384 物理学と技術 | 技術 知的機械とネットワーク 知的機械 ロボカップ ロボットは人間の助手として、複雑な、単調な、あるいは危険な仕事が得意だ。 しかし、予想外の局面に対応できる、人間の知的な判断力や多才さには及ばない。 この国際競技は、学生や科学者の 創造性を鼓舞し、遊び心に満ちた挑 ロボットはコンピューターで制御される 自立して移動できるロボットはもっと独 機械だ。特定の仕事を遂行するように設計 立性が高い。そして、歩き、運転し、泳ぎ、 されており、例えば工業用ロボットは溶接 飛び、さらには突然の事態に対応することも や組み立て作業をする。しかし、決まった できる。最近では建物の防犯、食事の世話、 動作環境のもとで、決まった仕事をこなすよ 訪問客の展示案内、惑星の探査などの仕事 人工知能 その後、研究者が模擬したのは、生物が るのはこの原理による。こうした一連の刺 神経細胞(ニューロン)のそれぞれをコン 「知 識データ」は組み合わせてステートメ に夢中になりながら階段を上るときに使わ 戦だ。その挑戦とは、人間の姿をし たロボットでサッカー・チー ムをつく り、2050 年までに 人 間 のワー ルド カップ・チャンピオンを負かす夢だ。 従う刺激・反応原理だ。私たちが熱いスト 人工知能(AI ) は、コンピュー ター科学の一専門分野だ。 研究者たちは、人間が持つ知的な能力をコンピュー ター で再現しようと している。それは、知覚、学習、推論、言語処理などの能力だ。 ーブを触ったとき、反射的に手を引っ込め 激・反応は複雑な動作だが、私たちが会話 ピューターで模擬し、層状にして相互接続 ントにすることができる。このステートメン れている。今はこれら両方の方法が組み合 すると、いわゆるニューラル・ネットワーク トをいくつか使えば、論理規則によってさら わされ、複合的な仕事も可能になっている。 ができ上がる。入力層に入ったデータは、 ネットワークでの処理を経て出力層まで伝 達される。出力層では、データがどのような ロボット | 人工知能 | インターネット | WWW | 生体認証 ニューロン経路を通ってきたかに応じて処 理される。サンプルデータによって、ニュー 知的機械と ネットワーク ロン経路を調整するのが学習の段階だ。学 電子的なネットワークを使って、人も機械も通信ができるようになった。 これからは、人間の思考をモデル化した人工知能を備えた機械や、 多様な仕事をこなすようにプログラムされた機械が増えていく。 同時に、一見単純な日常生活の中でも、コンピュー ター の利用が増えていくだろう。 practice 習後は、手書き文字のように字体にばらつ きがあっても認識できる。 コンピュー ター用の知識 H ロボカップはロボット工学と、人気のス ポーツ、サッカーを結びつけたものだ。 コンピューター に知識を蓄えるのは複雑 距離を車輪の回転数から計算するが、車が な処理になる。単に普通のデータを記憶す すべるといった単純な誤動作により距離の るよりも、ずっと大仕事だ。例えば、イスの 知識をとっても、単なる形状と置き場の情 うにプログラムされているだけなので、もし の一部もこなせる。 誤差を生じる。このような場合は、問題が 仕事の手順に変更があればプログラムし直 ロボットは、自らに組み込まれたセンサー 起きたことをロボットが識別し、センサー の 報をはるかに超えたものとなる。多くの文脈 す必要がある。この変更はしばしば「ティー で周囲の環境や構成部品に関するデータを データを追加取得して補正する。 では座るものという本来の機能が重要だと チイン」 という方法で行われる。人間の操作 取りこむ。例えば、超音波を出して反射が ロボットの仕事によって、どのアクチュエ 員がロボットを手で動かして、一通り行わ 戻ってくる時間を測り、障害物までの距離 ーターをどのように動かすかはプログラム せ、それをロボットが記憶するものだ。 を決めることができる。またカメラを使えば、 で決める。高度なロボットは、異なる行動を チューリング・テスト もっと詳細な環境のデータが得られる。ロ うまく組み合わせることもできなければなら 1950 年代に数学者のアラン・チューリングは、コ ボットのバッテリー の残量は電圧計からわ ない。例えば、障害物を避けながら目標に ンピューターが知的かどうかという疑問に答える試 かるし、内部分度器でロボットの握りアー 向かって進む、といったことだ。こうした複 験法を考案した。この ムの位置を設定できる。自分がどこに居る 雑な行動をさせるには、人工知能(p. 385) 試 験 の 仕 組 みは、人 かは GPS 装置か、周囲の目印になるものを の技術を使ってプログラムする。 間の判定員がコンピュ ーターと自然な会話を ロボットはアクチュエーターで動く。ア 続けるというものだ。 にステートメントを引き出す クチュエーター は脚、車 輪、握りアーム、 判定員は、彼らが相手 ことができる。この方法はエ にしているのが人間な あるいは特殊ツー ルとして組み込まれ、す のか、人間らしい応答 practice べて電動モーターで動く。ロボットの装備 が複雑になるほど、技能は向上する。しか し、その分プログラムも難しくなる。 をするようにプログラ H アラン・マチソン・チューリン ムされたコンピューター グ( 1912 ∼ 54 年 )は、 コン ピューター理論を追求した。 なのかを判定する。 ロボットのプログラミング H でこぼこ道を進めるように設計されたロボットは、昆虫をモデルに することが多い。神経系をプログラムで模擬し、状況に応じて どう動いたらよいかは、おのおのの脚自身が「決定」する。 p.418-421(新しい数学)参照 H コンピューターが人間を打ち負かす領域もある。2006 年、コンピューター 「ディープフリッツ」 がチェスの世界王者ウラジミール・クラムニクを破った。 利用して確認できる。 キスパート・システムに使わ れるものだ。例えば、故障し た機械の原因は何かを見つ け出し、さらには修理計画ま で立てるというように使える。 AIとロボット工学 ロボットは、センサー が取り込んだデー しても、この機能以外にイスは物を置く場所 タから、周囲の状況や自分自身の動作機能 にも、踏み台にもなる。 ロボットは当初、 「 知覚する㱺計画する㱺行 知識には事柄や行動に関するものもある 動する」 という形でプログラムされた。この技 を評価するようにプログラムされている。そ のときデータ不良の可能性も考慮するよう にしている。例えば、ロボットは自分の移動 H 工業用ロボットは、限られた特定の仕事だけをするよ うにプログラムされており、その実行は速く、正確で、 疲れ知らずだ。 し、知識そのものについての知識、つまりそ 法の弱点は演算時間が極めて長く、予期せぬ の範囲、信頼性、出所などがある。こうした 事態でのロボットの反応速度が遅いことだ。 p.421(21 世紀の数学)参照 H 福岡市のショッピング・モールで、話をするロボットを 囲んで遊ぶ幼稚園児たち。 385
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