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宇宙 | 宇宙と銀河
銀河
渦巻と楕円
天の川銀河
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局部銀河群
銀河の形状は、さまざまである。渦巻銀河、楕円銀河など銀河系の種類によって、
その構造と大きさ、要素はそれぞれ大きく異なる。
太陽系も天の川銀河の一部である。太陽系は天の川銀河の渦巻中にあって、
数十億の恒星とともに、銀河核の周りを回っている。
銀河は、約 1000 億個の星とガスやちりで
れより小さな銀河群という集合体をつくって
私たちが住む星の集団は、天の川銀河
って、恒星の光が隠されるため、天の川銀
ダ銀河は最大級で、こ
できている巨大な集団であり、全体が回転
いる。銀河の渦巻は、銀河円盤部の星が集
(銀河系)と呼ばれる。天気がよく視界の開
河の詳細な構造は長く不明だった。それが
れらの距離は約 250 万
している。銀河の形は楕円のものもあり、渦
まってつくられる。これは、音波の働きでで
けた日に、夜空を見上げると、きらきら輝く
明らかになったのは、20 世紀に入って、可
光年も離れている。ど
巻や不規則な形のものもある。銀河は、そ
きる空気の圧縮に似た現象である。
光の帯が夜空を横切っているのが見える。 視光に加えて赤外線や電波を利用した天体
ちらの銀河も、大小の
れを構成する要素同士の重力によって、ま
物質はこの渦巻領域に集中し、その星間
そのとき、私たちが目にしているのは天の川
観測ができるようになってからだった。そ
マゼラン 雲をはじめと
ガスの中で、比較的多数の新
銀河の円盤部だ。この光の帯は天の川と呼
の結果、天の川銀河は比較的大きな渦巻銀
する小型の銀河に囲ま
ばれるが、太陽を含む天の川銀河全体を指
河であることが判明した。
れている。大マゼラン
天の川銀河は、相互の重力に引き寄せられた 30
以上の銀河の集団に属している。この局部銀河群と
呼ばれる銀河群のなかでも、天の川銀河とアンドロメ
銀河
もはるかに明るく輝いている。
により、腕の部分は周囲より
私たちの太陽系は、銀河系のはずれに近
を外側から見ることはできないが、天の川銀
い渦巻腕の 1 本の中にある。銀河の外層部
物質も含まれる。ガスは主に水素とヘリウム
は銀河系ハローと呼ばれ、広域に点在する
に回転する。渦巻腕の部分に
から成るため、近隣の星からの放射がガスを
太古の恒星の集合体、いわゆる球状星団が
とそこにとどま
そこから地球に光が届くまでに 250 万年かかる。
くのでもない。
ある星は、ずっ
雲 は 約 15 万 光 年、小
マゼラン 雲 は 18 万 光
H 小マゼラン雲は、天 の 川
銀河近くの局部銀河群を構
成している不規則銀河だ。
年と、どちらも比 較 的
天の川銀河に近い。
分布している。
銀河の種類
恒星は成分や年齢、分布位置などによっ
天の川銀河の中心部を探すには、いて座
るのではなく、
楕円銀河は明確な構造がわずかしかないか、もし
て分類される。ごく若い恒星は、渦巻腕の
の方角を見なければいけない。中心部は分
腕の内 側 へと
くはまったくない。その一方で渦巻銀河には、核を
対称形領域の近くに分布し、重い元素を比
厚い星間物質で覆われているので、可視光
流れ込んでい
中心に回転する 2 本以上の渦巻腕がある。渦巻銀
較的高い濃度で含んでいる。これらの元素
では見ることができない。し
河はさらに、中心を貫く棒があるものとないものに
は、高齢の恒星が核融合によって内部から
かし、電波や赤外線、X 線を
天の川銀河
放出したものだ。高齢の恒星はエネルギー
用いた観測で、銀河核の構造
私 たちの 銀 河 は 約
とまっている。この重力の働きにより、恒
実際には、個々の星が渦巻腕
星や星間物質は銀河核を中心に回転してい
の部分に加わり、やがてそこ
る。太陽も、天の川銀河(p. 25)
