第1回 連載の全体像の紹介と生産管理の基本事項 (今後の連載記事の概要、生産管理が必要な背景と生産管理の仕組み全体の構成) 誤を重ねながら編み出し、その効果を検証したも 2 年目の連載開始のはじめに のであった。読者におかれましては、すでに実践 しておられる方もいると思われる。ただ、どのよ 昨年 1 年間の連載に関しては多くの方々から うな手法であっても、あくまでも手段であり、活 「参考になった」とご好評をいただいた。一連の 用に当たっては、目的と目標を設定することが必 連載の内容を振り返り、読者のご要望にお応えす 要になる。さらに、いずれの生産現場においても るため、本年度も連載を継続することになった。 「人の質の低下現象」は程度の差はあれ、多くの 昨年の連載内容は人の質が低下する生産現場の 生産現場において確実に発生し、想定外の問題が 実態に対応するため、各種の改善手法を紹介して 発生している。こうした生産現場の大きな変化に どのように活用し、効果を出すかについて解説し 対応するために、紹介した各種の手法の実践が待 た。いずれの手法も筆者がコンサルタントとして ったなしになっている。 一方で、本年の連載は生産管理(図 1)を基本 数多くの生産現場の指導にかかわった際に試行錯 役割:生産プロセス全体の管理 生 産 管 理 目的:顧客満足・付加価値の創造 技術力、設備力だけでは顧客満足を達成できない、生産管理力が生き残りの条件だ !! 生産管理の 生産の基本要素6M 生 産 管 理 の 基 本 構 造 図 サポート部門 6M 生産計画 1. 人 Man 2. 機械 Machine 3. 方法 Method 4. 材料 Material 5. 管理 Management 6. 計測 Measurment 計画 3 要素 ・大日程計画 P 工程管理 ・設計管理 管理サイクル A 生産 プロセス D ・中日程計画 C ・小日程計画 生産計画の手法 ・作業標準書 ・標準時間 ・QC 工程表 ・生販会議 ・生産予測法 競争力強化 ・問題解決力 強化 ・生産改革快 善 ・作業手配 ・進捗管理 ・余力管理 ・現品管理 ・事後管理 工程管理の秘策 ・本物の5S ・見える化 ・作業者の育成 ・3礼 ・監督者行動 ・報連相 ・多能化 ・ムダとり ・外注管理 ・資材管理 ・生産技術 ・設備管理 ・品質管理 ・情報管理 生産現場の 5 力(ヂカラ) 製品力 × 現場力 × 管理力 × 技術力 × 組織力 図 1 生産管理の基本構造図 にしざわ かずお:本物の 5 S、生産改善改革、 管理・監督者指導に携わる。技術士 (経営工学) 、中小企業診断士 TEL・FAX:052−758−0532 e−mail:DQF02033@nifty. com 86 プ レ ス 技 術 テーマとする。その理由は、いずれの生産現場に 組立工程の今田課長を呼んで「納期遅れの要因と おいても現場力が低下するなかで、今必要なこと 対策はどうなっているのか」と質問したが明確な は生産管理の仕組みを構築することだからである。 回答を得られなかった。さらに、今田課長の説明 12 回の主な構成内容は次の通りである。ただ では「前工程であるプレス加工のライントラブル し、執筆の過程で計画内容の変更があり得ること の責任があいまいなため」と「取引先 C 社での をあらかじめご了解いただきたい。 品質不良と機械設備故障による納期遅れが原因ら 第1回 しい」とのことであった。 連載の全体像の紹介と生産管理の基本 事項(今後の連載記事の概要、生産管理が必要 な背景と生産管理の仕組み、全体の構成) 第2回 生産の基本(今、 求められるモノづくり の考え方、生産の流れづくり、生産方式の変化) 第3回 生産管理の基本(生産管理がなぜ必要 なのか、生産管理の基本要素、生産現場の 5 力) 第4回 生産管理を支える管理とは(生産管理を D 社には機械課、組立課、外注課という職場は あるが、生産管理課という部署はない。そのため に「工程を管理する部門として生産管理部門か担 当者を設置して欲しい」との要望が各部門から出 ているが、いまだに具体的な対応は取られていな い。さらに同工場では、顧客からの納期変更要求 に対応するため、各工程の生産能力を踏まえた生 支える管理には何があるのか、各種管理の進め 産計画も立案されていないというのが実情である。 方) このまま納期遅れを継続したら、顧客から継続し 第5回 生産計画とは何か(生産計画とは何を することか、生産計画の基本要素 6 M とは) 第6回 生産計画の基本(大日程計画、中日程 計画、小日程計画) 第7回 て注文が来るかどうかという不安も出ている。納 期確保のために生産管理の仕組みが必要なことは わかっているが、具体的に何をどうしたらよいの かと悩む山田工場長である。 生産計画のための各種の手法(作業標 ケースの問題点 準書、標準時間、QC 工程表、生産販売会議) 第8回 工程管理の基本(工程管理がなぜ必要 か、何をすることか、工程管理の進め方) 第9回 工程管理の実務(前半:工程管理の実 務とは、 「本物の 5 S」 、見える化、作業標準書) 第 10 回 工程管理の実務(後半:作業者の育成、 3 礼、生産現場パトロール、多能化) 第 11 回 工程管理を進めるための 6 M 問題解決 法(問題とは何か、問題を 6 M で分析する手 このケースでは、次のような問題点がある。 ○派遣社員が増加し、経験者が定年退職するなか で人の質の低下に対する具体的な対策がない ○生産管理についての必要性の理解と知識が不足 している ○このまま納期遅れを続発すると顧客の信頼を失 い、注文がなくなる恐れがある 法、問題の 6 M 要因対策の進め方) 第 12 回 8 つのムダとりで儲かる職場をつくる (ムダとりとは何か、8 つのムダとりの進め方) ケーススタディ 中堅プレス企業 D 社には今日も顧客企業から 納期遅れに対するクレームの電話が入っている。 重要顧客の生産ラインが「D 社が製造する部品の 納期遅れのためライン停止した」とのクレームで ある。同社は技術力では顧客から高い評価を得て いるが、このところの納期遅れの多発によって顧 客からの評価が低下している。その背景には最近 増加している派遣社員やベテラン社員の定年退職 の増加によるトラブル多発がある。山田工場長は 第 53 巻 第 4 号 (2015 年 4 月号) 87
© Copyright 2024 ExpyDoc