被告準備書面17について 第1 1 被告準備書面17第2MOXペレットの「密度変化」(体積変化)について 被告の主張 被告は、ウラン燃料用のFINEコードの計算モデルを用いて、「燃料棒内圧基準 値」及び「燃料棒内圧評価値」を求めた。そして、「設計では、MOXペレットの焼 きしまり/スエリングについては、同じとする」とした(甲12輸入燃料体検査申請 書1-12)。この点を被告準備書面17では、「MOXペレットの体積変化はウラン ペレットと概ね同等と判断」したと微妙に表現を変えている。さらに被告は、この 体積変化についてウラン燃料と同一の計算モデルの妥当性について、実証データで ある実測値と同モデルを使用したFINEコードに入力して算出した「予測値」とを比 較し、計算モデルを修正すべきほど大きなばらつきは存しないことを確認した、と する。 原告は、被告が輸入燃料体検査申請書において「設計では、MOXペレットの焼き しまり/スエリングについては、同じとする」とした根拠となった図3-3(2)に 示すMIMAS法MOXペレットの照射データが同等であるとの被告の判断が誤りであ り、同図を科学的統計的に検討すれば、同等とはいえないことを示した。 今回の被告の主張は、この体積変化についてウラン燃料と同一の計算モデルの妥 当性を確認したとする(被告準備書面17p10図1)。そして何ら根拠なく「計 算モデルを修正すべき程大きなばらつきは存しない」、と強弁し、「ギャップ再開が おきない最大内圧値」及び「3サイクル終了時の燃料棒内圧値」から「燃料棒内圧 設計基準値」及び「燃料棒内圧評価値」を求める際、「焼きしまり」を考慮しない 計算モデルを用いて、ばらつきを「不確定性」として安全側になるように考慮した、 とする。この結果「ウラン燃料と同一の計算モデルを適用する、との判断の是非は 問題とならない、とする。 2 被告の主張の致命的な欠陥 しかしながら、被告のいう「焼きしまり」を考慮しない計算モデルなるものは示 2 されていない。当然のことながら、その計算モデルの正当性を示す資料も示されて いない。その計算モデルを用いた結果も何ら示されていない。被告が示す「図2 焼きしまりを考慮しない場合のペレット体積変化の実測値と予測値の比較(イメー ジ)」という表題の示すように、イメージしか示すことができていない。 被告の主張する、「ばらつき」を「不確定性」として安全側になるように考慮し た、ということについて、証明がなされていないどころか、なんら具体的な説明す らなされていない。被告の主張は、自分が安全だと言っているのだから信用しろ、 という非科学的かつ身勝手な思い込みの押しつけにすぎない。 被告は不確定性など考慮したと主張しているが、仮にそれが事実であるとしても、 そのように安全側に考慮するのは当然のことである。その結果導かれた内圧の設計 基準値と評価値との間にわずか1%の余裕しかないのが事実である。原告らは図3 -3(2)という測定事実を重視しそれに忠実に基づいてMOX燃料に関する膨張 速度を見直した結果、この1%の余裕が成り立たないことを示したのである。準備 書面17で被告が示したさまざまな言い訳は、原告が指摘したこの危険性に対する 反論にはまったくなっていないのである。 第2 釈明の拒否 被告は、計算モデルを修正すべき程大きなばらつきは存しないことを確認したと する図1(被告準備書面17p10図1)に記載するプロットの値やこのプロットの根 拠となったデータを示そうとしない。このような根拠が証明できない図1は証明力 を有しないことはいうまでもない。被告は市民の生命身体の安全にかかわる重要な 情報を商業機密の名目でもって違法に秘匿しようとするものである。 第3 釈明 被告は、輸入燃料体検査申請の際に評価した燃料棒内圧の燃焼度変化と設置変更 許可申請書の第3,2.5(4)図を示した。これらをもとにMOX径膨張速度と内 3 圧による径膨張速度を導けば、別図のようにギャップ再開は運転末期の54.2日 前に生じうることが判明する。ちなみにその時点での燃料棒内圧は19.0MPaで ある(甲84)。この数値は、被告が示した燃料棒内圧設計基準値19.7MPaや最 大内圧19.5MPaよりもはるかに低いものである。 市民の生命と身体の安全の確保を図る観点からは、本件各原子炉施設にかかわる 情報は徹底的に開示され、検討されなければならない。そして情報が明らかになれ ばなるほど、ギャップ再開がより早期に起きる危険性が示されるのである。 4
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