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特集
日立グループのITシステム
社会イノベーション事業を支える
日立グループの
グローバルIT戦略
経営のグローバル化が加速する中、日本企業にはITコストの最適化やサービス品質の向上、
グローバルレベルでの業務の標準化対応などが求められています。
そのためには市場競争を勝ち抜くための強じんで柔軟なITシステムが必要です。
今回の特集では、国内外に多くのグループ会社を擁する日立グループのIT戦略を例に、
お客さまのITマネジメント、さらにはグローバル経営に役立つヒントとソリューションをご紹介します。
いま日立グループは、長年蓄積したイン
IT部門であるIT統括本部 統括本部長
でしたが、社会イノベーション事業におい
フラ技術と高度なITを組み合わせた社
の大澤 隆男と、統括主管の菅宮 徳也に
てグループの総合力を発揮するには、より
会イノベーション事業に全社を挙げて取
聞きました。
経営や事業に貢献するITが求められて
り組んでいます。そのグローバル展開で
は「社会・お客さまが抱える課題をともに
見いだし、One Hitachiで解決」
「プロダ
きています。そのためITガバナンスもグ
経営や事業に貢献する
ループの主要事業のCIO※2による集団
ITガバナンスを追求
指導体制で推進。グローバルでトップライ
クト、サービス、IT(クラウド)を組み合わ
かつて日立グループは、各事業部門や
ン(売上高)を上げるという観点から、グ
せたソリューションによるイノベーションの
グループ会社の独立性を尊重し、ITに
ループ全体で最適化・統合化できる共通
実現」が重要だと考えています。これら
ついても個別対応を基本としてきました。
インフラと、事業セグメントごとに最適化・
の目標を達成するには、グローバルな視
しかしITコストやセキュリティリスクが年々
統合化した事業インフラの両面から展開
野を持った高効率オペレーションの実現
増大してきたため、2005年ごろからITコ
するように進化してきました」
(大澤)
や、グローバルIT基盤の整備と標準化
ストの最適化とガバナンス強化への取り
その過程で開始されたのが、2012年
が欠かせません。
組みを開始。米国のサーベンス・オクス
3 月期 から始まったコスト構 造 改 革
日立の変革をITでリードし、社会イノ
リー法※1(以下、SOX法)への対応を背
「Hitachi Smart Transformation Project」
ベーションの実現に貢献するIT戦略はど
景として、One HitachiとしてITの全体最
(以下、STP)
です。連結子会社数947社
う進められてきたのか。
また今後の展開と、
適化をめざした本格的な施策を実践し、
(国内283社、海外664社)、連結従業員
その技術やノウハウをお客さまに還元する
その内容を強化してきた歴史があります。
数約32万人※3の日立グループが、海外市
アプローチはどうあるべきかについて、日
「当初のITガバナンスはSOX法の順
場で有力企業と互角に闘うグローバルメ
立グループのIT戦略を担うコーポレート
法やリスクコントロールへの対応がメイン
ジャープレイヤーとなるには、高効率オペ
はいたっく 2015.3
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2
日立の取り組み
「経営の見える化」の促進と、グローバ
標準化」
という2ステップで展開。なかで
事業モデル
も連結経営に寄与する財務/調達/営
各社マネジメント業務
業/人財の共通管理コードの策定は、
経営戦略立案/業績管理
各種DWH
オペレーション層
A 共通ITフレームワークの構築
マネジメント層
ル標準アプリケーションによる「システム
グループ経営戦略立案・管理
受注∼請求∼回収
営業活動∼契約
コアバリューチェーン
調達∼支払
情報共有プラットフォームでのデータ集
計作業の合理化・高速化を可能とし、
記録∼
会計報告
情報の鮮度・精度の保持と管理コスト
B:見える化
加速
人財採用∼退職、勤怠、給与計算
削減に寄与。グループ全体の情報共有
と業務プロセス改革に大きな貢献を果
C:コーポ提供ITの展開
たしています。
:各社独自I
T
:事業モデル共通I
T
:コーポ共通IT
現在検討が進んでいるITアーキテク
チャの標準化モデルは、オペレーション層
図1 事業モデル別 ITアーキテクチャ
とマネジメント層に大きく分けられ、全社の
営業活動から受注・請求・回収、会計報
同期させながら展開するアクティビティで
告までのプロセスをコーポレート提供の共
す。バックオフィス系を中心とした業務効
通ITフレームワークで標準化しながら、
