Japan-Taiwan Transactions Report March 2015

Jones Day | ジョーンズ・デイ・レポート:日台取引の動向
March 2015
Contents
1. インターネット取引における第三者決済サービスに関する台湾法規について
2. 日本・台湾間の相互投資に関するニュース・ダイジェスト
インターネット取引における第三者決済サービスに関する台湾法規につ
いて
はじめに
インターネットにおける資金移転技術の目覚ましい発展に伴い、第三者による資金決済ービ
スが注目されてきた。1998年にサービスを開始した米国PayPalの他、中国の支付宝(アリペ
イ(Alipay)。以下「アリペイ」という。)は着目に値する。昨年、アリババの米国での
IPOが過去最大規模のものといわれたが、グループ傘下のアリペイの貢献があったことは見
逃せない。第三者決済サービスは資金移動の方法が通常と異なるため、欧米各国では既に第
三者決済サービスを別途規律する法規を制定しており、中国も2010年に特別法を制定した1。
そのような国際的な発展とは対照的に、台湾における第三者決済サービスにおける法制の発
展は緩やかであり、多くの制約が残っていた。そこで、企業及び消費者の需要に応えるため、
行政院は、2014年9月に「電子決済事業管理に関する特別法(案)」2を提出した。同法案は
2015年1月16日に立法院で可決成立し、同年2月4日に公布された。同法は、関係法令の立案
・検討の後、行政院の指定する日に施行される。
第三者決済サービスの特徴及びリスク
第三者決済サービスとは、別名電子マネー決済とも呼ばれ、第三者である資金決済業者を通
じて、代金徴収及び代金支払の代行、デポジット(資金預かり)及び為替取引等を行うこと
を主要なサービスとするものである。利用者は資金決済業者に代金の保管を委託し、取引の
相手方から商品又はサービスの提供を受けた後に、資金決済業者を通じて取引相手方に代金
を支払うことができる。中立的な資金決済業者を介することで、取引の当事者間に安全な決
済方法を提供するものである。また、会員となった利用者は資金決済業者の口座に金銭を預
け入れておき、その口座からの引落しを通じて資金決済業者から取引の相手方に対して代金
支払いを実行するように依頼することもでき、さらに、特定の口座の残高を単純に特定の者
の口座に振り替えることもできる。
第三者決済サービスには上記のような利便性が認められるものの、同時にリスクも伴う。ま
ず、第三者決済サービスにおいては取引情報が秘匿されるため、決済の原因関係となる取引
を特定できる資金移転の記録がないと、極めて容易にマネーロンダリングの温床となってし
まう。次に、資金決済業者が代行して徴収した代金は資金決済業者の口座に保管されるため、
その利用者たる会員数の増加に従い資金決済業者による保管金額が相当な額となるが、この
点に関する金融規制が少ないと、万一高リスク商品への投資や横領・濫用が行われようとし
ても資金決済業者による当該資金の運用に対して規制が及ばず、利用者の利益が損なわれる
おそれがある。その他、これまでのインターネット取引では個々の買主と売主の間で金銭移
転が直接行われていたことと比べると、第三者決済サービスが多数の消費者の金銭及び個人
情報を統合して単一の情報システムに保管する点で、例えば当該資金決済業者がハッカーに
よる侵入を受けた場合又は情報を喪失したような場合には、多数の利用者に甚大な損害を及
ぼす事態が発生しうる。
「電子決済事業管理に関する特別法」の概要
台湾の現行法規によれば、(銀行ではない)資金決済業者は、単純な代金徴収及び代金
支払の代行しか許されていない。資金預かり業務は現行の「電子証券発行管理に関する
特別法」3により大幅に制限され(金融監督管理委員会の認可が必要)、為替業務に至っ
ては禁止されている。數字科技股份有限公司の「8591宝物ネット」4は、金融監督管理委
員会に対して資金預かり業務を提供することの申請を行っていなかった。そのため、そ
の提供するサービスに対する顧客満足度が極めて高かったものの、2014年8月、検察によ
り「電子証券発行管理に関する特別法」違反により起訴された。第三者決済サービスの
発展に向け、企業及び消費者の重要に応えるために立法院で可決成立した「電子決済事
