図1・図2

コヒーシンとは染色体の分配に中心的な役割を果たすタンパク質複合体である。2008 年に哺乳
類ではコヒーシンが転写制御因子として機能していることが白髭とウィーンの分子病理研究所
所長の Peters(ピータース)らによって示されている。
9.添付資料:
図1 本成果によって明らかになった転写の制御機構
プロモーター上に停止している RNA ポリメラーゼにコヒーシンと AFF4 が結合する。AFF4 は
RNA ポリメラーゼの N 末をリン酸化し(図では赤色の炎で示した)、RNA ポリメラーゼは活性化
され、RNA の合成を始める。RNA ポリメラーゼと AFF4 とコヒーシンタンパク質の 3 者による複
合体は転写終結点まで共に移動し RNA を合成し切った後、解離し AFF4 は分解される。ここで、
コヒーシンタンパク質は AFF4 と RNA ポリメラーゼの結合を転写終結まで維持するつなぎ目の役
割を果たす。AFF4 がこのように転写を活性化する一方で、コヒーシンタンパク質は AFF4 と RNA
ポリメラーゼの結合を転写終結まで維持することで、少なくともひとつのポリメラーゼが RNA を
合成している間は、プロモーターに結合している次の RNA ポリメラーゼが活性化されないような
仕組みである。つまり、コヒーシンタンパク質は転写の活性化を必要以上に起こさない、抑制的な
役割も担っている。
図2 CHOPS 症候群およびコルネリア・デ・ランゲ症候群(CdLS)の分子病態モデル
図1で見たように健常者では一度に一つの(実際は決まった数の)RNA ポリメラーゼのみが活性化
され RNA を合成される。それに対して CHOPS 症候群の患者では AFF4 が余っているために次々
と転写の活性化が引き起こされる。CdLS ではコヒーシンタンパク質が少ないため、AFF4 は RNA
ポリメラーゼと転写終結まで行動を共にせず、
次々と新たな RNA ポリメラーゼをリン酸化し、
RNA
ポリメラーゼは過剰に活性化される。