ここでは「聞きやすさを測るテスト」(連文)の結果について述べる。 外国人にとって最も聞きやすい読み方スピードを知るため、分析方法(ⅰ)を使った結果からそれぞれの読み 方スピードの聞きやすさ率を求める。図 1 での「***」は有意水準 1%、 「**」は有意水準 5%、 「*」は有意 水準 10%で有意差1が認められた事を表し、拍間に記号がないところは有意差がないこと(NS) 2を表している。ま た、図中の n はサンプル数で、ここではいずれも異なるサンプルである。 100 *** *** 80 外国人全体が聞きやすいと感じる *** 読み方スピードは 400~440 拍/分 NS 60 図1は、外国人全体の「聞きやすさを測るテ 40 スト」の結果について示したもの。図中の400 20 拍/分および440拍/分と、他の2種の読み方 0 支持率 320拍 (n=240) 360拍 (n=240) 400拍 (n=240) 440拍 (n=240) 40 58 76 74 (単位:%) 図 1 外国人全体での「聞きやすさを測るテスト」の結果 スピードとの間に有意差が認められた。 他方、400 拍/分と 440 拍/分の間には有 意差が認められなかった(NS)ことから、外 国人全体は、400~440 拍/分を聞きやすい読 み方スピードと感じたことになる。 (加点法3 による) 100 *** 80 ** 漢字圏出身者が聞きやすいと感じる *** 読み方スピードは 400~440 拍/分 NS 60 図2は、漢字圏出身者の「聞きやすさを測 40 るテスト」の結果について示したもの。図 20 0 支持率 中の400拍/分および440拍/分と、他の2 320拍 (n=102) 360拍 (n=102) 400拍 (n=102) 440拍 (n=102) 40 58 78 76 (単位:%) 図2 漢字圏出身者での「聞きやすさを測るテスト」の結果 (加点法による) 種の読み方スピードとの間に有意差が認め られた。 他方、400 拍/分と 440 拍/分の間には 有意差が認められなかった(NS)ことから、 漢字圏出身者は、400~440 拍/分を聞きや すい読み方スピードと感じたことになる。 1有意差・・・統計上からは偶然に起こったとは判定できない差のこと。有意差検定を行うことで、数値 間の差は意味がある差なのか、意味のない単なる見かけ上の差であるのかを確かめることができる。 Significant difference の略。統計用語で「有意差なし」の意味。 3加点法・・・ある設問に対し用意された質的な選択肢の、たとえば「とても」や「ときどき」 、 「やや」、「まっ たく」といった、その程度に対して傾斜した点数を加えて数量化する方法。 1 2NS・・・・No *** 100 *** 80 非漢字圏出身者が聞きやすいと感じる ** 読み方スピードは 400~440 拍/分 *** NS 60 図3は、非漢字圏出身者の「聞きやすさを測るテ 40 スト」の結果について示したもの。図中の400拍/ 20 分および440拍/分と、他の2種の読み方スピード 0 320拍 (n=138) 360拍 (n=138) 400拍 (n=138) 440拍 (n=138) 40 59 75 72 支持率 との間に有意差が認められた。 他方、400 拍/分と 440 拍/分の間には有意差 が認められなかった(NS)ことから、非漢字圏出 (単位:%) 図3 非漢字圏出身者での「聞きやすさを測るテスト」の結果 身者は、400~440 拍/分を聞きやすい読み方スピ ードと感じたことになる。 (加点法による) 漢字圏、非漢字圏出身者共に聞きやすいと感じる読み方スピードは 400~440 拍/分 続いて、その外国人が漢字圏の出身か非漢字圏の出身かによって、聞きやすさに違いが生じるのかを知るため、 漢字圏出身者の結果(図2)と非漢字圏出身者の結果(図3)を比較した。その結果、漢字圏の出身者も非漢字圏 の出身者も、共に支持率の高かった読み方スピードは400拍/分と440拍/分であった。一方、最も支持率の低か った読み方スピードは320拍/分であった。また、漢字圏と非漢字圏の出身者での全ての読み方スピードの支持 率間に有意差は認められなかった。 以上のことから、漢字圏、非漢字圏出身者共に400~440拍/分が聞きやすく、320拍/分が最も聞きにくいと 感じる読み方スピードであることが明らかとなった。 次に、分析方法(ⅱ)での結果について見ていく。この分析方法で、それぞれの読み方スピードについて感じ た割合から、外国人にとって速いと感じる読み方スピードと遅いと感じる読み方スピードを知る。 