業管理に関する特別法」(以下「本特別法」という。)は、資金決済業者に対して、代
金徴収及び支払の代行、資金預かり、そして為替(電子決済口座間の移転)の3つの業
務を開放することとなる。
第三者決済サービスに関する上記リスクを回避するため、本特別法はいくつかの措置を
講じている。まず、マネーロンダリング防止の観点から、資金決済業者は営業許可申請
を提出する際に必ずマネーロンダリング防止作業マニュアルを提出しなければならず、
かつ、利用者の本人確認システムを確立しなければならないとされる。また、利用者が
口座残高を引き出そうとする場合、現金を交付してはならない。次に、利用者の保護の
観点から、本特別法は資金決済業者の最低資本金額を5億元と定め、利用者たる会員が口
座に預けた額を投資に充当する場合は、低リスク商品による運用のみが許される。ま
た、資金決済業者は、定期的に公認会計士に財務状況の監査を委任し、その結果を主務
官庁に提出しなければならない。さらに、利用者である会員からの預かり金は利用者1名
あたり5万元が限度とされ、利用者である会員の口座残高にかかる払戻債権は、資金決済
業者に対する他の債権よりも優先して弁済されるほか、当該資金決済業者の財務状況が
悪化したときには、所管の公的機関が必要な措置を講じることができる等の規定が置か
れている。そして、個人情報保護の観点から、資金決済業者が利用者の取引にかかる資
料についての守秘義務を負うほか、事業者団体が情報システム構築指針及び業務遂行時
の安全管理基準を設ける等が規定されている。上記の他にも、台湾において電子決済業
務を行おうとする事業者は、本特別法に基づいて電子決済事業の設立を申請しなければ
ならず、関連規定を遵守しなければならないことが規定されている。
現在、本特別法に関して約15の関係法令が主管機関において協議されており、具体的な
運用基準及び資格条件等の細則が検討されている。これらの関係法令の確定により、規
制の全容が明らかになる。確かに、今後、本特別法が施行されることにより、資金決済
業者が銀行業務の一部に参入することとなる。しかし、第三者決済サービスの規律は、
国際的な潮流に沿うものであり、市場開放を加速させるものである。十分な管理監督を
通じ、台湾におけるインターネット上の資金移転手段において、利用者にとって利便性
が高く、かつ、安全な環境となる方法がまた一つ誕生することが期待される。
1.訳注:日本では資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)がある。
2.正式名称は「電子支付機構管理條例草案」。
3.正式名称は「電子票證發行管理條例」。
4.正式名称は「8591寶物交易網」。
日本・台湾間の相互投資に関するニュース・ダイジェスト
(2014年8月から2015年2月)
1.中油、KHネオケム、兆豊銀行が137億台湾ドルを投じて台湾高雄に石油化学製品の合
弁会社を設立
2015年2月11日、台湾中油股份有限会社(以下「中油」という。)、日本のKHネオケム
株式会社(以下「KHNC」という。)及び兆豊國際商業銀行股份有限公司(以下「兆豊
商銀」という。)は、137億新台湾ドル(以下、単に「元」という。)の共同出資に関す
る合弁契約書に調印した。今後、台湾の高雄市臨海工業区に合弁会社「曄揚股份有限公
司」(以下「曄揚」という。)を設立し、高級石油化学原料であるイソノニアルコール
及びブタジエンの生産工場の建設することを計画している。合弁会社の持株比率は、中
油が47%、KHNCが47%、兆豊商銀が6%である。
KHNCは、世界でも有数な、イソノニアルコール生産技術を有するメーカーである。今
回の合弁会社設立により、曄揚はKHNCのイソノニアルコール生産技術を取得し、日台
の両国において石油化学産業の先端技術の更なる発展を目指す。
2.台湾ゲームメーカー「紅心辣椒」が中国ゲーム開発メーカー「傲世堂」と提携し日本
で会社を設立し、日本のゲーム市場に攻勢
2015年2月9日、台湾における上場会社であるゲームメーカー紅心辣椒娯楽科技股份有限
公司(以下「紅心辣椒」という。)は、中国のゲーム開発メーカーである「傲世堂」と
の提携を公表した。両社は、2015年第1四半期中に、日本に合弁会社「傲世辣椒株式会
社」(以下「傲世辣椒」という。)を設立し、両社のグループ資本及びゲーム開発運営
