『日葡辞書』に採録された食に関する語彙について 第2報

〔( 社)
食 物
2Aa-3 日本 家政 学 会
『料 理 方 秘』 につ いて
○ 橋爪 伸 子* 江後 迪 子**
(*香 蘭 女 短 大 **元 別 府 大 短 大)
< 目 的 >墨 付 五 一 丁 か ら 成 る 横 綴 り の 手 写 本 で あ る 本 書 は( 都 立 中 央 図 書 館 加 賀 文 庫 所 蔵).
巻 末 に「 右 御 料 理 頭 村 中乙 右 衛 門 秘 書 写 之 至 候 也 享 和 三 年 仲 冬」 と あ るこ と よ り, 御 料
理 頭 で あ る 村 中 氏 の 備 忘 録で あ り , 又 村 中 氏 は 熊 本 細 川 藩 の 料 理 頭 と さ れて い る 。 本 報 は
木 書 に み ら れ る 熊 本 の 地 方 的 特 徴, 並 び に 他 の 料 理 書 に は み ら れ な い 料 理 につ い て 検 討 す
るこ とを 目 的 と し た。
<方 法 >『 料 理 方 秘 』(1803・享 和3)を 翻刻 し, 中 世 後 期 及 び 江戸 期 の 料 理 書 を 資 料 と し て
料 理 内 容 の 比 較 検 討 を 行 っ た。
< 結 果 ・ 考 察 > 本 書 は 初 め に「 魚 島 野菜 の 部」 と し て14 の 魚 介 類 の 地 方 別 名 称 , 野 菜 や 果
物 の 産地 を 記 し , 次 に「 時 節 物」 と して 各 月 の 旬の 食 品の 記 載が あ る。 後 の 大 部 分 は約
200 点 の料 理 法 の 列 挙 で あ る が , こ の 中 には , 熊 本 藩 の 献上 物 かせ い た と 思 わ れ る丸 めろ
香 ・ 梨香 , 細 川 家 の 菩 提 寺 の 名 を 冠 し た妙 解 寺(ミョウゲジ)納豆 , 異 国 風 料 理 の 名 で あ る く
し い と ・ひ か と ・ 南 蛮 漬 ・ もふ り よ ふ ・ ぎ ん あ んて ん ふ ら等 , 他の 料理 書 に は み られ な い
天 竺 味 噌・ 二 色 玉 子 ・ 本 阿 弥 焼 ・ 福人 ・ 吸 物 武 蔵 野 ・ 鶏 卵 う とん 等 が記 さ れ て い る。 又 も
う り ゃう は , 『 料 理網 目 調 味 抄 』(1730)・『 黒 白 精 味 集 』(1746)等 他の 料 理書 で は 鶏 又 は 家
鴨 の 料 理 で あ る が , 木 書 の も ふ り よ ふ は 卵 料 理 で あ り 鳥類 は 使用 さ れて い な い 。 料 理 を 主
材 料 別 に 分 類 す る と, 当 時 の 熊 本 産 物 で あ る 鮎(6)・ 飽(10)・牛 房(4)等 の ほ か , 卵(12)の 料
理 や 鮨(11)等 が多 く, 鮨 に は 俄 鮨 ・ 閉 鮨 ・ 十 日 漬 鮎 鮨 ・ 浅 草 苔 巻 す し 等 が み ら れ た 。
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『日 葡 辞 書』 に採 録 さ れ た食 に関 す る語彙 につ い て
第 2報 植 物 に 関 す る語 彙 につ い て
松 本f好 ( 女 子栄 養 大 )
目 的 東 北 大学 狩野 文 庫 に架 蔵 さ れ る 『南 蛮 料 理 書 』を 理 解 す るた め に は 、多 面 的 な 検
討 が 必 要で あ ると 考 え 、 こ れ ま で は ル イ ス ・フ ロ イス 『日本 史l 、 ア レ シャ ンド ウロ ・ ヅ
アリニ ャ ノ 『日本 巡 察 記 』 な ど を 資料 と し て 、成 立 の推 定 を 行 って き た。 次 いで 調 理方 法
の 記 述を 検 討 す る に あ た って は、 まず 語彙 の整 理が 必 要で あ る と こ ろ か ら 、今 回 は 『日 葡
辞 書 』を とり あ げ て 、 収 録 さ れ る食 に関 す る語彙 を 採 集 して 検 討 す る こ と と し た。
方 法 資 料 の 『日 葡 辞 書 』 は、 イエ ズ ス 会宣 教 師 が日 本 に お い て 聴 罪 、説 教を 行 うに あ
た って 必 要と さ れ る日 本 語習 得 の た め に長 崎 の コ レ ジ オに お い て編 纂 さ れ、1603 年 に 刊 行
さ れた 辞 書で あ る 。 中 世か ら近 世 に か けて の 日常 の 話 し 言 葉を 中心 に、 広 汎 な 分 野 に亘 る
語 力収 録 さ れて い る点 、当 時 の 辞 書類 が 漢 字を 中 心 と し た 字 書 、歌 の用 語 を 収 め た 辞 書 の
他 に は存 在し な か った 中 にあ って 、生 活 用 語を 研 究 す る うえ で 極 めて 有 用 な 資 料 であ る。
岩 波 書店 発 行 の 和 訳 『田 宙辞 書』 を底 本 と して 、 そ れ に 収録 さ れ る食 に関 す る と考 え ら れ
る語 彙 を 全 て採 取 し、 分類 し た 。
結 果 採取 し た 食 に関 す る語彙 ば 約2830語 で 、 『日 葡 辞 書 』 に収 録 さ れ る総 語彙 数32293
語の 約m を 占 め た。 そ れ らを 食品 、 料理 、 皿
具、 供 食1こ関 す る語 等1こ分類 し、 こ こで
は 植物 に関 す る語 に つ い て ま と め た。 食 用 に し た 力ヽ否 か力畔q然 と し な い た め、丿 な採 取 さ
れ た全 て の 植 物 につ い て 樹木 類 、竹 類、 草類 、 、 水 草類 、豆 類 、芋 類 、茸 類、 海 草 類 な ど
に分 類 し た。 また 食 用 に し た こ とが 明 らか に記 さ れ て い る もの に つ い て み る と、 芋 で はサ
ツ マ イモ 、 ジ ャガ イモ は見 ら れず 、 野 菜 で は ス ミ レ、 タ ン ポ ポな ど の名 称 が み ら れた 。
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