と呼ばれる
から出て行く。
ハッブル 宇 宙 望 遠 鏡 の 観 測 によると、
すときにも使われる。私たちは天の川銀河
渦巻銀河は銀河核を中心
星が単体で存在することはめったにない。
ほとんどの場合、回転する巨大な銀河の一部である。
星の質量は私たちが想像できないほど大きく、
星と星の間の距離は驚くほど離れている。
私たちの天の川銀河に最も近い銀河でさえ、
こうした銀河の一部だ。
H アンテナ銀河は、2 つの銀河が衝突し合体しつつあ
る銀河の典型例だ。
in focus
渦巻銀河 | 楕円銀河 | 天の川
たな星が誕生している。それ
分類される。レンズ状銀河には、渦巻銀河と同じよ
うに核があるが、渦巻腕はない。不規則銀河の数
は少なく、それぞれ独自の形状をしている。
H 地球から見ると、銀河の円盤部は天の川と呼ばれる
光の帯が空にかかっているように見える。
銀河の相互作用
が弱くなるにつれ、こうした物質を宇宙に放
を調べることができる。
10 万光年の直径が
出するようになる。そして放出された物質は
銀河系の中心部の恒星は、
あり、お よ そ 1000
やがて、まとまっていき、次の世代の恒星を
外側よりも密集している。中
億から4000 億の恒
誕生させる。
心部の狭い空間に、太陽およ
星から成る。太陽は
銀河が互いにすれ違うと、
河内の恒星間の距離をかなり正確に測定す
中年の恒星は、銀河の円盤部付近で見つ
そ300 万個分の質量が集中
銀河の中心部から約
互いの重力によって形が変わ
ることができる。
かる。球状星団内の年齢の高い恒星は、重
している。銀河の中心に存在
2 万 7000 光 年の位
い元素の含有率が低い。これは、銀河系の
するのは、超高密度の物質、
置にあり、中心の周
物質が合体したときにすでに使ってしまっ
いわゆるブラックホー ルでは
りを秒 速 約 200km
たためかもしれない。
ないかと考えられている。
ることがある。その際、個々
の星の軌道がゆがんだり、ま
一般に複数の銀河は、銀河団あるいはそ
れに合体したりする。
このように
銀河が互いに
天の川銀河の構造
in focus
次第に合体し、構造が進化してきたことをう
かがわせる。
銀河中に存在する不透明な暗黒星雲によ
H エドウィン・ハッブルによる分類は、銀河を中央の棒や腕、
形状などの特徴で分ける。
basics
130 億年前の銀河は、複雑なものや大規模
なものが、ほとんどない。このことは銀河が
作用した場合、
たいてい小さい銀河が大きい
熱すると、ガス自体
銀 河に吸 収されるが、同 程
が光を放つようにな
度の大きさの銀河が合体する
る。一方、ちりは主
と、2つの核が残る。
に黒鉛からなる星雲
星間物質
銀 河はかつて星 雲
と混 同 され、長 い
間、その 構 成が 不
だ。ちりが星の光に
明だった。1923 年
照らされると、光を
になって、アンドロ
星と星の間の宇宙空間に
反射する星雲は明る
メダ星雲(銀河)が
は、ガスとちりの微細な粒子が
く浮かび上がって見
実は天の川のような
分布している。その中には、初
える。対照的に、背
期の宇宙から残っている構成
景の星の光を吸 収
要素のほかに、活発に活動す
する星雲は、暗黒の
る星や爆発する星が放出する
雲のように見える。
集団であることをエ
basics
H ソンブレロ銀河のような渦巻銀河は、側面から見ているため、その渦巻状の腕が
よく見えない。だが、中心部のふくらみ(バルジ)
と平たい円盤状のちりがよく見える。
銀河と星雲
ドウィン・ ハッブル
が明らかにした。
H 天の川銀河は渦巻銀河に分類され、中心部にバルジと呼ばれるふくらみと、数本の渦巻腕がある。この渦巻腕は、数十億の恒星と、星間ガス、ちりから成る。
恒星の 1 つが太陽で、その太陽と惑星で私たちの太陽系が成り立っている。太陽系は、天の川銀河のはずれにある1 本の腕に位置している。
で周回している。1 回
の 公 転に 2 億 4000
万年かかる。