戦略を集結して、豊富な製品群により日本のゲーム市場に多面的な攻勢をかける予定で
ある。傲世辣椒の設立時資本金は260万米ドルであり、当初の従業員規模は約10名とす
る。紅心辣椒が市場戦略、販売、輸出入を担当し、技術面は傲世堂が支援する。両社は
持株比率を50%ずつとし、5年以内に日本の株式市場への上場を目指す。
3.台湾の智威が講談社と提携し、アニメグッズ市場に攻勢
2015年1月23日、シミュレーション技術で定評のある台湾メーカーの智崴資訊科技公司
(以下「智崴」という。)と株式会社講談社(以下「講談社」という。)は、合弁に関す
る覚書に調印した。1,500万元の共同出資により台湾の高雄市に合弁会社を新設する予定
である(持株比率は智崴が60%、講談社が40%)。まずは講談社の著名なアニメ「進擊
の巨人」関連グッズを販売し、将来的には高雄市を拠点として、デジタルコンテンツの
開発を主に行う。智崴は、これに先立って2014年10月に講談社から「進擊の巨人」の使
用権を取得し、シミュレーションゲーム機の動画を開発していた。智崴は、今後、研究
開発試験ビル及び国際創意センターの竣工を完了させた後、従業員を現在の12人から350
人へと増員し、総収入を250億元へと成長させることを計画している。
4.台湾の新光人壽が200億元を拠出して東京及びロンドンの不動産に出資
2014年10月24日、新光人壽保險股份有限公司(以下「新光人壽」という。)は、取締役
会決議により、その不動産投資グループをして、200億元の範囲内で東京及びロンドンの
繁華街にある商業用不動産ビルを購入させること決定した。外国税の負担及び不動産管
理業務を減少させるため、新光人壽は、シンガポール及びジャージー島に、それぞれ160
億元及び100億元の範囲内で、特別目的不動産投資事業体(SPV)を設立する。また、イ
ギリス及び日本の不動産購入の認可のために金融監督管理委員会へ申請を行う。新光人
壽は、日本の円安政策の下で、日本の経済活動が活発化し、不動産建設及び公共事業の
継続的な成長が期待されるとして、将来に安定的な賃貸収入が見込まれる商業ビルの保
有を目指すと述べている。
5.台湾統一超と日本の和食料理店「さと」が提携し台湾に大衆向け火鍋店を設立
2014年9月、台湾の統一超商股份有限公司(以下「統一」という。)とサトレストランシ
ステムズ株式会社(日本で最大級の和食料理店「さと」を展開、以下「さと」とい
う。)は、大衆向け小型火鍋店「鍋上都」を開店した。5年以内に台湾において50店舗の
展開を計画しており、成功後は再度、共同事業により東南アジア地域に投資する予定で
ある。新聞報道によれば、「さと」は、数年前に中国本土で損失を出し、中国本土市場
から撤退するのと並行して、みずほ銀行の仲介によって統一グループとの業務提携を締
結した。統一は、提携当時、「さと」に対して、「まず台湾、それから本土」と提言し
ていた。その後2010年に「和食上都」(和食さと)台北阪急店を開店し、現在2店舗とな
っている。今後は共同で火鍋店市場を開拓する計画である。
6.木徳神糧と東洋建設が台湾屏東農業生技園区(台湾グリーンバイオパーク)に入居
2014年9月,木徳神糧株式会社(以下「木徳神糧」という。)及び東洋建設株式会社(以
下「東洋」という。)は、それぞれ傘下の台湾子会社を通じて、台湾屏東農業生技園区
(以下「台湾グリーンバイオパーク」という。)への入居を果たした。台湾グリーンバ
イオパークは、自由経済モデル区の一つであるため、規制対象産物を使用することがで
きる。また、保税区域でもあり、輸出販売にかかる関税が免除される。さらに、同パー
クの区画賃料は1ヘクタール当たり約100万元であり、通常の科学パークにおける賃料が1
ヘクタールの土地当たり200万元以上であることと比べると極めて低いものであるなど多
数の優位性がある。
木徳神糧は、腎臟病等を患っている消費者をターゲットとして、1億元を投資して低たん
ぱく性の米食品の開発を行い、また0.6ヘクタール借地して工場設置を計画している。東
洋も、8,000万元を投資して、鉄分を多く含むレタス等の野菜を生産する植物工場の建設
を計画している。
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