元プライベートバンカーが挑む金融業界の課題解決 〜インターネットを

元プライベートバンカーが挑む金融業界の課題解決
〜インターネットを活用し富裕層向けの金融サービスの裾野を広げる〜
冨田 和成
株式会社
氏
ZUU
代表取締役社長兼 CEO
金融業界を俯瞰することで見えてきた大きな課題
大学時代にソーシャルマーケティング事業で起業を経験したことが、私のキャリアの始まりで
す。後に、新卒で国内最大の野村證券に入社。最初は、飛び込み営業を中心に支店営業を経験し、
その後は大衆富裕層・超富裕層向けのプライベートバンク事業、海外支店、事業戦略、ビジネスス
クール留学、また国内外での商品組成や事業企画まで本当に様々なことを経験しました。
すると、ある時から金融業界を俯瞰して見ることができるようになり、業界の”大きな非効
率”に目が行くようになりました。当初は日本特有の事象かもしれないと考えていましたが、各
国の金融業界や商品、学術論文などの情報を収集し、欧米などへの出張を繰り返すなかで、そ
の課題が世界共通であることがわかってきたのです。
なぜ金融業界ではインターネットが主役にならないのか
今や、誰しもがインターネットから情報を入手し、さらにはオンラインでショッピングもで
きる時代になりました。また、銀行、証券、保険などの各種金融サービスにおいてもオンライ
ン化が進みました。ですが、金融商品・サービスは未だに対面販売が多数を占めています。こ
れはなぜでしょうか。
オンラインのサービスは、利用者にとって安い手数料や店舗に出向く必要がない利便性がメ
リットとなりますが、一方で利用者に求められるのはどの会社と取引し、どの金融サービスを
利用するかをすべて自分で判断する高いリテラシー。だからこそ、未だに金融業界は対面販売
が中心になっており、売り手(金融業界側)と買い手(顧客側)の間にある情報の非対称性は
非常に大きい状態です。
そこで ZUU の設立後にまず始めたのが、この情報の非対称性を解消していくことでした。金
融をよりわかりやすく伝えるために、現在は国内最大級となったエグゼクティブ層向けの金融
経済メディア『ZUU online』をはじめ、いわゆる今話題になっている『Fintech(金融×IT)』
分野でメディア事業をスタートしました。
金融業界に適正な競争の場を創る
ただ、メディア運営を行うなかで、情報の非対称性を改善するだけでは、問題は解決しない
ことが分かりました。現にネット生保・証券・銀行はまだまだ一般の人が当たり前に使うとい
う状況になりきれていません。その原因として、金融機関を中心とする資産アドバイザーと顧
客のマッチングがオフラインでもオンラインでも最適化されていないという状況があります。
私もそうでしたが、一般的な金融機関は飛び込み訪問やテレアポなどの営業活動に多大な時
間を費やしています。一方で、顧客はニーズに合致する優秀な担当者を選ぶことも、出会うこ
ともできない状態です。ZUU が目指すのは、こういった状態を解消する資産アドバイザーと顧
客のマッチング・プラットフォームの構築です。目指すのは資産アドバイザーが”人”で選ばれ
る時代。競争が起きることで、結果、商品・サービスの質は向上し、手数料が下がっていくは
ずです。
少し詳しく説明したいと思います。私がプライベートバンクの世界で見てきたことは、まさ
にこの競合が多数いる場所でした。顧客一人に対して、複数社のプライベートバンカーが担当
者としてついていました。そこでは競争が起こり、各々が顧客に選ばれるために、提案力、手
数料どちらも含めて顧客の立場にたって考え、質を高めていくという好循環がおきています。
現在、各社のプライベートバンクの戦略として、優秀な担当者が収益性の高い富裕層にぶつ
けられていますが、私はインターネットを活用してもっと多くの顧客にも対象を広げていける
のではないかと思っており、そこで同じような競争が起これば、提案の質も向上していくと考
えています。そのためには、資産アドバイザーと顧客のエコシステム(好循環)をリテール金
融市場に構築する必要があり、ZUU では現在その準備段階として売り手と買い手の双方にサー
ビスの提供を行っています。
IT の力で、金融サービスを求める中間の層を取りに行く
ZUU がターゲットとする顧客層は、純金融資産額 3,000 万円から 5 億円の中間層です。日本
の 5,000 万世帯中 1,000 万世帯、つまり 5 軒に 1 軒の家庭は、ZUU の想定顧客に含まれるとい
うことになります。競争が激しい最上部層や、需要の少ない最下部層でもないこの中間層こそ
がブルーオーシャンです。ただ、この層では顧客単価を高くできないため、低コストで効率的
にサービス提供を行う必要があります。そのため ZUU では、最新のインターネット技術を駆使
して、金融経済メディア『ZUU online』を中心に 10 を超える金融系 WEB サービスを展開し、
中間層の顧客との接点を作っています。
今後 10 年の変革期にコンサルティング力の向上を支援
次に、国内の資産アドバイザーは、営業活動と資産に関する提案を一人が両面で担当するス
タイルが一般的です。結果、営業活動に時間をとられ、顧客ニーズを満たすアドバイスや、コ
ンサルティング業務に集中しきれていません。また、日本の証券業界では、証券サービスを受
けている人口は全体の 2~3 割程度で、しかも手数料を払っている過半数は 65 歳以上の高齢者
の方々というのが現状です。
つまり、直近 10 年以内には資産を受け継いだ新世代の富裕層が多く誕生し、資産運用のス
タイルに大きな変革期が訪れるはずです。こういった変革期を見据え、資産アドバイザーが顧
客の資産全体を捉えた提案ができる、真の意味でのコンサルティング能力が備わる営業情報支
援サイト「ZUU Advisors Support」を運営し資産アドバイザーの会員ネットワークを構築。今
では、月間の訪問者数が 2 万人を超えるサイトになりました。
世界で戦えるプラットフォームの構築に向けて
このような形で、顧客・資産アドバイザー双方にサービスを提供しながら、最終的には、新
しい出会いと適正な競争を生み出す資産管理プラットフォームを通じて、金融業界の非効率性
の解決を目指しています。日本人の個人金融資産は 1,600 兆円と言われていますが、ほとんど
は休眠資産です。この資産の流動性が高まれば、金融業界全体のビジネスもより一層拡大して
いくと考えています。また、世界各国を見渡してもこの問題は顕在化していますが、決定的な
打開策はまだ生まれていません。ZUU は日本だけでなく、世界中の人にとって有益なプラット
フォームの構築を目指していくことで、金融の世界に貢献していく所存です。