水辺 の 環境 ユキワリイチゲ キンポウゲ科イチリンソウ属 Anemone keiskeana 雪割一華 雑 木林や竹林のなかの地表面に群 葉は茎の先や花茎の節に 3 枚が 1 か所に れをなして生える多年草です。開 放射状につき、一見すると形はセリ科のミ 花期は 2 〜 4 月。 「雪割」という名 ツバにそっくりですが、葉の表面は濃緑色 ゆきわり は、ふつう雪解けと同時に咲く花を想像さ に白斑が入り、裏面は紫色を帯びています。 せますが、開花期には雪が全く降らない地 春になると葉や茎はなくなり、秋に地上に 域にも多く見られることから、この名は少 出て冬を越すためか、開花期のころには葉 しオーバーだという説もあります。一方、 がガサガサした汚れた感じになっているこ いちげ 「一 華」というのは、茎の先に 1 輪の花をつ とが多いそうです。 けるという意味です。 近畿地方以西の本州と、四国、九州に分 多肉質で紫色を帯びた根茎は地面の近く 布しますが、日本固有種であるため、世界 を横に這って広がり、花茎や葉をたくさん でこの地域にしかない貴重な植物といえま つけます。そのため、一見大きな群落のよ す。奈良県、佐賀県で絶滅危惧Ⅰ類、滋賀、 うに見えますが、1 つの個体が広がったも 和歌山、鳥取、徳島の各県で絶滅危惧Ⅱ類 のも多いです。15 〜 30cm の高さに伸びる など、府県単位のレッドリストに記載され 花茎の頂上部に直径 3 〜 3.5cm の花が 1 輪 ています。 咲きます。花びらの数は 8 〜 22 枚くらいあ ちなみに学名の keiskeana は、シーボル るとされますが、これはがく片が変化した トに植物学を学び、日本初の理学博士の学 ものです。花びらに見えるがく片の色は、 位を受けた伊藤圭介(1803 〜 1901)に由来 白色、淡いピンク、縁が白い薄紫色などと するものです。 変化があります。 【参考文献など】 ・ 『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花 増補改訂新版』 門田裕一監修 山と溪谷社刊 2013 年 ・ 『山溪名前図鑑 野草の名前・春』 高橋勝雄著 山と溪谷社刊 2003 年 ・ 『日本の野生植物 草本Ⅱ 離弁花類』 佐竹義輔ほか編著 平凡社刊 1999 年 ・ 『原色日本植物図鑑』 草本編 (Ⅱ)離弁花類 改訂版 保育社刊 1978 年 ・日本のレッドデータ検索システム HP 水辺の環境 ● 23
© Copyright 2025 ExpyDoc