率の向上を実現するため、業務プロセス
すべてのデータを各事業の経営層が見
のグローバル標準化や間接業務の共通
たい視点で瞬時に一覧できる仕組みを
化とシェアード化 、コスト削 減 などを
めざしています(図1)。
※4
(株)日立製作所 IT統括本部 統括本部長 大澤 隆男
レーションによる業務効率の向上と、
さらな
※5
Hitachi Cloud-GS のSaaS を利用す
「現在、経営層が見たいKPI※6の見え
ることによって推進し、大きな成果を上げ
る化を進めていますが、今後はさらに詳
ています」
(菅宮)
細なコードの統一化や、社内SNS※7も含
※1
※2
※3
※4
2002年7月に制定された米国企業改革法
Chief Information Officer
2014年3月現在
Hitachi Cloud Service for Group Company:日 立
社内/グループ会社向けクラウドサービス)
※5 Software as a Service
「IT統括本部ではSTPに貢献するた
めに当該部門、IT部門が連携したトラン
3
DWH※8で、より詳細な経営/事業情報の
見える化を促進していきます。グループを
横断した経営情報や社内事例の共有、
るITコストの削減が不可欠との判断から
始められた施策です。
め た 知 識 共 有 にも踏 み 込 み、各 種
日立の変革をリードする
ITアーキテクチャの最適化
スフォーメーション活動を推進してきまし
ITアーキテクチャの最適化について
た。
これは業務プロセスとITの最適化を
は、既 存システムのデータを活 用した
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超高速なデータ処理基盤を適用したビッ
グデータのアナリティクスによって、お客さ
まに近いフロント層(営業/SE)に付加価
値の高い情報を提供し、グループ横断力
を生かしたトータルなソリューション提案、
特集
日立グループのITシステム
製品設計などに生かしてもらうことがねら
いです」
(大澤)
※6 Key Performance Indicators:重要業績評価指標
※7 Social Networking Service
※8 Data Warehouse
定常的IT支出を削減し、成長に
定常的I
T支出を削減し、成長に寄与する戦略的I
T投資を確保
2011年度(実績)
2015年度(計画)
重点項目
戦略的
IT投資
最適化
1
戦略的
IT投資
ソフトウェア
調達条件改善
寄与する戦略的IT投資を確保
主要施策
■ ライセンス集約購買の推進
■ 通信関連費集約
■ APM*1のグループ内展開
■I
T関連施設・設備の統合
2 I
T資産最適化
ITコストの最適化も進んでいます。具
体的にはライセンスや通信関連費の集約
■ 拠点集約による通信・
定常的
IT支出
を中心とした「ソフトウェア調達条件の改
サポート費削減
最小化
定常的
IT支出
■ グループ内運用業務の集約推進
3
善」、アプリケーション資産全体を評価し、
その投資価値や効果、優先度を明確化
するAPM※9、データセンター統合を中心と
■ テスト、
開発環境合理化
ソーシング
形態変更
(拠点運用、コールセンターなど)
■ クラウドサービスの活用拡大
■ AMO*2活用検討開始
*1 Application Portfolio Management
*2 Application Management Outsourcing
図2 ITコスト改革
した「IT資産最適化」、運用業務のアウト
ソーシング、そしてパッケージソフトやクラウ
ド活用による「ソーシング形態変更」の3つ
ループ横断型の知識共有者の仕組みづ
が有する知識・ノウハウの共有など、コ
がコスト削減重点施策になります(図2)。
くり、お客さまとともにビジネスを創出してい
ミュニケーションを円滑に行うことができる
「これらを実施することにより、ここ3年
くグローバルな情報連携基盤が欠かせま
エンタープライズSNSや、日立 独自の
で定常的なIT支出を確実に下げることに
せん。そのために構築を進めているのが、
Wikiシステムなどを、どう有機的に連携
成功しました。今後も継続的なコスト削減
リアルタイムで柔軟な情報共有とコミュニ
させていくかも検討しています(図3)。
を進めながら、事業成長に寄与する戦略
ケーションを促進する“グローバルコラボ
的IT投資を確保していきます」
(大澤)
レーション基盤”
と、社内外のメンバーや
※9 Application Portfolio Management
お客さまとのセキュアな情報連携を支援
トップライン向上を支える
IT環境を提供
する“マルチクラウド基盤”です」