80 60 40 20 0 *** 外国人全体がちょうどいいと感じる ** 読み方スピードは 400~440 拍/分 ** 図4は、外国人全体の「聞きやすさを測るテスト」の結 果を選択肢ごとに示したもの。選択肢「ちょうどいい」の とても 速い 少し 速い ちょうど いい 少し 遅い とても 遅い 400拍/分および440拍/分と、他の2種の読み方スピード 320拍(n=120) 0 0 16 48 36 との間に有意差が認められた。選択肢「少し遅い」では、 360拍(n=120) 0 2 32 52 15 400拍(n=120) 0 5 55 38 3 440拍(n=120) 0 4 53 38 5 (単位:%) 図 4 外国人全体での「聞きやすさを測るテスト」の結果 360拍/分と400拍/分、440拍/分の読み方スピードの間 に有意差が認められた。選択肢「とても遅い」では、320 拍/分と他の3種の読み方スピードの間に有意差が認めら れた。 これらのことから、外国人全体についていうと、2人に1 人以上が「ちょうどいい」と感じる読み方スピードは400 ~440拍であった。一方、320拍/分については「少し遅い」、 360拍/分については「とても遅い」という意見であった。 2 80 *** 60 ** 漢字圏出身者がちうどいいと感じる * *** ** 40 読み方スピードは 400~440 拍/分 図5は漢字圏出身者の「聞きやすさを測るテスト」の結 20 果を選択肢ごとに示したもの。選択肢「ちょうどいい」 0 では、400拍/分および440拍/分と、他2種の読み方ス とても 速い 少し 速い ちょうど いい 少し 遅い とても 遅い 320拍/分(n=51) 0 0 16 49 35 360拍/分(n=51) 0 0 31 53 16 では、 360拍/分と400拍/分の間に有意差が認められた。 400拍/分(n=51) 0 4 59 35 2 440拍/分(n=51) 選択肢「とても遅い」では、320拍/分と他3種の読み方ス 0 4 55 39 2 ピードとの間に有意差が認められた。選択肢「少し遅い」 ピードの間で有意差が認められた。 (単位:%) これらのことから、漢字圏出身者にとって、400~440 図 5 漢字圏出身者での「聞きやすさを測るテスト」の結果 拍/分が「ちょうどいい」と感じる読み方スピードとい うことになる。また、320拍/分と360拍/分については 「少し遅い」や「とても遅い」と感じていた。 *** 80 60 40 20 0 ** * 非漢字圏出身者がちょうどいいと感じる *** 読み方スピードは 400~440 拍/分 図6は非漢字圏出身者の「聞きやすさを測るテスト」 の結果を選択肢ごとに示したもの。選択肢「ちょうどい とても 速い 少し 速い ちょう どいい 少し 遅い とても 遅い 320拍/分(n=69) 0 0 16 48 36 360拍/分(n=69) 0 3 32 51 14 400拍/分(n=69) 0 6 52 39 3 し遅い」では、360拍/分と440拍/分の読み方スピード 440拍/分(n=69) 0 4 52 36 7 との間に有意差が認められ、選択肢「とても遅い」では、 い」では、400拍/分および440拍/分と、他の2種の読 み方スピードとの間に有意差が認められた。選択肢「少 (単位:%) 320拍/分と他の3種の読み方スピードとの間に有意差 図 6 非漢字圏出身者での「聞きやすさを測るテスト」の結果 が認められた。 これらのことから、非漢字圏出身者にとっても、400 ~440拍/分が「ちょうどいい」と感じる読み方スピー ドということになる。また、320拍/分と360拍/分は「少 し遅い」や「とても遅い」と感じていた。 漢字圏、非漢字圏出身者共にちょうどいいと感じる読み方スピードは 400~440 拍/分 出身国の違いによって、支持率に違いが生じるのか明らかにするため、漢字圏出身者の結果(図5)と非漢字 圏出身者の結果(図6)を比較する。 選択肢「ちょうどいい」では、漢字圏、非漢字圏出身者ともに支持率が高かった読み方スピードは400拍/分 と440拍/分であった。これら2種の読み方スピードにおける聞きやすさ率に有意差は認められなかった。また選 択肢「少し遅い」では、いずれも360拍/分としていた。また選択肢「とても遅い」では、いずれも320拍/分に ついて感じていた。 これらのことから、漢字圏出身者、非漢字圏出身者であるかを問わず400~440拍/分が「ちょうどいい」読み 方スピードと感じたことになる。また、360拍/分は「少し遅い」と感じ、320拍/分は「とても遅い」と感じる 読み方スピードであった。 3
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