
自己の生き方在り方を考えるため、より深く高度に学ぶことのできる科目や、環境、福祉、商業・情報
等の科目を一定のまとまりのある分野の選択科目群を設定して、生徒が選択し学習できるフィールド制教
育課程を導入した。
(1) 教育課程の編成
教育課程の編成にあたって、キャリア教育が全ての教育活動を通して行われ、有機的に関連付けられ
るように編成した。その際に、職業的にかかわる諸能力の4領域8能力を育成するプログラムに留意し、
本校の実態を踏まえ、3つのフィールドを設置した。第1学年からのフィールド選択に向けたガイダン
ス機能が高まるとともに、早期の進路指導体制の構築を図ることができた。
(2) 観点別学習状況評価と授業改善
生徒の実態に即し、各教科・科目の目標に照らした学習の到達状況を総括的に評価している。さらに、
シラバスの活用と授業評価による検証・改善を重ね、指導と評価の一体化を図ってきた。このことで、
各教科・科目のねらいや特性を勘案して具体的な評価基準を設定するとともに、評価規準の明確化を図
り、どの点が達成できたかを明らかにし、その点を伸ばすための授業改善に寄与することができた。
(3) 学力向上対策
ア 基礎学力診断テストの実施
学習到達度と家庭学習状況の結果をフィードバックし、授業や進路指導の改善が進んだ。
イ 学び直し・放課後補習
第1学年では国語・数学・英語の授業において義務教育段階の学習内容の「学び直し」に取り組ん
だ。また、1学年では週3回、2学年では週5回、放課後の「基礎学力向上講習」を実施した。この
ことで、生徒が学習に対して前向きになり、成績不振者が減少した。
ウ チャレンジ学習
休業期間等(GW、夏季、学期間、冬季、入選)に特別課題学習を実施した。このことで、家庭学
習習慣の定着が進み、成績優秀者も増加した。
エ スクールマナー週間
年5回、教務部と生徒指導部が連携し、授業規律の指導と生活指導の一体化を図った。このことで、
授業を受ける姿勢も良好になり、生徒の集中力が高まった。
オ わかる授業
地域公開授業や「言語活動の充実」、「思考力・表現力・判断力の育成」の研修会、授業評価を通
してわかる授業づくりに取り組んだ。
2 キャリア教育の推進と進路実現
就学意欲の低さを改善し、進路未決定者の減少に向けて、進路実現に必要な意欲や態度、諸能力を身に
付けさせるためのキャリア教育を推進した。
(1) 系統的なキャリア教育と教育課程の多彩な編成・実施による進路指導の充実
ア 総合的な学習の時間を中核に、「夢叶う」進路ストリーを提示した。自己発見・自己啓発・自己実
現と展開する3年間を見据えた体系的なキャリア教育が定着した。
イ 3つのフィールドに応じた進路ノートを作成した。このことで、進路ガイダンスも円滑に行われ、
幅広い進路に対応することが可能になった。
ウ 第2学年全員を対象にしたインターンシップ及び上級学校見学など体験的な進路学習を拡充した。
このことで、望ましい勤労観・職業観及び主体的に選択する能力・態度の育成も醸成された。
(2) 高大連携
平成20年、千歳科学技術大学と高大連携協定を締結した。科目等履修生制度、AO入試特待生制度、
eラーニングシステムの活用で進路実現を図った。また、学習指導補助のため学生の派遣も受けている。
このことで、学習意欲と進路意識が向上し、大学を志望する生徒も増加傾向となった。
Ⅳ
1
平成 24 年度卒業生目的別進路選択率
平成 25 年度卒業生目的別進路選択率
実践の成果と課題
コース
目標に照らした選択率
フィールド
目標に照らした選択率
理系進学
41.9%
人間環境
53.9%
実践の成果
文系進学
31.3%
人
文
45.0%
進学教養
46.6%
社会情報
73.0%
○ 第1学年での進学クラスを廃止し、全
ビジネス
52.8%
クラスに進学希望者が在籍することで、
クラス全体の進路意識が高まり、学習に前向きに
卒業年度別集計
取り組む生徒が増加した。
H25
H22
H23
H24
(フィールドⅠ期)
○ 各フィールドの設置目的に照らした進路選択率
成績優秀者
56名
66名
48名
76名
(3年生)
が向上し、卒業時の進路未決定者が減少した。国
大学進学者
24名
29名
34名
29名
公立大学進学者がでるなど進学実績も向上した。
就職決定率
45.0%
67.4%
94.3%
95.5%
2 今後の課題
● 人文探究フィールドの半数以上の生徒が進路選択と一致していない。進路講話やフィールドガイダン
スを計画的に実施しているが、生徒や保護者の目線に立ったガイダンスの在り方が課題である。
● 学校を取り巻く環境や年々変容する生徒の実態に柔軟に対応するフィールド制教育課程の継続的な検
証・改善が課題である。