判決年月日 事 件 番 号 ○ 平成27年6月9日 担 当 部 平成26年(行ケ)10225号 知的財産高等裁判所 第2部 名称を「熱間圧延用複合ロール及びその製造方法」とする発明について,進歩性が 認められるとして,無効審判請求を不成立とした審決を,相違点の判断に誤りがあると して取り消した事例 (関連条文)特許法29条2項 (関連する権利番号等)無効2013-800040号,特許第4922971号,特開 2002-346613号 判 決 要 旨 被告は,名称を「熱間圧延用複合ロール及びその製造方法」とする発明についての本件 特許(特許第4922971号)の特許権者である。原告が,本件特許の無効審判請求を したところ(無効2013-800040号),被告は,訂正請求をし(本件訂正発明), 特許庁は,訂正を認めた上で無効審判請求を不成立とする審決をした。 本件訂正発明は,従来は圧延の仕上げ工程に用いられることの多かった高速度鋼系材料 を用いたロール(ハイスロール)を,元素成分比や硬さなどを調整し,熱的条件等が厳し い棒鋼などの圧延の粗圧延工程(仕上げ工程より上流側)に用いるようにしたものである。 一方,引用発明(特開2002-346613号公報に記載された発明)は,鋼板など の圧延の仕上げ工程に用いられる熱間圧延用複合ロールである。 審決は,本件訂正発明1と引用発明との間に,その用途や解決課題について相違がある (相違点1)と認定した上で,他の刊行物には,引用発明のロールを上記用途に適用する ことを動機付けたり,上記課題を解決することを目的とする記載は見られないとし,相違 点1は容易想到ではないとした。その結果,そのほかの相違点やそのほかの本件訂正発明 も容易想到ではないとした(なお,本件では,実施可能要件の充足の有無も争点となって いるが,説明を省略する。)。 本判決は,次のとおりの認定判断をして,相違点1に係る本件訂正発明1の構成とする こと自体は容易であり,審決の相違点1の判断には誤りがあるとして,これを取り消した。 ① 本件訂正発明のロールは,棒鋼などの粗圧延の全般に用いることを目的としており, 粗圧延の中で特に条件の厳しいところで用いるものと限定されてはいない。 ② 棒鋼などの圧延や粗圧延工程に使用するといったハイスロールの用途は,本件特許 出願当時の周知技術である。 ③ 熱疲労亀裂を原因とするロール表面の損傷を防止するといった本件訂正発明の解決 課題は,ロールの材質いかんにかかわらない本件特許出願当時の技術常識である。 -1-
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