(菅宮)
グローバルコラボレーション基盤は、業
界標準パッケージも含めた各種グループ
業務効率の向上やITコスト削減と並
ウェアとマルチデバイスをグローバルかつ
行し、グループ&グローバルでの事業の
柔軟に連携するソリューションです。一方
成長に貢献するIT環境の整備も急ピッ
の マ ル チ クラウド 基 盤 は、Hitachi
チで進められています。
Cloud-GSとパブリッククラウドをセキュアに
「お客さまのご要望に合わせたカスタ
連携する基盤となります。また、そこにグ
マーインのビジネスを展開する上では、グ
ループ 3 2万人の人的ネットワークで個人
(株)日立製作所 IT統括本部 統括主管 菅宮 徳也
はいたっく 2015.3
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日立の取り組み
する約4,000名の社員のスキル区分を詳
リアルタイムコミュニケーション
4
資料を用いた、より密な 1 相手がコミュニケーション
コミュニケーション
可能か確認
連絡可能
利用環境に適切なデバイスの提供
バイルやアナリティクス、セキュリティといっ
社内メンバー
一時退席中
応答不可
2
3
細に調査・分析し、業務を知る人財、モ
た先進知識を備えた人財のローテーショ
日立ネットワーク
GWAN
コミュニケー
ションを打診
Hitachi:Cloud-GS
ン、戦略的な人財育成、採用計画などを
立案し、ビジネスや社会が求める価値創
音声/ビデオに
よるリアルタイム
コミュニケーション
社内ITとパブリッククラウドを繋ぐ
“マルチクラウド基盤”
モバイル活用
デ
デスク
トップ
ト
このほかにもIT統括本部では、世界各
社外メンバー
パブリッククラウド
“グローバル
コラボレーション基盤”
統合認証
います」
(菅宮)
簡単操作
ート
スマー
PC
安全・便利・スマートに情報を共有する
タブレッ
ット端末・
スマートフォン
造に貢献できるIT人財の強化を進めて
インターネット
シンクライアント
地の拠点にIT部門を設置し、グローバル
ITガバナンスの実施やユニバーサルITポ
リシーの徹底など、グローバル展開の強化
策を推進しています。
図3 業務に適切なIT環境を提供
「現在、日立グループが展開している
STPによるコスト削減、グローバルITの標
トで展開できるように鋭意、推進している
準化などは、世界市場で闘おうと考えて
立グループの幅広い「知」
と
「ノウハウ」
ところです」
(大澤)
おられるお客さま企業に共通した課題で
の融合、お客さま視点、現場視点でのソ
※10 Internet of Things
もあります。そのため日立は、これまでの
社会イノベーション事業の推進には日
リューション創出が大きなポイントとなりま
すが、これらの業務要件に沿って一人ひ
とりの生産性向上を支援するIT環境をグ
ローバルに提供することも、コーポレート
IT部門の重要なミッションとなっています。
日立グループの技術とノウハウを
ソリューションとして提供
改革で培ってきた技術やシステム、ノウハ
ウ、経験などを活用し、幅広いお客さまに
対して上流コンサルティングから設計・構
築・運用までワンストップの高付加価値ソ
日立グループの事業への貢献を強化
リューション、ハードウェア・ソフトウェア・
していくには、
「IT部門の人財そのものの
サービスで構成される課題解決型のプ
※10
も、グループ内で標
強化が大事」
と大澤は言います。ITが
ラットフォームを提供し、お客さまが目標と
準化していくことを考えています。現在は
単なる業務の支援ツールからビジネス戦
されるイノベーションの実現を強力に支援
事業部ごとにIoTプラットフォームを構築し
略としての要件に変わってきた今、IT戦
していきたいと考えています」
(大澤)
ていますが、その基盤を実績ある日立ビ
略を担う人財には、ITシステムをどう作る
日立グループの事業戦略を実現するた
ジネスメディアサービス『TWX-21』などを
かだけでなく、ITをどう使いこなし、ビジネ
め進めてきたIT戦略。そこで培った技術
使って共 通 化し、センシングデータの
ス全体の価値をどう高めていくかという意
とノウハウが詰まったさまざまなサービス製
フォーマットも、共通化を図ることにより、今
思決定の役割が求められています。
品、ソリューションの一部を次のページで
「社会イノベーション事業を推進する大
きな技術となるIoT
まで以上に幅広いサービスを適切なコス
5
世界市場で闘うお客さまに、
「そこで日立グループのIT部門に所属
はいたっく 2015.3
All Rights Reserved,Copyright ©2015,Hitachi,Ltd.
ご紹介します。