平成27年 月 井村 登 公認会計士・税理士 はじめに 相手方を秘匿するような支出等を極力抑制する観点から、平成 年度から時限的な措置として、使途秘匿金に対して政策的に追加的税負担を求 める税制上の措置が講じられていました。 しかし、平成26年度の税制改正で、時限的措置から恒久的措置へ改正されましたので、この特例について、普通法人を中心にその概要等をQ& Aで簡潔に解説いたします。 どういう特例ですか。概要を教えてください。 法人が使途秘匿金を支出した場合には、通常の各事業年度の法人税に加えて、その支出額の40%の法人税を課するというものです。 したがって、赤字法人(課税所得のない法人)でも別途負担が生じます。 追加課税の対象となる使途秘匿金とはどのようなものですか。 概要と注意点は次のとおりです。 金 銭 の 支 出 ( 仮 払 金 等 の 支 出 を 含 む ) で す か No 金 銭 以 外 の 資 Yes 産 の 引 渡 し で す (注1)記載時期の判定は、事業年度 No か 終了日の現況によるが、法定申 Yes 与 ・ 供 与 等 目 的 の た め で す か 対 象 外 贈 告期限に記載があれば、事業年 No Yes Yes 相 手 方 の 氏 名 等 が 帳 簿 書 類 に 記 載 さ れ て い ま す か(注1) No 記 載 の な い こ と に 相 当 の 理 由 が あ り ま す か(注 Yes ) No 度終了の日に記載があったもの とみなします。 (注 います。 ① 多数の者へのカレンダー・ 手帳等の広告、宣伝用物品等 の贈与 Yes 資産の譲受け等の取引の対価として支払われたものですか (注 ② 小口謝金等の支出 ) No (注 税務署長において、記載がないことが相手方の氏名等を秘匿するためでないと認められましたか Yes 加 課 税 の 対 象 と な )対象外となる金額は、取引対 価として相当であると認められ るものに限ります。 No 追 )相当の理由がある場合とは、 例えば次のような場合とされて る 使 途 秘 匿 金 追加課税はどの程度の金額になりますか。 次の ケースで例示します。 (法人税率は25.5%とします。単位:1,000円) 黒字法人 ① 当期利益 ② 使途秘匿金(損金不算入) ③(①+②) 課税所得 ④(③×25.5%) 通常の法人税 ⑤(②×40%)(注 ⑥(④+⑤) 、 ) 追加課税 法人税合計 赤字法人(注1) (注1)このように、赤字法人でも追加負担が生 10,000 △ 10,000 1,000(加算) 1,000(加算) 11,000 △ 9,000 2,805 ─ が、中小企業者等が機械等を取得した場合 400 400 の法人税額の特別控除等の限度計算の基礎 3,205 400 じます。 (注 (注 )⑤の影響は、法人住民税にも影響します。 )⑤の税額は、留保金課税において留保し た金額から控除する法人税額に含まれます 等には、含まれません。 おわりに この特例は、決して秘匿で相手方に代わって税負担するものではありません。したがって、この特例適用があっても相手方の氏名等についての 課税庁による質問・検査がなされます。さらに、この支出金について取引を仮装して処理した際には、重加算税、青色申告の承認取消しとなるこ ともあり、十分な注意が必要となります。 い むら のぼる 井村 登(公認会計士・税理士) 著者紹介 同志社大学商学部卒。昭和51年税理士登録開業、昭和58年公認会計士登録開業。 現在、配偶者による井村社会保険労務士事務所併設。 事務所】大阪市中央区谷町 ▶著書 「税務・労務ハンドブック (共著)」 他
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